グリフィンに憧れて

作者:白鳥美鳥

●グリフィンに憧れて
 慧は山の山頂を目指していた。
「朝日が山頂を照らす時までに行かないと……」
 足元は灯りをつけている。おぼつかない足取りで、慧は山頂に辿りついた。
「……よし、朝日までに間に合った」
 そして、朝の澄んだ空気を吸いながら周囲を見渡す。
「……後は、グリフィンを待つだけ。……出会えたら、背中に乗せて貰って空も飛べたりするのかなあ……」
 そんな慧の前に第五の魔女・アウゲイアスが現れた。驚く間もなく、大きな鍵で心臓を一突きにされる。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 慧は意識を失う。そして……現れたのはグリフィンを思わせる大きな鳥だった。

●ヘリオライダーより
「高地を飛べる……そして背中に乗って飛び回れる幻獣って憧れない? みんなの中には飛べる人もいるけど……もっともっと高い空を、ね?」
 そうデュアル・サーペント(陽だまり猫のヘリオライダー・en0190)は、ケルベロス達に話し始める。
「不思議な物事に『興味』を持って、自分で実際に調査を行おうとしている人がドリームイーターに襲われて、その『興味』を奪われてしまい、それをもとに現実化したドリームイーターが事件を起こそうとしているらしいんだ。『興味』を奪ったドリームイーターは既に姿を消してしまっているけれど、現実化したドリームイーターによる被害が出る前に、このドリームイーターを撃破してほしい。それから、このドリームイーターを倒すことができれば、『興味』を奪われてしまった被害者も目を覚ましてくれるから、安心してね」
 デュアルは続ける。
「それで、このドリームイーターは幻獣……グリフィンに良く似ているんだ。それで、このドリームイーターなんだけど、『自分が何者?』って問う行為をしてくるんだ。で、正しく対応出来なければ、殺してしまうみたい。でも、このドリームイーターは、自分のことを信じていたり、噂をしている人がいると、その人の方に引き寄せられる性質があるみたいで、それを上手く利用すれば、誘い出して有利に戦えると思う」
 最後にデュアルは伝える。
「幻獣って夢があるよね。グリフィンもそうだよね。何だか、本当にどこまでも遠くまで高く高く飛んでくれそうな気がするよ。だから……大事な幻獣の夢を守って欲しいんだ。みんなの活躍を期待しているよ!」


参加者
エイダ・トンプソン(夢見る胡蝶・e00330)
鵺咬・シズク(黒鵺・e00464)
萃・楼芳(枯れ井戸・e01298)
夜月・双(風の刃・e01405)
ラームス・アトリウム(ドルイドの薬剤騎士・e06249)
呉鐘・頼牙(漂流者・e07656)
猫夜敷・千舞輝(ネコモドキ・e25868)
涼風・茜姫(虹色散歩道・e30076)

■リプレイ

●グリフィンに憧れて
 場所は山頂。時間は夜明け前。夜の空は星の輝きが薄くなり始めていた。夜明け前の山頂だが、ラームス・アトリウム(ドルイドの薬剤騎士・e06249)は、念のために殺界形成を張っておく。エイダ・トンプソン(夢見る胡蝶・e00330)は、用意してきた光源を配置しておいた。
 猫夜敷・千舞輝(ネコモドキ・e25868)はゲームが大好きで、コスプレが大好きで、そしてファンタジーが大好きだ。今回は回復役なので、そのイメージに沿って白魔導師のような姿をしている。当然、グリフィンの登場も楽しみで仕方がない。彼女としては『グリフィン』の呼び方は『グリフォン』の方が慣れているのだけれど。
 準備は整ったので、ドリームイーターを誘い寄せるだけ。ケルベロス達は、グリフィンの噂話を始めた。
「グリフィンというと伝説の鷲獅子か。人を乗せて飛べるほど巨大な鳥らしいが、一度お目にかかりたいものだな」
 鵺咬・シズク(黒鵺・e00464)が話の口火を切る。
「うん、日本語だと鷲獅子。空も飛べるし、多分きっと地上も早く駆ける獣。物語の敵でも、味方でも、どちらでも格好いい生き物だよね」
 涼風・茜姫(虹色散歩道・e30076)が相槌を打つ。
(「敵だから、私達はこの時だけ、物語の中にいるのかな♪」)
 そんな思いも心に秘めながら。
「幻獣グリフィン……大空を舞う姿、力強く羽ばたく姿、鋭い瞳……。子供の頃にその姿を知って、憧れたものだ。実際に、この目で見てみたい気持ちがあるよ」
 そう語る夜月・双(風の刃・e01405)は、本当に子供の頃にグリフィンが出てくる物語を読んでいる。その時から気になる幻獣でもあるのだ。
「乗ってよし、使役してよし、飛べると移動も速そう、ってグリフィンさん最強ちゃう? 味方にできんかなぁ」
(「なんかこう、サーヴァントにしたらめっちゃ盾役として働いてくれそうちゃう?」)
 千舞輝は本当にグリフィンが大好きだ。そんな事を思ってしまうくらい。
「……人を喰らう魔獣とも、土地や財宝を守る神獣ともされるな」
 ラームス・アトリウム(ドルイドの薬剤騎士・e06249)は、また違うグリフィンの側面の話を続ける。
「幻獣か……グリフィン、その大いなる翼を天に広げるもの。居るさ、ドラゴンなんてものも居るんだ……」
 そう語るのは呉鐘・頼牙(漂流者・e07656)。彼の仇敵……ドラゴンの事を思い浮かべながら。
 楽しそうに話すのはエイダ・トンプソン(夢見る胡蝶・e00330)。
「グリフィンですか。カッコいいですね。実は呪いにかけられたイケメンで、某国の王子とかだったりしたらさらに魅力度が上がると思います。きゃっ会いたいっ」
 そんな話をしていると、空から大きな翼が羽ばたく音が上空から聞こえてくる。
 萃・楼芳(枯れ井戸・e01298)が見上げると、そこにはグリフィンがいた。
 降り立ったグリフィンは、ケルベロス達を見まわして問う。
「我は何者だと思うか?」
「グリフィンちゃん」
「誇り高き幻獣。空の支配者。権力の象徴。ただし紛い物だがな!」
 その問いに茜姫が、少しドキドキしながら答える。それに続いて、シズクがそう言い放った。
 グリフィンのドリームイーターは、シズクの最後の『紛い物』という言葉に金色の瞳を鋭く光らせ、急速に舞い上がると、飛びかかってきた。

