肉宴の果実

作者:高峰ヨル

 今夜も熱狂する群衆が――せいぜい五十人ぐらいだが、小さなライブハウスに詰めかけていた。
 地方都市にあるこのライブハウスは、ある地下アイドルの拠点として極めて局地的に知名度を上げつつあった。
 ステージでは赤、青、黄色、それぞれのイメージカラーを基調とした原色化繊のワンピースという非日常な衣装で着飾った三人の女性アイドルが歌い踊っている。
 人数が少ないわりに、ステージは手狭に見える。
 彼女たちの容姿は、総じてぽっちゃり、ふくよか、ようするにデ……まあそういうことだ。
 衣装がはち切れそうな胴回り。
 ぎりぎりまで短いスカートからのびる脚は、動くたび皮下脂肪が波打つ。
 パツパツに張った二の腕は、思わず贈答用に詰め合わせたくなるハムのよう。
「みんなー! 今日の夜食のラーメンはー!?」
「とんこつー!!!!」
「じゃあ次の曲は! 『LOVE豚骨Buhiiiiii』!!」
 彼女たちは歌と自らの肉体で食物への愛を表現する、まさに等身大の存在である。
 ファンはそんな彼女たちを愛している。
 ちなみにファン層は太めばかりというわけでもない。ガリデブ中肉中背満遍なくいる。
「素晴らしい」
 突如、オークの集団がステージに乱入してきた。
 一気に肉密度が上がるステージ。上がり切れなかったオークは舞台袖にはみ出る。
 オーク達の先頭に立つのは、白いスーツを着てキザな帽子をかぶった胡散臭い豚だった。
 スーツの豚、ギルビエフ・ジューシィはセンターに名刺を差し出す。
「あなた方の肉感的なムチムチボディは、わが主の『ドラゴンハーレム』に相応しい。是非、ハーレムで繁殖に励んでいただきたい! ……もちろん、ギャラも拒否権もありませんがね!」
 最初は演出かと思って静観していたファンが怒号をあげる。
「おい豚野郎、ふざけんな! アキちゃんに近寄るな!」
「俺のサキちゃんに触るんじゃねー!!」
「ミキちゃん逃げてー!!!」
 乱闘にもつれ込むも、一般人がデウスエクスに敵うわけがない。
 死屍累々の中、『マシュマロ☆テディーズ』はオーク達の手に落ちた。

「ギルビエフ・ジューシィというオークが各地の地下アイドルを無理矢理スカウトして、ハーレムに連れ帰るという事件が起こっているようです。間もなく、さいたま市のとあるライブハウスが襲撃されることが判明しました」
 ギルビエフはスカウトという体をとってはいるが、アイドル達に拒否権はなく、これは紛れもない誘拐だ。
 抵抗しなければアイドルをさらうだけで去っていくのだが、当然ファンが黙ってはいない。
 オーク達はアイドルを傷つけることはしないが、抵抗したファンは躊躇なく殺されるだろう。
「ファンの方々はケルベロス達がいても自ら命がけでアイドルを守ろうとします。彼らを避難させるには、ある程度の説得が必要です」
 たとえば。
「同じアイドル愛を持つ仲間だと思って貰う、その幻想を打ち砕く、むしろ自分のファンにしてしまう……とか」
 ファン達の属性を考えると、特殊な説得が必要なようだ。
 だが説得に成功すれば、集団行動が得意な彼等は迅速に避難するだろう。
「会場は50人程度で満員になるライブハウスなので、決して広くはありません。オールスタンディングで座席などは設置されてないので、障害物の心配はありませんが……」
 10体のオーク達はそれぞれさほど強くないが、陣形を組んでそれなりに戦術的に動くのが厄介かもしれない。
「ギルビエフは戦闘が始まるといつの間にか姿を消します。撃破は難しいでしょう」
 ファンの犠牲は依頼の成否に関わらない。
「オーク達の狼藉を許すわけにはいきません。どうかアイドル達とファンの夢を守ってあげてください」
 そう言って、セリカはケルベロス達を見送った。


