●特殊部隊の暴行
深い森の中に、誰も知らない小さな集落があった。
土を固めて作った風に見える原始的な住居が点在し、住民は皆、息を潜めるかの如く静かに暮らしていた。
この住民、全員ローカストである。
だが、彼らの平穏な日常を打ち破る掠奪者が現れた。
特殊部隊『ストリックラー・キラー』のローカストが押し入ってきたのだ。
「何の騒ぎだ——ぐはッ!?」
押し入られた家々のローカスト達は、皆ストリックラー・キラーから殴る蹴るの暴行を受けた。
「一緒に来て貰おうか。拒否するとどうなるか、判らぬ訳ではあるまい?」
ストリックラー・キラーは暴力に物を言わせて、無理やりローカスト達を引っ立てて連れ帰る。
「貴様らのグラビティ・チェインは、次の作戦の糧にしてやる。黙示録騎蝗の為に、その身を捧げる事、光栄に思うが良い!」
そのまま施設に連れて来られたローカスト達は、戦慄した。
「そんな……」
「同胞に何て惨い事を……!」
施設の中では、グラビティ・チェインを搾り取られた激痛に耐え兼ねたローカストの悲鳴が、絶えず響き続けていたのだ。
●広島の危機
「ノーザンライト・ゴーストセイン(のら魔女・e05320)殿の調査によって、ローカスト達が、下水道から侵入して広島市を制圧する大作戦を企てていると判明したであります」
小檻・かけら(袖の氷ヘリオライダー・en0031)が焦った様子で説明を行う。
この作戦は、グラビティ・チェインを枯渇させたローカストを使って事件を起こした、特殊部隊『ストリックラー・キラー』が主導するらしい。
「個別の襲撃ではケルベロスに阻止されると学習したのでありましょう、今回の作戦では指揮官であるイェフーダーも含めて、ストリックラー・キラーの総力を結集しているようであります」
ストリックラー・キラーのローカストは多数のコギトエルゴスムを所持していて、枯渇状態のローカストと共に下水道から市街地に侵入、人間を虐殺してグラビティ・チェインを奪取する。
「その奪ったグラビティ・チェインを利用して、コギトエルゴスムを新たな枯渇状態のローカストに変えて、戦力を雪だるま式に増やしながら広島市全域を制圧、数十万人の虐殺を行おうとしているのであります」
この作戦が実行されれば、都市制圧までに掛かる時間は24時間に満たないと想定される。
「ですが、予め事件を察知できましたので、下水道内で敵を迎え撃つ事が可能でありますよ」
敵は、市内全域を同時に襲撃すべく分散して行動するため、各チームはストリックラー・キラーのローカストと枯渇状態のローカスト、この2体と戦う事になる。
「ストリックラー・キラーのローカストは、相当の覚悟をもって作戦に望んでいるらしく、ケルベロスが待ち構えていたとしても逃げる事無く、ケルベロスを撃退して作戦を遂行せんと最後まで戦い続けるであります」
2体のローカストと同時に戦う事になるが、もし敗北すれば、広島市民に多大な犠牲が出てしまうので、最善を尽くしてほしい。
「ローカスト達を速やかに撃破する事ができたとして、もし可能でしたら、指揮官であるイェフーダーの元に向かってくださいませ」
イェフーダーは下水道の中心点で、作戦の成り行きを伺っているようなので、多方向から包囲するように攻め寄せれば、退路を断って撃破する事ができる筈だ。
「イェフーダーを撃破できれば、今回のような作戦を行う手駒がいなくなる為、ローカストの動きを制限する事になるでありましょう」
かけらはそう断じた。
「ストリックラー・キラーのローカストは、アルミニウムシックルとアルミ注入を使って攻撃してくるであります。時折アルミニウム鎧化で自らを回復する事もあります」
アルミニウムシックルとは、腕からカマキリの刃のような鎌を展開して敵単体を斬り裂いて体力を奪う、敏捷性に長けた近接斬撃だ。
