秋の味覚の豊穣祭

作者:baron

「こんなに大丈夫かい? 食べられるとは思うけど……カロリーとかも多いんだよ?」
「うちら甘いものに目が無いから大丈夫でーす」
「甘い物は別バラって言うじゃないですか」
 神社に面した大型スーパーで開催される、とあるお祭りで人だかりができていた。
 このお祭りは小さなお椀に盛ったデザートを食べると言うだけの、わんこ蕎麦や海外の大食いをモデルに、ノーマルやケーキのバイキング風に手直ししたお祭りである。
 元は収穫祭だったそうだが、地産地消の提携を判り易く前面に押し出したことが理由らしい。
「そうかい? 横に大きくならない体質は羨ましいねぇ。今回は少しネタでね、アウトかもしれないけど」
「ぐぐ……そこは運動の秋って事で一杯運動して減らします……あ、これピオーネですね。塩味の中に甘い物、最初から甘い生地に甘い物の両方あっておもしろーい。十分にセーフですよ」
 今回のお題はタコヤキで、タコヤキ機で作れるものならなんでもOK。
 腕に自信があれば素人でも料理側で出られるとあって(差が出ない料理だから)、甘い物に目が無い子の他にも料理に自身のある者たちが浴衣姿で詰めかけていた。

 ドーン!
「きゃー!? なに、なに!?」
 その人だかりの輪が、轟音と共に突如として崩れた。
 炎が周囲を炙ったにしては、調理場には影響なく、人が多い場所が中心だったのだ。
「助けてー! だれ……」
『ハッハー! あたしも収穫祭といきますかねー?』
 その様子を眺めていた奇妙な被りものを着た女が、魚の紋章の刻まれた剣を二本掲げてパニックの中へ駆け込んで行った。
 当たりには焔に紛れ、血飛沫が舞ったと言う。


「マグロガールという奇妙な恰好をしたシャイターンが、日本各地の祭りを狙っている事は御存じでしょか? 今回はその一つですえ」
 ユエ・シャンティエがマグロガール関連として括られた、何枚かのレポートを手に説明を始めた。
 その一つを読むと、祭りの内容の後に……マグロの被り物をしたシャイターンの部隊で、日本各地の祭り会場を襲撃し、一般人を殺害してグラビティ・チェインを得ようとしているらしい。と結ばれている。
「祭り会場を狙っている理由は不明ですけど、お祭りという場を利用して、効率よくグラビティ・チェインを収奪する作戦である可能性が高いのです。そこで皆さんにお願いしたい思いまして」
 要するに先回りして、マグロガールが起こす事件を未然に防いでほしいと言うことらしい。
「祭り会場の人を避難させてしまうと、マグロガールが別の場所を襲ってしまうため、事前の避難は行えません。しかし、マグロガールはケルベロスが現れれば、先に邪魔者を排除しようとするので、挑発しつつ、人の少ない場所に移動するなどして戦闘をお願いします。……さて、お祭りとアプローチの方ですが」
 敵はチームではない為、流石にマグロガールもケルベロスを放置してまで、人々を狙わないそうだ。
 そこで、周辺整理を兼ねてケルベロスだと名乗りつつ、勝負を挑めば相手もこちらに向かってくるということである。
「お祭り自体は、地域の食材を調理して、それをお客さんに食べ比べてもらうというだけです。とはいえそれだと調理し難いので、今回はタコヤキの中身を入れ替えて、タコヤキ風・ベビーカステラ風になったそうですね。比較的簡単になったこともあり、腕に自信があれば料理人に登録することもできるそうです」
 ユエはそこで、悪戯っぽい表情を浮かべた。
 腕に自信があれば、一部のメンバーは料理人として登録し、お客よりも先行して会場入り出来ると言う事である。
 残りのメンバーが客として食べたり、見物客として周囲を捜索すれば、比較的に早く敵を見つけたり、避難路を確認する事も出来るだろう。
「いずれにせよ方法はお任せしますが……。敵の戦闘方法ですね。配下はおらず、基本的には魚の刻まれたゾディアックソードを二本用いて戦い、ソレをシャイターンの炎で補う用です」
 魚の星剣二振りで、双魚宮の剣と言ったところだろうか?
 これをマグロの被り物をした少女が使うのだから、魚ぽくなくはないが……炎使いのシャイターンでもあるということなので、雰囲気を合わせたのかもしれない。
「マグロガールの戦闘力は、あまり高くないのですが、阻止に失敗すれば祭り会場が惨劇の場になってしまうので、よろしくお願いします。全て終われば、お祭りを愉しむのも良いかもしれませんね」
 ユエはそう言って軽く頭を下げると、地域の地図や周辺の見取り図のほか、料理したい人の為に、参加用紙を渡してくれた。


