長野県、佐久市。
豊かな自然に恵まれた、広大な市域の一隅。ほとんど人の立ち入ることのない山中に、異様な三人組が出現した。
三人組のうちの二人は、忍者装束をまとい、螺旋の仮面をつけた典型的な螺旋忍者である。わずかに垣間見える肌は毛皮に覆われており、もしかすると獣人かもしれない。
残る一人は、螺旋の仮面をつけてはいるが、シルクハットにハイレグの燕尾服、ステージに立つ奇術師のような服装をした妖艶な雰囲気の女性である。その周囲には、はらはらと無数の蝶が舞っている。
そして女性は、よく通る綺麗な声で、二人の螺旋忍者に指令を下した。
「あなた達に使命を与えます。この近くに、機械動力や魔力を使わず、人力のみで飛行する器械を研究開発している人間が居るようです。その人間と接触し、その仕事内容を確認、可能ならば習得した後、殺害しなさい。グラビティ・チェインは略奪してもしなくても構わないわ」
「……人力のみで、飛行?」
そんなたわけた研究に何の意味があるのでしょう、と、二人の忍者のうちの一人が尋ねかかったが、もう一人が相棒を制して応じる。
「かしこまりました、ミス・バタフライ。一見、意味の無い業を為す者をわざわざ手間暇かけて消すように思えるこの作戦も、巡り巡って、地球の支配権を大きく揺るがす事になるのでしょう」
「その通りよ。一見無意味に思えても、あなた達の誠実な作戦遂行が、巡り巡って大きな力になる……なるはずなの」
期待しているわ、と言い置いて、ミス・バタフライと呼ばれた女性は無数の蝶とともに姿を消した。
「長野県佐久市で、螺旋忍軍が動き出したようです」
ヘリオライダーの高御倉・康が、緊張した表情で告げる。
「指令を下していたのは、ミス・バタフライと呼ばれていた奇術師のような姿の女忍者で、二人の螺旋忍者が実行部隊の配下のようです。その指令とは、佐久市に住む、機械動力や魔力を使わず人力のみで飛行する器械を研究開発している人の仕事内容調査、可能なら研究内容の取得、そして殺害です」
「……人力のみで、飛行?」
誰かが呟き、ケルベロスたちは顔を見合わせる。有人無人を問わず、機械動力で動く飛行体は高度に発達して広範囲に利用されており、更に魔力や固有の特性で飛行する種族が多く存在する現状、人力のみで飛行する技術の研究開発に、個人の趣味道楽以上の意味があるとも思えない。
しかし康は、真面目な表情で続ける。
「なぜ螺旋忍軍が、そんな作戦を行うのか、理由はわかりません。ただ、この作戦を実行すれば、まるで風が吹けば桶屋が儲かるかのように、螺旋忍軍に有利な状況が生じるのだと、ミス・バタフライは配下に告げています。本当にそうなるのかどうかはわかりませんが……勿論、それがなくても、螺旋忍軍が一般人を殺そうとしているのを見逃すことは出来ません」
そう言って、康はプロジェクターに地図と画像を出す。
「螺旋忍軍が現れた山中に比較的近い場所……地図上のこのあたりに、人力飛行器械研究開発者と称する人物が研究所を構えています。名前は、ええと、ジャン・バティスタ・レオナルド……フランスの方ですね。おそらく螺旋忍軍は、この人に接触してくると思います」
資料を映し出しながら、康は思案顔で告げる。
「これから急行すれば、敵より先にレオナルドさんに接触することはできるでしょう。ただ、デウスエクスが襲ってくるので避難してください、などと単純に説得して避難させると、敵が別の対象を狙うなどして阻止できなくなってしまいます。しかも、この方は変人としてかなり名高いようで、どうやって接触して事情説明、説得……あるいは丸めこんでもぐりこむか、工夫が必要かもしれません」
ちなみにレオナルドさんは、自力飛行が可能な種族の方に対しては、研究所敷地内に立ち入ること自体を禁じているようです、と康は溜息混じりに続ける。差別するわけではないが、純粋な人力飛行実験にとって撹乱要因になると主張しているらしい。研究所敷地周囲には鉄条網がめぐらされ、弟子なのか護衛なのか、屈強な男性が何人か、身辺についているようだ。もちろんすべて一般人で、デウスエクスやケルベロスに対しては無力だが、巻き添えにしない工夫は必要かも知れない。
