海中マーマン食堂

作者:荒雲ニンザ

 千葉県鴨川市にある、とある定食屋。
 巨大なホラ貝を模したその店の扉に『閉店』の紙が貼られていた。
 店の中では、大きな三叉槍のイミテーションを持ち、上半身が裸で下半身に魚の着ぐるみを着用した男性がしぼんでいる。
「こんな良い店なのに……何故だ」
 店長だったのだろう。ため息の大きさが、彼の後悔を語っているように思う。
「扉を開けたらそこはまさに海中! 海の中にいるような気持ちで食事ができるぞよ! 魚になって海の幸を堪能できるのだぞ!」
 彼が偉大なポーズをキメて叫んだ後、店の扉が開く。
「お、ウチはもう、閉店であるからして……」
 店長の言葉を最後まで聞かず、第十の魔女・ゲリュオンは、手に持った鍵で彼の心臓を一突き。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『後悔』を奪わせてもらいましょう」
 背後に倒れた店長はそのまま後ろにあった扉を押し開け、意識を失ってしまう。
 そして店長が立っていた場所に、マーマン姿のドリームイーターが現れた!

 言之葉・万寿(高齢ヘリオライダー・en0207)が、今回調査していたスピノザ・リンハート(忠誠と復讐を弾丸に秘め・e21678)と共に入室してきた。
「自分の店を持つというのは、その道の方達には夢でございましょう。ですが、せっかく夢を叶えたというに、店が潰れてしまうこともありましょう。その成り行きを後悔している御仁が、ドリームイーターに襲われ、その『後悔』を奪われてしまう事件が起こってしまったようです」
 『後悔』を奪ったドリームイーターは既に姿を消しているようだが、奪われた『後悔』を元にして現実化したドリームイーターが、事件を起こそうとしている。
「現れたドリームイーターによる被害が出る前に、このドリームイーターを撃破して頂きたいというのが、今回の依頼でございます」
 このドリームイーターを倒す事ができれば、『後悔』を奪われてしまった被害者も、目を覚ましてくれるだろう。

 敵のドリームイーターは1体のみ。
 戦闘する場所は、ドリームイーターの力で営業再開中の定食屋『マーマン』の店内。
 営業再開中であるが、他の客はいないので安心して戦えるだろう。
「店に乗り込んでいきなり戦闘を仕掛ける事もできますが、客として店に入り、サービスを受け、そのサービスを心から楽しんであげると、ドリームイーターは満足して戦闘力が減少するようです」
 店長がなりきっているのは『海中王国の板前』のようだ。
「お客様から『それっぽいシチュエーションの海鮮料理』を創作注文して頂き、それを作り上げるという、一風変わった調理を売りにしております」
 客層は何でもいいらしい。人間でもよし、魚人でもよし、普通の魚でもよし。ただ、それっぽく演出できないと店長は絶対認めないらしい。
 スピノザが言う。
「例えば、人間が普通に海中にある料理店に来たらおかしいだろ? 魚人やら魚介類にしたって、日常どうしてるんだ、とか。そういう妙な設定にこだわってるらしいんだよ。海中時事みたいな話をでっちあげてやれば喜ぶんじゃないか?」
 万寿も頷く。
「お店はつぶれてしまいましたが、このサービスの良い面を見て差し上げ、心から喜んであげることが大事です。敵を満足させてから倒した場合、意識を取り戻した被害者にも良い効果が現れるようですぞ!」
 被害者は店のバックルームに倒れ込んで意識を失っている。
「被害者の方が目を覚ました時、晴れやかな気持ちで新しい一歩を踏み出せるよう、我々が助力して差し上げねばなりませんな」
「まあ、かなり変わったヤツみたいだが、手を貸してやろうぜ」
 お願いしましたぞ、と万寿は頭を下げた。


参加者
東名阪・綿菓子(怨憎会苦・e00417)
クリス・クレール(盾・e01180)
木戸・ケイ(流浪のキッド・e02634)
タカ・スアーマ(はらぺこ守護騎士・e14830)
スピノザ・リンハート(忠誠と復讐を弾丸に秘め・e21678)
エルフリーデ・バルテレモン(鉾槍のギャルソンヌ・e24296)
レスター・ストレイン(デッドエンドスナイパー・e28723)

