ぶつぶつイチゴ人間現る

作者:林雪

●ぶつぶつは嫌!
「あぁああ行かなきゃよかった何がフルーツビュッフェよ女子会よ気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いいいいい!」
 夜、帰宅した自宅マンションのベッドにバッグを放り投げて、クミは絶叫した。
「あのホテル、お皿までブツブツなんだもの! どうかしてるわよ!」
 今日彼女が会社の同僚と一緒に出かけたのは、とある有名ホテルのビュッフェである。スイーツとフルーツが充実していて、お皿もイチゴやサクランボがレリーフ状にデザインされていて可愛いと特に女性に大人気、なのだがクミはそのイチゴがダメだ。
「丸いふくらみに、あの、種……種の、ぶつぶつ……ぶつぶつぁあーー! かゆいダメ!」
 クミはなめらかなものに細かい粒状のものが複数ついている様子が、生理的にダメなのだ。
「大体、フルーツ食ってりゃ女らしいとか痩せるとか思ってる時点でダメ! あんなぷっくぷくの指にネイル……あああああのネイルもダメ! なにあの金色のブツブツ飾り! あんなのが自分の爪についてるかと思ったら……アーーー! ダメ!じんましん出てきたダメダメーー!」
 実際肌に浮いてきた赤い斑点を、クミは掌でこすり始めた。額にはぶつぶつと脂汗が浮いている……本人が見えなくて幸いである。
 そのクミの心臓に突然、グサリ! と鍵が突き刺された。
『あはは、私のモザイクは晴れないけど、あなたの『嫌悪』する気持ち、わからなくはないな』
 笑っているのは第六の魔女・ステュムパロス。魔女の鍵は、クミの『嫌悪』を奪う武器。クミの胸からは血も出ていない。だが彼女の意識はそのまま途切れ、倒れてしまった。
 傍に立っているのは、クミと同じくらいの体格の、真っ赤なドリームイーター。赤い果肉の肌をしていて全身に5ミリくらいの金色の種子のようなものがちりばめられている、たとえて言うならイチゴ人間である。顔がモザイクで覆われているのが救いかも知れない。
『ぶつ……ぶつぶつ、ブツブツブツブツ……つぶつぶ?』

●嫌悪を奪う敵
「僕はあれがダメ、蓮コラっていうんだっけ? 一度画像検索しちゃって……」
 ヘリオライダー安齋・光弦が言いながら顔を顰める。
「あー、絶対しちゃいけないやつだ」
 隣で笑っているのは、ピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542)である。集まったケルベロスたちに気付くと、ピジョンはそのままなめらかに解説を始めた。
「ぶつぶつ恐怖症の人のとこに現れたみたいなんだ、『嫌悪』の感情を奪う魔女が」
 人間の苦手なものに対する嫌悪感を奪って、それを元に事件を起こすというドリームイーターである。
「被害者女性はクミさんっていう一人暮らしのOLさんなんだ。彼女、ぶつぶつしたものがすごく苦手らしくてね。嫌悪感を奪った奴は既に姿を消してしまってるけど、その嫌悪感を元に生まれた怪物型のドリームイーターが、現場付近をうろついてるっていうんだ」
「元が元だけに、えげつない見た目の奴なんだろうなあ。1体だけで良かったよ」
 ピジョンがため息まじりに言う通り、敵は単独でマンション内の中庭をうろついているらしい。
「時間も時間だし、マンション内の人たちは部屋から出てさえこなければ避難はさせなくて大丈夫だと思う。敵はとにかく見た目がキモいからね。見ないのが一番」
 ぶつぶつの気持ち悪さを最大限に生かす、というちょっとよくわからない特性だが敵である以上倒さねばならない。こいつを倒せば、自室で倒れているクミの意識も戻るのである。
 頼んだよ、という光弦の言葉に、ピジョンは天井を仰いだ。
「全身真っ赤で金のブツブツつきかあ。クミさんでなくともかゆくなるかも知れないけど、ほっとけないな」


