●なまら好きだべさ!
そこは、北海道札幌市のとある小さなライブ会場。
「「「せーの、るーなりーん!!」」」
「皆来てくれて、なんまら嬉しいべさ!」
とあるビルの一室で行われているのは、どさんこロコドルとして活動する星味・るなのライブ。その日は20人ほどのファンが集まっていた。
るなは精一杯彼らの為に歌い、踊る。彼女の魅力は地元密着型のアイドルということもあるが、護ってあげたくなるような愛らしさが魅力だ。
「るなりんは、皆のことがなまら好きだべさ!」
地元愛に溢れるるな。まだ、無名な彼女だが、北海道を盛り上げようと、小さなイベントにちょくちょくと参加している。
「したっけ、次の歌さいくよ!」
そこで、入り口から続々と現れたのは、10名ほどのオーク達。それらを率いていたのは、白いスーツに帽子を被ったオークだ。
「いや、地元愛溢れる素晴らしい人だ。わが主の『ドラゴンハーレム』に相応しい」
そいつは拍手しながら壇上へ上がり、「ギルビエフ・ジューシィ」と書かれた名刺を差し出す。
そして、ギルビエフが手で合図すると、客席のオーク達も壇上へと上がらせる。
「是非、ハーレムで繁殖に励んでいただきたい! ……もちろん、ギャラも拒否権もありませんがね!」
「ひっ……」
汚らしい笑みを浮かべるギルビエフに、るなは怯えて壁際へと後ずさりした。
そんな彼女を護るように、男性ファン達がオークの邪魔をする。
「おい、るなりんを護るんだ!」
「豚どもにるなりんの想いが屈するわけないべさ!」
口々に頼もしい言葉を発して壁となるファン達だが。相手はデウスエクス。一般人のファン達が勝てるはずもなく。
「や、止めてほしいべさ……」
怯えるるなに、オークどもの触手が伸びていく。ギルビエフはその様子を満足そうに眺めていたのだった。
とあるビルにやってきたケルベロス達。
ビルの一室はイベントスペースとなっており、小さなライブが行うことのできる広さがある。
「皆、ようこそ」
壇上に現れる、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)。ケルベロスの中から何か一芸とリクエストがあったが、特に披露できる歌や踊りはないよと照れながら彼女は返す。
「北海道のロコドルがオークに狙われるって聞いたの~」
次に、村本・寛子(可憐なる桜の舞姫・e01068)が声を上げる。ロコドルは、ローカルアイドル、地元に密着して活動するアイドルのこと。リーゼリットはうんと頷き、状況説明を始めた。
「ギルビエフ・ジューシィというオークが、各地の地下アイドルを無理矢理スカウトして、ハーレムに連れ帰るという事件が起こっているようだね」
ライブを中止などすれば、敵は別のライブ会場を襲撃してしまう。敵の活動を阻止できなくなる為、オーク達が現れてから戦闘に持ち込む必要があるだろう。
「ロコドルのライブ会場にギルビエフ・ジューシィは10体のオークと共に突如現れて、ステージ上のアイドルを襲うようだよ」
彼はアイドルだけを攫って去っていこうとするが、抵抗する者は躊躇なく殺害していくらしい。
配下のオークに関してはアイドルを攻撃することはないが、会場にいる他の人間……男性ファン達は問答無用で手にかけていくようだ。
だが、ファンは基本的にアイドルを庇おうと動いてしまう。
「るなのファンである男性達は、ケルベロスがいたとしても、命がけでアイドルを護ろうとするよ」
彼らを避難させる為には、「同じアイドル愛を持つ仲間だと思って貰う」、「その幻想を打ち砕く」、「むしろ自分のファンにしてしまう」……といった、ちょっと特殊な説得が必要となるだろう。
説得さえ成功すれば、集団行動が得意な彼らは迅速に避難してくれるはずだ。
「あと、オーク達の戦闘能力だけど……」
オークとの交戦となった場合、敵は背中から生やす触手で襲ってくる。
触手攻撃は3パターンあり、締め付け、叩きつけ、乱れ打ち。比較的攻撃特化のグラビティを多用するようだ。
「オークを率いるギルビエフ・ジューシィは、戦闘が始まると、いつのまにか姿を消してしまうようだね……」