●グリフィン型ドリームイーター
「高く飛ばれては面倒なので、しばらくの間落ちていてもらうぞ」
 ドリームイーターが飛びかかってくる前に、楼芳はグラビティの杭を撃ち込む。だが、ドリームイーターはそれを物ともせず、強い羽ばたきでシズクに襲い掛かった。シズクは二刀の斬霊刀を使って何とか防ぎ、カウンターで攻撃を喰らわせる。
「隙ありだ!」
 シズクの二刀の斬霊刀は雷を帯びた突きをドリームイーターへと放った。しかし、素早い身のこなしで、ドリームイーターは攻撃を避ける。
 一方の千舞輝は、直ぐに自由を込めたオーラを放ってシズクの傷を癒し、千舞輝のウイングキャットの火詩羽は、エイダ達に護りの風を送り込んでいった。
「ドリームイーターとは言え、こうしてお目に掛かれるとは……やはり嬉しさを感じるよ。だが、容赦はしない。慧が目を覚まし、再び幻獣に思いを馳せられるように……必ず倒そう」
 目の前にいるグリフィンのドリームイーター。双は、やはり出会えたことが嬉しく感じる。例え、それがまがい物であろうとも。しかし、ドリームイーターである以上、倒さなくてはならない。双の煌めきを伴う重い蹴りがドリームイーターに入る。避けようとしたようだが、かわしきれなかったらしい。
「逃げちゃダメです」
 続けてエイダも重い蹴りを放ち、ドリームイーターの動きを封じにかかる。更に頼牙の急所を狙った蹴りが叩き込まれた。
 全体の様子を見ながら、ラームスは星の輝きを用いて頼牙達に護りの力を与える。
 茜姫はドラゴニックハンマーを変形させてドリームイーターへと砲弾を撃ち込み、相棒のボクスドラゴンの崑崙は、狙われやすく誘導しようとしている楼芳へと属性インストールを行った。
(「……獣の味なのか、鳥の味なのか。気になっちゃうよね……ううん、ドリームイーターちゃんなんだから、どっちにしても、食べられないのはわかってるんだけ、ど」)
 等と、茜姫はそんな事をこっそりと思っていたりもするのだが。
 ドリームイーターは翼をはためかせると、回復の要と判断したラームスに飛びかかり掴んで動きを押さえる。
「はー、偽物とはいえ、目の前にグリフォンがいると、ウチもテンション上がるわー」
 仲間が攻撃を受けているが、やはり千舞輝は目の前のグリフィンに心を奪われそうだ。そんな千舞輝を火詩羽が蹴っ飛ばす。
「ちょ、蹴らんでも良いやろ。ちゃんと、仕事はするでー」
 千舞輝は、そう言い訳しながら、自由のオーラを使ってラームスの眠りの効果を解除する。それに、ラームスは感謝するように頷いた。
(「幻獣という存在に対しては私も興味はあるが……」)
 楼芳は目の前のグリフィン姿のドリームイーターを見て思う。正直、偽物というのが残念だ。楼芳はチェーンソー剣を構えるとドリームイーターへと向かって、容赦なく斬り裂いた。
 頼牙は、ドリームイーターへと向かって魂を喰らう一撃を放つが、ドリームイーターは翼を上手く使って距離を取ると華麗にかわす。
「……っ! かわされたか」
 まだ、ドリームイーターの素早さは押さえきれていないようだ。
「これが私のキャンドルサービス!」
 エイダは魔力を激しく燃焼させて、視覚的な炎の一撃を与える。
「何とか当たりましたね」
 まだ、素早いグリフィンのドリームイーター。命中率を高めているエイダも何とか当てた感じだ。
「いくぞ!」
 シズクは二刀の斬霊刀を交差するように斬りつけた。それを防ぐような形で翼を上手く使いドリームイーターは動く。当たってはいるようだが、完全にダメージが入ってはいない。
「龍よ……凍てつく牙で彼の者を喰らえ」
 双の詠唱と共に魔法陣が展開される。そこから氷の鱗を纏う竜の幻影がドリームイーターに襲い掛かり、その翼を凍らしていった。
 ラームスは仲間たちの様子を見ながら、次の手を考える。動きの速いドリームイーター。どこで、どの攻撃が誰に放たれるのかが判定しにくい。しかし、回復役が二人いる後衛の自分が狙われたことから星の光の加護を自分達へと纏わせることにした。
「グリフィンちゃん、本当に、素早い子だね」
 茜姫は確実に煌めきを放つ重い蹴りを放つ。崑崙は攻撃を誘っている楼芳へと属性インストールを行い、護りを固めた。
