徐々に色づき始めた木々の見て取れる深い森の奥。
人の身では辿り着くことすら困難なその場所に、息を潜め、ひっそりと暮らす者達がいた。
背の高い木々に隠れるようにひっそりとたつ蟻塚のような住居がいくつも集まり、そこでローカスト達は静かに過ごしていた。
ローカストの中にも、もはや静かに定命のときをただ待つことしか出来ない者達は少なからずいた。
そんな者達が寄り集まった結果できあがったのがこの集落であり、来るべき時が来るまで彼らはその余生を何者にも邪魔されず過ごすはずであった。
その集落に突然、ローカスト達の悲鳴が沸き起こる。
住居が音を立てて崩壊し、逃げ惑うローカストを後ろから踏みつけにするのは集落に存在するものとは全く違う、一目見て戦闘に特化したものだとわかる動き。
「あまり手荒なことはしたくない。次の戦いにお前達のグラビティ・チェインが必要なのだ、できることなら黙示録騎蝗のために進んでその身を捧げて欲しい」
口調こそ穏やかではあったがそのローカストの言葉は仲間達に死ねと言っているのとなんら変わりはない。
「これまでの犠牲を無駄にしないために、更なる犠牲を必要とするか……」
自嘲的に笑いながらそのローカストは、命に背き逃げようとするローカストを追いかけ、地を蹴った。
ニア・シャッテン(サキュバスのヘリオライダー・en0089) はやや疲れの見える表情をしながらも、その瞳は爛々と力強く輝かせ、あつまったケルベロス達に対し、頭を下げた。
「ダモクレス、ドラゴン、そしてお次はローカスト……全く心休まる暇もないですね? ともかく、ーザンライト・ゴーストセイン(のら魔女・e05320)さんの調査によって、ローカスト達が広島市を下水道を用いて制圧する大規模な作戦を進めていることが判明しました」
はきはきと喋りながら、ニアは携帯端末を操作し、今回の大掛かりな作戦について、詳細な情報をケルベロス達に見えるように表示しつつ、口頭では重要な部分だけをかいつまんで説明していく。
今作戦ではローカストの特殊部隊、ストリックラー・キラーとその指揮官であるイェフーダーが直接指揮を執り、個ではなく群れで挑むことでケルベロス達に対抗しようとしているらしい。
ストリックラー・キラーのローカストは多数のコギトエルゴスムを所持し、グラビティ・チェインの枯渇したローカストと共に下水道から市街地へ潜入、グラビティ・チェインの奪取と同時にコギトエルゴスムを新たたローカストに変え、戦力を増やしつつ広島市の制圧を目論んでいる。
「作戦実行から都市制圧への猶予時間は約二十四時間、皆さんには下水道内で敵を迎え撃ってもらいます。敵はストリックラー・キラーに所属するローカストと枯渇状態のローカスト二体。しかも失敗の許されない作戦です一筋縄ではいかないでしょう。でもそれはこちらも同じです、一組でも通してしまえば被害は甚大なものになります、なんとしても敵を止めてください」
そこまで喋った後、ニアはやや難しい顔をしながら付け加える。
「もし、この二体を早急に片付けられたなら、敵の指揮官であるイェフーダーの元に向かってください。消耗した状態での戦いは危険と思いますが、イェフーダーを潰せれば相手の動きを大きく制限できるはずです」
全体の説明を終えたニアは、続いて目の前のケルベロス達が担当にすることになる二体のローカストに関しての情報を喋りはじめる。
「まずは、ストリックラー・キラーのローカストですね。こちらは蟻のような二足歩行型のローカストで、毒を用いた搦め手を得意としています。勝つためにはどんな手でも取ってくるタイプですね。
そして枯渇状態のローカスト、こちらは蛾の幼虫……所謂毛虫ですね。体長は二メートルほどで有刺鉄線のような体毛を生やしていて、青や赤といった明らかにやばい色の外見をしています。こちらも強力な毒をもっていますが、基本的に遠距離攻撃手段はないため対処はしやすいでしょう」
一通り説明を終えたニアはケルベロス達にもう一度頭を下げ、声をかける。
