音整士の力で以て

作者:幾夜緋琉

●音整士の力で以て
 人気の無い、とある廃ビル。
 その廃ビルの中で、バニーガールの様な、道化師の様な……二つが混ざったような、そんな姿をした女性が、二人の螺旋忍軍の者達の前に立つ。
 何処か自身ありげな表情で、うんうん、と頷いた後。
「ふふ……あなた達に使命を与えましょう。この町にどうやら、腕利きのピアノ調律士がいる様なのです。貴方達は、その人間に接触を行い、その仕事内容を確認してくるのです」
 突然振られた使命……二人の螺旋忍軍が、ちょっと訳分らない様に小首を傾げる。
 だが、彼女は。
「そして可能ならば、その仕事内容を習得し……その調律士を殺害してくるのです。グラビティ・チェインは略奪してもしなくても構いません」
 ふふ、と微笑む彼女。
 そんな彼女に顔を見合わせた二人は……続けて、頷き合い。
「了解しました、ミス・バタフライ。一見しては、意味が無さそうなこの事件ですが……色々な考えの元、出されているのでしょう? そうなれば、巡り廻ってこの事件も、地球の支配権を大きく揺るがす事になるのでしょうから」
「ふふ、そうね。楽しみにしているわ」
 微笑み、二人の肩を叩くミス・バタフライ。
 そして二人の螺旋忍軍は、ピアノ調律士の元へ潜入を開始するのであった。
 
「ケルベロスの皆さん、お集まり戴けました様ですね? では、早速ですが説明を始めさせて戴きますね」
 とセリカ・リュミエールは、集まったケルベロスらに一礼すると、早速説明を始める。
「ミス・バタフライ。どうやらこの螺旋忍軍が動き始めた様なのです」
「彼女が起こそうとしている事件……直接的には大した事件を起こすという事はありません。ですが、巡り廻って大きな影響が出るかも知れない、という厄介な事件です」
「今回の事件ですが、ピアノ調律士という、少々珍しい職業の一般人の元へ現れ、弟子入りすると共にその仕事回りの情報を得たり、習得した後に調律士の方を殺そうという事件なのです」
「この事件を阻止しなければ、まるで風が吹けば桶屋が儲かるかの如く、ケルベロスの皆さんに不利な状況が発生してしまう可能性が高いのです」
「勿論、それがなくとも、デウスエクスに殺される一般人を見過ごす事は出来ません。皆さんには、このピアノ調律士の方の保護と、ミス・バタフライ配下の螺旋忍軍達の撃破をお願いしたいのです」
 そして、続けてセリカは、この螺旋忍軍との接触方法について、更に説明を加える。
「基本的な方法としては、このピアノ調律士の彼女を警護するのが一番シンプルな方法となります。事前に説明等をして、安全な所に避難させる、等をしてしまうと、敵は別の対象者を狙うなどをする為、被害防止を行う事は出来ません」
「幸い、皆さんは螺旋忍軍の接触の数日前から接触する事が出来ます。彼女とのコンタクトは事前に可能故、事情を話す等して、仕事を先に教えて貰うなどすれば、螺旋忍軍の狙いを彼女から皆さんへ変えさせる事は可能かもしれません。無論、皆さんが囮となる為には、見習い程度の力量は必要ですので、相応に頑張ると共に、ある程度の音感も必要となるでしょう……音感のある方が頑張ってみる、というのがいいかもしれません」
「ちなみに、螺旋忍軍は2体います。そして基本的には、ミス・バタフライの命を受けて、調律士の技能を手に入れようとしてきます」
「これを逆手に取り、その技術を教える修行と称して、有利な状態で戦闘を行う事が可能だと想われます」
「又、彼女達がコンタクトしてくるのは、都内のコンサートホールや、音楽学校の、営業時間外の時間、学生達の居ない時間などになりますので、他への人払いなどは不要です」
「とは言え戦闘となれば、螺旋忍軍二人は全力で以て闘いに挑んできますので、決して油断はしない様にして下さいね」
 そして、最後にセリカが。
「何にせよ、この様な事がどう皆さんに不利な状況になるかは分りません。ですが……飛ぶ前の蝶の羽ばたきを止める事が出来れば、事件は未然に防げるのです。そのチャンスをみすみす見過ごす理由もありませんし……どうか、皆さん宜しくお願い致します」
 と、頭を下げた。


