お祭りで思いっきり遊ぶんだよー

■リプレイ

●暴れるマグロガールを誘い出そう
　三重県某町で祭りの準備が進む中を、ケルベロス達は歩く。
「マグロガールとは、また美味しそうな……」
　まだ昼間とあって、日傘を差す藍凛・カノン（過ぎし日の回顧・e28635）はやや気だるげに歩く。口調も相まって年寄りくさく見えてしまう、自称吸血鬼のサキュバスである。
「デウスエクスであろうが、純粋に祭りを楽しむならいいものを。……いや、ある意味純粋に楽しんでいる故の行動か」
「お祭りは一人だけ楽しむものじゃないよな。みんなで楽しんでこそのお祭りだぞ」
　額に真紅のバンダナ、背中に旅団『風の団』の紋章が入ったジャケットを羽織った蒼眞の呟きに、花骨牌・旭（春告花・e00213）が返す。
「本人は楽しいのかもしれないけど、人々に暴力を振るって迷惑をかけて……。楽しいお祭りを邪魔するなんて許せない」
　リオ・フォクスター（煌めく星は刃となって・e00181）はシャイターンのマグロガール打倒を静かに誓う。
　メンバー達は着々と屋台が立ち並ぶ様子を眺めながら、戦闘場所になりそうな、その上で人があまり立ち寄らない場所を探す。
　公園や駐車場は祭りの準備や、客が駐車していて人が多い。リオは唸りながらも、日柳・蒼眞（蒼穹を翔る風・e00793）と共に裏路地での戦いを想定して事態に当たることにしていた。
　旭はその場所にキープアウトテープを張ろうと考えるが、自身が活性化していなかった為、蒼眞へと頼む。カノンの依頼も受けて携帯電話の番号交換をしていた蒼眞はテープを路地に張り巡らし、人払いを行った後、念の為にと他の候補地も確保しようと動いていたようだ。
　やや儚げな印象を受けるセレスティン・ウィンディア（墓場のヘカテ・e00184）や、逆に健康的な小麦色の肌を持つフォトナ・オリヴィエ（マイスター・e14368）は表通りからの経路、そして、一般人の避難誘導方向なども確認していた。

　直に日が暮れ、祭りが始まる。
「「「わっしょい！　わっしょい！」」」
　表通りには、神輿を担ぐ人々。それを眺める一般客はのんびりと屋台を巡っていた。
「祭り会場で、マグロを探すんだよ！」
　矢武崎・莱恵（オラトリオの鎧装騎兵・e09230）は男前な子竜のタマと一緒に、お面販売の屋台を眺める。
「ボクスドラゴンのお面はないのかな！」
　その店にはサーヴァントのお面が並ぶ。じっくりと眺めて発見したボクスドラゴンのお面を被った莱恵はさらなる屋台巡り。本来の目的はどこへやら。
「あ、それよりも、マグロを探さないと！！」
　きっと、敵も遊び重視でふらふらしていると踏んだ莱恵。得てして、思惑通りにそいつは屋台の付近にいた。
「思いっきり遊ぶんだよー」
　着物姿にマグロを被ったシャイターン、マグロガールの両手には、屋台で買った物が握られており、無邪気な振る舞いで人々を襲い始めていた。
「……まったく、ひどい事をしてくれるよね」
　リオは殺界を形成し、人々の避難を迅速に行う。
「その珍妙な被り物の子はデウスエクスよ！　こちらの指示に従って、落ち着いて避難をお願いします！」
　近場にいたフォトナが、人々へと呼びかける。デウスエクスという言葉に恐怖を覚えた人々は、その場から逃げ出し始めた。
「俺達はケルベロスだ、落ち着いて避難してくれ」
　割り込みヴォイスを使った上で名乗りを上げた、ヴィンチェンツォ・ドール（ダブルファング・e01128）。彼は隣人力も働かせ、人々が逃げ遅れないように避難指示を出す。
「お姉ちゃん、どこにいけばいいの？」
　そんな一般人の男の子の問いに微笑む童顔のフォトナは、ラブフェロモンの効果を使いつつ、人々を誘導していたようだ。