アルミ注入は、敵単体へ棘を突き刺し、そこからアルミ化液を注入して石のように硬化させる、頑健に優れた近接魔法である。
「枯渇状態のローカストは、ローカストファングや破壊音波を使ってきますが、グラビティ・チェインの枯渇のせいか、まともな思考能力を欠いているようであります」
アルミの牙を伸ばして敵単体を食い破るローカストファングは、近距離だけを破壊する頑健な攻撃だ。
機敏に羽を擦り合わせて放つ破壊音波は、遠くの敵複数人を催眠状態に陥らせる魔法である。
「敗北すれば、広島市民に大きな被害がでてしまうでありますから、どうか皆さんには頑張って頂きたいであります、宜しくお願い致します!」
かけらはそう言ってケルベロス達を激励した。
参加者 | |
---|---|
マルティナ・ブラチフォード(凛乎たる金剛石・e00462) |
天尊・日仙丸(通販忍者・e00955) |
美城・冥(約束・e01216) |
ラーナ・ユイロトス(蓮上の雨蛙・e02112) |
コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813) |
氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716) |
エドワード・エヴァンズ(太陽の笑顔・e26026) |
チェシャ・シュレディンガー(神出鬼没の灰色猫・e27314) |
●
広島市の下水道。
ケルベロス達はマンホールからその中へ降り立った訳だが、空気を埋め尽くす悪臭と足を取られそうな泥には辟易した。
これがドン・ピッグのアジトへ通ずる所なら、奴らの作った秘密の通路へ難を逃れる事も出来たのだが。
それでも8人はへこたれない。
「地上へ出てくる前に片づけちゃいましょう」
氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)は、下水道が暗いのへ備えてライトを用意していた。
ごく普通の家庭に育った地球人の少女で、真面目かつ明るい性格のかぐら。
普段は女子高生らしい快活さと可愛らしさの感じられる口調を使うも、有事には長い黒髪を靡かせ戦う鎧装騎兵である。
「市内での虐殺……確実に食い止めねば」
天尊・日仙丸(通販忍者・e00955)も、無改造スマートフォンや無線機等の携帯電話を携えて、いざという時に他班へ連絡を取るべく準備していた。
これは、8人の中にアイズフォンを使えるレプリカントがいないのへ気づいたが故に考えた対策である。
他班と共にイェフーダーを包囲して中心部へ攻め込めれば——というヘリオライダーの説明を受けての事でもあり、8人はストリックラー・キラーのみならずイェフーダー戦まで見据えて、念入りに打ち合わせしていたのだ。
この日の日仙丸は柔和な表情を螺旋式重装束『落天』で隠し、広島市民の命がかかっているとあってか、纏う空気も真剣そのもの。
きっと彼ご自慢の通販忍法が、今回の戦闘でも活躍する事だろう。
「何という非道……外道か。命を懸ける行為といえど、このような蛮行を許すわけにはいかぬぞ!」
さて、イェフーダーの卑劣なやり方に強い憤りを示すのは、コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)。
見た目には十代の少年にしか見えない彼だが、そこはドワーフ、実際には三十路の坂を目前に控えた立派な青年である。
日光を好まずに黒いコートですっぽりと全身を覆った姿は神秘的にすら感じられ、コクマの紡ぐ大人びた言葉へより一層の深みを与えていた。
加えて、予め作っておいた下水道の見取り図を広げ、中心への最短ルート及び脱出ルートの見当をつけるのにも余念がないコクマだ。