「負ければ、広島市に多大な被害が出ることは間違いないでしょう。あちら同様こちらも負けは許されない状況です。しかし、ここで勝って、イェフーダーを撃破できれば戦況はこちらへと大きく傾きます。ローカストとの戦いを終結させるためにも、なんとしてもこの戦いただの勝ちではなく、大勝へと導きましょう」
参加者 | |
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ラインハルト・リッチモンド(紅の餓狼・e00956) |
蒼天翼・真琴(秘めたる思いを持つ小さき騎士・e01526) |
エレミア・ベルリヒンゲン(護りの劔・e05923) |
ククロイ・ファー(鋼鉄の襲撃者・e06955) |
日月・降夜(アキレス俊足・e18747) |
スノードロップ・シングージ(堕天使はパンクに歌う・e23453) |
ヨミ・カラマーゾフ(桜流し・e24685) |
ヒビスクム・ロザシネンシス(メイドザレッド・e27366) |
●
暗く湿り気のある狭い道をを二体のローカストは進んでいく。
一体は細身の暗い色の体をやや前傾に倒しつつ、周囲を警戒しながら進んでいく蟻型のローカスト。
もう一方は狭い下水道内を移動するにはやや不便そうな巨体の芋虫型のローカスト。
蟻型のローカストが音を殺し進むのに対し、毛虫型のローカストの方は無警戒で後に続くが、その移動方法のお陰か物音を立てることはない。
彼らが進むのは広島市の市街地に張り巡らされた下水道。
地下から市街地を襲撃し奪取したグラビティ・チェインを用い、コギトエルゴスムから新たな枯渇状態のローカストを作り出すことで戦力を増やし広島市を制圧するのが彼らにかせられた使命であった。
いくつかの通路が交差する開けた場所でローカストは一度足を止める。既に目的地までの道は半ばを過ぎている。今の所作戦は順調であるといえた。
それ故に、蟻型のローカストは少しだけ警戒を強めていた。
これまでも幾度となく作戦遂行の妨害をしてきたケルベロス達がこのまま指を咥えて見ているはずがないと。
彼のその予感は当たっていた、しかし、警戒だけでは十全とはなりえない。
闇の中を小柄な体躯が音もなく駆ける。蟻のローカストはそれに気づくが、芋虫のローカストの方はただ前進を続けている。
その不気味な棘を生やす気持ちの悪い体の側面を、エレミア・ベルリヒンゲン(護りの劔・e05923)の拳が力強く打ち付ける。
暗がりを見通す瞳で闇を抜け、一番槍を入れた彼女に続くようにその場でローカスト達を待ち伏せしていたケルベロス達が、物陰から一斉に飛び出した。
●
事前に読みこんでいた地図から、敵の進行速度、接敵時間を計算していた彼等の待ち伏せは見事に成功した。
闇を切り裂くように次々に灯る明かり。
蒼天翼・真琴(秘めたる思いを持つ小さき騎士・e01526)のばら撒くサイリウムが闇を照らし、通路の闇を払う。
「やはり来たか……」
「悪いけどここでアナタたちはDead endネ。さぁ、ビッキーいきマスヨ!」
「ストリックラー・キラーだか何だか知らねえが俺とお嬢さんとの主従コンビの力を魅せつけてやるよ」
敵の注意を引くように躍り出たスノードロップ・シングージ(堕天使はパンクに歌う・e23453)は声を上げ、彼女の従者であるヒビスクム・ロザシネンシス(メイドザレッド・e27366)と視線を交わし、一つ頷く。
「サア、アタシの歌を聴くネ!!」
「盛り上がって行こうじゃねーか!!」
楽器を手にしたスノードロップの背後で、ヒビスクムが七色の爆発を起こし、下水道はたちまちスノードロップのライブ会場へと早代わりする。
エレミアの攻撃をさして気にした様子もなく鈍い反応を返していた芋虫の方も流石に強い光と音の奔流に気づくと、ゆっくりとその巨体をもたげ、戦闘態勢をとる。
だが当然待ち伏せていたケルベロス達のほうが二手も三手も先をいっている。
「ご機嫌な戦場じゃねぇか、データアクセス『ドワーフ』!」