参加者
リリア・カサブランカ(春告げのカンパネラ・e00241)
水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)
ギル・ガーランド(義憤の竜人・e00606)
エレ・ニーレンベルギア(追憶のソール・e01027)
四十九院・スケキヨ(パンプキンヘッズ・e01109)
ライゼル・ノアール(仮面ライダーチェイン・e04196)
スミコ・メンドーサ(グラビティ兵器技術研究所・e09975)
プロデュー・マス(サーシス・e13730)

■リプレイ

●音と共に
 調律師。
 主にピアノの奏でる音を整える為に、些細な音の違いを聞き分ける仕事。
 ……しかし、そんな調律師に取り入り、ケルベロスの不利を誘う為の作戦を開始しているのが、今回のターゲットである螺旋忍軍、ミス・バタフライと、その配下達。
 とは言え、どうすればケルベロス達に不利に働くのか……そこは良く分らない訳で。
「敵の狙いは不明か。それに今回の敵も、詳細を知っている訳でも無さそうだな」
「そうだね。音の調律……それが、ケルベロス達にとって不利に働く……果たしてどうやってなんだろうね。ミュージックファイター関連、なのかな?」
 プロデュー・マス(サーシス・e13730)と、ライゼル・ノアール(仮面ライダーチェイン・e04196)が小首を傾げながら話し合っていると、それにギル・ガーランド(義憤の竜人・e00606)と水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)も。
「そうだな、音に関連する、となるとミュージックファイターになるだろう。とは言えやってる事は、調律師の先制を最後には殺す、という話だし……厳密にはそうではなさそうな気もするのだがな」
「まぁ、手に職っては言うが……デウスエクスもそうなんだろうか? 人に紛れてるデウスエクスも居なくもないだろうしな」
 と。
 ……いよいよ何故、ミス・バタフライが調律師を狙うのか、分らない。
 ともあれ、このまま放置しておけば、事態は悪くなると言うのだから、それに対処せざるを得ないのは間違い無い訳で。
 幸いなのは、彼らよりも数日前に、調律師に接触出来るという事。
 従っての作戦は、調律師の彼女に弟子入りし、その技術を手中に入れる事……とは言えそれはケルベロスの力とは、また別の力な訳で。
「ピアノの調律か……うーん、興味はあるんだけど、私には無理そうだね」
 と、肩を竦めて笑うは四十九院・スケキヨ(パンプキンヘッズ・e01109)。
 そしてエレ・ニーレンベルギア(追憶のソール・e01027)とリリア・カサブランカ(春告げのカンパネラ・e00241)も。
「音を整えるって、凄い仕事ですよね。楽器の魅力を引き出す、調律師……とても、素敵なお仕事だと思います!」
「そうね。私もピアノは好き……故郷の教会で、他のシスター……姉さまたちがピアノや色んな楽器を聞かせて暮れた時は、とても楽しかった。音楽って、人々の心を豊かにしてくれるのよね。奏でるピアノを調律する調律師も、そのお手伝いをする素晴らしいお仕事……指導の休憩中とか、彼女が調律師になった理由も、色々話を聞けたらいいな」
 くすり、と微笑むリリア。
 と、そんな仲間達の会話に対しスミコ・メンドーサ(グラビティ兵器技術研究所・e09975)は。
(「うーん……音楽なんてものに興味はないんだけどなー。まぁ、同じ職人同士、通じ合うものでもあればいいんだけどね」)
 と考えながらも、調律師の仕事に、僅かながらの興味。
 ……そして。
「まぁ、弟子入りして、一番適正があるのが囮になるって事で……んじゃ、向かうとするか」
 と鬼人の言葉に皆も頷き、ケルベロス達は調律師の彼女の下へと向かうのであった。