「ええと……実行部隊と思われる二体の螺旋忍軍ですが、具体的な能力、種族等はわかりません。ミス・バタフライから、可能であれば技能を取得するよう命じられているようなので、いきなり研究所に潜入、暗殺するのではなく、何かの偽装をしてレオナルドさんに接触してくると思います。ただ……それほど地球社会の事情に通じているとも思えないので、何もしないで放置していると、レオナルドさんやその身辺にいる人とトラブって、すぐさま戦闘になってしまうかもしれません」
そう言って、康は一同を見回す。
「かなり厄介な事件だとは思いますが、放置しておくと何がどうなるか……最悪、これが原因となって螺旋忍軍に地球の覇権を握られてしまう可能性も、ないわけではありません。どうか、よろしくお願いします」
参加者 | |
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不知火・梓(酔虎・e00528) |
日柳・蒼眞(蒼穹を翔る風・e00793) |
ベルンハルト・オクト(鋼の金獅子・e00806) |
千軒寺・吏緒(ドラゴニアンのガンスリンガー・e01749) |
九十九折・かだん(ヨトゥンヘイム・e18614) |
ガラティン・シュミット(遺志苛まれし医師・e24979) |
北條・計都(神穿つ凶兆の星・e28570) |
アメリア・イアハッター(あの大空へ手を伸ばせば・e28934) |
●まずはアポ取り
「もしもし……ああ、俺は不知火ってもんだが、人力飛行器械に興味があってね。ぜひ、レオナルド先生にお会いしたいと……ふむ、紹介状が要るのか」
螺旋忍軍に狙われている人力飛行器械研究者、ジャン・バティスタ・レオナルド氏にアポを取ろうと電話をかけた不知火・梓(酔虎・e00528)は、電話に出た人物……おそらく護衛兼研究協力者から、先生に会うにはしかるべき方の紹介状が必要と言われて眉を寄せた。
(「ま、資産家らしいから、この程度は用心しないと。金目当ての奴らがたかってきて、収拾つかなくなるんだろう」)
内心で呟くと、梓は腹を据え、電話の相手に告げた。
「紹介状はないが、俺はケルベロスだ。そう、侵略者デウスエクスと戦って地球を守るケルベロス。人力飛行器械に興味があるのも本当だが、ケルベロスの職務で、至急、レオナルド先生にお会いしたい……ああ、そうだ。地球の命運に関わる用件だ」
電話で告げる梓の言葉に、傍らで聞いていた日柳・蒼眞(蒼穹を翔る風・e00793)が肩をすくめる。
(「ケルベロスだってのは伏せときたかったけど、人力飛行器械に興味があるってだけじゃ会ってもらえないんじゃ仕方ないな」)
一方、普段は竜派のドラゴニアンだが、飛行可能種族は研究所に入れないというので人型を取り、角と翼と尻尾をすべて収納している千軒寺・吏緒(ドラゴニアンのガンスリンガー・e01749)は、少し不安そうな表情になる。
(「ケルベロスと名乗って入るのか……人派の姿のケルベロスカード、あったかな?」)
いざとなったら仲間のカード借りるか、と、吏緒は蒼眞と北條・計都(神穿つ凶兆の星・e28570)を見やる。
そして梓は、にやりと笑って親指を立ててみせる。
「そんじゃ午後1時ぐらいに、研究所の入口へ出向くよ。人数は八人、全員ケルベロスで、人力飛行器械に興味がある……ああ、飛行可能種族はいない。サーヴァント連れが二人いるが、バイク型で飛ばないタイプだ……ああ、それじゃのちほど……アンドレさんか。俺は不知火・梓。よろしくな」
そう言うと、梓は電話を切って告げる。
「どうにか、会ってもらえそうだ。ケルベロスと名乗って入るから、皆、カード用意してくれ」
「ライドキャリバーに乗る方が二人で、あと六人……やはりレンタカーは二台要りますね」
ガラティン・シュミット(遺志苛まれし医師・e24979)が告げ、梓がうなずく。
「それじゃ、借りましょう。一台、運転お願いできますか」
「はい」
ガラティンと梓がレンタカー屋へ向かい、見送る九十九折・かだん(ヨトゥンヘイム・e18614)が呟く。
