エクスガンナー・ベータ~襲撃第二戦

作者:のずみりん

 茨木、鹿島工場地帯。
 その一角にある製鉄工場に、エクスガンナー・ベータと彼の配下たるガンドロイド部隊は現れた。
「占領は終わりましたね。結構。ではここからが本題です」
 従業員らを駆逐し、工場を占拠、資材の搬出を開始する。
 指揮官型エクスガンナーとしての性能に加え、ここまで経験を蓄積してきたベータにとって、それは赤子の手をひねるようなこと。本当の問題はここからだ。
「指令、ゼロ・トゥー・シックスを発行。さて……どう戦い抜きますか」
 ケルベロスは確実に妨害してくる。これも経験から学んだことだ。
 ベータは自らを律するように白スーツの傷痕に触れる。その奥に穿たれた傷は既にヒールし終えているが、前回の戦いでもガンドロイド三体が撃破され、残る配下は九体。
 補給はできず、エクスガンナー計画再始動への道程は順調とは言い難い。
「守って逃げ切るのも難しいか……いや……」
 ベータの瞳が赤く輝く。飛び立ったドローンはガンドロイドたちにどのような命令を伝えたのか?
 見送るベータの横顔は気持ち人間臭く、楽しそうにも見えた。
 
 ダモクレスの移動拠点『グランネロス』撃破後、計画再始動のために行動を開始したエクスガンナー。
 その生き残りの一人『エクスガンナー・ベータ』が再び動き出したとリリエ・グレッツェンド(シャドウエルフのヘリオライダー・en0127)は報告した。
「今回、ベータと配下のガンドロイド部隊は鹿島工場地帯の製鉄工場を狙ってきた。これまでの交戦で戦力は順調に削れているが、敵も警戒を強めているようだ」
 ベータと共に確認されたガンドロイドは九体。以前に京浜地域の工場を襲撃した時と同様、半数……四体を強奪品の運搬、残り五体が運搬部隊の護衛に当たっているという。
「襲撃予定の工場から一般人は避難済だ、皆にはベータ撃退に全力を尽くしてほしい……どう攻めるか、悩ましい所ではあるが」
 作戦は二つ。
 運搬部隊が機械部品を運び出し始めた後を狙えばベータと護衛のガンドロイド五体だけと戦闘できるが、戦闘時間は搬出完了までの十分ほどになる。
 襲撃を早くしたり、運搬部隊を攻撃すれば戦闘時間を延ばせるが、ベータと九体のガンドロイド全員を相手にすることになる。
 今の戦力比でベータを倒すことは、難しいが不可能ではない。一方でエクスガンナー計画の再開までは、まだ猶予があるという見立てもある。
「今回もガンドロイド部隊を狙って戦力漸減に徹するか、危険を冒してもベータを撃破するべきか……どちらにしろ戦うのは皆だ、判断は任せる。敵戦力と状況をみて決めて欲しい」
 
 リリエはそういうと、ここまでで判明しているエクスガンナーの戦力を解説する。
「白スーツの男……エクスガンナー・ベータは指揮官タイプのダモクレスだ。手にしたライフルによる後方からの制圧射撃、そして装備された二種のドローンによる支援を得意とする。これに加え、配下のガンドロイドが九体。ガンドロイドはマシンピストルと呼ばれる連射型の大型拳銃を装備している」
 これまでの戦いで敵ドローンの能力はだいぶ判明している。治癒タイプのものはほぼヒールドローン、指揮・管制タイプ……ドミナンスドローンと名付けられたドローン、主に配下の命中精度を強化するらしい。
 原理は異なるが、効果としてはオウガメタルの『メタリックバースト』が近いだろう。
「ガンドロイド部隊はベータの援護を受け、連射でダメージを重ね、追い込んだところに必殺の一撃を当ててくる。そういう風に作られたといえばそうなのだろうが……相性のいい、厄介な組み合わせだ」
 敵の戦力は順調に減っているが、警戒も比例して増している。けして油断はできない。
「エクスガンナー計画の再始動は阻止しなければいけないが、無理をしてやられては元も子もない。気を付けてくれ、ケルベロス」


参加者
ジャミラ・ロサ(癒し系ソルジャーメイド・e00725)
メリッサ・ニュートン(世界に眼鏡を齎す眼鏡真教教主・e01007)
アリシア・メイデンフェルト(マグダレーネ・e01432)
ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)
旋堂・竜華(竜蛇の姫・e12108)
フォトナ・オリヴィエ(マイスター・e14368)
神宮・翼(聖翼光震・e15906)
祝部・桜(残花一輪・e26894)

