●ユニコーンを探して
「白いたてがみに美しい角……本当に綺麗なんだろうな……」
由紀は森の奥深くを歩いていた。
「……この先にある滝に、ユニコーンが現れるんだよね。朝日を浴びて……幻想的で……」
夢見心地の由紀。
……滝の音が聞こえてくる。
「……もうすぐ!」
目的地に駆けだそうとする由紀の前に、第五の魔女・アウゲイアスが現れた。彼女は由紀の心臓に向かって鍵で突く。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
意識を失い崩れ落ちる由紀の元から、美しいユニコーンの姿をしたドリームイーターが現れたのだった。
●ヘリオライダーより
「綺麗なものって素敵だよね」
デュアル・サーペント(陽だまり猫のヘリオライダー・en0190)は、そう言って話を切り出した。
「実はクララ・リンドヴァル(錆色の鹵獲術士・e18856)が予知した通りの事件が起こってしまったみたいなんだ。由紀って女性が持っていた『興味』が奪われて、そこから現実化したドリームイーターが生まれてしまって事件を起こそうとしているみたいなんだ。みんなには、このドリームイーターを撃破して欲しい。そうすれば、『興味』を奪われた由紀って人も目を覚ましてくれるから大丈夫だから、安心してね?」
デュアルは話を続けて行く。
「場所は密林の奥にある滝のある場所みたいなんだ。ドリームイーターはユニコーンの姿をしているみたいで、色は真っ白みたいだよ。それで、このドリームイーターは『自分が何者?』って問いかけをしてきて、正しく対応できなければ殺してしまうみたいなんだ。後、このドリームイーターって自分の事を信じていたり、噂をしている人が居ると、その人の方に引き寄せられる性質があるみたいなんだ。だから、それを上手く使えば有利に戦えるかもしれないね。攻撃は多分、ユニコーンだけに馬に近い攻撃をとってくるんじゃないかな?」
デュアルはケルベロス達に声援を送る。
「ユニコーンって……やっぱり綺麗で幻想的なものだと思うんだ。そういうものに会いたいっていう『興味』は、よく分かるんじゃないかと思う。……だから、美しいものが穢れたものにならないように……みんなに倒して欲しいんだ。みんなの頑張りに期待しているよ!」
参加者 | |
---|---|
アマルティア・ゾーリンゲン(リビングデッド・e00119) |
トエル・レッドシャトー(茨の器・e01524) |
沙更・瀬乃亜(炯苑・e05247) |
アゼル・グリゴール(レプリカントの鎧装騎兵・e06528) |
ルイアーク・ロンドベル(怠惰の狂科学者・e09101) |
村雲・左雨(月花風・e11123) |
ファニー・ジャックリング(のこり火・e14511) |
クララ・リンドヴァル(錆色の鹵獲術士・e18856) |
●ユニコーンを探して
密林の奥……大きな音を立てて流れる滝。そこは、とても綺麗な場所だった。
「こちらに来るまで誰もいなかったですね。周囲も安全の様ですし、戦闘をしても大丈夫でしょう」
トエル・レッドシャトー(茨の器・e01524)は、ここまでの道のりを注意深く見た結果、戦っても大丈夫だと判断し、息をつく。
「綺麗な景色……ですね」
「確かに奇麗な場所だよな。滝の畔に一角獣、そんな夢みちまうのも分かる気がする」
沙更・瀬乃亜(炯苑・e05247)とファニー・ジャックリング(のこり火・e14511)は、周囲の景色を見て言葉を零した。
「今度はユニコーンか。もはやメルヘンの使者か何かだな、ドリームイーターは」
(「……ケルベロスも、似たようなものか。『幻想』同士、宜しくやろうじゃないか」)
アマルティア・ゾーリンゲン(リビングデッド・e00119)は、そう言いつつ、心の中ではそうも思う。彼女は自分達ケルベロスも、このユニコーンも、十二分にファンタジーな存在と認識している。だから『同類』的な捉え方なのだ。
(「一角の美しき白馬……できれば、存在していてほしいものですねぇ……」)
(「ユニコーンもそうだが、幻獣の類ってのは神秘的な美しさってのがあるよなあ」)
ルイアーク・ロンドベル(怠惰の狂科学者・e09101)、村雲・左雨(月花風・e11123)も、そんな想いを馳せた。
アゼル・グリゴール(レプリカントの鎧装騎兵・e06528)は、ユニコーンの存在の有無については、いてもおかしくは無いというスタンスだ。ゲートが開いてやってくるという可能性がある以上、完全否定の方が難しいと思うから。
個々の想いは色々とあるのだけれど、ドリームイーターである以上倒さなくてはならない。
「ユニコーンと言やあ、額に角のある馬っぽい生き物だよなあ。何でもその角は毒を中和するんだとか何だとか。そのせいで色んな奴がユニコーンを捕まえようとしたらしいな」