参加者
テルル・ライト(クォーツシリーズ・e00524)
白銀・風音(お昼寝大好きうさぎ・e01669)
ラズ・ルビス(祈り夢見た・e02565)
陸野・梅太郎(太陽ハウリング・e04516)
ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)
四葉・リーフ(天真爛漫・e22439)
ファルゼン・ヴァルキュリア(輝盾のビトレイアー・e24308)
アム・クローズ(漆黒の救済美少女・e24370)

■リプレイ


「そこに運んどいてくれ。会場全体によーく響くようにな!」
 お祭り会場であるスーパーの駐車場に持ち込まれる、大きな太鼓。
 陸野・梅太郎(太陽ハウリング・e04516)は満足そうな顔で晴天を見上げた。
 秋祭りに相応しい、晴れ晴れとした天気である。
「まさしく俺の晴れ舞台ってやつだな! ……何か忘れてるような、ああ、祭り太鼓と言えば法被だよな!」
 何か忘れているような気がして、小首を傾げる梅太郎ワンコ。
 暫くして着物が足りない事の方を気が付き、嬉しそうに探しに行った。
「材料はこれで良いとして……。残りの時間でルートを確認しておくかなっ」
 徹夜明けなのか、眠そうな白銀・風音(お昼寝大好きうさぎ・e01669)は舟を漕ぎ始める前に、立ちあがって地図を眺めに行った。
 ぬくい……。
 日本の一年を通して、秋と春は理想的なオヤスミ・タイムである。
「こちらですね。移動経路と人数によって所要時間は算定できます。後は稼ぐ時間が増えるごとに、犠牲者数も減っていくことでしょう」
「ありがと。あとは出動看板も用意しておくといいかな? 新しいのあると良いかも」
 ラズ・ルビス(祈り夢見た・e02565)が手招きして見取り図を示すと、風音はピラリと催し物の張り紙を捲る。
「看板はいいな。オレらが居ることを直ぐに判ってもらえるし、悲鳴で声が通らねえこともあるしよ」
 そこへ屋台に細工するため遅れたロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)も合流し、しっかりと避難経路と優先順番を仲間同士で通しておく。
 後はできるだけ周囲に何も無い場所で闘えば、迎撃案としては問題ないはずである。
「ではスタッフに員数確認するついでもありますので、材料も手配しておきましょう。しかし……祭りを狙う相手ですか」
 ラズはかしこまりましたと告げつつ、片目を閉じて運営に連絡を入れた。
 そして料理人や運営スタッフの人数も計算に入れて避難ルートを構築すると、静かに呟いたのである。
「……理由は分からずとも、それが許される行為でないのは、分かります犠牲など出しません、出させません……必ず」
 無表情ながらも見知らぬ誰かを守るため、ケルベロスは静かに牙を砥ぐ。

 暫くして、祭りが始まりポツリポツリと人がやって来た。
 その中には、客に紛れたケルベロスの姿もある。
「こちらで先行した料理人組に連絡を入れ、データの照合を行いますね。新設された看板を捲れ……だそうです」
 テルル・ライト(クォーツシリーズ・e00524)が片目を閉じた後で、近くの看板を探し始めた。
 暫くすると看板コーナに、目新しい素材の看板があるではないか。
「これか。調理場の位置に、過去例の密集スポット……。あとは避難経路の予測例が数枚といったところだな」
「ならそのコースを足で回ってみるわ。リアルな体験でないと齟齬が出るし……。その後は誰かの屋台で情報交換といこっか」
 ファルゼン・ヴァルキュリア(輝盾のビトレイアー・e24308)が上部のペーパを数枚捲りあげると、下に数枚のメモ用紙。
 それを受け取ったアム・クローズ(漆黒の救済美少女・e24370)は、準備体操を始め出した。
 歩きまわる為に体を解しつつ、ついでに(?)、お腹も開けておくつもりだったり。
「リアルな情報ですか……。ふむ。確かに生の体験とデータでは差が在る物ですしね。つまり、秋の味覚体験とは、季節による味覚変化に対応した料理研究……なるほど、深いですね」
 仲間が屋台を愉しむための言い訳要素(もしかしたら本当に調査かもしれない)……を真に受けたテルル女史は学問の秋に耽る。
「そのような研究、発表の場を壊される訳にはいきません、全力で対処しましょう。栄養過多と偏重に対しては……いえ、もしかすると美味しいと健康は違うものでは」
 と、明後日の方角へ深く深く沈み込んで行く。


