黙示録騎蝗~ポイント・オブ・ノー・リターン

作者:天草千々

「種の危機にこんなところで安穏としているとはな、愚図どもが」
 アリ型のローカストたちを前に、ナナフシに似たローカストが吐き捨てた。
「何が危機だ、すでにゲートは失われた! これ以上の戦いが何になる!」
 もはや帰還の手段はなく、森の奥深くで最期の時を待っていたアリたちは、襲撃者――ストリックラー・キラーたちに訴える。
「馬鹿を言うな。まだ終わってなどいない、生きている限り我らは進む、一歩でも前へ進み、牙を突き立て、喰らうのだ」
 だが返ってきたのは冷たい一瞥と、背筋を寒くさせる意志の込められた言葉だった。
「お、俺たちは戦わない……!」
「貴様らのような腑抜けの力などハナから当てにしていないとも」
 ならばなぜ、と不安げなアリたちの視線に、ナナフシは楽し気に肩を震わせた。
「戦わぬなら、戦えぬのなら命を差し出せ。貴様らのグラビティ・チェイン、我々が有効に使ってやろう――太陽神が、そう望んでいる」
 天にとどまらんと欲する落日は、異邦の民のみならず、自らの民をもその陽光で焼き払おうとしていた。
 
「広島市を目標としたローカストの大規模な作戦が察知された」
 ノーザンライト・ゴーストセイン(のら魔女・e05320)の調査により、下水道を利用し市内の一斉制圧を狙う作戦が判明したと、島原・しらせ(ヘリオライダーガール・en0083)は告げた。
「これは以前、各地の襲撃を手引きした『ストリックラー・キラー』という一派による作戦のようだ。大量のコギトエルゴスムを所持した彼らは、飢餓状態で目覚めさせたローカストともに地上に出て、市民からグラビティ・チェインを奪い、それを使ってさらに多くの飢えたローカストを目覚めさせるつもりだ」
 実行に移されれば、犠牲者と敵の戦力は雪だるま式に膨れ上がり、広島市は24時間の内にローカストに制圧されていたことだろう。
「だが今ならまだ間に合う。下水道内に散ったローカストたちを、地上に出る前に叩いて欲しい」
 これはストリックラー・キラーたちにとっても全てを賭けた戦いであり、ローカストに撤退の選択肢はない。
 敗北した場合、市民に犠牲が出る。最善を尽くしてほしい、としらせは告げる。
「皆が戦うことになるのは、ナナフシに似たストリックラー・キラーのローカストと、グラビティ・チェインが枯渇した状態で目覚めさせられたローカストのあわせて2体だ」
 枯渇状態のローカストはタガメに似た姿で、思考は鈍く理性を失った状態だという。
 また下水道内とは言え、先回りする形になるため大きな空間を選ぶ余裕はある、戦場の心配は無用だ、と言ってしらせは短く息を吐いた。
「それからもう一つ、この戦場にはストリックラー・キラーを率いるイェフーダーも出てきている」
 余力を残し、速やかに2体のローカストを撃破できたケルベロスたちには、下水道の中心点で待つ敵の首魁が次なる目標となるだろう。
「イェフーダーをここで討てれば、アポロンもいよいよ打つ手が無くなってくるはずだ。とは言え2体のローカストも容易い相手ではない、充分注意してくれ」
 大事なのはイェフーダーを誰が倒すかではなく、広島をめぐる戦いにどちらが勝利するかだ、と付け加えてしらせはミーティングを終えた。


参加者
繰空・千歳(すずあめ・e00639)
ギヨチネ・コルベーユ(ヤースミーン・e00772)
シェイ・ルゥ(虚空を彷徨う拳・e01447)
アリエット・カノン(鎧装空挺猟兵・e04501)
田抜・常(タヌキかキツネか・e06852)
未野・メリノ(めぇめぇめぇ・e07445)
茶野・市松(ワズライ・e12278)
砂星・イノリ(奉唱スピカ・e16912)