残念だが、こいつの対処は後回しにすべきだろう。この場はアイドルが攫われないようにすること、そして、男性ファン達を殺させないことが先決だ。
「ライブ会場は、立ち見で最大でも50人くらいが入れる場所かな」
丁度今、説明をしているこの部屋の大きさくらいらしい。話を聞くメンバー達が集まるだけでも、かなり空間の狭さを実感する。
そのイベントスペースは建物の3階にある。窓はイベントスペース入り口外とステージ奥にあるものの、イベントスペース内には設置されていないようだ。
人が少なければダンスを踊れる程度の広さだが、突入直後は男性ファンとオークでごった返す状況だ。手早く男性ファンの対処をして、戦況を改善させたいところだ。
説明を終えたリーゼリットは、最後にこうケルベロス達へと告げる。
「オークのスカウトなんて、冗談じゃないよ」
そいつらに連れ去られた日には……、どんな目に遭ってしまうかと考えると、リーゼリットも身を震わせてしまう。
「どうか、このどさんこアイドルに救いの手を。よろしく頼んだよ」
彼女は改めて、ケルベロス達にオークの討伐を願うのだった。
参加者 | |
---|---|
グレイ・エイリアス(双子座のステラ・e00358) |
阿良々木・蘭(できそこないの邪竜導士・e00666) |
村本・寛子(可憐なる桜の舞姫・e01068) |
ファン・バオロン(終身譲路不枉百歩・e01390) |
梅林寺・マロン(インフィニティポッシビリティ・e01890) |
アーティラリィ・エレクセリア(闇を照らす日輪・e05574) |
響命・司(霞蒼火・e23363) |
ルチアナ・ヴェントホーテ(波止場の歌姫・e26658) |
●アイドルもファンも護らないと……!
ヘリオンで現地に向かうケルベロス達。
ルチアナ・ヴェントホーテ(波止場の歌姫・e26658)は今回の一件を聞き、改めてオークの下劣さを知る。
「オークと戦うのは初めてだけど、こんなに堂々とひとさらいをしているのね」
「ふむ……、確かにアイドルならば容姿にハズレはないじゃろうし、ステージ狙いは忌々しいが的確じゃのぅ」
そう語るのは、頭の上に燦然と輝くヒマワリが印象的なアーティラリィ・エレクセリア(闇を照らす日輪・e05574)だ。
「とはいえ、好きにさせる訳にはいくまいて」
「連れ去られたら、何をされるか……。そんなことさせないよ」
アーティラリィに同意し、ルチアナはぐっと小さな手を握る。
「故郷にも等しい札幌で、郷土愛溢れるロコドルに狼藉なんて絶対許さないの!」
現在、東京を拠点に活動するアイドルグループの最年少センター、村本・寛子(可憐なる桜の舞姫・e01068)。育ちが北海道である彼女は、今回の一件を見過ごすことはできなかった。
そんな寛子やロコドル達をオークどもの悪手というか、触手から守るべく、阿良々木・蘭(できそこないの邪竜導士・e00666)も参加している。一見、女の子にも見える彼は立派な男の子だ。
「『ドラゴンハーレム』などと巫山戯たことを……。オーク共は一匹残らず焼却処分させて貰おう」
武人であるファン・バオロン(終身譲路不枉百歩・e01390)は、その殲滅を誓う。
(「ファンだけじゃ、るなりんのファンの人とファンさんと間違えそうだね」)
こちらも可愛らしい男の子の梅林寺・マロン(インフィニティポッシビリティ・e01890)がふと考えていた。
「一生懸命がんばってるるなりんをさらうとか許せないからね。オークには痛い目見てもらうよ!」
ファンが同じ旅団で信頼している、グレイ・エイリアス(双子座のステラ・e00358)。ややオタク気質な彼女だけに、オークからアイドル達を守りたい気持ちはひとしおだ。
「るなりんやそのファンの人たちを護って、ライブを成功させよう」
「……ああ」
マロンもまた、人々の防衛に力を注ごうと誓う中、響命・司(霞蒼火・e23363)はややダルそうに返事をする。
その間にヘリオンは津軽海峡を越え、北海道へと入っていた。
●汚い触手の握手会?