「おっ、うん? ああ、なるほど。居た居たー。って、また移動されちゃった、今度どこだろー」
 四葉・リーフ(天真爛漫・e22439)は仲間から送られてくる暗号というか、仕草を解読しながら、周囲を見渡した。
 標的である、マグロガールを見つけたものの、人混みに紛れられては同じ目線位置だと見付けにくい。
 なにせ子供連れやら荷物持ちが多く、一見してシルエットが判り難い。
 戦闘力的にはさほどの脅威でないマグロガールが、ビルシャナ並に面倒くさいと言う理由に、思い至った気がする。
「えーと、次はどこお? 向こうから見てもらわ無いと、遠くからじゃ判んないよー」
「よっ、はっ。そこだそこ! そこに移動したってのが判らないのか? そうそう、その調子♪」
 どーんどん、ドーン!
 リーフが中央にあるステージを眺めると、梅太郎が軽快にバチを握ってドラミング中。
 楽しそうに叩く合間に、中央から見たマグロガールの位置をハンドサインやら仕草で教えるのだが、なかなか伝わらない。
「随分と賑やかになって来たな。これは少し注意しないと……そろそろか」
 ファルゼンが同じ様に周囲を見渡すと、人垣が増えるに従って見渡しにくくなる。
 音の合図で、痺れを切らしたらしい仲間が動き出すことに気が付いた。
「さて、いよいよ出番ね。う~ん中々……この漆黒の救済美少女アムちゃん! ってのはそろそろマンネリかしら~? あ、ああ。そもそもまず避難誘導しないとね」
「早くしてくれ。やっこさんも煮詰まって来たぞ、もう飛び出しかねねえ」
 アムは食べながら見栄切りを研究中、それをせっつき、情報を集めていたロディは『ちょっと休業。続きはケルベロス達の活躍の後で!』と屋台前の看板をひっくり返した。
 何人かの客がギョっとしたように後退するが、決してアムの厨二病ポーズの影響ではない(はず)。
「って、ちょっと待って。一般人相手にアッピールするとめちゃくちゃ目立てるんじゃないかしら!? ……ん? 趣旨が変わったような?」
「変わってますね……。それはともかく、包囲と避難誘導のために移動しましょう」
 もしかしてくても、趣旨が変わって居る。
 だが、それをラズが突っ込む前に、自体は風雲、急を告げだ。

「そうだ、このまま俺が機先を制すればいいんだ。と言う訳で……待てぇい!」
 やがて梅太郎は考えるのを止めると、太鼓を激しく打ち鳴らす。
 彼はまるで、散歩に出るワンコの様に突っ走り始めた。
「楽しい祭りを邪魔するたぁ……この不届き者め! 天が許しても、この俺が許さん!」
『っ!? あんた何モンだい? アタシが誰か知っていちゃもん付けてるって?』
 合いの手のように太鼓を叩きながら、梅太郎はマグロガールを呼びつけた。
 ズズイと啖呵を切り返す彼女に対し、モーゼの十戒がごとくに人の海が割れていく。
 一部には劇かと思った人も居るかもしれないが、人の波に呑まれて行った。
「俺が何者かって……そうだ、ただの太鼓打ちじゃあねえ……。てめえの目論見をぶっ潰しに来た、正義のケルベロスだぁ!!」
 梅太郎が投げバールならぬ投げバチが炸裂させると、ばりぃぃ……ペタン。
 とグロッキー状態のウルフェン君が現われた。だが耳の無いキャリバーだからか、相棒の信頼に応える為か、必死で起き上がる。
「えーと……。見た目は面白くてもやっぱりデウスエクスなんだなー! 被害は出させないぞー!」
「あははは……。今回の敵のあのマグロって捌いたら食べれるのかな? マグロの兜焼き食べたいなー」
 風音とリーフは自分たち以上の誰かさんの活躍(?)を見て、もはや遠慮しないことにした。
 いや、今は住民避難の為に、とにかく時間を稼ぐ時!
 リーフはスーパーの壁を蹴って三角蹴りを放ち、風音はスライディングで強襲を掛ける。
『ケルベロスです! 慌てず押さず、けど迅速に避難してください! 敵はケルベロスが引きつけますので。絶賛、ケルベロス出動中!』
 ダン!
 風音が看板を捲り上げ、戦いの幕を開けたのである。