「まずは迎撃と行きましょうか」
一方、ラーナ・ユイロトス(蓮上の雨蛙・e02112)は、相変わらず笑って見える顔のまま呟く。
蛙を思わせる緑の髪に、透き通る雨のような角と翼を持つ人派のドラゴニアン。
褐色の肌の上から羽織った黄緑の羽衣や、袖のない白いインナーが不思議な雰囲気を作っている、落ち着いた大人の女性である。
「とうとう総力戦に出て来たか。しかし我々のやる事は変わらん。任務は市民の救出、ローカストの殲滅だ」
他方、凛とした声音で決意を語るのは、マルティナ・ブラチフォード(凛乎たる金剛石・e00462)。
白い軍服に身を包んだ、流れるような金髪と藍色の瞳が麗しい美女。
とはいえ寡黙で、口を開いても軍人然とした固めの言い回しが殆ど。
軍人としての誇りを胸に、人を守る事が使命と考えるからこそ、この任務も粛々とこなすべく冷静でいるマルティナ。
何より人々の命を大切に思うが故に、己が感情に振り回されまいとしているのだろう。
他方。
「……まだ、諦めてないなら 諦めるまで、立ちはだかるのみです」
美城・冥(約束・e01216)は、硬い表情で言い切った。
肩につくかつかないかで切り揃えた青い髪や金の縁取りが施された服装など一見美少女にしか思えぬ彼ではあるが、重い過去を背負っているせいか翠の双眸には強い意志が宿る。
「…………」
ローカスト達が幾ら必死とは雖も無力な市民を躊躇せず襲うようになった事へ、冥は苦い思いを抱きつつ、その市民を守るべく決死の覚悟で戦おうとしていた。
「冥お兄ちゃん……?」
どことなく、そんな彼の纏う空気に一抹の不安を感じたのか、エドワード・エヴァンズ(太陽の笑顔・e26026)が声を掛けるも。
「はい?」
「……ううん、何でもないよ!」
元より太陽みたいに明るい彼のこと、すぐに今兆したのは杞憂だと思い直して、屈託の無い笑顔を返した。
いつも周囲へ元気を与えてくれる笑顔の眩しいエドワードは、流れるような金髪の半分程が地獄化したブレイズキャリバー。
年相応に無邪気な部分は変わらないが、最近は何かと悩む事も多いそうな。
「大丈夫よ、エドちゃん。皆ついてるんだから、ね♪」
と、仲間の肩を優しく叩くのは、チェシャ・シュレディンガー(神出鬼没の灰色猫・e27314)。
灰色の髪と緑の眼をした猫のウェアライダーで、スラッとした長身とスタイルの良さが特徴的。
その性格は気分屋かつ快楽主義者な自由人、女子力の高さと面倒見の良さも魅力のオネエである。
「うん、ありがとうチェシャお兄ちゃん!」
長身を見上げてエドが笑う。
「ふむ……」
日仙丸は、エドを励ますチェシャの方を見て何か言いかけたが、そのまま口を閉じた。
広島市民の命を守る戦い、ケルベロス達それぞれが抱く覚悟の深さも様々のようである。
●
奥からマンホールを目指してか突き進んできたローカスト2体は、8人が立ちはだかっているのを目に留めて、自分達も立ち停まざるを得ないと悟った。
「邪魔者は排除するまでだ、行くぞ……」
ストリックラー・キラーの蝗ローカストがケルベロス達を睨みつける様子と、それに付き従う枯渇した蝉ローカストの只ならぬ挙動は、どちらも異様な空気を漂わせている。
「悪いけれど、あなたにも一発お見舞いするわね!」
早速かぐらが蝉ローカスト目掛けて、アームドフォートの主砲を一斉発射。
「ぐうっ……」
蝉ローカストの身体を全弾で撃ち抜き、苦悶の呻きを上げさせた。
さっきまで意識朦朧としていたのに、グラビティによる苦痛を受けた時だけ意識がはっきりするのか、ケルベロス達をひたと見据える蝉ローカストだ。
「不可視の一撃、見切れるでござるか?」
日仙丸は、螺旋式重装束『落天』のステルス迷彩機能を一瞬だけアクティブにして姿を晦ますと。
ドスッ!