スノードロップの歌声に乗るようにククロイ・ファー(鋼鉄の襲撃者・e06955)が杖を手に前に出る。レプリカントである彼の中、記録されたドワーフの戦闘術が彼の動きを力強く、重みのあるものへと変化させる。
「壊・震・撃イィィッッ!!」
地を震わせる一撃が芋虫の頭部を打ち付ける。くぐもった悲鳴のような鳴き声を上げた芋虫は狭い通路内をのたうつ、
無数の毒針を持つその巨体がそうして身じろぎするだけで、その周囲は近寄りがたい死の空間へと早代わりする。
「守って」
咄嗟にヨミ・カラマーゾフ(桜流し・e24685)は地に守護星座を描き、周囲に守護の障壁を展開するものの、僅かに敵の勢いを削いだ障壁は音を立てて崩れ去り、衝撃がケルベロス達を襲う。
「出鱈目なパワーですね」
被害を受けつつも範囲外へと脱したラインハルト・リッチモンド(紅の餓狼・e00956)は自重で通路を陥没させる芋虫の力に軽く驚きながらも、腰に下げた鞘を引き寄せ、暴れまわる芋虫との距離を詰める。
頭上から降り注ぐ瓦礫をかわし、迫る毛鉤を避け、ラインハルトは刀を抜き、切りかかる。
近寄る事に危険はあれど、その巨体に攻撃を当てるのに苦労はしない。切り裂かれた傷口から溢れ出す気味の悪い色の血液にラインハルトは怯まず、短く唱える。
「You're mine!」
魔力を注がれた彼の血は幾つもの刃を形成し、敵の傷口をめがけ一斉に突き立つ。
再び揺れる巨体。それ沈めるかのように、真琴の放つ重力を宿す蹴りが、芋虫の体を押さえつけ、日月・降夜(アキレス俊足・e18747)が放った氷結の螺旋が、その体を凍てつかる。
歌声が反響する下水道内、芋虫に攻撃を集中したケルベロス達の連撃はそのタフな体に確実にダメージを蓄積していく。
しかしこの狭い通路で、巨体の敵を相手にすればどうしても視野は狭まり死角ができる。
その僅かな隙をつくのが、ストリックラーキラーに所属する蟻型のローカスト、彼の得意分野であった。
音もなく光届かぬ下水の天井を這い、彼はヨミを狙い頭上から奇襲をかける。
彼が使うのは鉤爪や、牙といった蟲の生態を利用した武器ではない。両の手に握るのは何の変哲もない短刀。
敵を倒すのに派手で特別な武器は要らない。それが彼の持論であった。
交差するように振るわれた短刀の刃がヨミの首筋を捕らえる直前、その体は強い力に引かれ、かわりに、ヒビスクムの構えた戦斧の柄がその攻撃を受け止めていた。
「まるで忍者みてーだが、本物の忍はもっと鮮やかだぜ?」
ヨミの体を引き寄せ、奇襲を防いだヒビスクムのその行動に、ローカストは冷静に一歩引き、その分の距離を詰めてくるヒビスクムに対しカウンター気味に短刀を振る。
再び戦斧の柄を立て、その攻撃を受けたヒビスクムの胸元を、ローカストの手を離れた短刀が浅く薙ぐ。
瞬間、ヒビスクムの視界が歪み、彼女はそのまま膝をつく。短刀に塗布された神経毒が彼女の体を蝕んでいた。
前に出て戦っているケルベロス達はその事態に気づいてはいたが、芋虫型のローカストに隙を見せるわけにもいかない。
蟻型のローカストはヒビスクムへと一歩踏み出す。それを遮るように、ヨミがローカストの前に立つ。
「私は貴方達が大嫌い。絶対に、許せない。仲間にも一般人にも、絶対に手を出させはしない、から」
ヨミの言葉を聞きつつも彼はただ短刀を構え、狙いをヨミへと移す。
来るか、とヨミが身構えた瞬間ローカストは突如退く。瞬きの間にその姿は微かな闇に溶け、気づけば芋虫と戦うケルベルス達に強襲をかけている。
「逃げ足が速いデスねー」
救援へとやってきていたスノードロップは手にした斧を担ぎなおすと踵を返し、再度前線へとむかう。
「背中は任せマスヨ」
その言葉にヒビスクムは笑いを、ヨミは頷きを返し、スノードロップは強く一歩を踏み出す。
●
狭く薄暗い空間に、戦いの音が幾重にも反響し、ケルベロスとローカストとの戦いの激しさを物語る。