「うおおお合体! アームド、マキシマムううシルエットなんとか!」
 ロディは屋台の一部を蹴り飛ばした。
 勢いを付けることで屋台の一部が軋み、足元からパーツが零れ、重量のあるパーツが上から振って来る。
 それを急いで担ぎながら、ロディはケルベロス戦士と化す!!
 さぁ、喧嘩祭りの始まりだ! と周辺一帯に弾幕を浴びせるが、当てると言うよりは牽制である。
「何それズッコイ!! 負けてられないわ。私は【導く者】よ! さぁ! このアムちゃんの声を聞きなさい!」
 あーっとここでアムは高らかに、パニックを起こす前に、住民たちに呼びかけた。
 まるで歌劇を詠いあげるオペラ歌手の様ではないか! 翼を広げると景色を一変させ、草木生い茂り花香る楽園の加護を呼び出す。
「……なんだか、この世の理不尽と戦っている気がするのですが」
「いいじゃないか。これも祭りの延長だと思えば。人々を恐怖させなくて済むとかな」
 縁とは不思議な物だ。
 無表情ながら必死で人々を守ろうとするラズと、本当に必要ならば巻き込む事も辞さないファルゼンが肩を並べて戦っている。
 呉越同舟のお祭り騒ぎとは、このことであろう。
「それもそうですね。今はなにより、敵を速やかに倒して祭りを再開していただく事です」
 ラズは溜息つくとロッドから稲妻を迸らせ、飛びかかりつつ飛蹴りで引き剥がすタイミングを測る。
 ミミックのエイドも起動し、援護に動きだした。
「こう言った雰囲気そのものは嫌いじゃない。片付けるとしよう」
 ファルゼンは最後に食べた神楽ボーの中に、バナナのドライフルーツが入って居る事を思い出した。
 薄い笑いを浮かべて、こんな祭り守るのもよいかと思いながら、無数のカードを放って仲間達の偽物を立ちあげていく。

 そしてケルベロスが動き出すならば、マグロガールとて反撃する。
 いや、性格を考えれば、こちらこそが本文なのかもしれない。
『あんたら邪魔だよ。消えちまいな!』
「熱ちちっ。やらせないって! やーい! マグロの頭とかだっさいなー!」
 爆炎に身をさらしたリーフの貫手が、敵の顔を前を通り抜ける。
 ちっと舌打ちする所に、そのままラリアットの態勢に入った。
『やかましい!』
「そうはさせません。防壁を起動。先生も援護をお願いいたします」
 ぽちっとなとテルルは炎を防いでいたドローン達の一部を、仲間の援護に差し向けた。
 いいや、違う!
 あれはまさにテレビウム。一般人達の守りが終了したことから、駆け付けて来たに違いあるまい。
「みーくんとの初戦闘だ! しっかり殴ってやる! いくよみーくん! まぐろー! くわせろー!」
 マグロ食べたい、ぴちぴちお魚食べたい。
 流体金属でそんな文字を描きながら、風音は鋼鉄の拳を放つ。
 そしてその一撃に続くように、巨大なナニカが飛んで来た!
「ごーっつい、癒しの肉球グローブ! うおおお!」
 無駄に熱い梅太郎の魂が、超ごっつく形を為す。
 彼の指示を受けて飛び出すキャリバーも、元気に戦場を跳ねまわった。
 こうしてマグロガールとの戦いは、住民を守る必要も無くなり、佳境を越えたのである。