「まもなくデウスエクスが通るので、道を開けてくださいな」
　セレスティンも殺界を形成しながら、逃げ出す人々に呼びかける。
「屋台のゲームで勝負だーっ」
　仲間達と連絡を取り合う莱恵はそこを通り、指定の路地へとマグロガールの誘導を行う。
「ほれ、こっちじゃ、こっち」
「こっちでならもっと遊べるぞ、ほらほら」
　挑発するようにして敵呼びかけるカノンは昼間と違い、嬉々として依頼に当たる。旭もマグロガールの気を引きつつ、おびき寄せていた。
　そうして、予め決めた裏路地までマグロガールが誘導されてきたのを見計らって蒼眞がテープの一端を外すと、メンバー達は敵を伴って中へと入る。
「どこで遊べるのー？」
　問いかけてきたマグロガール。再度テープを封鎖する蒼眞が、割と大きい彼女の胸へと思いっきりダイブする！
「きゃー」
　そこで、一般人の避難に当たっていた男性陣が駆けつけてくる。
「シニョリーナ、おいたが過ぎるようだな。俺達が楽しませてやろうか？」
「ここで、キミを止めてみせる」
　ヴィンチェンツォとリオは、暴れるデウスエクスを止めにきたはずだった……が。
　目の前にあるのは、デウスエクスとはいえ少女が、ケルベロスの男性に胸を揉まれている状況……である。
「あれ？」
　目の前で起こる状況に莱恵とタマが呆然とする中、一般人の誘導を終えたセレスティンとフォトナが駆けつけ、暴走気味な蒼眞の目を覚まさせてから仕切り直す。
「……で、何故にマグロなんだ？」
「つーん」
　完全に嫌われたらしく、蒼眞はマグロガールにそっぽを向かれてしまう。
「どうして、お祭り会場を狙うのかな」
「折角だから、楽しくしたいかなーって」
　次にリオが問いかけると、マグロガールは構えを取りつつ告げる。リオは素直に答えたのが少しだけ意外だったようだ。
「それで、遊んでくれるんでしょー？」
　彼女にとっての遊びとは、暴れる行為に他ならない。
「そういうことするのは、とても許されないよ」
　再び暴れ始めようとするマグロガールへとリオが告げて、構えを取る。それに合わせ、メンバー達も応戦すべく武器を抜くのだった。

●暴れるマグロ娘にお仕置き！
　襲い掛かってくるマグロガールへ、真っ先に飛び込んでいく蒼眞。
「ランディの意志と力を今ここに！」
　多少仲間に抑えられようとも、彼のこの気持ちは止められず。終焉を破壊する力を持つ冒険者の力の一端を借り……マグロガールへと斬りこんで、再び全力でおっぱいダイブ。
「きゃー」
　じたばた暴れるシャイターン、マグロガール。
　ヴィンチェンツォは一つ咳払いをし、気を取り直してデウスエクスへと告げる。
「Festeは皆で楽しむものだ、大人しくしてもらおう」
　彼はリボルバー銃を構え、蒼眞の一撃で身体を痺れさせた敵目掛け、二丁拳銃を構えて飛び込んでいく。そして、舞うように躍りかかりながら、ヴィンチェンツォは全方位に射撃を行い、弾丸を叩き込んだ部分を燃え上がらせる。
「もう、怒ったんだよー」
　前衛メンバーの正面にフォトナが雷の壁を構築する中、なんとか蒼眞を振り払ったマグロガールが、手にする風船ヨーヨーを伸ばしてきた。
　それを受けた盾役の旭は、破裂した水風船で身体をびしょびしょにしてしまう。
「おお、楽しそうな攻撃……、じゃなくて！　楽しいお祭りで人のトラウマになるようなことするなよな！」
　敵は水風船ヨーヨーを使うと聞き、その対策として旭は下に水着をバッチリと着用していた。旭は仲間の背後にカラフルな爆発を巻き起こし、マグロガールを倒す為に士気を高めていく。
