月に還れなかった兎

作者:陸野蛍

●美しい月の夜
 空気が澄み、月の光が辺りを照らす夜。
「素敵な月光……今夜は月が綺麗ね。貴女に働いてもらうのにぴったりだわ。市街地に向かい、暴れてきなさい。可愛い私のお人形……」
 獣のフードを目深まで被り、表情こそ分からないが、ティネコロカムイは楽しそうに、佇む少女……いや、少女のウェアライダーにそう命令する。
「わかりました、いってきます。ティネコロカムイさま」
 少女は、頭から生える長いピンクの耳を揺らし返事をする。
「その子達を3匹ほど連れて行きなさい。貴女の働きを期待するわ」
 そう言うと、ティネコロカムイは夜闇に消えて行く。
 残された、小さなウェアライダーは、跳ねる様に怪魚と共に街を目指した……ティネコロカムイの命令を実現させる為に。

●幼き兎
「お月様には、兎が住んでいて餅つきをしてるって、よく言うよなあ」
 そんな事を呟きながら、大淀・雄大(太陽の花のヘリオライダー・en0056)は、依頼の説明を始める。
「ティネコロカムイが、釧路湿原付近で第二次侵略期以前に死亡したデウスエクスを解き放ち、市街を襲わせることが予知された。みんなには、このサルベージされた、デウスエクスの討伐に向かって欲しい」
 頻発している、ティネコロカムイが元凶と思われる、釧路市街への攻撃。
 今のところ大きな被害は出ていないが、元凶であるティネコロカムイの有力な情報もまだ見つかっていない。
「サルベージされたのは、人間型のウェアライダー。モデルの動物は兎で少女の外見。耳や、腕と足を包む毛皮以外は、ほぼ人間のタイプだ」
 神造デウスエクスである、ウェアライダーは作ったモノの望む形を反映していた部分も多い。
 彼女を作った、デウスエクスは何を想って彼女と言う形を作ったのだろう。
「ウェアライダーは、変異強化されているから、生前よりも能力が上がっている。外見は、か弱い少女に見えるかもしれないけど、油断できる相手じゃないから、気を付けて欲しい」
 ウェアライダーは市街地を襲撃する為に怪魚型死神3匹と共に行動しており、彼女達が市街地に侵入する前に撃破するのが今回の依頼とのことだ。
「予知によって侵攻経路は分かってる。みんなには、侵攻経路の途中にある平原で迎撃してもらって、万が一にもウェアライダーが市街地に入ることの無い様にして欲しい」
 周囲に家屋等は無く、戦闘に集中することが出来るだろうとのこた。
「サルベージされた、ウェアライダーの詳細情報な。さっきも言った通り、兎の特徴が表面に出てるタイプで、身長140cm位の少女の姿をしている。着ている服もフィルムスーツで、一見強そうじゃないけど、元々俊敏に戦闘を行うタイプだったのが、死神の力で更に強くなっている」
 見た目で判断すると痛い目に合う……雄大の瞳はそう言っていた。
「戦闘手段は、脚での獣撃拳とルナティックヒール、武器として二本の惨殺ナイフを使用する。特徴としては、敏捷性に優れた個体って感じだな。あと、ティネコロカムイが付き従えさせた、怪魚型死神も3体いる。大して強くは無いけど、面倒な事になる前に倒した方がいいだろうな」
 既に、ティネコロカムイの姿は無く、足取りも掴めていないと言う事が付け加えられる。
「今回のウェアライダー、外見通り幼い少女みたいなんだ。デウスエクスの尖兵だったとは言え、幼くして戦場に出されて死んだってのは……なんか、辛いよな」
 ケルベロスにも幼い者は多い。
 彼等の力を信じているとは言っても、幼い子供達を危険な戦場に送りだす事が正しいかは分からない……。
「俺は、幼くして死んだ子供が死神に利用されるなんて……あっていいとは、絶対に思わない! だから、彼女をもう一度安らかな眠りに導いて欲しい。頼んだぜ、みんな!」
 拳を強く握りしめ雄大は、そう言った。