■リプレイ

●偉大なる海中食堂
 ポコポコとシャボン玉が吹き上がり、周囲には珊瑚礁、どこから持ってきたのと問いたくなるような大きな貝が並べられ、天井からはブルーライトがゆらゆらと光を落とす。
 食堂四方の壁にもガラスが貼られ、天井から水が流されているその様は、そのまま海中イメージ。
 悪くない。
 シチュエーションも悪くないというに……中央のカウンターに三叉槍を構えて仁王立ちしているマーマンが全てをぶちこわしていた。
 店長であるマーマンドリームイーターがじろりとにらみつけたのは、任務で訪れたレスター・ストレイン(デッドエンドスナイパー・e28723)だ。
 店長見立てでは、おそらく船乗り。相手のノリを試すように声をかける。
「人間か。よくこんな深海にやってこれたものだ」
 レスターはフッとニヒルに微笑む。
「俺は難破船の雑役夫。横暴な船長にこき使われていたけど、嵐の晩に人魚に助けられて一人生き残った。海賊船にいた頃に彫られた刺青がこれさ」
 そう右半身を示すと刺青が顔を見せる。
 店のコンセプトをよく把握しているのが分かると、店長ドリームイーターはレスターを快く迎え入れ、自分の前のカウンター席に座らせた。
 ドリームイーターが話をあわせながらおしぼりを渡すと、レスターはそれを受け取って手を拭く。
「海の中はとても快適で居心地がいいよ。人魚に助けられた時に海の中でも呼吸できる秘薬を分けて貰った。極彩色の珊瑚礁と熱帯魚に囲まれて毎日楽しく暮らしてるよ」
「では、こちらでの食事も容易いだろう。何でも注文するがよい」
「そうだな……カニを使った創作料理を頼めるかな。詳細は店長にお任せするよ」
「ム、イメージはないのか、イメージは!」
 気を悪くしそうなドリームイーターを前に、うーんと考え、1つ思い出す。
「海か……この前スピノザと海蛍を見に行ったな。夜の海は吸い込まれそうに青くて綺麗だったけど、この店も素敵だね。店主のこだわりを感じるよ」
 自慢の店内を褒められ、まんざらでもない様子。
「深海魚の酢の物をサービスにしてやろう、人間よ!」
「いや、それはちょっとやだな……」
 次に来店したのは、腰蓑を着けて釣り竿を持った木戸・ケイ(流浪のキッド・e02634)だ。
 一目で分かるコスプレを見たドリームイーターが喜ぶと、その後ろからお子様向けの丸っこい亀の着ぐるみを着た東名阪・綿菓子(怨憎会苦・e00417)が姿を現したのを見て、思わず息を吹き出した。
(「き、着ぐるみ来店とは……や、やるな!」)
 胸の中を熱くしたドリームイーターはグッと堪え、そのノリに応えてやる。
「よくぞ参った、さあ、注文を言うがよい!」
 レスターの背後にあるテーブル席に3名が座ると、おしぼりがやってくる。
 と、ケイが玉手箱風に飾り付けた封印箱から、亀の着ぐるみの中に入って完全に姿を見せていないボクスドラゴンのポヨンを取り出す。
 ドリームイーターは、一瞬ペット同伴? と考えたが、もしかして子供かもしれないと様子を見る。
 これがペットだと思われれば、衛生上飲食店の中に動物類の持ち込みはできない。それ以前、もし着ぐるみの中を確かめられてサーヴァントだとバレてしまえば、弱体化失敗。速攻戦闘に突入である。
 ケイはまだそこに気がついていないらしく、注文を出す。
「亀に連れられて帰る途中、腹が減ったんで定食屋に立ち寄ったところだ。竜宮城の豪華な料理で舌が肥えちまってるかもしれないぜ? 竜宮の食事にも負けない料理を頂こうかな」
 綿菓子も同じ物を注文。
 カウンターの中からじっとり様子を見つめているドリームイーターに聞こえるように、彼女は話し始める。
「今の時期って海中にクラゲが出るでしょ。クラゲって、人間が捨てたビニール袋っぽいゴミと区別がつかないじゃない?」
 ケイはポヨンとじゃれているが、綿菓子のトークは続く。
「カメ的には浅瀬のゴミは邪魔だし掃除したいのだけれど、間違って引っ掴むと怒られるのよね。酷く刺されるし……いや、クラゲは悪くないのよ。クラゲに似せてゴミを生み出すニンゲンが悪い」
 ケイはポヨンにきちんと座るように言っているが、綿菓子のトークは続く。
「せめて海じゃなくて海岸のゴミ箱に放逐して欲しいわ……聞いてますか、太郎さん?」
 ペットに見えなくもないし、子供に見えなくもないし、ドリームイーターがポヨンの存在をどうすべきか迷っていると、次にお客が入ってきた。

