●閃光のクリザンテム
深い森の中、土を押し固めて作られた洞窟。
光も届かないそこでは戦闘力が低く、戦いに適さないローカストたちが息をひそめるようにつつましく暮らしていた。
「ここのローカスト共が今回の作戦の要になるっていうのかい、やれやれ面倒な仕事だな」
そんな彼らにも、訪れた1匹のローカストによってスポットライトが当たる。
「まあ、そういう仕事はちゃっちゃと終わらせるに限る。光よりも速くなッ!」
やってきたローカストはバッタ型で白銀のオウガメタルを身にまとっている。そしてなによりも、多弁で早口だった。
「ようお前ら! のろまで使い道がないクズのてめえら虫けらどもにもついに活躍の場が回ってきたぜッ! 喜べよ嬉しいだろ笑って見せろやオラァッ!!」
否、早いのは口だけではない。足も非常に速かった。閃光のようなスピードでローカストの集落に押し入ると問答無用で近くにいたローカストを殴りつけて地に這いつくばらせる。
「なっ、なんなんだ、おま、ガハッ!!」
「やめてくれ、同族だろ俺たちは、ゴハッ!!」
助けを求めるローカストたち。白銀バッタは彼らを問答無用で気絶させていく。
「いいかい、てめえらのようなうすのろでもその命、グラビティ・チェインは使い物になるんだ! わかったらさっさと命をよこせオラァンッ!!」
気絶したローカストを肩に担いで回収してはニタァと意地の悪い笑みを浮かべる白銀バッタ。
最後に残った1匹のローカストは、震えながら彼へと問いかけた。
「いったい、なんなんだよ、お前は……」
「なんだってお前みたいな頭の回転が遅いやつに俺のことを教えなきゃいけないんだよ、まあいいや冥途の土産に教えといてやる、ってこのセリフ一度言ってみたかっただけなんだけどな。俺はクリザンテム。特殊諜報部族『ストリックラー・キラー』所属、閃光のクリザンテムだッ!!」
光から逃れるように闇の中を生きてきたローカストたちには、その光は強すぎた。
それは太陽から放たれた、身を焦がす灼熱の閃光だったのだから。
●円環のセルクル
「山陰にいたローカストたちが、下水道から侵入して広島市を制圧する大作戦を行おうとしているようだ」
星友・瞬(ウェアライダーのヘリオライダー・en0065)はノーザンライト・ゴーストセイン(のら魔女・e05320)の調査により、明らかになった事実を集まったケルベロスへと告げた。
「この作戦は、グラビティ・チェインを枯渇させたローカストを使って事件を起こした、特殊部隊『ストリックラー・キラー』が行う。
個別の襲撃ではケルベロスに阻止される事を学習したのだろう、今回の作戦では、指揮官であるイェフーダーも含めて、ストリックラー・キラーの総力を結集しているとみて間違いない」
そう告げた瞬は、予知で見た、凄惨な未来を語る。
「特殊部隊のローカストが枯渇状態のローカストと共に下水道から広島の市街地に侵入し、人間を虐殺してグラビティ・チェインを奪っていた。
そのグラビティ・チェインを利用し、多数所持しているコギトエルゴスムを新たな枯渇状態のローカストに変えて、戦力を雪だるま式に増やしつつ、広島市全域を制圧、数十万人の虐殺を行っていた……」
虐殺の炎で赤く燃え上がる広島市内。それが瞬の見た未来だった。
「この作戦が実行されれば、都市制圧までに掛かる時間は24時間以内と想定されている。
だが今回は、事前に事件を察知する事ができた為、下水道内で敵を迎え撃つ事ができるだろう」
幸いなことに、ローカストたちは下水道から広島市内へ侵入することがわかっている。水際、下水道内での戦いで彼らの奇襲を食い止めることができそうだ。
「敵は、市内全域を同時に襲撃するために分散して行動するため、各チームは、『ストリックラー・キラー』のローカストと、枯渇状態のローカストの2体と戦う事になるだろう。具体的には俺が見た『閃光のクリザンテム』と『円環のセルクル』だな」
また、彼らは相当の覚悟をもって作戦に挑んでいる。ケルベロスが待ち構えていたとしても逃げること無く、ケルベロスを撃退して作戦を遂行する為に最後まで戦い続けるようだ。
