黙示録騎蝗~球場跡地の下水道に潜むローカスト

作者:沙羅衝

 深い森の奥で、固めた土を使ったローカストの集落があった。そこに居るローカストは、何かに怯えるように、ひっそりと息を潜めていた。
 そんな集落に、悪態をつきながら、1体のゴキブリ型のローカストが大股で入ってきた。
「糞がっ!」
 しわがれた声が、集落に響く。その声は、決して大きくはないが、その威圧感と殺気が、その場に居るローカスト身を更に小さくする。
 そのローカストは目の前の怯えたローカストの胸倉を掴み、地面に投げつける。
 ドゴッ……。
 鈍い音が、その他の音を遮断する。
 ゴキブリのローカストは、その投げつけたローカストの首を掴み、吊り上げる。
「……お前達のグラビティ・チェインは、次の作戦の礎となる。……来い。黙示録騎蝗のために、その身を捧げるのだ!」
 ゴキブリのローカストは、そのままずるずると、1体のローカストを引きずり、別の施設へと移動していった。
 その施設へとゴキブリのローカストが入っていく。扉をくぐると、複数の目がそのローカストに注がれる。
 そこには、複数のローカストが集められていた。そのローカスト達は、皆怯えきった表情をしている。
 ゴキブリのローカストは、つれてきたローカストを放り込み、その扉を閉めた。
 そして、少しの間を置き、複数のローカストの悲鳴が地鳴りのように轟いた。

「ノーザンライトさんの調査で、ローカスト達が、下水道から侵入して広島市を制圧する大作戦を行おうとしている事が判明したんよ」
 集まったケルベロスを前に、宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)が、ノーザンライト・ゴーストセイン(のら魔女・e05320)が調べた情報を開示していた。
 絹の説明では、グラビティ・チェインを枯渇させたローカストを使って事件を起こした、特殊部隊『ストリックラー・キラー』が行う作戦との事であった。
「ちょっと前に襲撃事件があったんは、何人かは、知ってるみたいやけど、それはうちらケルベロスが阻止したんよ。んで、次の作戦、ってわけや」
 頷くケルベロスを見ながら、タブレット端末を操作しながら絹が説明を続ける。
「その指揮をとってたんは、イェフーダーっちゅう指揮官や。今度はイェフーダーも含めて、ストリックラー・キラーの総力が結集されているらしいわ。
 ストリックラー・キラーのローカストは、多数のコギトエルゴスムを所持しててな、枯渇状態のローカストと共に広島市の下水道から市街地に侵入し、人間を虐殺してグラビティ・チェインを奪取、そのグラビティ・チェインを利用して、コギトエルゴスムを新たな枯渇状態のローカストに変えて、戦力を雪だるま式に増やしつつ、広島市全域を制圧、数十万人の虐殺を行おうとしてるっちゅう作戦みたいやな」
 その説明を聞いたケルベロスが、それ程の大規模な作戦なのかと、声を出す。
「せや、この作戦が実行されれば、都市制圧までに掛かる時間は24時間以内と想定されてる。今回は、事前に事件を察知する事ができたから、下水道内で敵を迎え撃つで。
 敵は、市内全域を同時に襲撃するために分散して行動してくる。うちらケルベロスの各チームは、それぞれ『ストリックラー・キラー』のローカストと、枯渇状態のローカストの2体と戦う事になると思うわ。
『ストリックラー・キラー』のローカストは、かなりの覚悟をもって作戦に挑んでくるみたいでな、ケルベロスが待ち構えていたとしても、逃げる事無く、ケルベロスを撃退して作戦を遂行する為に、最後まで戦い続けるっちゅう事みたいや。
 全てのチームが2体のローカストと同時に戦う事になるんやけど、もし敗北すれば、広島市民に多大な犠牲が出る事になるから、ここが気合の入れ所や、全力で頼むで」
 一人のケルベロスが、敵の情報を尋ねようとした時、絹がタブレット端末の情報を見て、再度続ける。
「あ、もう一つ重要な連絡があるで。あんな、この2体のローカストを速やかに倒せたチームは、指揮官であるイェフーダーの元に向かってほしい、ちゅう連絡が出てる。
 イェフーダーは下水道の中心点で、作戦の成り行きを伺っているみたいや。……ずいぶんとえらそうやな。そこを、多方向から包囲するように攻め寄せれば、退路を断てる。イェフーダーを撃破することが、今後のローカストの動きを制限することになる。……重要やな。行ける様なら、無理せえへんように、できるだけ、頼むな」
 絹の言葉に、表情を変えるケルベロス達。少し状況の把握が早かったケルベロスが、まずは向かう先と敵の情報を求めた。
「せや、まずそこが肝心や。みんなに行って貰うのは、旧広島市民球場の跡地。そこに下水に続くマンホールがある。その奥の少し開けた場所で待ち構えるで。そこに向かってくる2体のローカストの撃破をお願いするわ。
 1体はグラビティ・チェインの枯渇したカマキリのローカスト。噛み付きと両手の鎌の攻撃が強いで。あと、素早い動きで敵を翻弄してくる、ゴキブリのローカスト。こっちがどうやら『ストリックラー・キラー』のローカストや。枯渇したローカストは強いけど、まともな思考はできへんらしい。ただ向かってくるだけや。そんで、『ストリックラー・キラー』のローカストは、頭も回る。どうやら素早い動きからの破壊音波が得意技みたいで、ジリジリとこっちを混乱させてくる。油断禁物やで」
 絹はええかな、と説明した後、ケルベロス達を見る。ケルベロス達はそれぞれが意を決した表情をしている。
「広島市民を守る。これはうちらの使命や。頼んだで!」
 こうして、ケルベロス達はヘリポートに向かって行った。