　びしょ濡れ対策をしていた旭はいいとしても、これを街中でやられた日には、女性は大変である。
「水攻撃とか……。いやだわ、いい女になっちゃうじゃない」
　後方のセレスティンは笑顔を浮かべ、ドラゴンの幻影を放った。
　前衛として、盾となるのは旭だけではない。敵の正面にふわりと現れたリオが弧を描く斬撃でマグロガールを切り裂けば、莱恵がタマと一緒になって特攻してくる。
「行くよ、タマ！」
　タマが鳴き声で気を引く隙に、彼女は振り回すドラゴニックハンマーを敵へと叩きつけていく。
「吾輩だって、ちゃんとやる気はあるんじゃよ？　そうは見えないかもしれんがのぉ」
　後方からは、カノンがガトリングガンを素早く撃ち放ち、マグロガールの足を止める。
　そこでまたも迫る蒼眞。全力でマグロガールのおっぱいを狙う彼にはもはや感服せざるを得ない。
「やーなのー」
　じたばたじたばた。
　倒すべき敵であるのがやや惜しいマグロガールだが、残念ながらデウスエクスである。そいつはしっかりとスーパーボールをケルベロスに向けて投げ飛ばしてきた。
「来たれ、破魔の御業。我が眼前に立つ魔を、掴み捉え、払い賜え！」
　仲間がそれを受けてくれる間に、フォトナが攻め入る。彼女が呼び出す御業は、なおもマグロガールを押さえつけた。
　中衛として立つヴィンチェンツォは、その間に仲間達の状況を確認する。なぜかこの状況でマグロガールの攻撃を集中して受けているのは、莱恵だったりする。
「大丈夫か？」
「うん、まだ大丈夫だよ、ヴィンチェンツォお兄ちゃん。オウガメタルって便利だよね！　重厚な鎧だけど、重さがないなんて！！」
　敵がほん投げてくるスーパーボールから仲間を守るべく身を張りながらも、莱恵は敵に時を凍結する弾丸を撃ち込む。
　傷はタマが自らの属性を莱恵に付与して、回復に当たってくれていた。
「もう随分とお祭を楽しんでいるように見えるけれど、とても迷惑な楽しみ方ね……」
　笑いを浮かべたままのセレスティン。しかしながら、その優しい笑顔とは裏腹に、ブラックスライムで作り出した刃で敵の体を深く抉るように攻撃を行う。
　シャイターンは炎を飛ばすことがあるが、マグロガールがそれを使用する様子はない。余裕で髪をかき上げてから、セレスティンは挑発するように告げる。
「あら、お得意だと聞いていた炎は使わないのね」
「むー」
　ここぞと、ヘッドバットを叩きつけてくるマグロガール。仲間を庇うリオがそれを受け止める。
「さっきの質問、答えをちゃんともらってなかったよね」
　リオはなぜ祭り会場を狙うかと尋ねた。だが、マグロガールは楽しいからと答えただけ。具体的な理由はない。
「まあ、答える事はできないよね」
　人が多いのが一番の理由っぽいけど。そう推測しながらも、リオは反撃にと日本刀で影の如き斬撃を浴びせかけた。
「それじゃ……行こうか、シルヴァーナ！」
　回復役のフォトナは仲間の傷は軽微と判断し、攻撃を続ける。シルヴァーナと名づけたオウガメタルを拳に纏い、鋼拳を敵へと叩きつけていく。
「地の塩なれ」
　旭が破ったのは、勇気を込めたカード。その紙片一つ一つが刃となり、彼の認めた敵、マグロガールを切り刻む。
「どうぞこの華を越えていらしてください」
　セレスティンも仕掛ける。マグロガールの周囲に炎にも似た紅い華を咲き乱れさせ、その根に含む麻痺毒で敵の体を痺れさせる。びりびりする敵に、セレスティンはやはり笑いを湛えたままだ。
「しっかりと狙わんとのう」
　カノンは自身の強さにやや不安を抱えていた為、狙いを定めてオーラの弾丸を飛ばす。それは捉えたマグロガールの身体を食らいつき、グラビティ・チェインを削り取っていく。
「はうー」