参加者
来栖・カノン(渡り竜・e01328)
レティシア・リシュフォー(声援アステリズム・e01576)
柳・優示(折れぬ剣・e20013)
エトヴィン・コール(徒波・e23900)
折平・茜(エスケープゴート・e25654)
氷月・沙夜(白花の癒し手・e29329)
本脇・八雲(夜雲・e29650)
月井・未明(彼誰時・e30287)

■リプレイ

●月夜に想いし
 美しい月が辺りを照らす夜。
 何も無い平原で、ケルベロス達は少女が来るのを待ち構えていた。
 ……本来なら、既にいない筈の少女を。
 風の吹く音だけが耳に響く。
 それぞれ思う所があるのか、ケルベロス達の口数も少ない。
 そんな時、氷月・沙夜(白花の癒し手・e29329)が口を開く。
「幼い内に戦って、亡くなっただけでも可哀想なのに……無理矢理蘇らせて利用するなんて……」
 黒髪に咲く、白百合が風に揺れる中、沙夜の青く澄んだ瞳も揺れる。
「今度こそ安らかに眠れる様に……出来るだけの事を、私はしたいと思います。……小さな子供が傷付く姿は、もう見たくありません」
 時機に現れるであろう、敵となる少女を想って沙夜の心も揺れていたのだ。
 沙夜だけでは無い、ここに集ったケルベロス達全員に、それぞれ似た想いがあった。
 死神の意志で戦いを強いられる少女……。
 自分の意思では無い形で蘇らせられ、死神に利用されるのだ。
 自らの意思で、地球を攻めて来るデウスエクスの撃破依頼より、気が重いのは確かだった。
「……少女の境遇には同情するけどね」
 少女と同じ兎のウェアライダーである、月井・未明(彼誰時・e30287)が静かに言う。
『手加減はしない』と未明は決めていた。
 神が造りしウェアライダー……その意味でも、未明は少女と一緒だったが、生きる時代も境遇も違う。
 今の立場も……。だから未明は、現れたピンクの長い兎の耳を持つ少女に、淡々と話しかけた。
「……こんばんは。……きれいな月夜だな」
 少女のガラス玉の様な瞳が微かに月の光を反射した。