「車で移動か……角引っ込めないと、屋根につっかかるな」
面倒だけど、と、かだんは大きなヘラジカツノをゆっくり収納する。
「まあ、交渉せずに済んだから、いいか」
「交渉といえば、電話に出た人は、ちゃんと日本語話していたようだね」
ベルンハルト・オクト(鋼の金獅子・e00806)の言葉に、アメリア・イアハッター(あの大空へ手を伸ばせば・e28934)は真面目な表情でうなずく。
「そうみたいね。他の護衛の人や、レオナルド先生御本人が日本語話されるかどうかは、まだわかんないけど」
できれば通訳とか介さずに、人力飛行器械について深いお話がしたいわ、と、アメリアは呟く。
(「そのためには、とにかく直接お会いして、お護りして、厄介な奴らをやっつけないとね!」)
●対面
「私が、ジャン・バティスタ・レオナルドだ。君たちが、私に用があるというケルベロスかね?」
大きな作業机の一角で図面を描いていた人物が、振り返って流暢な日本語で尋ねた。
午後1時近く、研究所入口に着いた一同は、予想よりずっと友好的に、むしろ歓迎される感じで護衛たちに迎えられた。吏緒が懸念していたケルベロスカードのチェックも梓一人だけで済み、計都とアメリアが連れているライドキャリバーの構内同行も認められ、一同は研究所のオーナーが作業をしている工作棟へ案内されたのである。
その人物は、小柄で痩せており、顔色もあまり良くなく、病人のようにも見えた。しかし、その瞳の強い光が、彼が良くも悪くも尋常人でないことを物語っている。
「いかにも、俺は不知火・梓です」
可能な限り重々しい声で、梓が応じる。
「俺たち一同、先生の研究と技術に多大な興味がありますが、本日はその前に、少々嫌な話をしなくてはなりません。デウスエクスの一派、螺旋忍軍と呼ばれる奴らが、先生の技術と命を狙っています」
「私の技術を?」
眉を怪訝そうに寄せ、レオナルド氏は改めて相手を見やる。
「しかし私の研究と技術は、手っ取り早い実用性や商業的利益とは無縁のものだ。それをどうして、デウスエクスが狙う?」
「彼らの思考方法は、我々人類とは真の意味で次元が違い、推し量ることはできません。ただ、どんなものであれ彼らの狙いが成功すると、人類には必ず災厄が訪れます」
きっぱりと、計都が告げる。
「人の力だけで空を目指す。その意図は、生物としての人の可能性を広げる。商業的価値など無関係、意図そのものが素晴らしいと俺は思います。だからこそ、デウスエクスなどに悪用されたくない!」
「ほほう……」
意外そうに、レオナルド氏は計都を見やる。
「強大なデウスエクスから地球を守るケルベロス……話には聞いていたが、君たちが実用から遠い私の研究や技術を評価するとは思わなかった。実戦に臨む戦士は、実用性を重んじるからね」
「確かに、武器や戦術には実用性を求めますが、だからって、実用性の薄いものを軽視はしません。少なくとも俺は、浪漫実現のため尽力する人は、実用とは関係なしに尊敬します」
蒼眞が告げ、ベルンハルトが生真面目な口調で続ける。
「確かに実用性は大事だが、そこに気を取られると、人は飛躍できなくなる。人の力で自由に空を飛べたら、という夢と希望に注力することで、明日への飛躍が生まれる。素晴らしいことだ」
「けものは生きる為に飛んだけれど、人は夢のために飛ぶ。すごいよな。鳥が何万年もかけた進化に、夢の力で追いつくんだ」
かだんが謳うように語り、レオナルド氏の口元が僅かに緩む。
「ああ、そうさ……生きるための切実な行為ではないから、夢だからこそ、やりたいんだ……」
「そうそう! そうですよねっ!」
もはや抑え難しと、アメリアが飛び出す。
「自身の力で空を飛びたいというのが、私の夢そのものなんです! もちろん、ケルベロスとして地球を守るのは大事なお仕事ですけど、そのためにも先生のことは絶対絶対守り抜きますけど! それはそれとして、先生はどんな方法で、空を飛ぶ技術を進めてらっしゃるんですか? お話、聞きたいんです!」
「おや……君はどうやら、私の同類のようだね」