■リプレイ

 広島市の地下を走る下水道、その一角。
 幅はおおよそ3M、高さは4M超、中央に水が流れる箱型の通路は、『下水道』の単語に連想される狭苦しさよりも、その広がりと暗さによる重苦しさで満たされている。
 ストリックラー・キラーが乾坤一擲の舞台にと選んだ道は、いまやそれを察知したケルベロスが各所に網を張る猟場と化していた。
 それを致死の罠と出来るか、あるいは網を食い破られるかは各人の働きにかかっている。
「本来は下調べもなしに地下に潜るなど非常識なんですけどね……まぁ私たちには関係のないことですが」
 形の良い鼻をひくつかせて、アリエット・カノン(鎧装空挺猟兵・e04501)が呟いた。
 酸欠事故などケルベロスには無縁のこととは皆承知、わずかの間他愛のない雑談だ。
「臭いばっかりはどうにもなんねぇけどな」
 袖で口元を覆いながら、不満そうに言ったのは茶野・市松(ワズライ・e12278)だ。
「あら、泣き言には早いんじゃない?」
 そこへシェイ・ルゥ(虚空を彷徨う拳・e01447)と2人、地図上で敵首魁の予想位置を確かめていた繰空・千歳(すずあめ・e00639)がからかうように言った。
 大変なのはこれからよ、と表情をふわりとゆるませて笑う友人に、大げさに肩をすくめて応えた市松をつゆの尾が叩く。
「てっ」
 かぶいた姿のウイングキャットは、気合を入れろとばかりに短く鳴いた。
「分かってるっての、人の命もかかってんだ」
 もとより本気で不満だったわけでもない市松は、今度こそ口をとがらせる。
 友人同士のじゃれあいに口をほころぼせ、シェイはそれくらいでととりなした。
 他の仲間もみな、思い思いにその時を待っている。
 用意したブーツと足元を入念に確かめているのは、田抜・常(タヌキかキツネか・e06852)と砂星・イノリ(奉唱スピカ・e16912)。
 小柄な彼女らにとって、フットワークは戦いを支える生命線だ。
「バイくんは、いつも通り前をお願いします、ね。細い虫は私たちが引き受けるので、幅広の虫を……」
 相棒にそう確認する未野・メリノ(めぇめぇめぇ・e07445)を、横合いからエクトプラズムの手がつついた。
 見知った日本酒樽が体を傾けるのに合わせてメリノは首を傾け、頷く。
「鈴ちゃんは、千歳さんと私と一緒に細い虫の相手、です。頑張りましょうね」
 拳を握る羊の娘に、ミミックたちは親指を立てて答えた。
「――そろそろかと存じまする」
 1人瞑目し、耳をそばだてていたギヨチネ・コルベーユ(ヤースミーン・e00772)が静かな声で言った。
 下水道内は存外に多くの音で溢れている、水の音、声のようにも聞こえる風の音、地上から伝わる振動、ときおりどこからか響いてくるゴウンと重い音。
 それらを抑えて、通路を叩く硬い音が近づいてくるのはすぐに誰の耳にも分かった。
 確認すべきを終えた番犬たちは声を殺し、明かりを伏せて通路の端に身を隠す。