「逃げられる心配はないが、だからといって油断はできない。2体の強力なローカストと同時に戦うことになるし、もし敗北すれば、広島市民に多大な犠牲が出ることになる。市民の命が掛かっていることは忘れないでほしい」
ここまでは必ずクリアしなければならないミッションだが、他にも努力目標があると瞬は続ける。
「2体のローカストを速やかに撃破する事ができたチームは、可能ならば、敵指揮官であるイェフーダーの元に向かってくれ。
調査によればイェフーダーは下水道の中心点で、作戦の成り行きを伺っているらしい。多方向から包囲するように攻め寄せれば、退路を断って撃破する事ができるだろう。
もしイェフーダーを撃破できれば、今回のような作戦を行う手駒がいなくなる。ローカストの動きを制限することにつながるはずだ」
迅速かつ余力を残した勝利を挙げられるかは、ケルベロスの戦い方にかかってくるだろう。
その勝利を達成させる為にも、瞬は知りうる限り全ての敵情報を彼らへと提供する。
「まずは『閃光のクリザンテム』。彼は白銀のバッタ型で、特殊部隊『ストリックラー・キラー』の一員だ。その二つ名に違わぬ素早い身のこなしが特徴的だ。オウガメタルでより強化された身体で体術、主に足技を使ってくる」
今回は下水道内でもやや開けた場所で待ち構えることになるだろう。クリザンテムの速さを活かした縦横無尽の攻撃をどのように攻略するかが鍵になりそうだ。
「次に枯渇状態のローカスト『円環のセルクル』だ。こいつは火蟻型で、常にその身を炎で燃やし、再生し続けている。身喰らう蛇ならぬ身喰らう蟻だな」
ウロボロスを引き合いに出しつつ、瞬は説明を続けた。
「こいつは炎による攻撃と、再生能力に優れた個体であることが予想できる。また、グラビティ・チェインの枯渇によりまともな思考もできない状態のようだ。クリザンテムの指示に従うばかりで、おおよそ対話や意思疎通は行なえないだろう」
閃光と灼熱、多弁に寡黙。彼らを形容する単語はいくつか挙げられるが、瞬は以下のような言葉をもってケルベロスたちの激励に代えるのだった。
「地下を照らす2つの太陽の子を、沈めてやってくれ。生きるのには闇も必要だからな」
参加者 | |
---|---|
マイ・カスタム(重モビルクノイチ・e00399) |
ドルフィン・ドットハック(蒼き狂竜・e00638) |
シェーラ・バウケット(放浪家・e02327) |
ピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542) |
鷹野・慶(魔技の描き手・e08354) |
八雲・要(英雄志望のドラゴニアン・e14465) |
アーリィ・レッドローズ(ぽんこつジーニアス・e27913) |
葵原・風流(蒼翠の四宝刀・e28315) |
●下水流を越えて
「シャイターンにも極悪非道な方々がいましたがローカストも負けず劣らずですね」
下水道、葵原・風流(蒼翠の四宝刀・e28315)が懐中電灯で照らした先は汚水が流れていた。臭いは感じない。鼻がとっくに麻痺しているからだ。
「追いつめられたからって、同族を枯渇状態にして扱うなんてね。はっきり言って外道よ、外道」
憤懣やるかたないといった様子の八雲・要(英雄志望のドラゴニアン・e14465)。金の瞳が怒りの炎で燃える。
「人と同じで、ローカストにも様々な者がいるということだね……」
マイ・カスタム(重モビルクノイチ・e00399)の脳裏に、かつて討ち果たした黄金の不退転ローカストの姿がよぎる。そのローカストは尊敬に値する相手だったのだろう。
「二つ名を持つほどの強大な敵、ということには変わりないよ。相手にとって不足は無し……ってね」
マイの言葉を受けてピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542)は明かりを道の先へと向けた。
「この先はやや開け、汚水のない地域になってる。迎え撃つのに誂え向きだな」