参加者
黒住・舞彩(我竜拳士・e04871)
河内原・実里(誰かの為のサムズアップ・e06685)
黒鉄・鋼(黒鉄の要塞・e13471)
餓鬼堂・ラギッド(探求の奇食調理師・e15298)
有枝・弥奈(一般人気質の変な人・e20570)
アトリ・セトリ(緑迅残影のバラージ・e21602)
ルーシェリア・ロードブレイム(乾燥機に食べられた・e24481)
塩谷・翔子(放浪ドクター・e25598)

■リプレイ

●挟撃
(「来た」)
 ルーシェリア・ロードブレイム(乾燥機に食べられた・e24481)は、目の前の暗闇から来る確かな気配を感じ取り、『祈りのともしび』をカチャリと握り、周りのケルベロス達に頷きかけた。ルーシェリアの良く知る、河内原・実里(誰かの為のサムズアップ・e06685)は、いつもの様に握りこぶしから親指を突きたてる。
 その暗闇から二つの大きな塊が飛び出したとき、ケルベロス達は躊躇することなく、その手に持ったランプのスイッチを押し込んだ。
「何!?」
 塊の一つ、黒いローカストが立ち止まり、手でその光を遮る。
 刹那、自分の真横からエネルギー光弾が迫り、直撃した。その光にはじき出され、壁に激突する黒のローカスト。
 そしてもう一つの塊は、凍結光線を食らい、反対側の壁に吹き飛ばされる。
「何のために戦っているのかしらね、この先に望むものがあると本当に思っているのかしら、なんて……」
 黒住・舞彩(我竜拳士・e04871)がそう言い、バスターライフルを構えながら、静かに他のケルベロス達と合流していく。
 舞彩の反対の壁に張り付き、同じくバスターライフルを構えていた有枝・弥奈(一般人気質の変な人・e20570)も、壁を蹴って地面に降り立つ。
「ケルベロス……」
 攻撃を受けた黒いローカストは、忌々しげに呟きながら起き上がり、己との距離を測るように距離を取る。
「何回見ても、好きになれない動きだね」
 アトリ・セトリ(緑迅残影のバラージ・e21602)が、ローカストの音も立てない滑らかな動きに、嫌悪感を覚える。手に持った『黒鉄式携行用電灯』を地面に置き、ゲシュタルトグレイブを構え、ウイングキャットの『キヌサヤ』に後ろで控えておくように指示した後、前へと進み出る。
「黒鉄様、準備はよろしいですか?」
「……任せろ」
 餓鬼堂・ラギッド(探求の奇食調理師・e15298)の声に応えながら、黒鉄・鋼(黒鉄の要塞・e13471)がラギッドと共にアトリの横に並ぶ。目の前には、怪しげな色の光を瞳から放つ、カマキリのローカストが頭を振りながら威嚇していた。その瞳の輝きの、力強いが、直ぐに事切れそうな様子に塩谷・翔子(放浪ドクター・e25598)は、思わず呟く。
「……同情するつもりはないけど、なんだか不憫だね」
 翔子はライトニングロッドの『金針』を懐から取り出し、ボクスドラゴンの『シロ』と共にゆっくりと後ろに下がった。
「忌々しいヤツラだ……殺せ」
 その言葉を聞き、素早く両手を振り下ろす、カマキリのローカスト。
 ギィン!
 鈍い金属音が響き、鋼がその攻撃を両手で受ける。その凄まじい一撃に、鋼は膝を付く。
「太陽の騎士団が一振り、笑顔を守る者。河内原・実里、参ります!」
 ヘッドライトを点灯させた実里が口上を述べながら、素早くカマキリのローカストに向かい、『イミテーション・カリバー』からの斬撃を放つ。その一撃は胴体をかすめ、少しの氷が発生した。
「さあ、いこうか」
 ルーシェリアが自らの咽に魂を籠め、歌い上げる。その歌声が、下水道の壁に反響し、ケルベロス達に力を与えていく。
 市民に知られることが無い戦いが今、始まったのだ。

