黙示録騎蝗~決死徴兵グラビティ・スクイーズ

作者:鹿崎シーカー

「ヤメローッ! ヤメロォォォォッ!」
「うるせぇぇぇッ!」
「グワーッ!」
 暴れるローカストの顔面に、無慈悲な拳が叩き込まれる。倒れた巨体を強制的に引き立てるのは、蜂のような姿をしたローカスト。
「つべこべ言わずにさっさと立てッ! これはアポロン様の……黙示録騎蝗のための徴兵である! 栄誉あることだぞ! 黙って徴用されるがいいッ!」
「ヤメロォォォォォッ!」
 倒れた巨躯を無理矢理起こし、徴兵役は背中に引っ付く。そして触覚に噛みつき引っ張り、強制的に歩かせ始めた。
 目指すは狂気がひしめく施設。ローカストたちの絶叫がこだまする、地獄めいた場所だった。


「ここまでのことをしでかすなんて……アポロンもとうとうヤキが回ったのかもしれないね」
 渋い表情でつぶやきながら、跳鹿・穫は資料をめくり始める。
 かねてより発生していた黙示録騎蝗に、新たな動きが確認された。
 先日、グラビティ・チェインを枯渇させたローカストを使って事件を起こした特殊部隊『ストリックラー・キラー』。個別の襲撃を阻止された彼らは、総力を結集して都市部を制圧せんとしているらしい。
 そしてその作戦とは、戦闘力の低いローカストからグラビティ・チェインを搾り取り、そのグラビティ・チェインを利用して枯渇状態のローカストを蘇生する。大量のコギトエルゴスムを所持するストリックラー・キラーが枯渇状態のローカストと共に下水道から市街地に侵入し、人間を虐殺してグラビティ・チェインを奪取。コギトエルゴスムを新たな枯渇状態のローカストに変えてさらに戦力を増強するという、あまりに非人道的なもの。
 この作戦が実行されれば、広島市は24時間以内に陥落し、数十万人の犠牲者を出してしまう。しかし幸い、都市部全域を襲撃するため敵はツーマンセル体制で分散している。皆には、下水道内を侵攻するストリックラー・キラーと枯渇ローカストの二体を迎撃・討伐……及び、可能ならば下水道中心にいる指揮官イェフーダーの元に向かってほしい。多方向から包囲するように攻め寄せれば、退路を断ちつつ彼を撃破できるだろう。
 今回の件に関して、敵側も相当の覚悟をもっており、完遂するまでは一切不退。苛烈な戦いになるだろうが、人々を守るため力を尽くしてもらいたい。
 皆に担当してもらう敵は、ストリックラー・キラーの小柄なハチ型とバイクと昆虫が融合したような外見のミイデラゴミムシのローカストだ。
 ハチ型……正確にはエメラルドゴキブリバチという種だが、彼がミイデラゴミムシをロボットのように操るという戦闘スタイルで、彼自身に戦闘力はあまりない。反面ミイデラゴミムシの方は巨大な腕を使ったパンチや爆炎を放つ強敵となる。下水道が多少広いとはいえ、閉所で使われると厄介な能力なので注意してほしい。
 また、余談になるがミイデラゴミムシはグラビティ・チェイン枯渇の影響でまともな思考もおぼつかなず、言葉すら介さない状態となっている。
「ストリックラー・キラーがいなくなったら、もうこんな作戦もできなくなるはず。厳しい戦いになると思うけど、頑張ってこの戦争を終わらそう!」


参加者
ネロ・チェラード(影桜・e00316)
ガド・モデスティア(隻角の金牛・e01142)
シェリン・リトルモア(目指せ駄洒落アイドル・e02697)
カーネリア・リンクス(刀使い・e04082)
夜船・梨尾(黒犬と獅子の兄弟・e06581)
ガラム・マサラ(弱虫くノ一・e08803)
セット・サンダークラップ(青天に響く霹靂の竜・e14228)
久保田・龍彦(無音の処断者・e19662)