●月夜を泳ぐ
「……良い夜ですね……こんにちは、ケルベロスです。貴女のお名前を教えてください」
 ドラゴニックハンマー『Elemental Dance』を携え、折平・茜(エスケープゴート・e25654)が少女に問う。
 だが、少女はケルベロス達を警戒した様子は見せるが、茜の質問に答える気配は無い。
「……ケルベロスとは、…デウスエクスを殺せる存在ですよ。お名前も思い出せない、貴女を手にかけたくは無いですが……人の命を奪おうとしているなら、命を奪われても仕方ないですよね。それと……」
 ぽつりぽつりと言いながら、茜はグラビティと思念で、自身の血と羊毛を織り込んだ赤い鋼線を作りだす。
「あなた達死神にかける情はありませんから……。醜い貴方を貫きます。貴方の殺意を私だけに向けるのなら、互いの武器で血肉を削り死がふたりをわかつときまで、束の間の愛を誓いましょう」
 声こそ小さいがハッキリとした意志を乗せて、茜は赤い鋼線で1体の死神を縛り上げる。
「綺麗な月夜に跳ねるなら、自分の足でじゃないと興醒めだよね……。おいで、無粋な繰り糸はちゃんと切ってあげるから……最期の夜を楽しもうよ?」
 光る月を眩く感じながら、エトヴィン・コール(徒波・e23900)が少女に語りかける。
「……そうだね。そいつらが居たんじゃ、君も自由に跳ねられないよね?」
 エトヴィンは微笑み、オーラの弾丸を掌に込めると、死神に喰らいつかせる様に放つ。
「すぐに終わるから……」
 依頼を聞いた時点で兎のウェアライダーとは知っていたが、いざ相対してしまえば、エトヴィンの頭をよぎるのは、よく知る兎のウェアライダーの顔だ。
「正直……気は進まないけど、こんな状況から解放してあげる為には、仕方ないか。でも、その前に…そこにいる死神には覚悟してもらわないとね!」
 月の光を浴びながらもどこか冴えない表情で言うと、本脇・八雲(夜雲・e29650)は、手にした杖から眩い雷を放ち、死神を焦がす。
「ルコ……。生きている間ずっと利用されてて、ボクと同じ年ぐらいで死んじゃって。死んだ後も利用されるだなんて悲しいんだよぅ……だからね今度こそ、ボク達が安らかな眠りにつけさせてあげよぅ。ね? ルコ」
 来栖・カノン(渡り竜・e01328)が黄色い瞳をした若草色の相棒、ボクスドラゴンのルコに言えば、ルコは『きゅい』と一鳴きすると、虹の輝きのブレスを死神に向かって放つ。
 その虹の輝きが止まぬうちに、星の輝きが聖域となってケルベロス達に祝福を与える。
「滅ぼすべきは、死神です。死者を蘇らせ、加護を与える元凶を絶ちましょう」
 柔らかな金の髪を風に靡かせ、レティシア・リシュフォー(声援アステリズム・e01576)が、仲間達に気丈に言う。
 レティシアは、本来優しい少女だ。だが、レティシアをもってしても、死神の存在……そして、この作戦は容認できるものでは無かった。
(「死神はダモクレスやドラゴンとは違う、得体の知れない恐ろしさを感じますぅ……。けれど、こんなのは許せないですぅ。ゲートの手がかりを掴む日までは、こういった事件も止まりません。だから、一つ一つ地道にでも、こんな悲しい企みは挫いて行くしかないです、ですっ!」)
「少女に対して思う所が何もない訳じゃない……だが」
 精神力を極限まで高め、死神を覆い尽くす様に衝撃を与えると、柳・優示(折れぬ剣・e20013)がハッキリとした敵意を乗せて宣言する。
「お前達、死神には嫌悪しか無い! お前達を倒すのに迷いも無い! 死んで償うんだな!」
 鋭い目つきで、優示は死神を睨む。
 沙夜の時をも凍らせる弾丸が戦場を駆け抜ければ、未明が大地を蹴ることで起こした炎が炎弾となって、死神を燃やす。
 1体の死神が傷ついて行く中、2体の死神が青白く発光し、傷ついた死神のグラビティ・チェインを補完していく。
 その時……八雲は、少女が微かに笑みを浮かべたのを見た。
 寒気を感じる様な笑顔を、少女は確かに浮かべたのだ……。