●飢えたローカスト
 ケルベロス達は、作戦を取っていた。一つは奇襲。そして、まずはこのカマキリのローカストを一気に倒してしまおうと、攻撃を集中するということだった。
 カマキリのローカストの攻撃は強く、鋭いものであった。そして、その攻撃に合わせるかの様に、黒のローカストが影からヒットアンドアウェイでキック、そして石化攻撃を当て、ケルベロス達に付与された力が奪われていく。
 しかし、その攻撃に構わず、舞彩以外のケルベロス達はカマキリのローカストに集中する。
「少し、大人しくしていてくれるかしら?」
 舞彩は、その黒のローカストをけん制する砲撃を行い、確実にダメージを与えていた。
「シャアァァ!」
 カマキリのローカストが、両手の鎌をラギッドに向けてめちゃくちゃに振り回す。しかし、その鎌はあらぬ方向に打ち込まれる。
「こちらの攻撃が効いてきましたね……」
 ラギッドがその攻撃を避け、惨殺ナイフでジグザグに切りつけると、更にその鎌の動きが止まる。
 カマキリのローカストは、ケルベロスの集中攻撃を受け、かなりのダメージを負っていた。左手の鎌は力なく垂れ下がり、足取りは不確かなものとなって行っていた。
「今だ、畳み掛けるぞ!」
 鋼がバスターライフルからチェーンソー剣に持ち替えて、残った右手の鎌を吹き飛ばす。
「気になる事はいくらでもあるが……。今は戦うのみに意識を留めよう」
 弥奈がふうと息を吐き、バスターライフルから凍結光線を放った。そしてそれに続いて、ルーシェリアがゲシュタルトグレイブでその頭を穿つ。
「ガ……」
 攻撃を受けたカマキリのローカストがよろめき、腕を動かそうと試みる。しかし大量の氷が発生し、自らの肉体を傷つける。
 だが、それでも、ローカストは動きを止めない。
「執念なのかねえ……」
 翔子が薬液の雨を降らせながら言う。
「でも悪いけど、お前達に構ってる暇は無くてね」
 アトリがエアシューズを走らせ、炎を纏わせた蹴りを打ち込む。ローカストから複数の炎が一気に上がる。
 炎と氷を受け、カマキリのローカストの眼の輝きが、薄らいでいく。
「以前のローカストは特攻、そして君たちは虐殺か。こんな状態にした僕達が言えることじゃないけど、詮無いねぇ」
 実里が『イミテーション・カリバー』を振るい、カマキリのローカストの腹に、光の剣を付きたて、引き抜いた。
 カマキリのローカストはそのまま、ズルリと前のめりに倒れ、叫び声を上げることも無く、消滅していった。