北海道札幌市。
この地のとあるビルにあるライブ会場で開催されるイベント。当日販売のチケットがあった為、メンバーはそれを購入して中へと入る。
「皆来てくれて、なんまら嬉しいべさ!」
壇上でファン……観客に向けて手を振る、星味・るな。まだ初々しい彼女は北海道の為に頑張るどさんこロコドルだ。
「「「せーの、るーなりーん!!」」」
グレイはいつの間にか会場になじみ、るなを応援している。寛子は持ってきたラジカセで、るなのデビュー曲『なまら好きだべさ!』をリミックスした楽曲を流してファンアピールする。
さらに、彼女は隠し味として、北海道出身の有名アーティストの楽曲のサンプリングも流し、北海道愛を示しつつ、隣人力も手伝って観客と意気投合していた。
るなが爽やかな汗をかきながら精一杯歌う中、オークどもがぞろぞろと入り口から現れた。
「地元愛溢れるアイドル……、わが主の『ドラゴンハーレム』に相応しい」
「ひっ……」
オークを引き連れた白スーツのオーク、ギルビエフ・ジューシィの呼びかけに、るなは怯える。
「るなりんを護れ!」
それらに対抗しようといきり立つ観客の前で、蘭がアルティメットモードに変身する。
「ここはボクたち、親衛隊に任せて」
蘭はマロンと共に、オークと観客の間で壁となる。拳を振り上げる観客に触手を伸ばそうとすると、ボクスドラゴンの小白龍が触手を受け止めた。
しかしながら、るなを豚から守れと観客達は鼻息を荒くし、引く様子を見せない。
(「アイドルを守ろうとする気概は、嫌いではないがの……」)
るなを護衛してもらいつつ、ファン達にこの場から避難してもらおうと考えたアーティラリィ。だが、目を光らせたオーク達を突破し、るなを連れ出すのは難しい。
「聞いてほしいの!」
そこで、ファン達に呼びかける寛子に触手が伸びていくが、蘭が身を投げ出してその叩き付けを受け止める。
「ここから先は通さないよ」
蘭はファミリアロッドを構え、オークを牽制した。
「るなちゃんの郷土愛とファンの皆のるなちゃん愛は、等しく北海道に必要なの!」
寛子による観客の説得は続く。向こう見ずにオークに立ち向かったとしても、それは無駄死にでしかない。
「あなたたちが死んじゃったら、るなちゃんは立ち上がれなくなるの! だから、生きのびてなの!」
その間にも、ケルベロスのファンは頭上に槍を投げつけた直後にその槍を分裂させ、オークへと降り注がせる。ファンは勇ましく戦うことで、アイドルを護りきるという姿勢を見せようとしたのだ。
「るなちゃんは守るし、オークもやっつけるの!」
「で、でもよ……!」
寛子の呼びかけは続く。観客達は現実を突きつけられながらも、今なお、壇上で震えるるなの姿に腹立ちが収まらず、攻め入ろうとする。
「アイドルを危険に晒させはせぬ……。この場は我等に任せてくれい」
現状、るなはオークに囲まれている。単騎で攻め入ったファンにるなを任せ、アーティラリィは観客をなだめた。
さらに、店内スタッフなどに退路の確保など動いていた司が彼らの説得へと当たる。
「適材適所ってあるだろ? 俺達はこんな事が起きた時に対処する役目。お前達はるなりんを応援して守る役目。ほら、怯えてるだろうが」
改めて、怯えるるなへと視線を移す観客達。彼らの憤りはるなにも伝わっているのだと、司は観客に自認を促す。
「1ファンとして、このライブを台無しにさせる訳にはいかないだろうが」
るなが本当に望むのは、ライブの再開、そして成功のはずだ。
「……わかった」
冷静さを取り戻した観客達はこの場をケルベロスへと託し、外へと移動を始める。
彼らを見守るルチアナは、オークの攻撃を警戒する。その上で、ルチアナもまた、アルティメットモードへと移行して人々を元気付けつつ、退路を示していたようだ。
「すっごいぬるぬるする!」
説得、避難の間も、グレイは身を張ってオークの触手を止める。それがファンに向くことがあってはならないのだ。
ファンが一通り部屋の外へと出たのを確認し、マロンはキープアウトテープを入り口に張り巡らす。
「これで、るなりんたちが出てくる心配はないよ」
マロンが仲間達に呼びかける。後はるなが攫われぬよう護りながら、オークを倒すのみだ。
一方、司は姿を消そうとするギルビエフを見つけ、呼びかけた。
「こんな事を続けていれば、いつかはテメェの首元にケルベロスの牙が喰らい付く。楽しみにしてろ」
「くくく、それではごきげんよう」
ギルビエフは含み笑いをしつつ壇上奥へと消え、窓ガラスを割ってビルから去っていった。
残されたオークどもはるなを確保しようと触手を伸ばしていくが、司がそれを許さない。司は鎖を床の上に這わせて魔方陣を描く。
「させねぇよ。俺達を無視する事が出来ると思ってるのか」
盾を張りながら、真剣な表情で言い放つ司を倒すべく、オークは尚も触手を振るうのだった。
●強引な触手はお断り!