「――何っ!?」
 声が先か、光が先だったかはわからない。
 ぱっと無数の明かりがともると同時に、一撃が交換される。
 待ち伏せに驚きはしても、ストリックラー・キラーのナナフシの反応は早かった。
 打ちだされた毒の棘が市松の袖に赤い花を咲かせ、シェイのグラインドファイアが通路を鮮やかに照らす。
「ってえな、この野郎!」
「あなたたちには負けません、絶対に」
 市松の縛霊手が放った巨大な光弾が、メリノのオウガメタルが放つ光の粒子が作り出すローカストの影はひとつだけ。
「もう1体は!?」 
 マインドシールドをギヨチネへと飛ばしながら問うた千歳に、答えはすぐに示された。
 重い水音を立てて、通路の中央から扁平な体が突如として立ち上がる。
「――っ!」
「ァァァァラァァ――!」
 ナナフシへと詰めよったアリエットの虚を突いたタガメが右腕の鎌を振り上げる。
 褐色の風がそこに飛び込んでいった。
 ぎちり、と嫌な音を立てて、ギヨチネが掲げた左腕に刃が食い込む。
「ふっ!」
 巨漢のドラゴニアンは傷に構わず間合いを詰め、相撲のがぶりの要領で相手を浮かして数メートルも押し込んだ。
 もがくタガメを突き飛ばし、ドラゴニックハンマーを叩きつける。
「チィ、待ち伏せとはな!」
「圧殺!」
「ここから先は行かせないよ!」
 アリエットのハンマーが轟とうなり、砲撃形態をとったイノリのそれが高らかに吠えた。
 衝撃に翻弄されるナナフシに、急降下でおそいかかったつゆの爪はかわされたが、よけた先で鈴の酒瓶が脛を痛打する。
「おのれっ!」
 忌々しげな蹴りを跳びかわし、してやったりとつゆと鈴が尾と手を打ち合わせる。
 りん、と涼やかな音が鳴った。
「いけ好かない相手ですが――その分、迷わず殴れます」
 ギヨチネにかくれ駆け寄った常が、電光石火でタガメの膝を裏から蹴り飛ばす。
 膝が折れたところにギヨチネが身をぶつけ、更にナナフシと仲間から引き離した。
 完全な分断とはいかずとも、有機的な連携は望めないであろう距離だ。
「初手はとりましたね」
 上々です、とアリエットは小さく呟いた。

 ケルベロスたちの作戦は、2体を分断した上でまずはナナフシに攻撃を集中し、それからタガメを討つというものだった。
 敵の首魁に挑むには速度が勝負と聞いている、だがそれは必ずしもリスクを取るのに値しないリターンだ。
 仲間の傷はまずメリノが癒し、千歳がそれをフォローしつつ手が空けば攻撃にという構えはしっかりと目の前の敵を見てのこと。
 その中で一つ計算違いがあったとすれば、それはナナフシの力量だった。
 弱い、などとは口が裂けても言えない。
 その間にも鎌の一撃がつゆを深々と切り裂く――けれど正面切っての戦いが本領とも思えない相手ではあった。
(「もう少し攻めても良かったか」)
 タガメへと視線を一瞬向けて、シェイは思考を巡らせる。
 結論はすぐに出た。
 過ぎたことより、今に全力を挙げるべきだ。
「――悪いが先を急ぐのでね、君にばかり構ってもいられない」
 意地悪く笑って、シェイは予備動作なしに前蹴りをぶち込んだ。
 ナナフシの体が折れたところに仲間たちが続く。
 地獄の炎をあげる縛霊手が叩きつけられ、手刀をつくった芍薬まとう機械の腕が、刃の鋭さで傷を切り広げた。
 相手の細い体に対し、攻撃は点となる刺突よりも線を描いて払う選択が多い。
 敵の回避もまた自然と左右よりも、前後の移動に上下を加えたものになる。
「読んでるよ!」
「Feu de la salve!」
 千歳の攻撃に一歩を下がったところに、イノリのドラゴニックハンマーが再び吠え、追ったアリエットの豪奢な金の髪が、螺旋を描く無数の槍となって面を制圧する。
「くそっ、何をしている!」
 恨みごとの相手は、巨漢のドラゴニアンに動きを封じこまれていた。
(「有難いことで御座いまする」)
 敵の攻撃をほぼ一手に引き受けるギヨチネは、孤独な戦いを強いられているかに見えた。
 けれどそれは常が彼の影に表に動いて攻撃に徹し、バイくんがそれを守る形で動けばこその成果、役割の正しい分担だ。
 仲間たちがこの身を盾と活用してくれるなら、自分は敵の注意を引いてさえいればいい。
 ハンマーを構えた腕で突進を迎え撃ち、口から器官を突き出して背の常を狙おうとする動きを文字通り身を盾に受け止めた。
 その間にもつれあう二つの輪郭をなぞるように狐面の少女が前へと出る。
 抜き手の形を作ったあとで、思い直したように逆手に構えた惨殺ナイフを膝上の甲殻の隙間へと滑らせた。
「――これが田抜流です」
「ギィィイイイァァアア!」
 再びすっと陰に溶け消えようとする常に、タガメが吠えた。
 怒れるローカストを硬化した爪で食い止めんとしたギヨチネの腕が空を切る。
「むっ」
 敵が身を伏せたのだ。
 壁のようだった幅広の体がひざ下に広がる平面に、それは距離感と速度を見誤らせた。
 抑えつけようとする動きを再びかわして、敵はギヨチネの守りをかいくぐった。
 常が怯むことなく身構える、けれどその体は不定形の腕によって突き飛ばされた。
 直後、飛び上がったタガメの足が、常をかばったバイくんに突き刺さる。
 めきと嫌な音と共に強烈なフットスタンプがミミックを汚水の底へと沈みこませた。
 しぶきがおさまった後も、小さな体は浮かび上がってこない。
「……っ!」
 仮面の下で常が短く息をのむ。
「ウオオオオオッ――!」
 直後、無念とも怒りともつかない叫びをあげて竜の男が飛び掛かり、爪を立てると通路の壁へとタガメを押し切って叩きつけた。