事前に役所で下水道台帳を印刷していた鷹野・慶(魔技の描き手・e08354)が先導する。こういったものはネットで誰でも閲覧することができる。地図上の記号まで覚える時間は無かったが、地図としては充分に機能するだろう。
「歓喜に沸く広島の街を襲撃するとは許せんのう!」
ドルフィン・ドットハック(蒼き狂竜・e00638)の胸には、強者と果たしあえる喜びのほかに、怒りも同居しているようだ。
「なんだか妙に気合い入ってるわね?」
アーリィ・レッドローズ(ぽんこつジーニアス・e27913)の問いに、ドルフィンは力強くうなずいた。
「広島の市民球団ファンなんじゃ」
「そ、そう……まあ、やる気ないよりいいわよね」
野球の球団があったことを思い出し、アーリィは苦笑する。
「敵は閃光と炎……下水道を照らしてくれるのはいいけど、加減してほしいとこだわ」
「瞬は太陽の子なんて言ってたけど、こんなシケた場所が死に場所になるんだから、敵とはいえちょっと哀れだね」
「ピジョンさん、慢心は駄目だよ。相手は外道とはいえ、強いのは確かなんだからね」
マイの言葉に、ピジョンは小さくうなずいた。
「ああ、そうだね」
ピジョンの赤い瞳は2体のローカストの先、イェフーダーをも見据えている。
「その先へ向かうために、ここでつまづく訳にはいかないね……」
そうして、ケルベロスたちは交戦向きの場所に陣取り、クリザンテムとセルクルを待つのだった。
●閃光と円環
下水道の奥から、明かりが差した。
光の明るさではない、炎の赤だ。
「おやおやケルベロス共が揃いも揃っておもてなしかい? いやあさすが俺様、大人気だねえ?」
燃え続けるセルクルの横、自身の後頭部を前足で撫でるようにしてクリザンテムがおどけて見せた。
揺らめく炎の明かりを受けて白銀色のボディが煌めく。
「ここがあなたたちの墓場です!」
問答は不要とばかりにシェーラ・バウケット(放浪家・e02327)がバスターライフルを構える。
「おっとォ、当たるかってんだよッ!」
クリザンテムの姿が陽炎のように掻き消える。
「…………!」
シェーラは動じない。なぜならば最初から狙いはセルクルのほうだったからだ。
放たれるバスタービーム。下水道の暗闇を切り裂くように光の粒子がセルクルを焼く。
「オオオオオオオォォォォォッ!!!」
セルクルが吠える。同時に収束されたビームをかき消した。
「防御に優れた個体だけあって、固いですね。一筋縄ではいかなそうです」
笑顔を浮かべるシェーラ。前髪に隠れてその瞳は見えないが、こめかみを汗が一筋伝っていた。
「カッカッカ! 炎には炎じゃ!」
ドルフィンは大きく息を吸い込むと、ドラゴンブレスで2匹を焼く。
「クソ熱いだろうがッ! 俺様のこのプラチナボディに傷がついたらどうしやがるッ!!」
「よく回る舌だ……!」
マイはクリザンテムへ不快感をあらわにしながらも、セルクルのほうへとスパイラルアームで攻撃を仕掛けていく。
徹底したセルクル狙い。防御に優れる個体にダメージを集中させて先に落とす、力をより大きな力でねじ伏せる選択をしたケルベロスたち。
「おいおいお前ら、こっちも無視するんじゃねえよッ!」
叫びと共にクリザンテムが自らの力を解放した。閃光の二つ名の通り、残光と共にその姿を消し、あっという間に前衛へと肉薄する。
狙いはアーリィのサーヴァントであるビハインドだ。流星のような蹴りが叩き込まれた、かに思われた。
「させるか!」
要が間に割って入るかのように体を差し入れていた。腹部に強烈な蹴りを受け、要の顔が苦痛にゆがむ。
「……聞いてはいたけど、早いな」
ピジョンはなんとか視認できた程度の速さに一瞬苦い顔を見せる。しかしすぐ、自身のサーヴァントへと指示を出した。
「回復を!」
「てぃー坊!」
「!!」
ピジョンとマイの指示を受けた2体のテレビウムが回復に回る。もうひとりのメディックであるアーリィはセルクルへ対処すべく集中していた。
「なんだよ俺の相手はこのちっこい奴らで充分ってかァ!?」
「銀の針よ、縫い閉じよ」
クリザンテムの後ろ足に、銀の針が突き刺さった。
「なッ――」
ピジョンのニードルワークスだ。足同士を縫い合わせて捕縛しようとする。