●音は乱れる
 そして、ケルベロス達は、仕事中の彼女の作業現場へと到着。
 調律師の仕事……音と向き合う仕事。
 ピアノの鍵盤を一つ一つ音を鳴らし、その音階のズレを繊細な作業で調整していく、そんな職人技の仕事。
 ……当然、周りに人も居ない、静けさに包まれた空間で行う仕事故、彼女の周りに、他の一般人はいる事は無い。
 そんな彼女の下へ、近づくケルベロス達。
「……何、どなた?」
 その足音に気付き、顔を上げる彼女。
 出来る限り、彼女に警戒心を解いて貰えるよう、穏和な表情で。
「仕事中申し訳ありません。私達は、ケルベロスです」
 と……。
 突然、ケルベロス達が訪れてきた、という事に対する驚き……しかし、それを表情に出す事は無く。
「そう……ケルベロスの皆さんが、何故私なんかに?」
 と、当然の如く問いかける彼女。それに、南瓜頭のスケキヨは華麗に、紳士的に一礼をして。
「驚かせてしまうかもしれないが聞いておくれ。貴女の腕と命が狙われているんだ。だが、安心して欲しい。我々が必ず、それを止めてみせる」
 と力強く頷くと、ギルも。
「そうだ。なぁに、この身体で必ず守ってやるぜ」
 と、ニヤリと笑みを浮かべる。
 ……それに当然、彼女は。
「わたしが狙われる……何故でしょう? 私はただの調律師。楽器の音を整えるのが仕事……デウスエクスに狙われるような力なのでしょうか?」
 と、当然の問いを返す。
 それにスミコと鬼人が。
「確かにそうだね。一見してその調律師の技術が、デウスエクスが何故手にしようとしているのか……それはボクらも完全に掌握している訳じゃない。でも、狙われているのは確かなんだ」
「音と共に仕事をしている、貴女の才能。一見して普通の事が、デウスエクス達にとっては求める技能なのかもしれない。どうか、俺達を信じて欲しい」
 と、更に真摯なる言葉を投げかける。
 勿論、周りの他のケルベロス達も真摯な表情で、説得。
 その説得に、彼女は……分りました、と頷き。
「それで……私はどうすればいいのでしょう?」
 と。それにリリアが。
「可能であれば、私達にそのお仕事を、教えて貰いたいのです。調律師の仕事を……貴女には敵わないとは思いますが、私達がその力で、囮になる事が出来るかも知れません」
「囮……ですか。ですが、この仕事……中々一朝一夕には行きませんよ? ほんの僅かな違いを感じ取り、僅かな調整を繰り返す……そんな仕事ですよ?」
 と言うと、エレ、ライゼル、鬼人が。
「ええ、存じ上げています。なので、私達がそれぞれ勉強させて欲しいのです。レプリカントですから……聞いた音は、正確に書き出すことは出来ると思いますし」
「ボクもどれだけ出来るかは分らない。ですが……そうですね、ピアノの音同士を比較する際のうなりの聞き分けや、鍵盤の整調技術なら、少しは出来ると思います」
「俺も……学も才能も要領もないが、でも取り扱いや清掃だけなら、昔からやっているからな。見ようみまねなりに、上手くは出来ると思う」
 そして、リリアは。
「私も……です。故郷の境界では聖歌担当でした。小さい頃からピアノも良く聞いていましたから、音を聞き分ける耳は鍛えられていると思います。音楽は好き、だから忍耐を必要とする調律も苦ではありません」
 そんな四人の言葉に、調律師の彼女は暫し考え。
「分りました。とは言え私も教えることは不慣れですから、見て覚えて下さい、という事になると思います。それでも宜しいでしょうか?」
 ……勿論、四人はそれに頷き、そして……彼女につく形での、護衛と調律師の技術習得は始まるのである。