触手を伸ばしてくるオーク達。ほぼ間違いなく、邪魔するケルベロスの殲滅、そして、るなの捕縛を狙う。
しかしながら、ケルベロスもそれを是とはしない。ルナを護る為にとグラビティを行使し続ける。
「遍く命よ、全て我が糧となれ……!」
己のうちに秘めたドラゴンの暴威を、ファンはほんの少しだけ解放する。そして、敵対するオークどもの生命力を飲み込んでいく。言うなれば、それは暴虐そのもの。それに耐えられなくなったオークは、物言わぬ肉塊へと成り果てる。
「汚らわしいオーク共よ。貴様らにかける慈悲は無いぞ……?」
すでにギルビエフは姿を消している。アーティラリィはそれに残念さを覚えはするが、小さな体躯の彼女は残るオークへと大きな態度で言い放ち、マインドソードで切り裂いていく。
前線では、るなと同じくアイドルの寛子を締め付けようと、オークの触手が伸びてくる。
「なんぴとたりとも、寛子ちゃんには触れさせない」
すかさず、蘭が彼女を護りきるべく身を投げ出す。彼女を襲うもの全てに立ちはだかりつつ、両手のファミリアロッドを白黒のうさぎの姿に変えてから飛ばす。うさぎ達は狙ったオークへと跳躍して襲い掛かり、仲間の付けた傷を広げる。
「今、最後の望みが絶え、虚空の彼方へと消えてゆく……♪」
寛子は絶望しない魂を歌い、オークの注意を集めていた。それによって、かなりの数のオークが彼女へと狙いを定める。
数の多いオーク、蘭だけではとても対応できない。こんなこともあろうかと蘭はボクスドラゴンの小白龍に、そしてマロンにも寛子をカバーするよう依頼していた。
「寛子ちゃん、危ない」
マロンもその依頼に応えて、乱れ打ってくる触手を受け止める。集中する攻撃。2人と1匹でかなりの数を捌き、寛子の負担を減らしていた。
その上でマロンは電光石火の蹴りを食らわせ、オークの腹を砕いた。1体ずつ確実に、彼らは敵の数を減らしていく。
司も各個撃破を目指し、アームドフォートの主砲を発射する。しかし、オークは砲撃を浴びながらも、しぶとく触手を射出する。
ほぼほぼ前に出て戦うメンバー達を支えるのは、ウイングキャットのゆずにゃんだ。ケルベロスが攻撃に専念できるようにと、翼を羽ばたかせ、傷など穢れを払おうとする。
また、ルチアナもメインの回復役として、傷が深まるディフェンダー勢に電気ショックを飛ばし、あるいは直接緊急手術を行う。
(「オークのけがらわしい触手に打たれるのは、きっと気持ちの悪いことだから」)
少しでもオークの触手の粘液を弾き、臭いやぬめりを洗い流そうと、ルチアナは癒しの雨を降らせる。
「るなりんには、触手一本触れさせないよ!」
グレイは果敢に敵に攻め入る。仲間達が気を引き、盾となる状況もあり、グレイに攻撃が飛ぶことはほぼなくなっていた。彼女は流星の蹴りを繰りだし、オークの足を鈍らせる。
そして、グレイはここぞと服に擬態しているブラックスライムを総動員して攻撃を放つ。
「見るなよ? こっち絶対見るなよ!!」
攻撃に特化した攻撃。スライムは刃となってオークを刻み、床に沈めていくが、その反面、グレイの防御は全くなくなってしまう。それどころか、服すらも大変なことになり、彼女は恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にしていた。
前線では寛子がオークを引き付け、蘭と小白龍、マロンが彼女の盾となり続ける。
寛子が足止めの為の蹴りを繰り出し、マロンがそいつを指で一突きして石化にも似た状態にする。
そいつ目掛け、蘭が一時的に2体のうさぎを融合させて半透明の幻獣に変えて放つと、オークは苦しむ間もなく崩れ落ちた。
彼らの傷は、ルチアナが癒し続ける。
「だいじょうぶだよ。ひとりじゃないよ」
ルチアナが紡ぐ歌は、水の星の生命の繋がりを深い絆に例えたもの。精神世界の希望を呼び覚まし、仲間に力を与える。
仲間に護られ、支えられる前衛メンバー。