■リプレイ

●不倶戴天
 もはやどちらも、誰も驚かなかった。
「お久しブリーフであります、ミスター・ベータ」
「これは懐かしい顔ぶれだ、ジョーク好きのレディ」
 工場の圧延機械を挟んでの何気ない挨拶。ジャミラ・ロサ(癒し系ソルジャーメイド・e00725)とエクスガンナー・ベータ。
 顔なじみの様に掛け合い、しかして友情はかけらもない。
「ったく、せっかく奇襲仕掛けたんだから少しは驚けよな!」
「お互い、そんな時期でもないでしょう?」
 不満そうにロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)が飛び乗ったコンベアに銃撃が爆ぜる。言いながらも、既に彼は再跳躍。身をかわすと同時、消防車を模したアームドフォートが外骨格の如く装着されていく。
 研ぎ澄まされた殺意の応酬は時に理屈を超えて理解しあう。
『奴ならばここに仕掛けてくる』
「先日は大変お世話になりました。お陰様で、殺したくて殺したくてたまりません」
「いえいえ。こちらこそ、あなた方が憎い事このうえない。家も補給も失ってごらんの有様でね……!」
 銃撃と幽鬼の鎌が交差し、祝部・桜(残花一輪・e26894)とベータは口元だけで攻撃的に笑いあう。情の欠片もない相互理解、その感覚を故人は不倶戴天と呼んだ。
「わお、結構なイケメンじゃない? お邪魔しまーす☆」
 ともすれば刺し違えそうな勢いに水入りしたのは神宮・翼(聖翼光震・e15906)の声だった。割り込みは肢体ごと、艶やかな手足がガンドロイドたちの銃撃をするりと抜けて砲を通す。
「ちょっ、翼ちゃん!」
「わかってるってば。油断禁物、でしょ?」
 ロディを軽くいなしてのアームドフォートの砲撃が、ベータに距離を離させる。
「まったく、なかなか厄介な方が増えてきたようだ」
「お初のところ、どういたしまして。尻尾巻くなら今のうちよ?」
 飛び退くベータをフォトナ・オリヴィエ(マイスター・e14368)の法術が追撃した。
 空海の狭間に住む神竜から借り受けたという猛き風がバランスを崩し、ガンドロイドたちをカバーに動かさせる。
 機械に弾け、火花を散らす弾幕。ケルベロスたちもまた、アリシア・メイデンフェルト(マグダレーネ・e01432)とメリッサ・ニュートン(世界に眼鏡を齎す眼鏡真教教主・e01007)が身を前進させて壁となった。
「対峙するのは初めてですが、その力量の多寡は指揮一つからも見て取れますね……しかし、我々も臆するわけには参りません」
「えぇ、恐るべきサングラスです。ですが私とて眼鏡のはず。眼鏡力の勝負で有れば相手に遅れを取るとは思いません」
 巨大な眼鏡じみた盾をかざしてメリッサは分析する。何かわからないが凄い説得力だ。
「え、えーと精度は大丈夫そうね……竜華さん!」
 翻訳しながらフォトナが旋堂・竜華(竜蛇の姫・e12108)に呼びかける。重量級の武装を苦も無く手にした戦姫は既に、ベルトコンベアの川へと踏み込んでいる。
「心得ました。殿方に離れられたのは残念至極、ですけれど……この戦場、楽しませて頂きましょうか」
 敵陣に飛び降り、腕に絡めた鎖をぺろりと一舐め。艶やかな仕草と共に八岐の鎖が大蛇の如く放たれた。