■リプレイ


「ぃよっし! こんなもんやな!」
 広島市下水道。上と下をつなぐはしごから、ガド・モデスティア(隻角の金牛・e01142)は飛び降りた。頭上には張り巡らされた黄色いテープ。
 着地の音に振り向いたのは、同じテープを地下通路に張るカーネリア・リンクス(刀使い・e04082)。
「おう、お疲れー。……にしてもくっせーな。なあ梨尾、それもう一個持ってない?」
「すみません、自分の分しか用意ないです……」
 汚水を見下ろし、鼻をつまむカーネリアに、犬のウェアライダー夜船・梨尾(黒犬と獅子の兄弟・e06581)はガスマスク越しに謝った。ベルトにランプを下げた久保田・龍彦(無音の処断者・e19662)は苦笑気味にスマホをいじくる。
「臭ぇのは承知の上だろうよ。ほら」
「うぉっと!」
 投げた通信機とヘッドライトを、カーネリアは危うくキャッチする。ガドにも投げつつ、龍彦はランプの明かりを微調整。
「シェリンが持ってきてくれたやつだぜ? ありがたく使っとけ」
「はい! 暗いと思って用意したライトです! ……えっと、これはこっちかな? 聞こえますかー?」
「聞こえてるっすよー!」
 シェリン・リトルモア(目指せ駄洒落アイドル・e02697)が通信機にささやくと、少し離れたセット・サンダークラップ(青天に響く霹靂の竜・e14228)は手を振って応える。一方でネロ・チェラード(影桜・e00316)とガラム・マサラ(弱虫くノ一・e08803)は壁に貼った地図を見上げる。現在位置に赤い点。
「死角あり。不意打ちは可、と」
「広さも申し分ありません。思い切り戦えます」
 マフラーを鼻の上で持ち上げるガラム。セットはライトの光をしぼり、梨尾は靴を確かめる。糸を張るかのごとき空気の中、ガドは拳と手の平を打ちつけた。
「ほな……準備はええ?」
「はいっす! いつでもとっちめてやれるっすよ!」
「それでは行きましょうか。虐殺なんてさせるわけにはいきません。なんとしても阻止しましょう!」
 ガラムの言に各々返し、一斉に身をひるがえす。
 獲物の匂いを追いかけて、番犬たちは下水道を駆け抜けた。