「ふーん。そーゆー話もあんのな」
左雨が話を始める。それにファニーが相槌を打った。
「優美さと力強さを兼ね備えた聖獣ユニコーン……。自然が生み出した美の精髄と言って良いでしょう……」
「ユニコーンは想像上の生き物とされていますが、この世界は大きいので、誰かがかつて見ていて、それが伝承された可能性も、あるのではないでしょうか。綺麗な毛並みを、なでてみたいです。もし、いるとしたら、そう、この様な場所に生息していてもおかしくはないですよね」
クララ・リンドヴァル(錆色の鹵獲術士・e18856)の言葉に、瀬乃亜もうっとりと続ける。二人の違いと言えば、クララは信じているふりで、瀬乃亜は純粋に信じている点だろう。
「乙女にのみ心を許す気高き幻獣、というのが一般論でしょうか」
「ユニコーンは、心の清らかな乙女にだけ懐くそうです……」
「乙女、とはとても言い難くてすまないな」
アゼル、クララの言葉にアマルティアが苦笑する。そんな仲間達を見ながら、ルイアークは古書を開いて話し始めた。
「美しき獣と知られますが、その伝承のほとんどはとても獰猛な獣と記されています。そしてその姿は『ライオンの尾』『牡山羊の顎鬚』『螺旋状の角を持つ白馬』とキメラ状態の生物……というのが伝承でのポピュラーな姿のようですねぇ?」
話をしている中、どこからか蹄の音が聞こえてくる。そちらに目を向けると……美しい輝きを持つ白いユニコーンが立っていた。
「私は誰だと思いますか?」
鈴の様な音でそう問うユニコーン。
「夢を守る者」
アマルティアはそう問いに答える。柄でも無いけれど、『そうでありたい』そう思うから。
対して、ルイアークは開いていた古書を閉じて答えた。
「では、アナタは何者なのでしょうか? 夢を喰らう者よ」
彼の言葉にユニコーンのドリームイーターは駆けた。
●ユニコーン型ドリームイーター
ドリームイーターが狙う相手はルイアーク。その頭を下げ、角を突きつけて突進してくる。それに反応して左雨がルイアークを庇った。
その動きに合わせてトエルが蔓草を用いてドリームイーターを縛り上げる。彼女の表情は空虚を感じさせるが、その紫の瞳はドリームイーターを燃えるように強く捕らえていた。それはどこか強迫観念めいたものをはらんでいる様に。
「アマルティア・ゾーリンゲン。――仕る」
アマルティアは心臓を構成する地獄の力を借りて加速、跳躍すると刀を振り下ろし、着地と同時に横薙ぎにする。彼女のボクスドラゴンのパフは瀬乃亜へと向かい、属性インストールを用いて加護の力を高めた。
「やられた分だけ、やり返そうとしようぜ」
不敵に笑う左雨にボクスドラゴンが頷く。左雨はエアシューズに地獄の炎を纏わせて蹴りあげると、ボクスドラゴンがタックルを喰らわせた。
瀬乃亜はドローンを展開させてトエル達の守りを固める。その間にアゼルが高速でドリームイーターを蹴散らせていった。
(「あー……流石に神話に出てくる幻獣そのまんまって感じだな。ごつい銃振り回すにはあんま相応しくねえ感じするけど、しゃーねえよな」)
ファニーはドリームイーターを見ながらそう思う。綺麗で幻想的で……美しい長い角を持った白い馬。しかし、これはドリームイーター。倒すべき存在だ。改めてファニーは銃を構える。
「弾けろ」
零距離から撃ち込む銃弾。それはドリームイーターの全て喰い破り核を貫いた。
ルイアークから放たれるオウガ粒子が、クララが雷で作り上げる壁が、共にトエル達の感覚を研ぎ澄ませ、加護の力を与えていく。
ドリームイーターはステップを踏む。目を奪われるその動きは、ルイアークを夢の世界へと誘った。
「ルイアークさんへの浄化は私が行います。皆さんは攻撃に集中して下さい」
瀬乃亜の言葉にトエル達は頷く。
エアシューズで素早く駆けまわるアマルティアは、輝きを伴う重い蹴りをドリームイーターへと放つ。続けて左雨が蹴り放つ炎が渦巻いた。駄目押しとばかりに、左雨のボクスドラゴンがブレスを吐き、トエルの攻性植物がドリームイーターに喰らいつき猛毒を注ぎ込む。パフは続いてアゼルへと属性インストールを行った。
続いて、先程の言葉通り瀬乃亜がルイアークへとオーラによる浄化行う。
「本来なら牛が相手なんでしょうけど、投げ縄でもやってみましょうか」
アゼルのケルベロスチェインが踊り、ユニコーンのドリームイーターを縛り上げる。
「喰っちまえ」
畳みかけるように、動きを止められたドリームイーターへ向かってファニーのブラックスライムが捕食モードに変形すると丸飲みにした。
ドリームイーターはブラックスライムから跳ねて抜け出すと、綺麗な虹を纏う。その幻想的な色による攻撃はファニーに向かうが、左雨が庇いに入った。
「助かった。ありがとう」
「いや、気にするな」
感謝の言葉を伝えるファニーに左雨は笑って返す。
「直ぐに回復しますね」