「クリザンテム、お前の相手は僕だ!」
皆がセルクル狙いの中、ピジョンだけが最初からクリザンテムに狙いを定めていた。後列から狙いすましたようにスナイピングしていく。
「いいだろう、やってやろうじゃねえかッ!」
クリザンテムが足を振り抜く。白銀の衝撃波が後衛へと飛ぶ。
「!」
先ほど守られたビハインドが、今度は守るべく射線へ横入り振る。ビハインドにぶつかり、弾けて消える衝撃波。
「チィッ!!」
思い通りにいかず、舌打ちするクリザンテム。一方のセルクルはというと――
「オオオォォッ!!」
風流へと6本の蟻の足でベアハッグを仕掛けていた。
「くっ……!!」
捕縛され身動きが取れない風流。セルクルの身体から炎が燃え移り、全身を焼いていく。
「その技、くれよ。もっと上手く使ってやるから」
身を焦がす炎を、慶が奪った。召喚した巨大な絵筆の先端に、消えない炎が宿っていた。
「おらっ!!」
慶は大きな絵筆に身体を振られるようにしつつも、その先端をセルクルの足へと押し付ける。敵の技を模倣する一撃。
「オオオォォッ!!!」
悶え苦しむような雄叫びを上げるセルクル。風流への締め付けが弱まる。
「今です!」
風流が腕をひねり、チェーンソー剣のスイッチを入れる。唸りをあげて回転を始めるチェーンソー剣。
機械剣技『裂傷壊斬』。慶がつけた足の傷をチェーンソー剣が抉り込んでいく。
ポトリと足が落ちた。永遠に燃え続けるはずの炎が消えていた。
「なんだよセルクルやられたのかァ? ったく、光る羽虫だか妖精だか知らねえが厄介なモン振りまわしやがるなッ」
「…………」
矮小と侮られた風流が、無言でクリザンテムを睨み付ける。その怒りに一瞬クリザンテムは飲まれかけるが、首を横に振って攻撃を再開した。
「オラッ、コンビネーションだ! 炎を吐きやがれッ!!」
「オオォォンッ!!」
クリザンテムに急かされて、セルクルが身体を振るわす。身にまとっていた炎を火球として前衛へと一気に打ち出してくる。
「カッカッカ! ぬるいぬるい!!」
腕を十字に組んで火球を受け止めるドルフィン。火の粉に照らされた紫水晶のような瞳がギラついている。
「ヒャハッ!! 言っただろコンビネーションだってよぉッ!!」
火球に合わせてクリザンテムの閃光のような蹴りがマイへと飛ぶ。
「ジェネレータ出力上昇、エネルギーフィールド展開」
しかし、その蹴りはマイにまで届かない。間に入ったシェーラがエネルギーフィールドを展開し、蹴りの衝撃を緩和して受け止めていた。
「……私は城砦。倒れるわけには参りません!」
「なんだって、このっ!」
「……お前のような奴に、負けるものか」
受け止めらたクリザンテムの足を掴むマイ。その身体が燃焼していく。
「こいつ、セルクルと同じ……ッ! おい、守れっ!!」
命令に従い、セルクルが守備へと回る。マイの燃える身体をものともせず、クリザンテムを引きはがして自身の灼熱のボディをかみ合わせた。
「心魂機関フルドライブ! ……3・2・1・爆閃!!」
本来は自爆の忍法。しかしマイは爆発直前に分身と入れ替わり、脱出する。その瞬間、クリザンテムも同様に爆心地から遠ざかった。
「危ねェ、死ぬかと思った……」
「黄泉送りにはまだ早いのう」
白い歯を剥き出しにしてドルフィンが笑う。
「まずはこいつの息の根を止めてから、じゃからの」
視線の先には、爆破攻撃を食らったまま硬直しているセルクルの姿。すさまじい爆風の余波で身体を燃やしていた炎が一時的に消滅している。
「カッカッカッ! これぞドラゴンアーツの真骨頂じゃ!」
一切の予備動作を省力して、瞬時にセルクルの懐へと踏み込む。踏み込んだ足を中心に、コンクリートへ放射状のヒビが入った。
体内で練り上げたドラゴンオーラを掌底からセルクルの丹田、気の流れが集まる腹部中央へと叩き込む。気脈が乱され、目、耳、口……身体の穴という穴から炎が暴発する。
「これで決めるよ! 一斉攻撃だ!」
勝機を見出した要が最前線で味方を鼓舞する。
「そうね、畳みかけるわよ」
火球で傷ついた身体にエールが染みわたり、アーリィの起こしたカラフルな爆発が士気を高める。前衛の皆が一気に動き出す。