　体力が限界なのか、くらくらしていた敵へヴィンチェンツォが攻め入る。
「出で立ちまで合わせるのなら、守り事も習っておくべきだったな」
　彼は素早く、的確にマグロガールの頭、いや、マグロ部分を撃ち抜く。
「きゅー」
　それもマグロガールの一部らしい。トドメの一発を受けた彼女はついにぺしゃりと地面に倒れる。
「Addio」
　そんな彼女の為にと、ヴィンチェンツォは地面に紫煙を上げる煙草を一本立てたのだった。

●弟妹のお土産にも
　マグロガールを倒し、路地にヒールを施すケルベロス達。
　カノンが桃色の霧を広げて癒している中、蒼眞は自らの張ったテープを剥がしていた。あれだけマグロガールに飛びついた彼はなんともご満悦である。
「ふー。なんとか倒せたね。疲れたよ。みんなお疲れ様」
　リオは仲間をねぎらう。改めて依頼の完遂を確認し、メンバー達はそのまま祭りに戻ろうとする。
「さて、俺達もFesteに繰り出そうじゃないか、楽しまねば勿体無いだろう？」
「屋台を見て回ろうかな。お祭り、ボク大好きなんだよね」
　ヴィンチェンツォが誘いかけると、リオがわくわくしながら食べ物の屋台を見回り始める。
「わっ、これおいしそう。あっ、あれも美味しそう」
「日本のお祭りと言えば……。りんご飴、わたあめ、イカ焼きにタコ焼きって所かしら？」
　フォトナが思いつく食べ物を声に出して挙げていると、すでにその幾つかを買い込むリオが片っ端から口にしていたようだ。
「流石にそんなに一杯、入らないけど……」
　くすりと微笑むフォトナはそのうち、りんご飴をチョイスしていたようだ。
「楽しそうで目移りするな。タコ焼き、焼きそば……あ、かき氷もおいしそう」
　ケルベロス達は固まりながらも個々で楽しむといったスタンス。旭も流れで食べ物の屋台に寄って購入し、食べながらさらに次の食べ物を買っていく。
「運動したらお腹すいちゃうから、仕方ないよな」
　持って帰れそうな食べ物は、妹への土産にしようと旭は考える。
「俺も妹に土産を買うとするか」
　ヴィンチェンツォも祭りに出向くという話を妹にした際、リンゴアメとワタアメという物を欲しがっていたことを思い出していた。そんな大切な妹の為にと、彼は各屋台で希望の品を購入する。
　カノンもまた唸りながら、家で待つ可愛い弟の為にとお土産をセレクトする。
「何がイイか迷うが……、やはり、わたあめとかが良いかの？　いちご飴も捨てがたいぞい」
「りんご飴４つにわたあめ２つ。……あと、焼き鳥８本欲しいわね」
　その隣では、セレスティンも妹達の土産用にと購入していたようだ。
　自分よりも弟妹へのお土産と考えるメンバーも多いが、セレスティンは自信も楽しもうと金魚すくいの屋台を覗き込む。
「私、得意なのよ」
　見た目に対する戦い方と同様に、これまた鮮やかなポイ捌きで金魚をすくうセレスティン。それに客達は目を奪われていたようだ。
　莱恵も金魚すくいをしていたが、彼女は戦い前にも買っていたわたあめやカキ氷を手にし、今度は風船すくいを楽しんでいた。
　そんな仲間達を眺める蒼眞は祭りの雰囲気を楽しみつつ、美味しそうに焼きそばやたこ焼きを食べていた。ある意味でこの祭りを一番満喫していたのは、彼だったかもしれない……。

作者：なちゅい	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2016年9月25日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
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