参加者
喜屋武・波琉那(蜂淫魔の歌姫・e00313)
ノワル・ドラール(ハートブレイカー・e00741)
ジューン・プラチナム(エーデルワイス・e01458)
レーン・レーン(蒼鱗水龍・e02990)
斎藤・斎(修羅・e04127)
セレス・アキツキ(言霊の操り手・e22385)
ホルン・ミースィア(見た目は巨神っ頭脳は子供・e26914)
弐番堂・むささき(紫電の歯車・e31876)

■リプレイ


 夕飯には遅く寝るには早い、そんな小腹が空く時間帯だった。
「彼女達は本当に幸せそうに食べるでござるな」
 弐番堂・むささき(紫電の歯車・e31876)は、現場に向かう道すがらマシュマロ☆テディーズのフライヤーを眺めていた。
 そこにはメンバーのブログから転載された食事風景が載っている。
 ブログは音楽活動の告知もあるが、食の話題がメインらしい。
「これ、アイドルのブログなの?」
 むささきの手元をのぞき込んだホルン・ミースィア(見た目は巨神っ頭脳は子供・e26914)が不思議そうに尋ねる。
「食事は万物の生きる糧でござるからな。アイドルとて例外ではござらん」
 このアイドル達のファン層とは一体どんなものなのか。
「ファンの方々の説得……なんだかビルシャナ依頼に立ち向かう気持ちがしますわね」
 レーン・レーン(蒼鱗水龍・e02990)は複雑な表情を浮かべる。
 確かにアイドルとは偶像、すなわちファンにとっては神そのものと言っても過言ではないかもしれない。
「きゃあ!?」
 ハイヒールのかかとが折れて、ノワル・ドラール(ハートブレイカー・e00741)が転倒した。
 嗚呼、妖しくも艶やかだった褐色のサキュバス美女は見る影もない。
 彼女はこの依頼のために100キロ前後まで増量(本人談)したという。
 改造ナース服からはみ出たお肉は、つまめるどころか鷲掴みにできそうだ。
「ハァ……ハァッ……身体がお、重すぎて……ってきゃあ!?」
 起き上がろうとするが、腹肉がつっかえてコロコロ転がっていく。
 追いついて止めた仲間達はもういっそ転がしていこうかと思案するが、
「大丈夫、私ケルベロスだもの……戦えるわっ」
 戦っているのは肉圧で今にもはじけ飛びそうな改造ナース服のほうである。
 明らかに体重超過(やりすぎ)であった。
「そのプロ根性(?)はすごいと思いますわ……」
 レーンは悩ましげに、ため息交じりにつぶやいた。