●上から下のお魚まで
「よくぞ来……ブッ!!」
 視線を投げた先、上半身水着の下半身人魚、腕のみ甲冑装備の鉾槍を担いだ、屈強な衛兵風コスプレをしたエルフリーデ・バルテレモン(鉾槍のギャルソンヌ・e24296)が現れた。
 彼女はビチビチと跳ねながらカウンター席に腰掛けると、ドンとゲンコツで机を叩いて注文をする。
「日々の王国の警備で体力精神力共に擦り減らしてるから、何か精のつく物を!」
 この店のコンセプトは海中料理店で、お魚になりきって食事をするというものだ。店長は小うるさく『海の中の食堂にやってきたキャラクター性』はチェックしていたが、コスプレをしてまでしっかり演出してくれとまでは思っていなかったので、この展開は喜ばしいイレギュラーであった。
 そんなこんなしているうち、また扉が開いて客が。
 ヒレやエラをつけ、ニッカーボッカーズ姿の土木業、クリス・クレール(盾・e01180)マーマンだ!
「マーマン店長、いつものやつお願い」
 しかもお得意さん風の設定でキタ!
 ドリームイーターが何とか立て直して頷くと、クリスはエルフリーデの隣に腰掛ける。
「いやぁ王国の壁の修繕は、なかなか鱗が取れるな」
 海の労働者も辛いのだという愚痴をこぼし始めると、エルフリーデもそれに乗る。
「こっちもそうだ。頑張って警備してるのに、王族からは駒の様に扱われて辛い」
 分かる分かると、お互い盛り上がっているうち、クリスが注文を付け加える。
「明日も仕事だからなあ……。何か精がつくもの……牡蠣ある? それ使ったスープが飲みたい」
 再びの来客。
 しゃなりとあらわれたのは、また人魚。海中王国の人魚姫風、ローザマリア・クライツァール(双裁劒姫・e02948)だ。
 今現在、クリスとエルフリーデが労働者の辛さで愚痴をこぼし合っているシーン、ここに王族が飛び込んだら修羅場じゃねえか! とドリームイーターは内心慌てている。
 労働者と1つ席を空けて腰掛けるローザマリアは、それとない気品を漂わせながら言った。
「今度、陸上との相互交流協定を仁右衛門島で結ぶことになったわ。ついては締結後にこの店も出すことになる丼飯を開発して貰えるかしら。鴨川は、この40年で陸上も海中も寂れてしまったから……」
 王族時事が。
「それはそうと、アワビの海亀脚鰭ステーキ風をいただけるかしら」
 一方で、豪勢な注文。さすが王族。
 よし、客はここまでだな、と一つ呼吸を置いた所で、扉の向こうで何やら声がする。
「私はエビ……私はエビ……」
 曇り硝子の向こう側、巨大な赤いシルエットが透けて見える。
 開いた先には、伊勢エビになりきったタカ・スアーマ(はらぺこ守護騎士・e14830)が!
 ドラゴニアンの種族特徴を生かした戦法、今後ドラゴニアン全般、巨大エビにしか見えなくなってしまう呪いにかかりそうなインパクト。
 無言のままカウンター席のはじっこに座られ、ジッとしながら髭をちょいちょい動かしているのを見ているうち、ドリームイーターは何かが吹っ飛んだ。
「注文を言うがよい、巨大なる伊勢エビよ」
「イカの刺身とあさりの酒蒸しを注文しよう」
 ニクイ演出。伊勢エビの好物だ。
「あまり元気がないようだが、伊勢エビよ」
「……最近のイセエビ界は結構大変なんだ。ウツボの野郎が俺たちと好みが被ってるもんでな。よく抗争が起きていて、私みたいな一般イセエビは困っているんだ」
 労働魚、一般魚、王族魚、従魚、家族連れ風魚、賊という社会からのつまはじき人間……。
「(す、すごい!! 何だこの展開!! 海中時事が自然に組み合ってて、すごいじゃないかコイツら!!)」
 そんな時、最後の客がやってきた。