 そして、技術習得を初めて3日。
 様々なピアノの調律現場へ赴き、一つ一つ音を出しながら、それを調整する仕事。
 間近でその調律技術を、目で見て、耳で聞いて、手で動かす……その繰り返し。
 段々と、その調律技術を習得していき、3日経つ頃には、何となく調律は出来るようになっていた。
 その中でも、特に際立っていたのはエレとリリア。
 エレは正確に音階を聞き出し、そのズレを指摘する……でも、高い音などには、ちょっと背丈が不足。
 そのアドバイスを受けて、リリアが少しずつ、少しずつ調整する事で……上手く調律する事が出来る。
 そんな息の合った調律を見たスケキヨが。
「おお……見事なものだね! これなら敵も十分此方に興味を持ってくれそうだ」
 と深く感心。
 そして……3日目の最後の調律現場となるのは、夜半を過ぎたコンサートホールのピアノの調律。
 彼女と共に、調律していると……その下に近づいてくる、二人の男。
 ……だが、その気配から、ケルベロス達には螺旋忍軍であるというのに気付く。
 そして彼女に。
「彼らがそのデウスエクスです。騒がず……避難をお願いします。私達が、囮になります」
 とエレが言いつつ、リリア、鬼人が。
「先生は今、調律で手が離せません。私達が対応致します」
 と、螺旋忍軍二人を、其の場から引き離そうとする。
 ……でも、彼女から離れようとしない彼ら。調律師の先生には、別の部屋にも調整が必要なピアノがある、という事で、舞台上から去って貰う。
 ……そして、去って行った所で。
「……さて、と。お前たちの目的は知らない。ケド、これ以上好き勝手させる訳にもいかないんだよね」
 とスミコのその一言を合図に……ケルベロス達は、一斉に舞台上に姿を現わす。
「そうだね……調律師の技能を何に利用するか分らないが、悪事に使おうとするのなら、ここでその企みは終わりだ!」
 と、ライゼファクターにチェーンキーを射込み変身するライゼル。
 そんなケルベロス達の戦闘態勢へのシフトに、螺旋忍軍も正体を現わし、対峙。
「気付かれたなら仕方ねえ……口封じだ!!」
 構えると共に、忍び装束にシフト。
 その手に出現した手裏剣をシュバババッ、と投げつけて攻撃。
 しかし、素早くその攻撃をカバーリングするのはギル。
 腕に手裏剣が刺さりつつも。
「っ……」
 と敢然と立ち塞がる。そのダメージを、ギルのボクスドラゴン、リウが属性インストールですぐに回復。
「リウ、サンキュ。さぁ、鈍ってる身体を温めねぇとな……いくぞ」
 と、自慢の一本角で、突進の怒突角竜。
 手前の螺旋忍軍に、深々と突き刺さると。
「どうだ。俺のは……デカくて、硬くて、痛いだろうがぁ!」
 不敵な笑みと共に、敵にダメージと怒りを付与する。
 そして、同列のライゼルのビハインド、クサリサがポルターガイストで足止めを付与。
 続き、ジャマーのエレ、スケキヨが螺旋忍軍に接近し。
「君の相手はもうちょっと先でね。悪いが其の場で待っていておくれ!」
 と、後ろに立つ一体に、稲妻突きにスターゲイザーを叩き込んで、バッドステータスを積み上げる。
 そしてスナイパーのライゼルが、一歩後ろからバスタービームでプレッシャーを与える。
 一方、メディックのリリアは。
「彼女の技術は人々を幸せにするためにあるものよ。あなたたちの企みに利用させるもんですか!」
 と螺旋忍軍に力強く叫びながら仲間達に黄金の果実で、BS耐性を付与する。
 そして、最後に鬼人、スミコ、プロデューのクラッシャーが。
「音を何に使うか知らんが、お前達は何をしてる?」
 と言い放ちながら、絶空斬、達人の一撃、フレイムグリードを連携して叩き込んで行く。
 そんなケルベロス達の一ターンの猛攻……明らかに戦闘能力の差を感じ取り、顔を見合わせる螺旋忍軍。
 だが……退く事は出来ない。
「くそっ!!」
 と舌打ちしつつ、二体の螺旋忍軍は、ケルベロス達へ次々と手裏剣や氷を使った攻撃を次々と仕掛けてくる。
 しかしそれら攻撃を上手くいなしながら、上手の反撃を加えていくケルベロス達。
 エレの縛霊撃に、スケキヨのサイコフォース、ギルの旋刃脚などが、同じ螺旋忍軍をターゲットとして次々と攻撃を嗾け、ダメージを蓄積していく。
 そしてそのダメージを大幅に加速させるのが、クラッシャーの一撃。
 それが数ターン続き……みるみる内に狙われた螺旋忍軍一体は瀕死の状態。
 そして。
「君達には悪いが……勝利は貰う!」
 と、ライゼルが『救いて勝せよ偽腕の蹴鎖』で、その一体を仕留めると……残る螺旋忍軍一体は。
『っ……!!』
 驚愕の表情で、一歩、二歩、後ずさり。
 しかし退路に立ち塞がるはギル。
「おら、逃がしゃしねえぜ! 逃げようってんなら、俺を超えてみなぁ!!」
 と、降魔真拳で拳から殴りつけて、完全に退路を断ち行く。
 それならば、と奮起して対抗する螺旋忍軍だが……数の差、実力の差の前に、みるみる内に傷付けられ、どんどん疲弊していく。
 そして。
「調律師の知識を得て何をする気かは知らんが、デウスエクスに音楽を理解出来る奴がいるとは思えないな。必要ってんなら、物騒な考え捨てて、一から出直せ」
 と鬼人は冷たく言い放つと、放つ渾身の鬼砕き。
 その一撃は、螺旋忍軍の頭頂部に見事に決まり……そして連携するプロデューが。
「この胸を焦がす熱こそが、世界に終わりを誓う光。神々よ、この光に黄昏よ!」
 と『F.En.Ri.R』の超熱プラズマ光が撃ち貫いて、そしてスミコが。
「これで終わりにしよう」
 と、アイスエイジインパクトの一撃に……絶叫と共に、崩れ墜ちて行くのであった。