「今度は、かき消されませんよ!」
シェーラが至近距離からトラウマボールを撃ちこむ。セルクルの身体がくの字に折れた。
その隙を逃さず、トドメは風流のズタズタラッシュだった。火蟻の装甲はチェーンソー剣によって剥がされ、再び炎を上げることかなわず、崩れ落ちていく。
「……私はヴァルキュリア。妖精ですが、小さい存在でも、まして虫でもありません」
静かな怒りと共に風流のチェーンソー剣がクリザンテムへと向く。
「ヒッ……!」
「よそ見はやめなよ。僕はずっと君だけを見てるんだからねぇ?」
魔力の籠ったヤモリ、ピジョンのファミリアが慄いたクリザンテムの身体を蝕む。ピジョンが与えた捕縛をより強固にする働き。クリザンテム自慢の足が鈍る。
「糞バッタよう、さっきコンビネーションつったよな?」
中衛から慶と、彼の使い魔であるウイングキャットの視線がクリザンテムへと突き刺さる。
「本当のコンビネーションを教えてやるよ」
巨大なドラゴニックハンマーをヨロヨロと持ち上げる。その腕にはブラックスライムが補助でついていた。
「てめえだってこき使ってるだけじゃねえか!」
「うるせぇ当てりゃいいんだろ、吠え面かくなよ!!」
ドラゴニックハンマーが砲撃形態へと形を変える。放たれるドラゴニック・パワー。
「チッ、これくらいよけてやるっての!」
「ユキ!!」
大砲の反動で吹き飛ばされながら慶が叫ぶ。その声へ答えるようにウイングキャットがクリザンテムの顔へ飛び込んだ。
「ぐあっ!?」
猫ひっかきがクリザンテムの目を潰す。
「言っただろ、コンビネーションって」
「このッ……! 猫にやられてたまるってのッ!!」
必死に身をよじるクリザンテムだが、一撃を避けることはできない。衝撃で片足が吹き飛んだ。
「祝賀を邪魔する輩は、さっさと滅びるがよい! もはやおぬし等は化石も同然よ!」
ドラゴニック・パワーの衝撃に、ドラゴンアーツの力が加わる。背後へと回り込んだドルフィンが地竜八卦掌を仕掛ける。
「あ、ぐぅっ……ぎぃっ……!」
雄弁だったクリザンテムが、あまりの苦痛に黙り込む。片足で身体を支え切れなくなり、前のめりに倒れ伏した。
「クラトゥ・ベラダ・ニ……くしゅんっ」
勝機と見たアーリィも攻撃に転じる。可愛らしいくしゃみと共に死者の書から呼び出された闇の軍勢。慈悲もない軍勢が、倒れたクリザンテムを踏み荒らして消えていく。
「…………」
虫の息のクリザンテム。落ちた閃光に、暗い影が襲い掛かる。
「喰らえ!」
マイのブラックスライムだ。虫を捕食するように、丸呑みにしていく。全てを溶かしつくすブラックスライムの中、最後は沈黙のままに消えていくのだった。
●広島を救え
「余力はあるけど……少し時間が掛かりすぎたわね」
皆を癒しつつ、アーリィは仲間たちの状況を確認する。
大きいダメージは前衛に当てられた炎程度で消耗はまだ抑えられていたが、今から中央部へ赴いてもイェフーダー討伐に参加できるか微妙なところだった。
「セルクルはディフェンダーだったみたいだから、クリザンテムへの攻撃を庇わせたほうが効率良く倒せたんじゃねぇか。ま、全ての攻撃をかばうわけじゃねぇし、結果論だが」
慶は下水道台帳を再度確認する。遅いかもしれないが、それでも中央部へ行かない理由もない。
「中心部は確か向こうのほうだったね」
GPSで確認していたピジョンも地図を覗き込み辺りをつけた。
「そろそろローカスト共とも決着をつけたいのう!」
セルクルの残骸を踏みつけ、カッカッカと哄笑するドルフィン。
結果的にイェフーダー戦には間に合わなかったのだが、それでも彼が2体のローカストを撃破したことは、確実に勝利の礎となったのだった。
作者:蘇我真 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年9月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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