「悔しかったらここまでおいでー! お尻ぺんぺーん! 『落下して、蹴ーる!!』もっかーい!」
『このガキャア! ケツから手突っ込んで奥歯をガタガタ言わしてあげるよ!」
 うわっ、ゲッヒーン。
 とか言いながら、リーフは再び飛びあがって高い打点の蹴りを放つ。先ほどからのダメージはチビに任せてラッシュだらっしゅ!
「おっと、そちらばかりに気を取られても良いのか? フレイヤ、やれ!」
 双魚の剣へ叩きつけるように鉄塊を振りまわし、ファルゼンは仲間への攻撃に横入りした。
 言うほどのダメージは出てないが引き付けられれば、それで十分。
 箱竜のフレイヤーに援護させ、一気に削りに掛った。
「ここまでだな! 邪悪なシャイターン! いやさ、マグロガール」
「お客さんが待ってるから、さっさと片づけさせてもらうぜ!『持ってけ、ありったけ!』弾はもうこれでカンバンだぜ」
 熱い二人が手を組んだ!
 ロディは射撃音が1つに聞こえるほどの神技を見せると……。
『風穴を開けてやるっ!!』
 と梅太郎がキリモミスクリュー。
 同じ場所に撃ち込まれた弾痕へ、黄金の輝きを纏いながら突入して行った。
『…これで誰かを、救えるのならば』
 ここはチャンスと見たラズは、メスを操り禁断の技を開封。
 二条の傷で縫合を阻止し、染み込ませた病魔で癒しの力を阻害する。
「がんばれ! エっキドナ! デウスエクスの持ちモノだし、あの被り物は兜焼きにできるのかしらね!?」
 アムはファミリアの力を借り、炎の力を引き出した。
 周囲を焼き尽くす豪炎にも耐える被り物を見ながら、もしかして食べられるんじゃあとか、夢のある事を言ってみる。
『ぶっこーす!」
 マグロガールは双剣を拡げて大回転。
 まるでプロペラの如き動きで、突進に掛った。
「そっちが頭突きならコッチも頭突きだ!!! そして屋台を再開だ!」
「治療なら引き受けます。遠慮なく」
 そこへ風音が割って入り、両手の拳を盛大に打ちつけると、悪鬼の様な顔で流体金属をまといながら兎に変身!
 テルルは治療のために薬剤入りの銃弾を用意しつつ、待機した。
『ブチカマス!』
 兎の小さな表面積に金属を密集させ、弾丸の様に駆けだしたのである!
 頭突きと頭突きのぶつかり合いは、オウガメタルの分だけ風月に分があったようだ。サイズの問題で、頭では無く腹にぶつかったものの、無事にトドメを刺したのである。

「終わった終わった。せっかくだし、食べ比べしてみたいわねー!」
「折角だし料理を堪能して帰りたいな。太鼓叩いておなかペッココペコ」
 アムの言葉を拾い、梅太郎がお腹を抱えた。
 仲間達は笑いながら、相槌を打ったり自分の屋台に戻る。
「それもいいかもしれんな。ドライフルーツの店はどれだったか……」
「それならオレのだな。ちょっと待っててくれよ。デコるからさ」
 ファルゼンが修復の終わった屋台を眺めると、ひとっ走りロディが飾り付けを始める。
「こちらはオーソドックスに三種のペーストを変えた物ですね。当たりもありますので、ご堪能ください」
「ちょっと待った! なにデザートからいってるの? 先におかずをたべてくれないと。ハイ、中はジューシなツクネ。そとはカリカリで、トッピングに粉チーズ!」
 ラズまでがちゃっかりアピールし始めると、風音も黙って入られない。
 いつもの眠気は何処へやら、味比べに突入したのである。
「あはっ、愉しそうだね。さーて、楽しむぞー!」
「(中々興味深い研究でしたね、先生。次も学びたいものです」
 リーフが腕まくりしながらお皿を片っ端から取って行くのを見ながら、テルルは声には出さずに微笑むのでした。
 テレビウムが映しだす、記念写真の方に向けて……。

作者:baron 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 1
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