●旅と故郷
 長髪のカツラと下半身に魚のヒレを装着した、スピノザ・リンハート(忠誠と復讐を弾丸に秘め・e21678)だ。
「邪魔するぜ……こりゃ珍しいな、同族がやってる店か」
 水中にいるような、流れるような動作を意識しながら、スイ~とカウンターの、労働者と王族の間に腰掛ける。
「メカジキVS巨大イカ、世紀の大決戦ソテーを頼むぜ」
「……!!」
 このテーマ性。
「イタリア風の味付けはできるか? 世界中を旅してきたんで、故郷の味が恋しくなってな」
「お主、旅魚か」
「俺は地中海の方から流れてきたんだ。ちょっと寒いけど穏やかな所だぜ。あの辺には遺跡があってな、いろんな種族が住処にしてる。メカジキと巨大イカの戦いを中から観戦したっけなー」
 ドリームイーターは、客同士がわいわいと会話を始めると、一人背を向けて厨房で調理を始めた。
 パッとシャボンがはじけたような間……ドンドンドンと、連続してケルベロス達の目の前に料理が並んだ。
 レスターの前には、割れた船をなぎ倒すホタルイカの群れパスタが。白いチーズの上あぶり焼きされたカニと、渦を巻くイカスミパスタは、海に投げ出された悲劇を表現しているようだ。そしてやっぱり深海魚の酢の物はサービスでついている。
 ケイとポヨンと綿菓子の前には、鯛と鮃のカルパッチョを中心に、昆布出汁で作ったドレッシングが和風の揺らめきを魅せている。
 お疲れのエルフリーデには、白子をカラッと揚げたフライに、牡蠣醤油とマヨネーズをあえた物。もちろん醤油のしょっぱさはご飯にあう。
 やっぱりお疲れのクリスは鍋。スープは牡蠣ベースで黒目の味噌で味をつけ、鷹の爪でピリッと辛口。スープを楽しんだ後は新鮮な牡蠣をしゃぶしゃぶ。最後は卵でとじておかゆにしてしまおう。
 ローザマリア。アワビのフタを開けなければ、はみ出た手足がまるで海亀のよう。フワフワのアワビを軽く焼き、バターと醤油をハーブで調えたソースを貝の中になみなみ注いだステーキだ。ワインにあう!
 タカは定番のアサリの酒蒸し。だが汁多めで、醤油風味のお出汁つき。白米もあるのでご飯にかけてもよし。サッパリしたイカの刺身は透明で、すり下ろしたばかりのワサビで、ご飯と共に召し上がれ。
 スピノザはこれだ。メカジキをナスでくるみ、オリーブオイルと塩胡椒、香草を加え、チーズをカリッとするまでオーブンで焼いたものに、細く刻んだイカを揚げ、バジルで味付け。それをイカのサイズに組み立て直す! トマトソースが夕日の沈む地中海に見えるようだ。どちらがこの海に沈むのだろう。
 なまじちゃんとした料理が出て来たが、彼らはそれを口に運ぶ。
「うむ……美味い。素材の味が良く出ているし、何よりネタが新鮮だ」
 寡黙なタカが口を開いた。そして箸が止まらない。
 クリスも舌鼓を打ち、笑顔で平らげると、ケイも続く。
「竜宮城はこの板前をスカウトすべきなんでない? なあ、亀さんや」
 スピノザは故郷の味を思い出し、本気で懐かしくなると、深いため息をついた。
「……美味かった、ありがとな」
 そしてタカが最後をしめた。
「マーマン食堂に入って良かった」