作戦の通り攻撃を集中したことで芋虫型のローカストの消耗は著しいものの、動く毒針とでも言うべき相手との近接戦闘は予想以上にケルベロス達の負担となっていた。
敵が芋虫型の単機であればとっくに決着はついていたであろう。
交戦中幾度となく妨害を行う蟻型攻撃にケルベロス達は手を焼いていた。手段を選ばない攻撃と、かすかな傷からでさえ体を蝕む毒のせいでケルベロス達の動きはどうしても鈍くなる。
それを理解したうえでヨミが毒への耐性として守護の陣を展開するものの、芋虫型の強力な一撃が、その守護の陣を破壊してしまう。
ククロイが仲間達の治療にあたり、前線をなんとか維持するもの、芋虫のローカストを利用する、蟻のローカストの狡猾な手口が、ケルベロス達を思うように戦わせてくれない。
時に彼は攻撃を当てるためならば、芋虫型のローカストを同時に傷つけることすら纏わない。
「空腹で頭が回らないのは芋虫の方だと聞いていたんだがな」
蟻型の攻撃を捌きつつ、降夜の発する皮肉に蟻型は答えず、奇襲が防がれたと見るや無茶な追撃には移らず、あっさりと退く。
「外道が」
悪態を吐く降夜の元に芋虫の胴体が唸りをあげ、横合いから叩きつけられる。
「ガブリン守れ!」
ヒビスクムの命を受けたボクスドラゴンが、その体に毛針を受けるのも纏わず、力強く芋虫の体へと体当たりをし、降夜が攻撃を避けるだけの猶予を作る。
「クソ、埒があかねぇ!」
治療の追いつかないククロイの声が、下水道に反響する。
芋虫に力を注げば蟻型の奇襲を受け、それを警戒すれば満足な攻撃を出来ず、芋虫型の行動を自由にしてしまう。
だが、芋虫型にダメージは蓄積しているのは確かだ、その動きはあからさまに緩慢になっている。
開戦から長く前線に立つエレミアは傷つき、息を荒げながらも、そのことをはっきりと認識していた。
自らに残された体力、そして味方の状況を鑑みてこれ以上の長期戦を避けるべく、彼女は真琴とラインハルトへ一瞬の視線を送り、芋虫へと向けて突撃する。
「さぁ、こっちだよ。君の相手はここだ」
痛みを堪え、敵の周りを走りながら彼女は殆どかすり傷にもならないような攻撃で挑発しその気を引く。まんまとそれに乗った芋虫は、背後に回ろうとする彼女に向け、幾度となく尾を叩きつけるが、回避に専念する彼女を捕らえることができない。
焦れたように、背後へと振り返った芋虫はケルベロス達に背を向ける形となる。
「死を記憶し、そして恐れろ」
その時を待ち、あらん限りの力を貯めていたエレミアの戦斧の一撃が芋虫の巨体を引き裂き、深手を負わせる。死の恐怖に震える芋虫は半狂乱となり、周囲にただひたすら破壊を振りまく。
巻き込まれた小柄なエレミアの体が跳ね飛ばされ下水道の壁面へと強く叩きつけられるが、真琴とラインハルトは彼女の方にも目をくれず、ただ目の前の敵だけを見据える。
真琴は左手の親指の先を噛み千切り、噴出す血で符を染め上げ、それを宙へと放る。
「万象生みし根源たる力、我が血の元に呼応せよっ!」
言葉と共に彼の周りに静止したそれらは、血に秘められた魔力を用い、地を揺るがす。
崩壊した地面がローカストを飲み込み、頭上からの落石がその体を打ちつける。
「これで仕留めます」
そこへ切り込むラインハルトは初撃に感じた確かな手応えを信じ、もう一度自らの血を無数の刃へと変え、ありったけの力で芋虫の傷だらけの体へ叩き込む。
●
大きな悲鳴が下水道に木霊し、それが収まると、ぐったりと力なく横たわる、芋虫型のローカストの死体がそこにはあった。
「僅かな兵糧で十分な戦果であった。その犠牲は我等が種の確かな糧となるだろう」
同胞の死骸を前に、蟻型のローカストはそれだけを言うとケルベロス達と向き合う。
すぐには動けそうにないエレミアの治療にククロイとヨミがあたっている現状、動けるのは五人。誰もが傷を追い、万全な状態とはいえない。
対して敵は傷一つない手練。
短刀手に低く構えたローカストは躊躇なく踏み出し、治療中の三人を狙い仕掛ける。
そのいく手に降夜が阻む。