 ライブハウスにつくと、ケルベロス達は正面から突入した。
 だが小さな会場とはいえ、正面入口からステージまではそれなりに距離があり、しかも客席は観客で埋まっている。
 ステージまでたどり着くのは容易ではない。
 裏口からいけばすぐだったのだが、そこまで詰めていなかった。
「早速私の出番ね」
 セクシーに舌なめずりするノワル。顔は変わらず美人なのだが……。
 ノワルは折れたハイヒールを脱ぎ捨て、仁王立ちになる。
「マシュマロ☆テディーズ幻の4人目、チョコマシュマロ惨状、なんてね……? 私のお願いを聞いて素早く落ち着いて避難してくれると嬉しいわ!」
 ノワルの声に、ステージを見つめていたファン達が振り返る。
 捨て身のラブフェロモン故か、単にひいているのかわからないが、観客の目はノワルに釘付けだ。
「ファンの方達の対応はノワル様のムチムチボディに期待しますわ」
 レーンは青く輝くロングヘアをかき上げ、豊かな胸と腰回りの曲線をアピールする。
「オーク好みのプロポーションと自負してますのよ……いかがかしら?」
 今度はオークがレーンに反応した。
 間一髪のところで、アイドルに触れそうになっていた触手が引っ込む。
 その機会を逃さず、ケルベロス達は観客をかき分けてステージまで突破した。
「可愛い子を見つける眼は確かだけど……悪いことに利用するのは良くないよ!」
 普段は自分も地下アイドルをしている喜屋武・波琉那(蜂淫魔の歌姫・e00313)にとって、邪な目的のために大事なライブを邪魔するなんて許せない。
「皆さん、どうか落ち着いて、オークから離れてください」
 ステージに上がった斎藤・斎(修羅・e04127)は隣人力でアイドル達に声をかけ、オークとの間に割って入る。
 彼女達に指一本触れさせるつもりはない。
 セレス・アキツキ(言霊の操り手・e22385)もオークに対峙しながら、背後の三人を振り返った。
「もう大丈夫よ。私たちはケルベロス」
「ケルベロス……?」
 アキがリーダーらしく気丈に応えるが、大きな体は他の二人と同様に震えている。
「怖いかもしれないけれど、大丈夫。貴女達もファンの人達も、絶対守ってみせるから」
 セレスの声には温かく力強い響きがあった。
 怯えていた三人は、決して大きくはないセレスの背中に頼もしさを感じて少し落ち着いた。
「好きな事をやって、誰かの笑顔に繋げられている彼女達が素敵なのは分かるけどね、貴方達には勿体ないわ」
 オークに向かい、セレスは決然と言い放った。
「スカウト紛いの行動もオーク風情では通常運行と大して変わりありませんね。狼藉者どもは早々に地獄へ退散願いましょうか」
 斎はチェーンソー剣を閃かせ、汚らわしい触手を牽制する。
「そっちは任せたでござる。まずは観客を避難させなければでござるな」
 むささきはステージからファンを遠ざけ、誘導を始めた。
 斎はオーク達を睥睨しながら、眼鏡の奥で不敵に笑う。
「ええ、抑えはお任せを。……でも、別に倒してしまっても構わないのでしょう?」
 大人しそうな物腰に似合わず強気な態度の斎に、オーク達は嗜虐心を刺激されたようだ。
 触手がシュウシュウと音を立てて鎌首をもたげる。
「正面口と非常口の二手に分かれて! 落ち着いて外に出てね」
 ジューン・プラチナム(エーデルワイス・e01458)が割り込みヴォイスを使ってファン達に呼びかけた。
 退避を渋るファンにも声をかける。
「非難されることの多い身体的特徴をあえて『個性』として武器にする……そんな彼女たちをボクは尊敬するし、素直に応援したいと思う。彼女らを守るのは僕たちに任せて、皆は避難してほしいんだ」
 ジューンの誠意が伝わったのか、ファン達は少しずつだが冷静に動き出す。
 ところが……
「戦うのは私達に任せて君たちはマシュマロ☆テディーズの護衛をお願い!」
 波琉那の言葉は、そのまま「避難して」と言えば反発を買う恐れがある故の配慮だったのだが、結果的に一般人であるファンがオークの標的になってしまう行動だった。
 オークの目的はアイドルの誘拐だ。邪魔するものは一般人でも容赦はしない。
 使命感に動かされたファンの一部がステージに向かおうとすると、オークの触手にあっさりと弾き飛ばされた。
 テディーズが悲鳴を上げる。
 波琉那は慌てて翼を広げ、翅音の癒しでファン達を包む。
「命の翅音よ……舞て、汝に癒しの息吹を……!」
 死者を出すことは避けられたものの、動揺が起き始めていた。