ケルベロス戦士の中に、人力飛行の夢に本気でとりつかれている御同類がいるとは思わなかった、と、レオナルド氏は破顔一笑する。
そして梓が、神妙に告げる。
「そういうわけで、我らケルベロス八人、先生を螺旋忍軍からお護りしますが、なんせ相手は神出鬼没、どこから出るかわからない。通常は、襲撃まで四六時中ぴったり密着ガードという、鬱陶しい方法になるんですが、今回は別な手がある」
「ほう?」
首を傾げるレオナルド氏に、梓は淡々と説明する。
「螺旋忍軍の目的は、先生の暗殺だけじゃない。人力飛行の貴重な研究と技術を奪うことです。そして、長年研鑽された研究や技術は、論文一編、図面一枚盗んで奪えるもんじゃない。必ず、先生の元に入り込んで直接教えを請うたり、先生が研究を行っている現場を観察したり、そういった手段に出てきます」
「なるほど。では、デウスエクスが接触してくるのを待つわけかね?」
尋ねるレオナルド氏に、ガラティンが真摯に告げる。
「具体的には、面会を求める外からの電話に対して、しばらく紹介状を求めないでください。そしてゲートに詰める方々に、面会にやってきた相手を観察し、不審な点があっても追い返さず、こちらに連絡するよう伝えていただきたいのです」
「ふむ、つまり、阻むのではなく罠に誘いこむと……面白い!」
デウスエクス相手に有効かはわからんが、耐爆地下室があるから、そこへ誘い込もう、とレオナルド氏は目を輝かせる。
(「とりあえず……うまくいってるな」)
くれぐれも俺の存在がバレないように、と、吏緒は緊張した表情で呟く。バレたら最悪、すべてブチ壊しになりそうだ。
●飛んで罠に入る螺旋忍軍
「来ました……露骨に怪しい二人組です。ちゃちなマスクで顔隠して、普段だったら百パーセント門前払いですが……」
「うむ。予定通り、B-0へ案内してくれ」
構内電話に告げ、レオナルド氏はケルベロスたちを見やる。
「デウスエクスが来たようだ……二人組らしいが」
「想定内です。一人が囮で一人が忍び込む、とかだと厄介ですが、雁首揃えて来るなら勿怪の幸いですよ」
意図的に軽く応じ、梓はぷっと長楊枝を吐き捨てる。
標的のレオナルド氏を同行するかは難しいが、耐爆地下室の壁が螺旋忍軍を阻める保証はない。ならば、こちらの目の届く位置にいてもらった方が、万一の不覚を防げる。
(「ま、アメリアと『エアハート』は先生の防護最優先だし、大丈夫だろう」)
声には出さず、梓は呟く。敵の接触を待つ間、真性人力飛行オタクのレオナルド氏とアメリアは意気投合し、もはや長年の師匠と弟子という雰囲気になっている。
「お待たせした。私が、ジャン・バティスタ・レオナルドだ」
ケルベロス八人サーヴァント二体の後からレオナルド氏が耐爆地下室に入り、アメリアが扉を閉めて鍵をかける。
すると、二人組の片方が聞き苦しい声で尋ねる。
「この人たちはナンデスカ? ボディガード?」
「ああ、最近いろいろと物騒で……ね!」
レオナルド氏が答え終わる寸前、梓が抜刀、フルパワーの剣気を籠めた重い斬撃を見舞う。
「我が剣気の全て、その身で味わえ」
「ギャアアッ!」
梓の必殺技『試製・桜霞一閃(シセイ・オウカイッセン)』威力は絶大だが発動に準備時間が必要、かつ剣速が遅く命中率が低いため、実戦では使いにくい技だが、初撃の不意討ちには、文字通り殺人的な威力を発揮する。
斬られた螺旋忍軍は、一撃で絶命はしなかったが、座っていた椅子ごと斬られて尻餅をつき、立ち上がれない。
「ナ、ナニをスル!?」
「ナ、ナンダ? 地球人が、ナゼ我に傷ヲ……?」
無傷の方は跳び上がって身構えたが、斬られた方は、なぜ自分がダメージを負ったのか理解できず、呆然と呻く。
そこへ蒼眞が、まさに情も容赦もなく、最強の剣技を叩き込む。
「ランディの意志と力を今ここに!……全てを斬れ……雷光烈斬牙……!」
理不尽な終焉を破壊する力を持つ冒険者、ランディ・ブラックロッドの意志と能力の一端を借り受け、その破壊力を叩きつける必殺技『終焉破壊者招来(サモン・エンドブレイカー!)』の直撃に、螺旋忍軍一名は何もできないまま絶命する。
「し……死んダ!? 貴様ら……ケルベロスか!!」