●対抗する力
 ガンドロイドを縛る鎖に、うなりをあげてドローンが飛ぶ。
「部下にコナをかけるのは遠慮願いましょうか、レディ。指令ゼロ……」
 体当たりで鎖を振りほどいたドミナンスドローンはそのまま、ベータの瞳から指令を中継する。
「これが例のドローンだね……と!」
 打ち合う拳を引くフォトナを銃弾がかすめた。龍神に加護された外套が弾け、健康的な二ノ腕に一筋の朱線。指揮管制された攻撃は正確さを明白にあげている。
 だが、これで三度目。ケルベロスたちも黙って見続けていたわけではない。
「『受け』ばっかりは趣味じゃないんですよ、ね?」
 鎖を引き寄せる竜華は上空、不快な音をかき消す羽ばたきへと呼びかける。
「む……この兵装」
「着想はありました。しかし切っ掛けがなかった」
 二者が競い合う時、進化は急速に始まる。ジャミラからドローンをはばたかせる『Nの揺籃』……それはまさにベータと彼の能力から生まれた、対であり、抗するためのグラビティだった。
「ミスター・ベータ、あなたへの対抗策を練る過程で行き着いた形……それがこの『ナイチンゲール』であります。返礼として、その性能をいの一番にお目にかけましょう」
 小鳥型のドローンの飛翔と共に、戦場へ薄く霧が広がっていく。その正体は傷を塞ぐ医療用ナノマシンであり、敵を侵食するウィルスでもある。
「ほらほら、うかうかしてられないよぉっ!」
 アームドフォートが奏でる音に合わせ、翼の四肢が激しく舞う。ナノマシンの霧を吸い込んだ掌がガンドロイドを叩くたび、足がドローンを払うたび、ガンドロイドに与えられた鋭い狙いが消えていく。
「よーし。続くぜ翼ちゃん!」
 かき回された戦線にロディは肩にラダーを模したアームドフォートの砲塔を向ける。
「ターゲットロック! 奔れ、青い流星!」
 掛け声と共に『ファイヤー炎神』から放たれるのは激流にも似た超低温の冷凍ビームだ。果敢に、だが迂闊にも足を止めて反撃を試みたガンドロイドが直撃を浴びて白く霜を帯びていく。
「く、支援……」
「邪魔はさせませんよ。シグ!」
 踏みとどまらんとガンドロイドたちが掃射をかけるが、そこにはアリシアが割り込む。ボクスドラゴン『シグフレド』からインストールされる属性、そして自らの扱う破壊のルーンの力をもって受け止め、破剣の力を込めて血より生れた霊槍を振るう。
「極光よ収束せよ。我が敵を貫き、我が意を成せよ!」
 弧を描く殺戮の刃が銃弾の流れを分断する。その空隙を飛び越え、天井を走る鉄骨に鎖を絡ませて飛びだした竜華が仕掛けた。
「炎の華と散りなさい……!」
 冷気にもがくガンドロイドを、上方から灼熱の鎖が締め吊るし上げる。入念な拘束から落下の加速を乗せた必殺の一打『大蛇・灼華繚乱』がガンドロイドを綺麗に叩き潰す。
 そして身を引いたもう一機にも目ざとく桜の拳が迫る。
「これで、二つ」
 オウガメタル『レーヴェ』の質量の拳が、獅子の如き勢いでガンドロイドの腹へと食らいつく。貫き、引き抜く。爆発。
 既に少女は次の挙動へと移っていた。

●刃は届くか
「慢心、というのか……」
「不本意ですが、長い付き合いですから」
 桜の答えにベータの表情が曇る。この構成ならばジャマーを配置する意味は薄い。中衛を置くならばキャスターの位置だろうとケルベロスたちは読み、その布陣は的中していた。
「あなたは強い、強大なサングラスです。ですが、配下の方はどうでしょう? そこに綻びがあります」
 メリッサの眼鏡盾が銃撃を弾き、気合の叫びでガンドロイドを突き飛ばす。精度に特化してくるならば、動じぬ盾を用意すれば事足りることだ。
「世界に眼鏡を、眼鏡に光を! 至尊なるレンズの輝きよ、天より降り来たる邪悪を砕き一切衆生を救い給え!」
 眼鏡真教の祈りと共に殴打用眼鏡……第三者視点的にはブラスナックルを嵌めた拳が最後の護り手を撃つ。
 収束された眼鏡力は最早刃と表現して相違無く、燃え上がる眼鏡愛を撃ち込まれた傷口は高熱トーチで焼き溶かされたように延焼する。
「これがコンタクトであれば楽勝だったでしょうに!」
 だが、返される銃撃。メリッサは踏み込んだ足をすかさず戻す。
 ガンドロイドへの傷は浅く、踏み込んだ後には両断されたヒールドローンの残骸があった。
「……ドローン、未だ健在であります」
「本当に……ガードが固いんだから」
 ジャミラの声が警戒する。
 鋼鉄の共生体に戻ってもらい、ぼやくフォトナはアームドガーダーからライトニングロッドを引き抜いた。両手に構えた避雷針を突き刺す先は、敵の開いた傷口。今度こそ間に合うまい。
「そういうものに価値を見出すのでしょう? 貴方たちは」
 火花を散らすダモクレス。だがベータはひるまず口撃を返してくる。磨きのかかる伊達男ぶりは何処で学んでくるのか? ダモクレスの表情はいつものポーカーフェイスを取り戻していた。
「援護が……見捨てようってのか!? くそ!」
 異変を察知し、ロディが叫ぶ。愛銃『ファイヤーボルト』の銃床で殴り倒された前衛には援護の一つもない。中衛の二機の射撃がアリシアたちへ、そしてベータの制圧射は打撃を重ねる桜たちへ。
「何を読んだか知りませんが……アナタ方の計画は、ここに潰えさせましょう」
「その言葉、どこまで本気ですかね? 勝ちますよ、今回も」
 よろめくガンドロイドの肉体はもう戦闘中の治癒では直しきれない深刻さだ。突進で跳ね飛ばした姿にアリシアは敵の意図を相互に読み解いた。
「助からぬ配下は捨て駒に、時間を稼ぐ……!」
「大した指揮官ぶり、ねっ!」
 揶揄と共に突き出す翼の掌を絡め受けるベータ。双方の顔がぶつかり合う。
 触れあった端正な顔の頬は冷たく、激闘に上気した少女の熱を奪ってくる。
「それが指揮官というものです」
 無機質な殺意の銃撃が少女を襲った。