 その時、暗いライブハウスに眩い光が溢れた。
 巨大鎧装を纏ったホルンが光の翼を広げ、ステージの前に浮かび上がったのだ。
 横には翼の生えた猫がふわりと浮かんでいる。
「こんばんはっ! ボクはホルン! こっちは羽猫のルナ! 突然だけど皆ご飯は好きかな?」
 ――それは突然で、場違いな話だった。
 だが混乱していた群衆は、幼いながら一生懸命に話すホルンの声に聞き入った。
「ボクはね、常命化してからおじーちゃんに初めて食べさせてもらったカレーライスの味、今でも覚えてる」
 精一杯、自分の中にある食の喜びを語るホルン。
 それはファン達にとって同志の言葉だった。
「皆が頂きますしてご飯を食べる時、思い浮かべるのは誰?」
 家族の顔、恋人の顔、大切な人……そして、
「マシュマロ☆テディーズじゃないかな?」
 うおおおおおおおおおおおおお
 ファン達の歓声。
「それは彼女達アイドルだって同じなんだ! 思い浮かべるのはもちろんファンの皆! でも……もしも皆が傷ついてしまったら、彼女達は再び満面の笑みを浮かべてご飯を美味しく食べられると思うかな?」
 ざわめきを残して静まり返る客席――ホルンの言葉は、群衆に沁み渡っていく。
「小生も美味しくものを食べる女子を見るのは大好きでござる!」
 むささきがフライヤーを掲げて叫ぶと、拍手喝さいが起きた。
「彼女たちの幸せそうな顔にお主達も幸せにしてもらったでござろ? 今の彼女たちの顔を見てみるでござる……悲しそうでござる」
 今、ステージの彼女達は泣いている。
 ファンにとっての女神の笑顔を曇らせるのは本意ではないはず。
 だから。
「女を守りたいと思うのは立派なことでござる。でも逃げるのも男の立派な仕事でござる。後は小生達に任せるでござる」
「そう、そんな悲しい表情を彼女たちにさせちゃいけない! ご飯はやっぱり笑顔で食べなくちゃ!」
 ホルンが言うと、そうだそうだとあちこちから声が上がる。
「彼女達を守ろうって無理しちゃうのは、仕方ないよね」
 ジューンはファンの思いが理解できる。
 地下アイドルはファンとの距離感が近いので、なおさら思いは強いのだろう。
「でも、彼女らを守るのは僕たちに任せて、皆は避難してほしいんだ。ここで被害者をゼロにできれば、絶対彼女らの今後の活動のプラスになるから!」
 テディーズの魅力を解するジューンの言葉だからこそ、ファン達の心に響いた。
 被害をゼロにするという具体的な目標ができた今、彼らの結束は強い。
 全ては彼女達のために。
 またみんなで美味しくご飯を食べて、楽しくライブで盛り上がれるように。
 こうして避難は滞りなく進み、負傷者も速やかに運び出される。
 間もなく、ライブハウスにはケルベロスとオークだけが残された。


「さぁ後ろは小生に任せるでござるよ。どんどんやっちまえでござる!」
 ――かちっ
 どおおおおぉん
 むささきが手の中のスイッチを押すと、ステージを囲んで七色の爆発が巻き起こった。
「鎧装天使エーデルワイス、行っきまーす! さあ、お前たちの相手はボクらがするよ!」
 ジューンはケルベロスコートを脱ぎ捨てると、広げた翼でステージに舞い上がる。
 フィルムスーツのプロポーションが逆光に浮かび上がり、縛霊手から放たれた光弾が前衛のオーク達を蹴散らす。 
「可愛い子を見つける眼は確かだけど……悪いことに利用するのは良くないよ!」
 はちみつ色の甘コーデに身を包んだ波琉那がステージ中央でポーズを決めると、縛霊手から光弾が放たれる。
「ブヒッ! めがーめがー」
 目標を見失ったオークは明後日の方向に触手を伸ばし、攻撃を外した。
 七色のスモークの中から、レーンの右腕の主砲が青白い光を纏って現れる。
「原子レベルに撃ち砕く! 喰らいなさい超収束荷電粒子砲!!」
 主砲の先端が変形し、荷電粒子フィールドを形成。
 過剰なエネルギー充填による放熱に、レーンの端麗な顔立ちが歪む――だが反動の分見返りも大きい。
 照射されたビームの閃光が居並ぶオーク達を薙ぎ払い、爆発。
 やったか――!?
「いいえ、まだまだこれからですわ!」
 レーンは警戒を解かず、加熱した右腕に次弾の再装填を行う。
「うむ、ここからが本番でござる!」
 むささきの体から光輝くオウガ粒子が放たれ、仲間の超感覚を覚醒させた。