●月夜に還りし
「ボクは大丈夫だから、怪我もヒールすれば大丈夫だから、皆さんを傷つけさせはしないんだよっ!」
 優示を狙う、少女の舞う様な二本のナイフの斬撃を、小さな体で庇いながら強く言うと、カノンは死神にブラックスライムを解き放つ。
「大丈夫ですよ、星の加護がついていますぅ!」
 叫びながら、レティシアは数度目のスターサンクチュアリを創造する。
「中々死神もしぶといね」
 回し蹴りの要領で蹴りを放つと同時に死神に炎弾を浴びせながら、八雲が言う。
 戦闘開始から既に7分以上が経過していたが、ケルベロス達は未だに最後の死神に留めをさせずに居た。
 理由を挙げるのであれば、純粋にアタッカー不足と言えるだろう。
 積極攻勢に重点を置いている者が、優示、エトヴイン、八雲の男性3名。
 5人の女性陣は、防御と回復優先で作戦を練っていた。
 踊る様に攻撃して来る少女からのダメージは3人のディフェンダーが庇いあう事で、分散していたし、ダメージを受ければすぐにヒールグラビティが傷を防いでいたが、敵の行動を制限するのに特化した者も居なかった為、縦横無尽に動き回る少女を最低限しか止められず、隙あらば攻撃と考えていた沙夜の読みも外れてしまったのだ。
 だが、この時間の経過がもたらしたのは悪いことばかりでも無かった。
 レティシアのヒールグラビティを受ける度に、ケルベロス達の護りのグラビティも十分な程に強固になっていた。
 ディフェンダー3人が少女から受ける傷も目に見えて少なくなっている。
「いい加減に死ね!」
 優示のナイフが映す、死神の鏡像はグラビティとなって、死神の内部に侵食し、ついに最後の死神を地に落とす。
「あとは、お前だけだ。可哀想だとは、思う。それでも、人々に危害を加えるデウスエクスと言う存在なら全力で倒すだけだ。……もう二度と、誰にも眠りを妨げられない様に」
 ナイフの切っ先を少女に向け、優示が強い意志を持って言う。
 ……ここで確実に終わらせることが最善だと信じて。
 その言葉を受けても、少女は大地を跳ね、茜に向かって蹴りを放つ。
 だが、その攻撃は未明によって防がれる。
「きみの攻撃でおれ達が折れることは無い。想いがこもっていないから。きみは、何を望まれたのだろうね? 何を望んでいたのだろう? ……――思い出せる?」
 疑問を投げかけながら、未明は刃の鋭さを持った速さの蹴りを少女に決める。
「それを想い出す事が出来れば、きみはおれ達を超える存在になりえるんだろう」
 未明が言葉を紡ぎながら、一歩下がると、後方から少女に向けてカプセルが投げられ、少女の身体をウイルスが蝕んでいく。
「止めてください……! もう、あなたは戦わなくて良いのです……!」
 カプセルを投げた体勢のまま、沙夜が必死の思いで少女に訴える。
 だが、少女の動きが止まることは無い。
「俺には、この月光はちょっとばかり辛いものがあるんだけどね。それでも君が月に還る為の道しるべになるなら」
 エトヴィンは、刀で緩やかな弧を描きながら言うと、袈裟切りに鋭い斬撃を少女に浴びせる。
「ウェアライダーは、地球の人類と歩むことになりました。グラビティチェインを集める為にあなたが戦う必要は、もうないんです……」
 地球に住まう者達が協力し合う事で生まれた、ドラゴニックハンマーを砲撃形態に変形させ、竜の弾丸を放ちながら、茜が少女に言う。
 その攻撃を受け、少女は一度地に膝を付く。
 だが、満面の笑みを浮かべるとウェアライダーとして与えられた、強力な脚力を活かして空を跳ぶ。
「言葉が届かないなら仕方無いね……。僕達が死んでサルベージされるなんて事になっても……だしね」
 八雲が口にした事は、一部のケルベロスやヘリオライダーが危惧していた事。
 現状、ケルベロスが死神にサルベージされたと言う報告はされていない。
 だが、死神がそれすらも可能であったとすれば、ケルベロスは仲間同士、もっと言えば親しい者同士が戦う事になってしまうかもしれないのだ。
 可能性でしか無い……だが、ケルベロスに敗北が許されないのも確かだ。
 ケルベロスが敗北してしまえば、多くの人々が犠牲になってしまうのだから。
「僕の力……どうやらこういう力もあるみたいでさ」
 呟くと、少女の隙をつき、八雲は少女の首筋に己が歯……いや、犬歯をあてがい喰らい付き、少女のグラビティ・チェインを吸収していく。
 動きの止まった、少女にルコが全身でタックルを決めれば、レティシアの魔術の詠唱が戦場に響く。
「施しには祝福を、呪いには災いを。煉獄を此処に。光は遍く全てを包み照らすだろう。天の鳥達は全てを見るのだから! 出でよ裁きの天秤!」
 レティシアの詠唱が完成すると同時に、天空から聖なる雷光が少女に降り注ぎ、それは死へ向かうべきだと裁きの雷となって少女を貫く。
「あなたの時は、もう止まっているんです。どの時間にも存在してはいけないんです」
 悲痛な表情を浮かべながら、沙夜が少女の時間を止めようと氷弾を放つ。
「もう動く必要は無い。無いんだ! 烈震!」
 大地の霊力を腕に込め、優示は制止のグラビティを少女の胸に叩き込む。
「ボクの知り合いにもたくさんのウェアライダーの人がいるし……もしかしたら、また違った未来もあったのかなぁって……そう、思うんだよ」
 もしかしたら、お友達になれたかもしれない……それは、カノンの幼い想いかもしれない。けれど、だからこそ……純粋で……。
「お願いルコ、どうかボクに力を貸して……!」
 カノンの言葉がルコに虹色のグラビティを与えれば、ルコはデウスエクス・ドラゴニアとして、虹と草花を司る老いたドラゴンへと姿を変える。
 ルコのドラゴンとしての一撃は、神の一撃。
 草花を鞭の様に操り、少女を縛り上げると、数秒後にはルコは姿を元のボクスドラゴンへと戻し、大地に突っ伏す。
「……納得なんて、できないかもしれない。それでも、あなたのことは忘れません。……だから、おやすみなさい」
 言葉と共に、茜はファミリアをエネルギー体に変え少女に撃ち込む。
(「直視しなくても、常に月から呼ばれているような感覚に陥る……月が恋しい。……おれだけじゃないんだ……きっと」)
 未明には、大きなダメージを受け、今にも消えてしまいそうな少女が、月を見上げて目を細めた様に見えた。……だから。
「……おれもね、かえりたいって思うんだ。……きみは先に行っておいで……後できっと追いつくから」
(「きみの目には、なにがうつる」)
 それが、月なら良いと未明は思いながら、硝子壜の蓋を開け『薄月』と言う名の、霞を少女に贈る。
「ね、君は何処に還りたい? 土の下かな、月の裏側も楽しそうだよね。どこにだって送ってあげるからさ、ゆっくりお休み」
 優しい言葉の後に、彼女を月へと送る咆哮をエトヴィンは発した。
 畏れを抱かせる咆哮も今だけは畏れ無くていい……耳を塞がなくていい……君の魂は月に還るのだから……。
 エトヴィンの咆哮が止むと、少女は倒れ……少しずつ身体を輝くグラビティ・チェインに変えながら、夜空へ……月へと旅立って行った。
 ケルベロス達が見守る中、数分後には霞の如く少女は消えた。
 まるで最初からそこには誰もいなかったかの様に……何も残さず……。
 ただ……空に浮かぶ月は、眩くばかりに美しく輝いていた……。