●旋律を整え
 そして……。
「ふぅ……終わった様だな。皆、お疲れさん」
 と、プロデューは汗を拭いながら、皆の労を労う、そしてスミコが。
「ああ、お疲れ。特にリリアは、囮役大変だったね」
「いえ……私も、素質があるなんて言ってもらえて、嬉しかったですし……」
 ちょっと照れるようにリリアは微笑む。
 そして、武器をしまいつつ、周りを見渡せば……螺旋忍軍との戦いの爪痕が、コンサートホールに生々しく残されて居る訳で。
「……うーん。楽器は……」
 と鬼人は、まずは一番近くのピアノへ。
 弦の張り具合を初めとして、響板、駒、フレームなどなど……一通りの状況を確認した後。
「……致命的な破損は無い様だが、一部の弦が切れてしまってるから張り直しは必要か。それに再調整も恐らく居るだろう……他の楽器の状況も確認しないとな」
 と、昔取った杵柄、楽器の取り扱いとか、修理の有無を判断していく。
「ん? ヒールで修理出来ないのか?」
 と、スミコが問いかけると、鬼人は。
「ヒールで治す事も可能だろうが、それはそれで楽器の持つ個性が消えてしまいそうだしな。調律技術は余り俺には身につかなかったが、楽器の修理はなんとなく分った気がするし、この手で直してやりたい所だ」
 鬼人の、楽器に向き合う真摯な視線。
 それにギルも。
「まぁ、確かにな。それじゃ俺達はホール自身の修理をするとしよう。リリアは一応、調律師の先生の状況確認を頼む」
「分りました」
 とリリアは調律師の先生の元へ向かい、安否確認。
 囮になったお陰もあり、傷もなく……無事な彼女にほっとする。
 そして、調律師の彼女の申し出もあり、彼女を含めて楽器の修理、ホールの修理をこなしていく。
 ……一通り終わるには、もう次の日。
 彼女を車に送り届けて……彼女の後ろ姿を見送りながら。
「いつか彼女から教わった技術で、わたしも誰かを幸せにするお手伝いが出来たらいいな……」
 と……リリアは、胸に手を合わせ、静かに祈るのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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