 セーラー服をはためかせ、斎がオークの密集する間に躍り込んだ。
「鬼さんこちら……って」
 殺到する触手を身軽にかわして同士討ちを誘えば、狭いスペースで暴れる触手は絡み合い、オークの動きが阻害される。
 だが全ての触手を躱しきれるものではない。
 開いた胸元、スカートの不自然なスリットに触手が潜り込んできた。
「! やっ……変なとこきちゃ、だめえぇっ!」
 斎は真っ赤になりながら、入ってはいけないところに入ってこようとする触手を片手で必死に拒み、片手で武器を振り回す。
 ノワルも触手に丸い体を弄ばれ、転がされていた。
「もおっおぉ~~! 遊んであげなさい、我が眷属達!」
 桃色の人懐っこい触手達がオークにじゃれつくと、未知の快楽に蝕まれたオークは気持ち悪い声をあげてのたうった。
 ちなみにヤサシイセカイの触手達は豚バラ肉が好物だ。
「ひゃあぁっ!」
 ホルンの化身である巨大鎧装も触手に襲われていた。
 見た目はごついが、浸着しているのは生身の少女である。ぞわぞわと気持ち悪さに鳥肌が立つ。
「ルナっ補助お願い!」
「にゃっ!」
 統合端末であるルナが融合すると、燦爛たる翼が煌いた。
 Photon Bless(ナンジニヒカリヲ)。
 黄金の光炎が、仲間に絡みついた触手を駆逐していく。
「ブッヒッヒ、こいつもウマそうじゃねーの」
「アイドルならこっちのほうがいいんじゃね?」
 オークが舌なめずりしながら、波琉那にじりじりと詰め寄ってきた。
「地下アイドルにとってライブは命! 邪魔した報いは受けてもらうよ!」
 波琉那が振り付けの動きに合わせて腕に絡みついた黒い粘液を飛ばすと、解き放たれたブラックスライムが獲物に喰らいつく。
「躍り踊れ、形なきもの。舞い躍りて刃をなせ。パートナーはすぐそこに」
 セレスは自らの喉にそっと手を当て、言霊を紡ぐ。
 決して声量のあるほうではないが、セレスの声には一途な力が宿っていた。
 その言霊を聞き届けたる風は刃となり、逃れる事を許さない。
「強化は小生が悉く破壊するでござるよ」
 むささきがウィングキャットのぐんじょうとツープラトン攻撃をかませば、
「ふー、体が重いとバテるわ」
 ノワルは座ったままドラゴニックハンマーを砲撃形態に変形すると、竜砲弾を撃つ。
 一人残された後衛オークが追いつめられ、ぶひーぶひーと何やら咆哮を挙げて抵抗するも、すでにケルベロス達の敵ではなかった。
「この一撃を受けてみろ! 『英雄の一撃』(ヒーローアーツ)!」
 ジューンが技名を叫び、大仰な構えから一撃を放つ。
 自宅警備術のひとつ劇場型戦闘術によれば、この場面で敵は『お約束』により抵抗せず速やかに撃破されなくてはならないのだ。
 ――爆発。
 こうして、最後のオークは倒された。


 戦闘が終わり、セレスは手掛かりが残されていないかと確認するが何も見つからなかった。
 ギルビエフの姿は突入の際に一瞬見えたものの、戦闘前には消えていた。
 テディーズの3人に怪我はなかった。
 スタッフも全員無事で、怪我をしたファンも命に別状はないそうだ。
「もう悪い夢は退治したから……思う存分ライブしてね! 次の公演はいつなの?」
 波琉那とライブの話で盛り上がると、3人の気分も少し晴れたようだった。
 その時、誰かのおなかが鳴った。
「……おなか、すいちゃったね」
 泣きはらした目をしたミキが、恥ずかしそうに微笑む。
「そうね、こういう時こそ食べなくちゃ。明日からまたがんばらないと!」
「あの、この近くに朝までやってる美味しいラーメン屋があるんだけど……あなた達も、よかったら」
 アキがケルベロス達を誘うと、
「美味しいものを美味しくいただく姿勢は大賛成ですわ」
 レーンが微笑んで答えた。
「そうよね、ダイエットは明日から!」
 快楽エネルギーを食べて心なしかまた一回り大きくなった気がするノワルも腹をくくる。
 こうしてケルベロス達はライブハウスを後にして、アイドル御用達の店に向かうのだった。

作者:高峰ヨル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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