「おうおう、どうしたぁ! 喧嘩に勝つ気あんのかよ!」
「カンに障る奴め……!」
 体色を暗く変化させ、陰に紛れ込まんとするナナフシに、竜爪撃の一撃を繰り出しながら市松が吼える。
 勝負勝負と威勢のいい声は仲間を鼓舞し、守勢を強いられる敵を苛立たせた。
 もっとも当人は気持ちのままに叫んだだけで、挑発のつもりは無かっただろうが。
「市松、守りも忘れないでね」
「おうよ!」
 普段であれば自らの役割を任せた千歳が軽く諫めて、左腕をとんとんと叩く。
「さあ、お手伝いの時間よ」
 呼ぶ声に応じて現れた無数の小人たちが、千歳の、メリノの、イノリの傷を癒し、服の汚れを払って乱れた髪を整えた。
 くすぐったそうに身をよじった少女たちは、姿勢を改めて敵を見据える。
 ブレイブマインの爆音が響く中、イノリが大きく息を吸い込み声を上げた。
 ――諦めない、戦い抜く。
 歌いながら、それは彼らも一緒だと思った。
 ローカストたちは滅びに際して、互いへのわだかまりを捨てたように見える。
 けれど仲間を、自身を省みない道の先は結局終わりでしかないはずだ。
(「どうして、そんなことが出来るんだろう」)
 それが彼らと自分たちの違いなのだと断じるのは容易い、けれど重なるところは本当にないのか、全てのローカストの望みが『そう』なのだろうか。
 問うたところで、答えは今は示されそうにない。
 シェイの両手に構えた武器が閃く。
「ちゃんと見ないと危ないよ……っと」
 繰り出される無数の刺突を、ナナフシは風に揺れる枝葉のような動きでいなす、けれどかわしたはずのその体が裂け、傷が刻まれていく。
「ぐっ……!」
 グラビティが生み出した無色の刃は、密やかに命の火を脅かした。
 ちらとタガメと戦う仲間たちに目を向けて、メリノが大きく息を吸い込む。
 ――生きることは、戦うこと。
 最後の最後まであがこうというローカストのそれは責められるものではないだろう。
 けれど、そのために生じる犠牲を看過できようはずもない、結局、相打つ以外に道がないのなら。
「悔いなく、出し切るといいですよ」
 メリノが歌い、鈴は小判の雨を降らせそれを突っ切ってつゆが行く。
「まだ止まるわけには……!」
 顔を刻まれ、ナナフシが呻く。
 ぶんと振り回した腕から伸びる鎌が、シェイの胸を裂き赤い花を咲かせた。
 しかし抵抗もそれまでだった。
 すぐに千歳が傷を癒し、市松がオウガメタルをまとった拳で地獄の炎を叩きつける。
「止まらないのなら、打ち倒すまでです」
 そしてアリエットのハウリングフィストが甲殻ごとナナフシの命を打ち砕いた。