参加者
ヴァーツラフ・ブルブリス(バンディートマールス・e03019)
マリオン・オウィディウス(響拳人形・e15881)
除・神月(猛拳・e16846)
ユリア・ベルンシュタイン(奥様は魔女ときどき剣鬼・e22025)
マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)
月島・彩希(未熟な拳士・e30745)
小鳥遊・涼香(サキュバスの鹵獲術士・e31920)

■リプレイ

●恐怖のイチゴ人間
「この手の症状はトライポフォビア、っつーらしいな」
 ヴァーツラフ・ブルブリス(バンディートマールス・e03019)が口にしたその単語は、確かに検索はオススメできないものかも知れない。
 トライポフォビア。集合体恐怖症とも言う。少し詳細に言うなら、小さな穴の集合体に対して異様な恐怖心を抱く症状のことである。
「ぶつぶつしたものって、気持ち悪いんだけど……ゾクゾクしたくてつい見ちゃうのよね……」
 小鳥遊・涼香(サキュバスの鹵獲術士・e31920)のこの反応、これくらいが一般的な感じではなかろうか。今回、ドリームイーターの標的にされてしまったOLのクミは、これの極端なところまでいってしまった、いわゆるトライポフォビアである。
「ブツブツ恐怖症かぁ。イチゴ、美味しいのに見た目で食べられない人もいるんだね……」
 マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)が気の毒がってそう言えば、ユリア・ベルンシュタイン(奥様は魔女ときどき剣鬼・e22025)がおっとりと応じた。
「イチゴは赤くて丸い、っていう印象はあるけれど、私たちはあまりブツブツとは思わないものね」
「他のベリー系も、ダメなのかな? ラズベリーとか」
 ふたりの会話に耳をそばだてつつ、月島・彩希(未熟な拳士・e30745)も内心でイチゴは美味しいのに食べられないのはもったいないなあと思う。会話に入っていけないのはまだ少し緊張感があるのと、生来の内気のせいもある。
 彩希とは対照的に豪放磊落な性格の除・神月(猛拳・e16846)の反応はなかなか過激である。
「あたしはむしロ、ぶつぶつとか見ると全部潰してやりてーって気になるけどナー。嫌いな奴は見たくもねーもんなのカ?」
「……見ずに済むなら、見ないほうがいい気はします」
 マリオン・オウィディウス(響拳人形・e15881)が淡々と答えると、神月は機嫌よく笑った。
「わかっタわかっタ、目にもはいらねーうちニ、ぶっ倒してやんヨ」
 といった会話をかわしつつ、マンションのエントランスを抜け中程へ進むケルベロスたち。なかなか贅沢なつくりのマンションである。
「隠れられるような場所は、あまりないようだな」
 カジミェシュ・タルノフスキー(機巧之翼・e17834)が周囲を見渡してそう言った。中庭の上は吹き抜けになっていて、ちょうどマンションの各部屋が、庭を囲んでいるような構造になっている。庭は下が砂地になっていて、大きな観葉植物の鉢がいくつか置かれている。その傍にちょっと洒落たベンチなどがあり、スペインのパティオをイメージして作られたものらしい。
「ここで戦やぁ、嫌でも住民の奴らには見えちまうな」
 ヴァーツラフの懸念に、ユリアが頷く。
「ええ、住民の皆さんにはしっかりおうちの中に留まって頂けるように、お願いしないとね」
 明らかに見ないほうがいいようなものでも、何となく見たくなってしまうのが人情というものではあるが、今回の敵はなかなか……そういう意味ではレベルが高い。