 汚水と蒸気を噴き上げて、二体のローカストが暗闇を進む。腹這いになり、ボートめいて下水を走る個体の背に乗るハチ型のローカストは、にやにやとほくそ笑んだ。
「全く。イェフーダー様も人が悪いぜ」
 飢えて凶暴化したローカスト。そう聞けば恐ろしげだが、その強力な個体はで忠実な乗り物となっている。これを従えた今ならば、雑魚の虐殺など遊びと同じ。なぶり殺し、奪い取り、次の手駒を作り出す。ハチは宝玉の袋をたたく。
「成功の暁にはコレが全部オレのもの。上手く行きゃあ副頭領……いや、次期統合王に……!」
「ずいぶんと楽しそうですね」
「……ア?」
 冷たい声が、未来予想図を消去した。反射的に頭を上げた彼の目に飛び込んだのは、光の粒子をまとったネロとカーネリア!
「さあ、行くぜ相棒! 因縁の相手だ……気合入れるぜッ! 篁流回復術!」
「んなっ……」
 絶句するハチの前で、粒子のうずがネロを飲み込む。それは紛うことなくオウガ粒子!
「『野分』!」
「せあっ!」
 光の竜巻めいた飛び蹴りが真下のハチに襲いかかった。泡を食ったハチは噛んだ触覚を引き絞り、オーラを用いて指令を下す! SPLASH! 二体は汚水を散らして飛び退り、蹴りをすんでで回避する。天井すれすれで弧を描きながら、ハチはさらなる気配を感じていた。背後、高速で迫るドラゴニアン!
「行きますよシェリンさんっ! 華麗忍法、『光輝覚醒』っ!」
「空間魔法陣『災胴』、展開!」
 ガラムに抱かれ、シェリンは二本のロッドを握る。蒼い魔法陣の中央にハチの背中を捉えた瞬間、風圧に抗い腕を振るった。
「ドンッ! ドコ! ドォンッ!」
「ガードだッ!」
「ARRRGH!」
 大柄な個体の拳が火を噴いた。勢い任せに回転し、三発の雷弾を片腕で防御。攻撃が失敗するや否やガラムはシェリンを抱いたまま脇を抜く。金糸で『蟲』『殺』とぬわれたマフラーがたなびいた。
「チィーッ!」
 着地と同時に振り向く二体。敵にスキをさらさぬための一手は、悪手となった!
「スキありっすーッ!」
「グワーッ!?」
 ハチの背中にセットの蹴りがヒットする! 周囲に残ったオウガ粒子が一点収束、たたずむ龍彦の手の内に!
「よく来やがったな、虫野郎。性懲りもなくよッ!」
「グワーッ!」
 麻雀碑型の魔力がハチに激突。ハチは即座に触覚を引くが……動かない!
「どうした! なんで動かねえッ!」
 凍りついた大柄な個体の死角、近くのトンネルに身を潜め、両手をかざす獅子の亡霊。梨尾のビハインドにして兄、レーヴェだ。ガドの金色の光を受けて一層きつく締めあげる!
「GRRRRRR……」
「クッソ! 動けよッ!」
 仲間の頭を蹴るハチに、ケルベロスが間合いを詰める。カーネリア、ガラムはそれぞれオジギした。
「ドーモ、ソードダンサーです」
「ドーモ、サフランドラゴンです」
「……初めまして。パイロットです」
 ハチは地団太を止めアイサツをする。大柄なミイデラゴミムシを横目でにらみ、複眼を殺気で光らせた。
「何だケルベロスかよ。クンクンかぎ回るネズミ風情が。ドブネズミにまで降格か?」
「へん。アンタに言われとーないわ」
 現れたガドが、挑戦的に言い放つ。
「それよか、今の広島はご機嫌でな。あんたらに出られるとまずいんよ。居心地は悪いやろうけど、ここで辛抱してくれへん?」
「ほお、そりゃあいいなァ。つまりアレだろ? いっぱい居んだろ? 地球人」
 ハチの腕から針が突き出す。邪悪なオーラしたたるそれを、ハチは舐めるように口元で揺らした。
「いいじゃねえか。狩りがはかどる。オレの名前にハクがつく! そしてコレクションもどんどん増える!」
 下水道内にハチの笑い声が反響する。ケルベロスたちの表情は、ヘッドライトの光に紛れてうかがえない。
「そうだ、いいこと考えたぜ。お前ら、狩りを手伝えよ。コイツよかいいヤツも持ってるし、なんだったらイェフーダー様に便宜を図ってやったって……」
 パイロットの舌が一瞬止まる。音もなく零距離に踏み込んだネロは、怒りに燃える瞳で剣を抜く!
「この……下衆が!」
「ハァッ!」
 一閃を屈んで回避したハチは、腕の針を迷いなく突き刺す。金縛りにあっていた、ゴミムシの頭に!
「GR……ARRRRGHッ!」
「レーヴェ!」
 受け強まる束縛を、ゴミムシは力任せに引きはがす。肘から炎をジェット噴射し、振り向きざまにパンチを放った! SMASH! 陽炎めいて消えるネロの姿!
「どっち見てんだよッ! 篁流格闘術!」
 ハチの真上で、カーネリアは片足を振り上げた。その足には足甲と化したコラン・ダム。ギロチンめいたかかと落としだ!
「『氷柱落とし』ッ!」
「GRAAAGHッ!」
 ゴミムシの腕が跳ね上がり、かかと落としつかんでガード。ハチの目がギラリと輝き、流し込まれる不浄のオーラ!
「つぶせ!」
「やらせねっすよーッ!」
 セットは球状にしたオーラを投げつける! ゴミムシはカーネリアを放って防御。ハチの上下にガラムと龍彦!
「行きますよ龍彦さんっ! 華麗忍法っ!」
「乗ったぜ!」
「『流星飛蹴』! イヤーッ!」
「イヤーッ!」
 ゴミムシの背を蹴り回避するハチ! ガラムは龍彦の足をつかみ、血中カラテを撃発させた。
「華麗忍法、『爆風高揚』! イヤーッ!」