軌道すら不可視になった攻撃を蝗ローカストへ仕掛けて、普通ならば致命的だったであろう一撃を与えた。
「すぐに動けなくしてやろう……」
蝗ローカストは両前脚を振り上げて、無数についた棘をマルティナへ突き刺そうとする。
「させません!」
だが、間一髪のところで冥が身体を滑り込ませ、彼女の代わりにアルミを注入されてその痛みに耐えた。
「少々にぎやかかもしれませんが、羽音には丁度いいかもしれませんね」
即座にラーナも雷の壁を構築し、前衛陣の異常耐性を高める。
それと同時に、冥の体力を回復させた。
さて、蝉ローカストはフォートレスキャノンによる身体の麻痺にもめげず、破壊音波を起こそうとするも、上手くいかない。
だが、失敗したのへも気づかずに翅を擦り合わせている姿に、やはり正気を失っているのだと判る。
「奴らの中には同胞の明日の為に戦った猛者も居た、だがこれは何だ……唯の無謀な行軍に無理やり巻き込んでいるだけではないか!」
そんな蝉ローカストの見るに堪えない様子へ、コクマが怒りを爆発させる。
「こんなものに大義などあるというのか……!」
憤怒のままにスルードゲルミル弐式を振るって、大地をも断ち割るような強烈な一撃を繰り出し、蝗ローカストの前脚から胴へとばっさり斬りつけた。
「この広島の市民は我々が守る。それが我々の使命であり、信念だ」
マルティナは力強く言い放つや、ブラックスライムを蝗ローカスト目掛けて嗾ける。
——ガブゥッ!
捕食モードに変じたブラックスライムは、全長3メートルに及ぶ蝗ローカストよりも広く大口を開けて、奴を捕縛すべく丸呑みを試みた。
何せ、斬撃力に長けたマルティナの操るレゾナンスグリードである。
その黒い体内にて蝗ローカストへ与えるダメージ量は、彼女がクラッシャーなのも相俟って、もの凄まじい威力に膨れ上がっていた。
「逆転の目狙いなんでしょうけど、こんな方法 成功させるわけには行かない」
冥も、両の手にバスター・ショーティ2挺の銃口をしかと構えて。
ドドォン——!
その銃口から巨大な魔力の奔流をぶっ放してローカスト2体を光に呑み込むと、全身の激痛に加えて痺れも残した。
「少しじっとしててもらえるかしら?」
チェシャはそう声をかけて、自身の特性を付与した攻撃を繰り出す。
それを正面から喰らった蝉ローカストは、体力を削られるばかりでなく、時折体内から魔力による干渉を受けて、自由に身動き取れなくなるらしい。
気づいた時には、既に在る猫の存在へ苛まれ続けるという事なのだろう。
「虐殺なんかやらせないよ!」
果敢に叫んで迎撃態勢を取るのはエドワード。
身の丈程もあるドラゴニックハンマーを『砲撃形態』に変形、それを軽々振り回して竜砲弾を発射、蝗ローカストの腹を叩きのめした。
●
戦闘開始から時間が経つにつれて、ケルベロス達は枯渇した蝉ローカストの判断能力の低下を、まざまざと見せつけられる事となった。
破壊音波しか使って来ないのだ。
思い出したかのようにアルミの牙を突き立ててきたのは一度きりで、後は6分の間、麻痺せず動けるタイミングでは翅を擦り合わせるしかしない。
同じ攻撃ばかりしては動きを見切って避けられやすくなる——そんな事にすら思い至らない枯渇ローカストの精神の疲弊具合とは如何なものなのか。。
「ドローン起動。集中モードで展開」
複雑な思いを抱きつつ、ヒールドローンCを展開するのはかぐら。
これは普通のヒールドローンと違って、対象の警護機能を排した代わりに状態異常からの回復機能を持たせた特別仕様。
しかも、対象1人へ集中展開する事で回復能力の強化も見込める。
かぐらはこれを、蝗ローカストのアルミニウムシックルを喰らった日仙丸へ向けて、その深い切り傷を塞いでみせた。
「我が通販忍法、甘くみると懐が痛むでござるよ」
日仙丸はそんな事を言いながら蝗ローカストの懐へ飛び込んで。
——ザシャザシュッ!