「やっと覚ったか。お前たちは、罠に嵌ったのだ」
冷やかに告げ、ベルンハルトが必殺の剣技『乱れ剣・枯山水(ミダレケン・カレサンスイ)』を駆使する。
「見切れるか、この剣技」
「オノレ、螺旋忍軍をナメる……ぎゃあっ!」
予告しての斬り込みを見切り損ね、螺旋忍軍は肩口に深手を負って飛び退く。ベルンハルトの必殺剣は間合を狂わす魔剣で、紙一重で躱す達人ほど惑わされるが、逆に不意討ちには向かない。
「ナ、ナゼダ……なぜ、我々がコイツに接触すると……」
「知りたいか。でも教えてやらない」
ぼそぼそ呟くと、かだんが味方前衛にエフェクト強化のオリジナル治癒技『吐息(プシュケー)』を放つ。
「命に、恋をしよう」
「ていっ!」
吏緒が踏み込み、刃のような回し蹴りを放つ。続いて計都が、重力蹴りを叩き込む。更に彼のライドキャリバー『こがらす丸』が、炎をまとって突進する。
「オ、オノレ、ケルベロス……」
こうなったら抹殺使命だけでも果たす、と、螺旋忍軍はレオナルド氏へ飛びかかろうとするが。
「やらせない!」
いけ『エアハート』と、アメリアが叫び、螺旋忍軍の一撃はライドキャリバーに阻まれる。
「治癒を……」
メディック役のガラティンが雷撃の力で『エアハート』を治癒、前衛の耐性を高める。
治癒を受けた『エアハート』は激しいスピンを仕掛け、螺旋忍軍の脚を払う。アメリア本人は、二つのバトルガントレットをフル活用し、光と闇の二段撃を叩き込む。
「よくも! 先生を狙って! 『エアハート』にまで傷をつけたわね! 許さない!」
おい、ライドキャリバーを盾に使ったのはお前だろ、と、螺旋忍軍が思う余裕があったかどうか。強烈パンチを撃ち抜いたアメリアは、同じ旅団の計都へと叫ぶ。
「計都くん! やっちゃって!」
「お望みとあらば」
ふっと笑うと、計都は『こがらす丸』と変形合体し、螺旋忍軍を頭上から強襲する。
「とくと見ろ! これが人間の可能性だ! そして! これが、俺の……俺達の! 精一杯だぁぁぁッ!!」
「ガッ!」
必殺技『ストライクデッドヒート』に頭を直撃され、螺旋忍軍は頭部をほぼ粉砕されて斃れた。
「終わったな」
呟いて、梓はレオナルド氏に一礼する。
「では、俺たちは引き揚げます。研究の邪魔をして済みませんでした」
「とんでもない。君たちならいつでも歓迎だ。ぜひ、また来てくれたまえ」
レオナルド氏が笑顔で告げ、アメリアが笑顔で礼を返す。
すると吏緒が、躊躇気味に尋ねた。
「あの……教えてもらえますか? どうして飛行可能種族は研究所に立入禁止なんでしょう?」
「ああ、それは、飛行可能種族は無意識に念動力を使うからだ。彼らが翼の力だけで飛ぶのは力学的に不可能で、科学外の力で飛んでいると思われる。ところが、この力は彼ら自身の翼だけでなく、近くで飛ぶものにも影響を及ぼす。弱い力だから、即座に墜落などの危険はないが、データは狂う」
レオナルド氏の説明に、吏緒は目を丸くする。
そして、ガラティンが複雑な表情で告げる。
「私には養子も含め3人子供が居まして、上二人は飛行種族なのですが末の娘はその二人を今でも羨ましく思ってます。……親馬鹿ながら、3人揃って飛べる手がかりになればと思いまして」
「科学的なデータを取る飛行でないなら、ご家族で一緒に飛ばれても何も問題はないかと思いますが、後は下のお嬢さんのこだわりでしょうね。特にこだわりがなければ、ジェットパックや魔法の飛行具などを使えばよいと思いますが、人力飛行にこだわっているなら……私でよければ、お嬢さんと話してみてもいいですよ」
お役に立つか分かりませんが、と、レオナルド氏は最初にケルベロスたちと会った時とは、別人のように明るい表情で告げた。
作者:秋津透 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年9月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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