●因縁は積み重なっていく
 ベータの射撃がジャミラのナイチンゲールを叩き落としていく。的確に、攻めを担当するものから援護を奪っていく。
「話には聞いてたけど……やっぱ強いな」
 ロディは苦々しく呟くガンドロイドは中衛の残り二体だが、前衛が粘る隙に随分と態勢を立て直されてしまった。
 翼の妨害がなければここまで倒しきるのも困難だっただろう。そしてここからはそれもなくなる。
「後は任せとけ、翼ちゃん! 仇は撃つ!」
 左に『ファイヤー炎神』の砲塔を抱え、右手に『ファイヤーボルト』を合わせる。変則的な二挺持ちからの跳弾射撃がガンドロイドを撃ちすえ、倒れた仲間を追撃から守る。
「エンチャントは引き継ぎます、ジャミラ。火力を」
「委細合点承知の助であります。電力、集中……!」
 時計が残り二分を告げる中、ジャミラの『エレキブースト』が音をあげて生命の力を呼び覚ます。その輝きはアリシアの授けるルーンと重なり、強大な破壊と破剣の力を攻め手へと与えていく。
「我を守護せし十三の祝福、抑止を破壊する力よ、顕現せよ。我は以て邪を打ち砕く者なり」
 支援を受け、シグフレドも攻撃に回る。もはや倒される懸念が必要な時間ではない。連射される拳銃弾に毛皮を汚されながらも、決死の体当たりがガンドロイドをよろめかせる。
「このまま、押し倒させてもらう!」
 ドローンの支援がないのを確認し、フォトナが腰だめにライトニングロッドを突きこむ。今度は装甲越しだが、エレキブーストを重ねがけした高圧電流だ。
 連続する光と音が、声もないガンドロイドに変わって悲鳴を喚き立てる。救出せんとベータ、ガンドロイドの弾幕が封鎖にかかるが、桜は意にも介せず突っ込んだ。
「痛みますか? では冷やしましょう、死ぬまで」
 銃弾と血にまみれがらも、突き立てられる惨殺ナイフの技には寸分の狂いもない。達人のナイフ捌きが胸部装甲の死角から、動力炉を正確についた。
「必ず。逃すものか。次」
「いいえ、タイムアップです。ご機嫌よう……」
 睨み、踏み出す桜に涼しい顔でベータは殿の構えを取る。
 だが、それが出来たのは一瞬。
「もう少しだけ、いいでしょう……?」
 勝ち誇るダモクレスの脚を掴が掴まれる。
 竜華の操る百華大蛇、八岐のケルベロスチェインがベータを無様によろめかせる。
「こ、この……!」
「挽殺剣・砕き眼鏡!」
 解くまで一瞬。メリッサの眼鏡鋸が炸裂するまでは十分。
「……もらいましたよ」
 ピシリ、と音。ベータのサングラスに亀裂が走る。
「下らぬ事……いや、この説明できぬ腹立たしさは……!」
 割れたサングラスの向こう、浅く避けた表皮から血とも油ともつかぬ液体が流れた。
 大した傷ではない。だが精神に与えられた傷はそれなり以上のはず。
「……次で決着だ、ケルベロス」
「See you again……」
 意図してか、怒りが漏らしたか。ベータの捨て台詞に翼は地に倒れたまま言葉をかける。
 言葉通り、ベータは再び現れるだろう。そして次が最後となるはずだ。

作者:のずみりん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年10月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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