●羽根音
「待たせたね……」
 アトリが黒いローカストを向きながら、キヌサヤに指示を出すと、キヌサヤは翼を広げて。実里と鋼、ラギッド、それにアトリへと力のこもった風を送り込んだ。
「チッ……。所詮はこの程度だな」
「次は、お前だ。かかって来なさい!」
 ラギッドがオウガメタルを発光させ、粒子を放出する。その光は、キヌサヤの風を受け取った4人へと降り注いだ。
「……食らえ」
 鋼がアームドフォートから弾丸を射出し、ルーシェリアが惨殺ナイフで切りつける。
「甘いな」
 二人の攻撃を音も無く移動し、避けるローカスト。
「早いな。皆、気を付けて!」
 舞彩がオウガメタル『舞火』に命令し、纏う。そしてその狙い済ませた拳を一気に打ち込む。
 バキ!
 鈍い音を立て、ガードした左手の装甲が吹き飛んだ。
「……ほう、この動きについてこれるのか。ならば……」
 ローカストはそう言い、後ろに飛びのく。そして、羽根を広げ始めた。
「来るぞ、餓鬼堂!」
「分かっておりますよ、黒鉄様!」
 ラギッドと鋼がすかさず前に出る。
「わめき散らせ!」
 バサバサバサバサバサバサッ!!
 羽根音と共に、グラビティを纏った風圧が、舞彩と翔子、それにキヌサヤとシロに向かって撃ち放たれる。
「危ない!」
 舞彩は咄嗟に飛びのいて避け、翔子とシロに向かう音波をラギッドと鋼が受け止めた。キヌサヤはまともに食らい、吹き飛んでいく。
「ぐ……!」
「……ぬお」
 ガクリと膝を付くラギッドと鋼。キヌサヤの元にシロが素早く駆け寄る。
 二人の視界は少し不安定に歪んでいた。
「なかなか……早い。だが、アタシもその攻撃の準備は出来ている」
 翔子とシロが同時に、回復を行う。
 ケルベロス達は、催眠に対する準備も怠っては居なかった。音波攻撃のたびに、素早く回復を行っていく。
 だが、ケルベロス達の攻撃も、決定打を与える事は出来なかった。
「……少し、時間がかかりそう、だね」
 実里が『ア・ドライグ・ゴッホ』を打ち下ろすが、掠りもしない状況に、少しの焦りの色を浮かばせる。
「ククク……。さっきの威勢はどうした?」
 ローカストが暗闇に溶け込みながら、声を響かせる。しかし、その声に反する回答が即座に帰ってきた。
「その手には、乗らん。急いては事を仕損じる。まずは目の前のオマエだ」
 ルーシェリアはそう言うと、ギターを取り出し、集中し、リズムを刻む。
『溢れる闘志のリズムをここに!』
 そのギターの音色が、前に立つ4人へと降り注ぐ。実里の闘争心が、確実に倒せるという気概の元に、ざわつき、燃え上がる。
「最初から全部上手くいくなんて考え、生憎なくてね?」
 弥奈はそう言いながらローカストを見据える。そして一瞬の間のあと、落ち着き払いながら一歩下がり、爆破スイッチを押した。