 爆炎を引き龍彦は跳躍! ハチまで一気に距離を詰め、ハンマーを振り下ろす!
「ニンジャの類かテメェはよおッ!」
「グワーッ!」
 ガードの上から押しつぶす。直後!
「AAARGHッ!」
「ンアーッ!」
「ごふっ!?」
 殴られたガラムが龍彦に激突! 緩んだハンマーを跳ねのけハチが両手を素早く閃かせた。裂かれたスーツから血飛沫が舞い、ゴミムシが猛るバッファローめいて迫る!
「ガラムさん! 龍彦さん!」
「シェリンさん、ハチの方を頼みます!」
 言うが早いか、ネロは疾駆しゴミムシの横へ。脇腹をジャンプキックし、浮いた足の腱を斬る。怒りに吠える怪物を越え、シェリンは二本のロッドを交叉した。ほとばしる電光!
「伏せてくださいっ!」
「イヤーッ!」
 マシンライフル掃射めいた小雷弾が一斉発射! かすめながらもバック転で距離を取るハチにガドが追撃を試みる!
「そのまま帰ってくれへんかね!」
「イエスなんて言うと思うか!」
「ま、言っちゃあくれへんか」
 古びた槍が高速回転。連続ラッシュをさばきつつ、時に半身になって回避する。丁々発止の攻防の後ろで、梨尾はダメージを受けた二人を癒やす。さらに奥ではゴミムシを相手にネロとレーヴェが奮戦中。ハチはタイミングを合わせ、大きく一歩踏み込む!
「イヤーッ!」
「うおっ!」
 甲高い音を立て、回転槍が弾かれる! 零距離に達したハチは針を連続で突き刺した!
「イーヤヤヤヤヤヤ! イヤーッ!」
「ぐはぁ!」
 ハチの回し蹴りがガドを下水に吹き飛ばす! 内角高めを狙ったセットのオーラ弾を蹴り砕き、針から自分のオーラを射出する。邪悪なる気功は向かってくるケルベロスをかすめゴミムシの額に!
「篁流射撃術……」
「災胴、展開っ!」
「ケッ!」
 ハチが腕を思い切り引く。動きを止められていたゴミムシはワイヤーアクションめいて飛び、一足跳びにハチの下へ!
「『霧雨』ぇッ!」
「ドンッ! ドコ! ドオンッ!」
 針束化したオウガメタルが風を斬り、大玉雷弾三点バースト! ドラゴニアン二人はスライディングでハチを狙う! ハチはすぐ近くまで来た巨体を、容赦なく振り下ろした!
「イヤーッ!」
「グワーッ!?」
「ンアーッ!」
 飛来物をまとめてかき消し、セットとガラムもろとも押し潰す!
「クッソ!」
「エサが来たぞ! ヤッチマエーッ!」
 凝集した魔力を手に飛ぶ龍彦の前で、ゴミムシがバネ仕掛けめいて跳ね起きた。ジェット拳が胸を強打し吹き飛ばす! 地面にたたきつけられる寸前、赤い目の狼が体当たりして勢いを消す。剣で星座の模様を描き、梨尾はさけぶ。
「まるで道具みたいに……あなた、仲間をなんだと……!」
「アー? いいじゃねえか。オレら体張って戦ってんだぜ? オウガメタルの奴らもそうだが……種族のためだ、むしろ喜んで受け入れるべきだろうが! あァッ!?」
「AAAAARGH!」
 絶叫するゴミムシの肘が一層強く火を噴いた! 真下、踏まれて動けぬセットとガラム。ネロが走るも、間に合わない! その時、汚水の中から黒金の輝き! SPLASH!
「下水道に虫に、おまけに趣味も悪いときたら! こんな輩、人様の前にゃあ出せへんねえッ! おりゃあああッ!」
「ンだと!」
 連続突きが黒い炎と化してハチを撃つ。そのスキを見逃さず、天高くロッドを掲げ交叉するシェリン!
「守る人をこんなにして、何が種族のためですか! 負けませんよ……広島のみなさんを守るためっ!」
「華麗、忍法……っ!」
 強くなる踏み込みに苛まれながらも、ガラムはカラテを練り上げる。セットを包むオーラが『蟲』『殺』マフラーに燃え移り、鎧に変じた。
「がんばりますっ!」
「『不可視地雷』!」
 ゴミムシの足元が爆発し、雷が雨あられと降り注ぐ! 崩れる姿勢が防御を解除。的になったハチは嵐に飲まれた! 悲鳴を上げるハチを見据え、カーネリアは抜け出したコランを腕に纏わす。
「お前らが……道具扱いするから! みんな逃げていくんだろうがッ!」
 左に剣、右にナイフを携え特攻! 斬撃の竜巻がハチを捕らえゴミムシの背から引きはがす!
「篁流剣術、『月出』!」
「うがァーッ!」
 悪逆の兵が宙を舞う。梨尾とタッチを交わした龍彦は血を吐きながらも跳躍し無防備の胴を蹴りを打つ! 腰に下げた袋が外れた。
「ふざけた事ばっか言いやがって! これでサヨナラだ。彼方まで飛んでいけェっ!」
 吹き飛ぶハチを他所にして、ゴミムシは爆炎を闇雲に放った。落下する彼の顔をわしづかみ、ネロは己の影が敷かれた地面に頭を打ちつけた!
「種族のため、でしたっけ」
「ま、待ってくれ……!」
 もがく頭を強く押しつけ自由を奪う。影がぞわりと粟立った。
「他者からしぼったその力で、貴方方がどんな恐怖を人々に与えようとしているか。じっくり教えてあげますよ。もっとも……その頭じゃ永遠に居残り授業でしょうがね」
「や、やめてくれ! 死にたくないッ!」
 ハチの半身がわずかに沈む。
「この期に及んでそれですか。一体何人にそう言わせようとしていたのか。影の中で、知りゆきながら、後悔しながら沈み逝け……!」
「やめろ……やめろぉぉぉっ……!」
 冷たく言い放つと同時、ハチは闇に飲まれて消える。ちょうど離れたところでは、雷、槍、剣に貫かれたゴミムシが断末魔を上げ爆散した。