 ヒョコリ、と、観葉植物の陰からそいつは姿を現した。
 クミのイメージから誕生したドリームイーター、イチゴ人間。
 印象としては、真っ赤な全身タイツだ。だが全身には種らしきブツブツが……。
 彩希がぞわぞわっ! と肌を粟立てた。正直、気持ち悪い……でもここで食い止めないと、と人々を守るケルベロスとしての使命を思い出し、必死に己を奮い立たせる。
 彼女が必死に嫌悪感を抑え込もうとしているのがわかって、カジミェシュはあえて口に出して言った。
「別に私はトライポフォビアである訳ではないのだが……こうして目の前で動いているのを見ると、流石に平静ではいられんな」
 と、それでも冷静さを失わない声で言いながら、バイオガスの散布を始めるカジミェシュ。住民らは基本寝支度に入っているようだが、何人かは物音に気づいてこちらの様子を伺ってくる。
「えっ何! 煙?!」
 住民らしい女性がそう高い声を上げたところに素早くマヒナが駆け寄り、誘導しながら声をかけた。
「火事じゃないよ、私たちはケルベロス。デウスエクスはすぐ倒すから、部屋の中で待っててね」
「な、なんだなんだ?」
 その向かいの部屋から顔を覗かせた、子供を抱っこした若いお父さん、という風情の男性には、ユリアがにっこりと微笑みかけた。
「ごめんなさい。見つかると危ないかもしれないから、カーテンを閉めて隠れていらしてね。そちらはお嬢ちゃん、かしら? あなたもいい子にしててね」
「は、ハイ……」
 と返事をしたお父さんは、どうやら奥さんに引っ張られて部屋の奥へ消えていく。
 ガスは庭を取り囲み、住民の視界からドリームイーターの姿を隠す。庭の真ん中では、そのイチゴ人間に真っ向から向き合った神月が、思いっきり大声を張り上げた。
「てめぇのぶつぶつ一つも残さずほじくり返してやんヨ! ってなわけだからナ、見たくねえ奴はしっかり部屋ん中入ってナ!」
『ぶ……つぶつぶつぶ、ぶつぶつぶつ……』
 返事、なのかなんなのか。ドリームイーターのモザイク顔から声のような音のようなものが聞こえてきた。これはこれでかなり神経を逆撫でする。
「これは……情状酌量の余地なし、というやつです」
 マリオンがそう言って、常に愛用している黒手袋をキュッと引いた。
「姿かたちがわからなくなるまですりつぶした後に牛乳と砂糖を入れてイチゴミルクにしてあげましょう」 
「そりゃいいナ! イチゴだったら練乳かけて食っちまうってのも手だナ!」
 マリオンの啖呵に、神月が大喜びで乗った。そして敵の姿をついつい、という風に見てしまっていた涼香がふと自身のサーヴァント、ウイングキャットのねーさんに視線を移して呟いた。
「あのぶつぶつ……爪とぎによさそうじゃない?」
「……お前らの反応もなかなかのえげつなさだな?」
 敵の見た目のえげつなさに呆れつつも、味方の反応にある種の感心を覚えずにいられないヴァーツラフ。その背後の部屋のドアが開き、中学生くらいの少年が、明らかに怖いもの見たさという体で外の様子を覗いていた。その視界をスッと身体で塞ぎ、怯えさせない程度に軽く、睨みをきかせた。
「止めとけ、怖い夢見たかねェだろ?」