●海に幸あれ
 マーマンドリームイーターはドン! と包丁をまな板に突き立て、戦闘態勢に入る。三叉槍を手に取ると、カウンターから飛び出した。
 即座にクリスが立ち上がり、皆を背後に構えて、第一波の攻撃を受け止める。
 前触れもなくいきなり開始された戦闘、ブレイズクラッシュをたたき込むと、クリスの身体の線をなぞるようにケイの雷刃突が敵にめり込んだ。
 腕を振り回そうと一歩前に出た敵の足に、スピノザのTable Limitが炸裂する。
 そしてエルフリーデがGeirscogulで敵の三叉槍を抑え、稲妻突きでそれをはじき返す。
 綿菓子とポヨンがクリスの回復をすると、敵がそちらを向いた。
 タカがその視線の間に入り、絶空斬で断ち切る。
「一応、礼を言っておこう。なかなかうまかったと」
 ローザマリアが敵の消耗を感じ、高速劒『紊雪月花・風華散舞』で畳み掛けると、レスターが仕留めた。
「くらえ終止路の死十字、ここがデッドエンドだ!」
 バスターライフルから発射された弾丸は、吸い込まれるようにドリームイーターの心臓に命中し、風圧でかき消されたように、その存在も消し去った。

 店内をヒールしながら、クリスが残念そうに呟いた。
「料理は美味かったんだけどなぁ……」
 頭のコブを治療してもらっているマーマン店長が、情けない顔をしてそれを見ている。
 レスターが、そんな店長をなぐさめた。
「閉店は残念だけど、楽しかったよ」
「うう、世は、気絶していて、何が起きていたのか分からなかった故、何だかみなさんが……あ、お主らが、楽しんでくれていたのを見ると、むしろ世が体験してみたかった的な……」
 綿菓子も言う。
「波の下にも何とやら~なんて言ったもんだけれど、そこに食堂を持ってくるってセンスはなかなか良いと思うのよね。でも閉店か……やっぱり浪漫じゃ飯は食えないのね、食堂なのに」
 スピノザも頷く。
「あんたの店のコンセプト、俺は好きだぜ。料理も美味かったし、その着ぐるみは接客向きじゃないかもしれねーけど……不景気ってのは世知辛いな」
「海外でウケそうな店だよな。海外出店……いや、逆に呼び込んだらどうだ? なりきるのが苦手な人もいるだろうから、そういう人を積極的にフォローしてやれば万人が楽しめる店になるんじゃないか?」
 ケイもポヨンを横に同意しており、ローザマリアもそれに付け加えてやる。
「ここは外房でダイバーよりもサーファーが多いから、その辺を堅実に狙ったカフェとかの方がいいと思うわ。頑張って、この街をこれからも盛り立ててあげてね?」
「もう一度店を開かないのか? やる気があるんだったら、客として行く」
 どう見ても伊勢エビにしか見えないタカをじっと見つめていたマーマン店長に、スピノザがケルベロスカードを渡した。
「再起するなら応援するぜ」
 暖かい人達だ。
 店長はうるうるし始めると、涙で本当に海の中のようにゆらめく店内を名残惜しそうに見渡した。
 彼がどうなるのかは、ここでは分からないまま終わるが、渡されたカードはしっかりと手の中にある。
 帰る際、レスターがぽつりと言った。
「海が好きだという気持ちは、十分伝わってきたね」
 いつか、友の生まれた故郷の海を見てみたい。そんな気持ちにもさせられた。
「ね、近くの道の駅で何かお土産買って行かない?」
 海中王国の人魚姫は相変わらずのようで、ご当地を大切にしている。
 そんな今日の任務は、美味しいお魚料理に満腹で大団円です。

作者:荒雲ニンザ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年10月3日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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