「全て壊れろデウスエクス。これがテメェ等の送り火だ」
右腕から蒼炎と烈風を巻き起こす司。その右手で殴るのと同時に、巻き起こす炎と風を敵にぶつけて爆発を巻き起こす。それは青い鳳凰となり、全てを読み込んで霞のように消えていく。
そうして、オークは1体、また1体と力尽きる。それでも、るなを捕らえようとする姿勢は変わらず、オークはるなを触手で絡めつけようとしてくる。ファンは苛烈にそいつへと炎を纏った蹴りを食らわせた。
「女子を拉致してかどわかすなど、笑止千万!」
アーティラリィは汚らしいオークを見上げ、炎光をその身に纏う。
「雄大なる日輪の輝き、我が舞をもって、闇を斬り裂く刃とならん。……余に見惚れて逝くがよい」
間合いを詰めたアーティラリィは、オークに連撃を叩き込むと、オークは舌を垂らして絶命する。
最後の1体はしつこくるなを狙っていたが、ファンもまた最後までその接近を許さない。傷も重なってはいたが、彼女は冷静さを失わず、釘を生やしたエクスカリバールでオークの頭を切り裂く。
「……終わりだ」
汚らしい血飛沫を上げて倒れるオーク。全ての敵を倒したケルベロスはようやく一息ついたのだった。
●ライブ再開だべさ!
オークを片付けたケルベロス達。
「もう一仕事せねばならんなぁ」
荒れた会場を見回し、アーティラリィが呟くと、メンバー達は会場の後片付けを始める。
マロンは入り口のテープをはがし、司はゆずにゃんに翼を羽ばたかせるよう頼み、壊れた設備を直していた。
壇上には、まだ震えが収まらないるなの姿がある。
「こんなことになったけど、これからもるなりんには頑張って欲しいな」
ファンもそれを望んでいるとグレイが声をかけると、外から観客達が会場へと戻ってきた。
「もちろん、俺達ケルベロスが守るからさ♪」
「ええ、きっと何度でも守ってあげるから。ファンのみんなに、わたしたちに、勇気をちょうだい?」
ルチアナもるなを元気付ける。ライブを再開させるべく、壊れた会場をどう直そうかと尋ねながら。
「全国メジャーに進出したいなら協力するの!」
さらに、現役メジャーアイドル寛子も話しかける。
デビュー前は中央区の某商店街で弾き語りを行ったり、地下鉄駅でダンスの練習をしたりした過去を語る。
その後、大型オーディションに合格したのが転機となって今に至るが、地元に根を張る活動はとてもいいもの。水曜深夜のローカル番組に登場するマルチタレントが寛子の憧れなのだそうだ。
「るなちゃんもけっぱるの!」
「うん……、ありがとう」
今度は自分が皆を元気付ける為に。るなの震えがぴたりと止まった。
準備が整った会場で、るなのライブが再開する。
「したら、ライブ再開するべさ!」
「「「せーの、るなりーん♪」」」
盛り上がる会場。ファンが上げる声の中には、さらっとグレイが紛れていたし、ケルベロスのファンもライブを見学をしていた。
壇上では、寛子がるなを立たせながらもコラボを行う。2人の歌声がその場の人々を魅了する中、蘭も応援をする。
(「ボクにとって、ナンバー1は寛子ちゃんだから……」)
寛子と蘭の関係は、ファンには内緒とのことである。
ヒール作業の後、司は外に煙草を吸いにと考えながらも、1曲だけとるなの歌を聴いていたのだが。
「したって、なまら好きだべさ♪ ずっと君が好きだべさ♪」
汗を迸らせて壇上を踊るるなの姿に、司は一言。
「頑張る奴は嫌いじゃないな」
彼はその曲が終わるまで、壇上を見つめていたのだった。
作者:なちゅい |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年9月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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