 ドリームイーターは、劈くような高い声を上げる。その高い叫び声は、楼芳の思惑通り、自らに向かって攻撃してきた。それを何とか受け止めた楼芳は、再度、カ式剄襲【四奪】を使って、自分へと攻撃の目を向ける様にさせる。
「素早い子ですね。こんなに上手く飛べるなら私も自由に飛んでみたくなります」
 そう言うとエイダは、ドリームイーターへ、足止めを重ねるために重い蹴りを放つ。
「飛行! って思って遠距離グラビティを多く用意してきたんやけど、そうも言ってられへんな」
 イメージが大事な千舞輝も、こうも逃げられると足止めに動かなければならない。ドリームイーターへと重い蹴りをエイダに続いて放ち、火詩羽はリングを飛ばして追撃した。
「流石、素早いな。だが……その素早い身のこなし、封じてやろう」
 双は漆黒の闇でドリームイーターを捕まえる。
「……今度は当ててやる。覚悟しておけ」
 頼牙はドリームイーターへと急所を狙い、正確に蹴りを叩き込んだ。
「もう、逃げられると思うな!」
 当たりやすくなってきたとはいえ、油断は出来ない。確実性を取った方が良いとシズクは判断し、雷を帯びた二刀同時の突きがドリームイーターを痺れさせていく。
 ラームスは、今度は頼牙達に星の加護を与えて護りを固めていった。
「もう一回、足止め、するよ」
 茜姫のドラゴニックハンマーは、変形して砲弾を放つ。崑崙は、再び楼芳へと属性インストールを行い、護りを固めていった。
 ドリームイーターは大きく翼をはためかせる。その翼による攻撃はシズクへと向かうが、それを楼芳が庇った。
「大丈夫か?」
「ああ、感謝する。その分、攻撃で礼をしよう」
 シズクの二刀が交差して、ドリームイーターへと斬撃を放つ。
「よしよし、トドメの方向やね。ふふ、今度こそイメージ通りや!」
 千舞輝はファミリアロッドをドリームイーターへ向けると、無数の魔法の矢を放ち、火詩羽は引っ掻き攻撃を行った。
「イケメン王子様を守る番人みたいに、石像になるのも恰好良いかもしれませんよ?」
 そう言うと、エイダは石化魔法を放って、ドリームイーターの動きを鈍くしていく。そして、双が更に足止めの為に輝く重たい蹴りを放った。
「……逃げられた借りを返してもらうぜ」
 そう言うと頼牙は妖刀を構える。
「行くぞムラマサ―一切合切、斬り捨てる」
 頼牙の放つ斬撃は太刀筋が幾重にも変化し、ドリームイーターを斬り裂いた。
 ……そして、その攻撃を受けたグリフィンのドリームイーターは、羽根の様になり……朝日に照らされ、煌めきながら消えていったのだった。

●最後に
 ケルベロス達は崩れてしまった山頂を、出来る限り修復していく。元がどのようになっていたのかは暗くて分かりづらいので、半分イメージ頼りのヒールになってしまうのだけれど。
「慧を見つけた」
 ラームスは見つけた慧に駆け寄ると、まだ意識を取り戻していない彼にヒールを施していく。
「ウチも協力するでぇ。これこそ白魔法使い! って感じやからな!」
 同じく回復役である千舞輝も、慧にヒールを施していった。
 やがて、慧は気が付き、大体の事情を聞かされた。
「……ご迷惑をおかけしました」
 反省する慧に、双は励ましの声を送る。
「幻獣に思いを馳せる事は悪い事ではない。……だが、無茶な事はしないようにな?」
「……はい!」
 双の言葉に慧は嬉しそうな顔をした。
「何かあれば、相談に乗ろう。これが私のケルベロスカードだ」
「ありがとうございます……!」
 ラームスから貰ったケルベロスカードを、慧は大事そうに胸に抱いた。
 ……朝日が綺麗に輝く。
 ……そこには、確かに幻獣がいても可笑しくない。そう感じられる景色だった――。

作者:白鳥美鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年10月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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