ルイアークは怪我を負った左雨にすぐさま施術による回復を行う。続けてクララは雷の力を用いて、ルイアークの傷に治療を施していった。
アマルティアが素早く駆ける。更に、地獄の力を借りて、加速を加えて七剣星・天幾を繰り出し薙いだ。一方のパフは、ルイアークへと属性インストールに依る加護を与えていく。
(「当てる」)
トエルの攻性植物に地獄の炎を纏わせると、その燃え盛る炎をドリームイーターへと叩き込んだ。
「早い事、倒れて貰わないとな」
まだまだ余裕だ、そういう顔で左雨はエアシューズを使ってドリームイーターへと高速で走りだす。そして、そのスピードで生まれた重い一撃を放った。ボクスドラゴンも続いてタックルを繰り出す。
「素敵な夢ですが、夢は夢の世界に」
瀬乃亜は砲撃形態のドラゴニックハンマーから竜砲弾を撃ち、アゼルのアームドフォートの主砲が一斉に放たれる。砲弾を撃ち込まれた反動を受けたドリームイーターに向かってファニーの輝きを伴った重い蹴りを叩き込んだ。
ルイアークは微粒子レベルのナノマシンの影の様に地を這うとドリームイーターの周辺に無数の腕を形成させていく。
「あぁ……ですが、アナタも伝承のユニコーンに通ずる部分もあるのですねぇ? 人ノ手により、殺スことが出来る……というね?」
自嘲気味に笑った瞬間に、無数の黒い腕がユニコーンの四肢を捕らえる。
「装填確認……反動に備えます……斯様な醜態をお目にかけるのは、大変心苦しくはあるのですが……!」
黒い腕に掴まれているドリームイーターへ向かってクララは魔導書を向ける。頁を開いた魔導書は巨大な口の怪物となって噛みつき、その制御による反動でクララは後ろに倒れ込んだ。
「隙は与えないぞ」
アマルティアは、間髪を入れずにドリームイーターへ刃を突き立て動きを封じる。続いてパフのタックルが決まった。
「鍵はここに。時の円環を砕いて、厄災よ……集え」
トエルの言葉が静かに響く。彼女は白い髪を媒介にすると時間法則を捻じ曲げる茨を召喚し、その茨を武器や身体に纏っていく。
そして、彼女の纏う茨がドリームイーターを切り裂いた時……ドリームイーターは淡い光を放ちながら消えていった。
「美しいものは、美しいままで。それが良いのです……」
そう呟き、クララは付けていた長手袋を脱ぐと、ふわりと落とす。
滝と水がキラキラと輝き……美しい幻想的な光景が戻る。紛い物の無い、美しい姿で――。
●煌めく滝の元で
滝の近くの樹の中で、気を失っていた由紀を見つける。
「……ん……」
「大丈夫ですか?」
ぼんやりと意識を取り戻した由紀に、手当てを主に行っていたクララ達は意識が戻ってほっと息をついた。
「……あれ? ……皆さんは?」
どうやら何となく分かって来た由紀はケルベロス達を見て不思議そうな顔をする。
「あなたはドリームイーターに襲われてしまっていたんです」
アゼルは大体の説明を由紀に伝えた。それを聞いて彼女は申し訳なさそうな顔をする。
「……すいません。ご迷惑をかけてしまって……」
落ち込む由紀にクララが声をかける。
「折角ですから、この景色を楽しみませんか? とても綺麗で美しい場所だと思いますよ」
その言葉に由紀は頷く。
「……そうですね。とても綺麗です」
由紀やケルベロス達はしばらくこの景色を楽しむ事にした。
トエルは、滝壺に足を浸して水音、光の煌めき、風の音等、自然の音を楽しむ。心がとても落ち着いた。
(「ここには紛い物のユニコーンは不要でしょう」)
これだけ美しいものが沢山揃っているのだから。改めてそう思った。
瀬乃亜も景色を眺めながら思う。
(「たくさんの色んな夢が過去にあったけれど、その中でも、特に幻想的な夢でした」)
綺麗で美しい景色はとても幻想的で……この様な場所なら、想像上の生き物がいてもおかしくないと改めて想いを馳せた。
ファニーもぼんやりと景色を眺める。感じる全てがとても澄んでいて穏やかな気持ちに包まれた。
「ユニコーンでは無いが、代わりにボクスドラゴンはどうだろう? 抱くには丁度いい」
「可愛いですね!」
アマルティアの提案で、パフは由紀に近づいて挨拶をする。それに由紀は微笑むとパフを抱きしめた。それを見て左雨のボクスドラゴンもじゃれつきにいく。
アゼル達もそれぞれ、思い思いに休息を楽しむ。景色を楽しんだり、たわいもない会話をしてみたり……それは優しく穏やかな時間で。一時の休息はケルベロス達の心を癒してくれる、そんな素敵な時間だった――。
作者:白鳥美鳥 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年9月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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