「あらあら、人……ではないにせよ、見た目であまりどうこう言いたくはないのだけれど……でも、ええ、うん……これは……」
 マンションの部屋の前の廊下から戻ってきたユリアが、敵の姿を見て生温い笑顔を浮かべた。
「なんだか、全身におできできてるみたいだね。かゆくないのかな……?」
 同じくマヒナも敵をじっと見つめて言った。マヒナには、あまりゾワゾワ感はないらしい。
「とにかく、こんなシロモノが解き放たれたら只じゃ済まんな。早々に倒してしまおうか」
「い……いくぞ、デウスエクス!」
 戸惑いを振り払うように、彩希が思い切って声を張った。
「アカツキはみんなを守って……! ぶつぶつは気持ち悪いかもしれないけど、ファイトだよ!」
 その意気やよし、と仲間たちが頷いた。これが初めての戦いとなる涼香も、配置につきながらねーさんに指示を出す。
「頼んだわね、ねーさん。私も頑張る……」
 ねーさんは彩希のボクスドラゴン・アカツキと同じく防御の位置についた。
 敵は一体。取り囲んで手早く倒してしまおうと、ケルベロスたちそれぞれが気合いを入れる。
「行くぞ!」
 先陣を切ったのはカジミェシュだった。愛器ブズディガンを構え、狙いすました初撃が命中するのとほぼ同時に、彼のボクスドラゴン・ボハテルもタックルをかました。その攻撃を受ける度にドリームイーターの体からはブツブツの種がぽろぽろと落ち、次の種がまた生えてくる。
「おらヨ! 食らいナ!」
 神月のつま先が赤い体の胸元にもろにめり込み敵が盛大に吹っ飛ぶと、やはり種が体から撒き散らされた。タイル張りの床によくわからない巨大な種がばら撒かれている様子は正直あまり気色のいいものではない。
「……クミが見たら卒倒しそうな戦場だナ」
「あとでお掃除が必要かしらね」
 穏やかな笑顔には一見不釣合いな、それでいてどこか危うい不穏さを漂わせるユリアの優雅な肖像画のような笑顔が、構えたナイフの刃に映る。
「ひぃ、ふぅ、みぃ――とぉ」
 斬ったとすら思われぬユリアの緩慢な腕の一振りは、それでも確実に敵を斬り裂いていた。衝撃に体は撓うが、苦痛の様子や悲鳴といったものは聞こえない。
『ぶつぶつぶつぶつ、ぶつぶつぶつぶ』
「言語と呼ぶには醜悪ですね……」
 マリオンがその不快な声を止めるべく跳び、足を鞭の如くしならせて強烈に蹴りつけた。
『……ぶわっ!』
 突然、吐息ともなんとも言えない声をあげ、ドリームイーターの顔面からモザイクが飛ばされた。狙いはカジミェシュのブズディガンだった。
「……?!」
 武具を掴んでいた手の内側に違和感を覚えて、カジミェシュが視線を下げる。モザイクの更に細かいものがこびりついて、まるで武器にぶつぶつが出来たようになっている。
「まあ、確かに……気持ちのいいものではないな」
 そう呟くとカジミェシュは小さく武器を手の中から浮かせ、至極冷静に持ち位置を変えた。
「アナタが寝ないとクミさんが起きられないみたいだから。おやすみの時間、だよ」
 マヒナが間髪入れずに弓を番え、矢を引き絞った。赤い体をよく狙いすまして放ったエネルギーの矢は、ドリームイーターの体にカカッと突き刺さり、吸い込まれていく。
 敵はしばし、放心したように立ち尽くしていた。そこへヴァーツラフが黒スーツのポケットに手を入れたまま、降魔の蹴りをぶちかました。
「ボサッとしてんじゃねぇぞ、イチゴ野郎が!」
「い、いちごやろう……」
 彩希もついつられて、という風にそう口にしてみる。床に散らばるぶつぶつも敵の姿もなんとなく気持ち悪いが、戦いに集中! と自分に言い聞かせ、仲間達を守るべく紙兵をばら撒いた。
 頭を振り振り立ち上がってくる敵に向かって、ダッシュを開始したのは涼香。
「止める」
 きっぱりとした口調で凛とそう言い切ると涼香は低い位置を狙って重力を宿した蹴りを放った。その軌跡の上を、ねーさんが翼を広げて横切っていく。
 敵のよろけたところへ、カジミェシュが飛び込んだ。
「生憎だが、大勢に影響はない」
 武器の不具合を感じさせない一撃で、イチゴ人間の側頭を叩きつける。
 攻撃されてもされても、イチゴ人間ことドリームイーターはあまり身を守る気がない様子で、ケルベロスたちに突っ込んでくる。クニャクニャした動きとぶつぶつが相俟って、確かに気持ち悪い。だが流石に気持ち悪いからとダウンするケルベロスもいない。
「ズタズタに引き裂いてやるゼェ!」
 神月などは相手がクニャクニャなのは寧ろ殴りやすくて好都合、とばかりにヒャッハー状態で楽しげに殴りかかる。重たい獣の爪の一撃は、ここまでに敵に負わせた傷を更に深く抉っていく。続くユリアも、一見正反対のようで、テンションは同じだった。ふたりともどちらかと言えば戦闘狂の気がある。
「何処にもないこの瞳は全てを見通します故、逃げることは不可能です」
 そう言って、マリオンが片目をぱたりと閉じる。その閉ざされた視界の中で、マリオンの情報分析が始まった。ここまでに得た敵のデータ、動きや声あらゆる角度からの解析結果を仲間に伝えるべく、右目を開いた。開眼と同時にその情報は仲間達に拡散される。
「……あのぶつぶつはただただこちらの目を惑わすだけの邪魔な存在。ひたすら叩き落して殴るのがよさそうです」
「確かにあれ、気が散るよね」
 とマヒナが頷けば、
「いいんじゃねえカ。殴りゃいいんだロ」
 と益々嬉しそうな神月。 
 だがその時。突如、イチゴ人間が立ち上がる。その体に、先までの倍くらいのぶつぶつが一気に発生した。
「おい、さすがにえげつねぇな」
 と、ヴァーツラフが舌打ちし、
「ゾクゾクする……」
 と言いつつ、やっぱり何故か見てしまう涼香。彩希もひゃあと声をあげてしまいそうになるのを必死に我慢する。
 ケルベロスたち全員が見守る中、身を反らせて大きく飛び上がるドリームイーター。そして。
『ダッコオォオーーー!!』 
 そう叫びながら、両手を広げて落下していく先には……ユリアの笑顔。聖母のように抱きとめる……はずもない。
「失礼。既婚者としても、あなたに抱きつかれるのはあまり嬉しくないの」
 スカートの端をつまんで、スイと避ける。敵は床にべシャッと落下した。
「抱っこって……」
 マリオンはドン引きである。
「うん、そろそろ大人しくしてもらおうかな」
 そう言ってマヒナは手を合わせ、遠い南国のヤシの木の幻影を作り出した。たわわに実をつけた木から落下したココナッツが、敵の頭をガスガスッとたて続けに殴りつけていく。
「頭上注意、だよ?」
 正直、この敵の相手はさっさと終わらせたい! とケルベロスたちが思うのも無理はない。
「テメェ相手だと銃構える気にもなんねーんだよ、オラ!」
 と、再度足蹴りを見舞うヴァーツラフ。そこへ涼香の魔法光線が浴びせられる。
「固まりなさい」
 ヨロヨロと、それでも寄ってくるイチゴ人間にとどめを刺したのは、神月。
「潰してやんヨ!」
 グシャッ、と一際大きな音とともに、ぶつぶつ種が全身からひとつ残らず飛んだ。
『アー……アー……』
 最後はイチゴというよりトマトに近い姿でぺしゃんと潰れて、ドリームイーターの体は崩れ去っていった。