●月夜に秋桜
 少女が居た痕跡など何も無い平原に、沙夜は小さな秋桜の花束を置いた。
 ピンク色の秋の花……あの少女に捧げるのに一番相応しい気がした。
「お疲れ様でした……ゆっくり休んで下さいね。天国で、家族やお友達と再会出来ますように……」
 沙夜の祈りは、あの少女が二度と戦わなくて済む様にと言う思い。
「安らかに眠って下さい。もう安眠妨害はありませんので」
 レティシアは、消えた少女にそう言うと、仲間達を振り返る。
「それにしても、ティネコロカムイの足取りが掴めないのが残念ですぅ」
「そうだな、ティネコロカムイ……あの死神が居る限り、同じことが繰り返されるんだよな」
 レティシアの言葉に、優示は強く拳を握る。
 ティネコロカムイ……『湿地の魔神』の二つ名を持つ死神を止めない限り、この釧路の戦いは終わらないだろう。
 皆、分かっていたが、まだパズルを埋めるピースになり得る情報が足りないのだ。
 ティネコロカムイの次の動きを待つ、ヘリオライダーの予知を待つ、自らが動く……どうすれば、あの死神に辿りつけるのか……。
 各々が考えながら、時を過ごすことしか出来ないのかもしれない。
 それでも、いずれ決着は必ず付けなければならない……ケルベロス達はその思いを胸に、帰路に着く為ヘリオンへと足を向ける。
 最後尾を歩いていた未明は、一度だけ振り返ると大地に置かれた秋桜の花束に言葉を贈る。
「おやすみなさい。きみに、やさしい夢が降ると良い……」
 月が照らす中、秋桜のピンク色の花弁が風に舞い、夜空へと吸い込まれて行った……。

作者:陸野蛍 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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