●市街地へ……。
 ケルベロス達の攻撃は、舞彩の攻撃以外は余り有効打にはならなかった。ただ、弥奈とルーシェリアの状態異常攻撃が、徐々に実を結んでいく。
「いい加減に、墜ちたらどうかしら?」
 そして、舞彩の『ドラゴニックガントレット』の狙い済ませた砲撃が、その左脚を吹き飛ばした。
「流石に……コレまでか」
 すると、動きが取り辛くなり、己の劣勢を悟ったローカストが、ジリジリと来た道へと下がり始めた。
 バリバリバリッ!
 ここを勝負と見た翔子が、金針から雷光を打ち放つ。
「ケッ!」
 その攻撃を、最小限の動きで避けるローカスト。
「終わりの時だ!」
「逃がさん!」
 その動きの先でラギッドがドラゴニックハンマーを振り下ろす。
 ドゴッ!
 鈍い音を立て、ローカストの腕が落ち、氷が発生する。そして、鋼のチェーンソー剣が落ちた腕の部分を切り裂いた。
「滅鬼積鬼!」
 弥奈がオウガメタルの『滅鬼積鬼』を右拳に纏い、その腹に渾身の一撃を打ち込む。
「グ……ァ」
 その一撃がローカストの装甲にひびを作り出す。
「迅るように疾く激しく、ひたすら前へ」
 その字のごとく、アトリが駆け抜けると、ローカストから炎が上がる。
「侵略ではなく、融和という手段もあったはずだ。我らヴァルキュリアが、永遠を捨てて有限を得たように」
 アトリの炎の隙間をかいくぐり、ルーシェリアが惨殺ナイフであまたの傷を広げていく。
「しかし、あくまで侵略による救済を望むというのなら、貴様らの全てをこの場で打ち砕く。情けはかけん! 実里殿!」
「ええ。ルーシェリアさん」
 実里はそう言うと、自分の右手に光を収束させていく。
「く……そ……が……」
 その必殺の気配を察知したローカストが、身体を動かす。すると、先程まで発生していた氷と、炎が、その身を一気に傷つけていく。
『カリバーの第二の姿。皆の笑顔を照らす光となれ!』
 ローカストが実里を見ると、その右手に力の収束が完了した刀身が現れていた。
 ザッ……。
 ゆっくりと歩み寄る実里。
 そしてそのまま、ローカストの首を切り落とした。
 ローカストの首は燃え上がり。そして、身体ごと消滅していったのだった。

 下水道のマンホールの蓋が、重い音を上げながら開いていく。
「よいせっと。ああー。眩しいねえ。そして、すがすがしいねえ」
 顔を出したのは翔子だ。
 そして、続々とケルベロス達が這い出てくる。
「さて……。どうしたものでしょうか?」
 ケルベロス達がローカストを倒した後、状況を確認すると、既にイェフーダー討伐の部隊は数が足りているという情報であったため。万が一の為に市外を護ろうと、外に出たのだ。
 しかし、ケルベロス達が見たものは、普段とは代わりのない光景で、平穏そのものであった。
「ああ……宮元? どうなってる? え!? あ……そう」
 舞彩が絹に確認の連絡を取ると、たった今、全ての戦闘が完了したとの事であった。
 結果はケルベロス達の全勝ということだった。
「少し、拍子抜け……だな」
「街が護れたのだ。そして、我々も無事。全く問題は無いな」
 弥奈の安堵の声に、鋼が答えた。
 目の前には、赤い帽子を被った少年達が、キャッチボールをしている所が目に入る。
「ええ……。平和、そのものです。結構じゃないですか」
 ラギッドも頷く。
「ねえ、みんな。おなか空かない?」
 唐突に、舞彩が提案する。
「確かに。安心したら、おなかが空きましたねぇ」
「広島焼き、食べに行かない? 宮元も誘って」
 おお、という声のケルベロス達。実里は賛成の返事宜しく、親指を立てた。
「ひろしま……やき? なんだ、それは……?。少し、興味がある、かもしれん」
 普段クールなルーシェリアであったが、聞きなれない単語に、そわそわが隠せない。
「ふふっ。でも、良いんだけど。その前に……お風呂、だよね」
 アトリの声に、はっと気が付くケルベロス達。
「……そういえば、下水に、居たんだ」
 弥奈は思わず、自分の臭いを確認する。
「街の安全も護ることが出来た。風呂屋もやっているかもなあ。決まりだね」
 翔子の声に、頷くケルベロス達であった。
 かくして、ケルベロス達の奮闘により、イェフーダーのたくらみはもろくも崩れ去ったのであった。
 しかし、今だにローカスト・ウォーの残党は残っている。
 ケルベロス達は、この地を護った事を実感し、癒され、そしてまた、戦場へと赴いていくのだ。

 夏の終わりの風が吹き抜ける。
 更なる試練が待ち構えている事は、話さずとも理解しあっている。
 心地よい風を感じながら、ケルベロス達は、自分達が護った街を眺めた。

作者:沙羅衝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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