「変な敵だったね。気分転換に、普通のイチゴがのったパンケーキが食べたいな」
 戦場慣れなのか生来の気性なのか、マヒナがけろりとした顔で言う。
「なら、帰る前におやつにでもしましょうか。いいものを作ってきたのよ。ほら、クリームたっぷり、イチゴのサンドイッチ……」
 ユリアが笑顔で持参のバスケットを示した。
「食ったらクミのとこにも行ってやるカ」
 と神月が早速手を伸ばしながら提案する。
「イチゴですか……まあこのあたりをヒールしてからクミさんの様子を見にいきましょうか」
 イチゴは当分無理かも、と思っていたマリオンが若干複雑げに答えた。
 無事に初陣を飾った涼香とねーさんも、安堵して輪に加わる。
「ほら、サキもおいでよ」
 と明るくマヒナに手招きされ、なるべくイチゴサンドは見ないようにしつつ、彩希が頷いた。
「……こういう事に関しては、女性の方が柔軟、なのかも知れないな……」
 パティオでおやつタイムを始めた女性陣を眺めつつ、何となく手の中に残っているぶつぶつの感触を消そうとカジミェシュが利き手を握って開いてを繰り返す。
「ま、そういうこったな」
 短く応じて、ヴァーツラフは葉巻で一服つくべく一足先にエントランスの方へと歩み去っていった。
 かくしてぶつぶつイチゴ人間型ドリームイーターはケルベロスたちの手によって速やかに排除された。

作者:林雪 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年10月3日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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