惨殺ナイフを手に幾度も胸を斬りつけ、血を噴き出させた。
この血襖斬り、斬った相手の返り血を浴びて自らの体力を回復させるのだが、ある意味日仙丸の懐が潤う通販忍法に通ずるかもしれない。
「思惑通りにはやらせないわよ。とっとと片付けてアンタらの大将もとらせてもらいましょうか!」
チェシャは強い語調で蝗ローカストへ言い放つや、掌から『ドラゴンの幻影』を嗾けた。
蝗ローカストを焼き捨てんばかりに勢いを増す炎は、大火傷となって奴を苛み続ける。
「愚か……愚かなりイェフーダー! 戦いと奪う事に盲信した結果がこの無様な特攻か!」
こちらも怒りを抑えきれぬコクマは、スルードゲルミル弐式の刀身に青白い水晶の刃を纏わせ、巨大な剣へと変貌させる。
「我が名は刻真・Sivals! 貴様らの愚行を断ち切りに来た者なり!」
勇ましい咆哮と共に突撃して、蝗ローカストを真横に薙ぎ払い、さらに戦艦をも一刀両断すると言われる斬撃を頭上より打ち込んだ。
「チッ、手こずらせやがって……」
アルミニウム鎧化で体力回復を図る蝗ローカストだが、何と失敗。
冥のダブルバスタービームによる衝撃が尾を引いていたのだろう。
お陰で、蝗ローカストはケイオスランサーで体内に回った毒やさっきの火傷に苦しむだけ苦しんだが、何も行動できずじまい。
「イェフーダーまで狙うなら、短期戦で片付けねばなるまい。これでトドメとしよう」
その隙を突いてか、マルティナが渾身の力を込めて雷刃突をぶちかます。
——ドブシュッ!!
雷の霊力宿りし斬霊刀による神速の突きが蝗ローカストの残り体力を大幅に上回るダメージを齎し、ついに息の根を止めたのだった。
だが、やるべき事はまだ残っている。
急いで枯渇した蝉ローカストを撃破し、イェフーダーのいる中心部へ向かわなくてはならない。
「我が友に祝福を。我が敵に災いを。我は陽光の両極を体現せし者なり!」
気合を入れ直したエドワードは、地獄化した長髪をめらめらと燃え上がらせて。
ボォオオォオオォ!
その灼熱光を蝉ローカストへ照射して、容赦なく焼き尽くした。
「さぁ、泣き叫べ異端種――今ここに、神はいないッ!」
冥は手持ちの銃のマガジンを交換。
蝉ローカストへ一斉射を浴びせて、決して少なくないダメージを与えた。
「夏ももう終わりで、蝉の声も聞かなくなりましたけれど、あなたはどうなのでしょうね……いっそ終わりにしましょうか」
ラーナは心を読ませぬ笑顔で涼やかに歌う。
「雨、アメ、降れ、降れ、ケロケロケロ♪」
ダメージのみならず毒をも染み渡らせる怪雨を降らせて、もはや虫の息だった蝉ローカストを死に至らしめた。
「他の班の動きを確認してみるでござる」
すぐに日仙丸はスマホを操作して、他班の動きを探った。
「既に5つの班が下水道中心部に集まってるでござるな」
「では、すぐに向かいましょう」
ラーナもスーパーGPSで己の位置を確かめながら、中心部へ向かおうとする。
「さーてカマキリ野郎に引導を渡しに行きましょうか」
と、勇躍するチェシャだったが。
「ん?」
日仙丸が突然足を停めた。
「ほう、他班の面々がイェフーダーを撃破したそうでござる」
「本当? 良かったね!」
「良かったわね!」
喜ぶエドワードとかぐら。
「ストリックラー・キラーのローカストは、全て下水道内で食い止められたのかも調べてくれ。市民に犠牲が出ていないか気になる」
マルティナが尋ねる。
「私が見てきましょう」
翼を広げたラーナが、マンホールの穴からするりと出ていく。
「少なくとも見渡せる範囲では、混乱は起きていないようです」
「全部の班が成功していることを祈りましょう」
冥も安心した顔で言う。
「うむ……イェフーダーへ一打をお見舞い出来なかったのは心残りではあるが」
ニヤリと笑って屈み込んだのはコクマだ。
「なに、それならそれで他にもしたい事はある」
そう宣言して彼が検めるのは、ストリックラー・キラーの遺体。
奴が持っているコギトエルゴズムを回収する為だ。
「もしも可能なら……和解……或いは定命化を望んでくれる者も居るかもしれん、からな」
そんな淡い期待を抱きつつ、宝石のようなそれらひとつひとつを大事そうに仕舞うコクマであった。
作者:質種剰 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年9月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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