ローカストは右の短刀で切りかかり、降夜がそれを防ぐと、逆の手で下からの切り上げ。
一歩下がり避けようとした彼に対し、ローカストはそのまま短刀を投擲する。
降夜はヒビスクムとローカストの戦いの中でそのフェイントを既に見ている。だからこそ、わざとそうして武器を手放すように仕向けた。
短刀をバールで叩き落し、降夜は踏み込み鋭い蹴りを一撃。
よろめいたローカストは仕切りなおそうと後退するが、彼の隠れ蓑となる仲間はもういない。ケルベロス達全員の視線を前に、身を隠すことなどできるはずもない。
奇襲、搦め手。裏を返せばそれは彼の自信のなさの現われでもある。
それらを行使する為の盾がいなくなった今、彼の得意の戦法はもはや機能しない、それでも彼はケルベロス達と正面からぶつかり武器を交える。
「お前みたいな奴はすぐに逃げ出すものだと思っていたが」
「無駄な犠牲を増やしただけとなっては、仲間に顔向けもできまい」
返事が返ると思っていなかった降夜は驚きつつも、武器を振り下ろす。
防御のために掲げられたローカストの短刀を弾き飛ばしたバールの一撃が、ローカストの傷口を抉り、体液を噴出させる。
崩れそうになる膝に力をいれ踏みとどまったローカストが顔を上げた先、薄暗い通路を埋め尽くす真っ白な花弁と、漆黒の羽。
「死ト希望ヲ象徴する我が花ヨ」
「死と希望を象徴する主の花よ」
響く声は二つ。祈るようにヒビスクムが呪詛を込めた弾丸を、スノードロップへと放る。彼女は受け取ったそれを握りこみ、真っ直ぐに腕を突き出し、狙いをつけ、呪詛を重ねる。
「その名に刻マレシ呪詛を解放セヨ! スノードロップの花言葉、アタシはアナタノシヲノゾミマス!」
「その花言葉に刻まれし呪詛を開放せよ!! スノードロップの花言葉、俺はお前の死を望む!」
スノードロップの指から放たれた弾丸は周囲の花弁と羽を巻き込み、白く輝きを増しながらローカストへと真っ直ぐに突き進む。
咄嗟に突き出されたローカストの腕が白い光に触れた先から自壊し、まるで削り取られていくかの様に、光に飲み込まれローカストの体はこの世界から跡形もなく消え去る。
そして弾丸自信もが消え去り光が収まると、水音だけがかすかに響く静かな地下の空間が戻ってきていた。
●
「思いのほか時間がかかってしまいましたね」
「もう何班かイェフーダーの追撃に移ってるようだな、俺達もここを片付けてむかわねぇとな」
ラインハルトとククロイの言葉に、ケルベロス達は頷きつつ、すぐに必要最低限の周囲の修復作業へと移る。
「二人とも、平気なの?」
「この程度なら、ね」
「こういうのはメイドの仕事だしな」
心配そうに声をかけるヨミに対し、特に傷の酷いエレミアとヒビスクムはぎこちなく動きながらも、作業へと参加する。構造が単純な分手間はそれ程かからず、周囲はすぐに元の光景とさほどそん色ない状態になる。
「それじゃあ急ごう、エレミアとヒビスクムは無理をしないで」
真琴の言葉に二人が頷き、ケルベロス達はその場を離れ、この下水道の続く先、イェフーダーの元へと走り始める。
足音の反響する暗がりの中、降夜は回収したコギトエルゴスムを眺め、小さな声で呟く。
「仲間を信じ、グラビティ・チェインを満足にあのローカストに与えていたなら、勝敗は違ったかもしれないな……」
声は足音と水音にかき消され、降夜は顔をあげ、真っ暗な道の先を見つめる。
その先に待つこの外道の策を企てた者の最後を見届けるべく、彼らは急ぎ現場へと向かう。
作者:雨乃香 |
重傷:エレミア・ベルリヒンゲン(護りの劔・e05923) ヒビスクム・ロザシネンシス(地中の赤花・e27366) 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年9月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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