「うぇー……梨尾さん、ありがとっすー」
「セットさん、ガラムさん、大丈夫ですか? 背中から変な音がするんですけど……あと、寝っ転がると汚いですよ」
「もう、帰りたいです……」
 うつ伏せのセットとガラムに処置をほどこし、梨尾はガスマスク越しに背中を眺める。踏まれた骨が痛むらしいが、どうやら折れてはいないようだ。龍彦は胸に軽く触れていく。
「背骨なら整骨院でどうにかなんだろ。つーか、あばら骨の感触が変だ……」
「そりゃ、あんだけハデに殴られりゃあな。正直死んだと思ったぜ」
「冗談はよせ。そいや、散々暴れたが配管とか傷ついてねーよな……?」
 軽く笑うカーネリアに苦笑いしつつ、ネロはシェリンとガドを振り返る。
「ともかく、大した怪我はなさそうですね。行けますか?」
「はいっ! まだいけます……先を急ぎましょう!」
「んー、せやね。さっさと行こか」
「あ、ちょっと待ってください」
 処置を終えた梨尾は立ち上がり、脇に置いたショルダーバックを引き上げる。ジッパーを開けて中身を確認すると、起きたセットに手渡した。
「あれ、これって……」
「はい。ハチが持ってたコギトエルゴスムです。たぶん、他のローカストたちの」
 バッグの中には、虹色の宝石が詰められていた。神秘的な輝きを放つそれを、一同は吸い込まれるように凝視する。
「これ、持っていってください。自分が持ってるわけにも行きませんから」
「いいんとちゃう? その辺にポイはいかんやろ」
 ガドがうなづき、面を上げる。顔に別の色をにじませた仲間たちに、龍彦はあえて尋ねた。
「連戦だぜ。いけるのか?」
「誰に言ってんだよ。それ、任したからな」
「もうこれ以上、好きにはさせません。頑張ってきマシンライフル!」
 下水道に、なんとも言えない風が吹く。
 妙な不安を抱きながらも、彼らはあいまいにうなづくのだった。

作者:鹿崎シーカー 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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