「――我が魂は一切の官能の故に照り映える」
 呼吸を整えてギヨチネは、一字一句を静かに紡ぐ。
 白い花で飾られた盾の癒しは自身ではなく、足元の小さな仲間に向けられた。
 そこではバイくんが、ひしゃげた体を傷と汚れでぼろぼろにしながらエクトプラズムの武器を構えている。
 姿を保っているのが不思議なくらいの状態で、自らの何倍もの巨大な敵へ挑む彼の勇気に、自分の意志は比することができるだろうか。
 それを証明したいと、強く思った。
 自身も傷だらけの状況で、ハンマーを引きずりつつ前に大きく一歩踏み出す。
 心の奥深いところから沸き立つものが、今日もギヨチネを支えていた。
「固いものは、脆いものです」
 常の、降魔の力を宿した蹴りがタガメの膝を蹴りぬく。
 仮面の下で彼女もまた耐え忍んでいた。
 自身はほとんど傷を負わず、その分仲間は傷ついている。
 彼らのためにもっと重い一撃を、リスクを負った動きを――そんな欲が頭をもたげる。
 けれどそれは気が晴れるとしても、仲間の献身に報いる選択ではない。
 心を殺し、唇を噛んで狸の少女はただただ確実な一手を積み重ねていく、それが自分の役割だと言い聞かせて。
「やぁ、待たせたかな」
「あとはオレらに任せとけ!」
 待ち望んだ声はそんな中で響いた。
 軽やかに駆けたシェイの槍がタガメを貫き、市松がすれ違いざまにギヨチネの肩を叩く。
 それを真似て鈴がつゆが、バイくんの背をこちらは優しくなでていった。
 均衡は、たちまちのうちに崩れた。
「――ゥゥラァァァ!!」
 劣勢を悟ったタガメの叫びはどこか悲哀に満ちている。
 いかに相手が侵略者、自らこの地を訪った外敵とは言え、彼らの種の未来を閉ざしたのは他ならぬ自分たちだ。
 生きたいと真摯に願うものもいたと知れば、わずかばかりの心苦しさも覚えないと言えば嘘になる。
「――せめて、甘くて素敵な夢の中に」
 身勝手だろうかと考えながら、千歳は言葉を手向ける。
 アリエットの髪が再び無数の槍となり、タガメを通路の壁へと縫いとめた。
「行こう」
 身を覆う友に呼びかけて、ヤマイヌの少女がその機に駆けた。
 勢いのまま、敵を囲む仲間たちを越えるべく壁を蹴る。
 足元まで伸びたオウガメタルが、壁に歯を立ててそれを手伝う、一歩で腰を越え、二歩目で肩の高さを越えた。
 三歩目で高く飛び上がり、ドラゴニックハンマーを握る手に力を込める。
 見下ろすタガメの喉から搾りだされる『U』と『A』の音――あるいは誰かを呼んでいるのだろうか。
(「忘れないよ」)
 呟き、振り下ろしたイノリの超重の一撃が可能性を潰えさせた。

「――こちらにももう一つ、他には?」
「ありがと、多分もう残っていないと思う!」
 汚れに構わず流れへ手を突っ込んでいたイノリは、アリエットから受け取ったコギトエルゴスムをアイテムポケットへ放り込む。
 見つかった10余りのそれが、今後どうなるかはわからない。
 けれど命そのものが発するような輝きをイノリはただ綺麗だと、そう思った。
「少し時間がかかったでしょうか」
 いくらか傷の癒えたバイくんを抱きしめてメリノが呟く。
 決着までに要した時間は10分に満たない。
 余力を残しての結果は完勝と評していい、けれど速度の上では最適解だっただろうか?
 悩む気配を察してかシェイが軽く手を打った
「誰かが倒してくれるのならそれで良し、苦戦しているのなら私たちが力になれるさ――さぁ、行こう」
 気負わぬ言葉に思い思いの返事を返し、ケルベロスたちは道を駆けだす。
 先行した仲間からイェフーダー撃破の報が入ったのは、それから間もなくのことだった。

作者:天草千々 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。