下品だなんて言わないで

作者:市川あこ


「みんな〜おっ起ってる〜!?」
 ステージ上の黒髪ロング、いわゆる姫カットの女の子が客席に向かって拳を上げる。
「びんびん〜びんこだち〜!」
 すると40名ほどの観客は、一斉に拳を上げてわぁっと歓声を上げた。
「それじゃ、行くよっ。次はみんなの大好きないっぱつ! 『やっぱり生が好き☆』」
 イントロが流れると、おおおおおと地響きのような歓声と共に「ひーなまん! ひーなまん!」と彼女を呼ぶ声が上がる。
「行く時は~?」
「一緒にー!」
 おなじみの合い言葉が決まると、彼女は歌を歌い始める。
「熱いの直接感じたい☆ お口でもぐもぐ、どんな太さも飲み込んじゃうの。だってわたしは食いしん坊☆」
 会場内はキャパ50名ほどと狭いけれど、その盛り上がりは凄まじいものがあった。
 歌がサビに入って、アイドル・ひなまんへのコールが最高潮に盛り上がったその時、突如舞台の上に8体のオークが現れる。
「ひなまん、後ろ!」
 観客がどよめき、彼女は振り返る。
「オ、オーク!?」
 青ざめた顔で身じろぎするひなまんに、スーツ姿のオークは『ギルビエフ・ジューシィ』と書かれた名刺を差し出した。
「あなたの『下ネタ』は、わが主の『ドラゴンハーレム』に相応しい。是非、ハーレムで繁殖に励んでいただきたい! ……もちろん、ギャラも拒否権もありませんがね!」
「こ、これは下ネタじゃないの! 違うの!」
 ひなまんは必死に否定する。が、彼女の言葉を聞くようなオークたちではない。
 ギルビエフの背後に控える8体のオークは一斉に触手を蠢かせると、ひなまんを拘束する。
「やめろ! 俺たちのひなまんに!」
「行く時は一緒なんだ!!」
 最前列のファンたちが舞台にあがって、オークたちに立ち向かおうとするが、触手の威力は普通の人間には強烈で、彼らは一度ぺちんと叩かれると呆気なくその場に倒れてしまった。
 

「みんな、お集まりありがとっ」
 ヘリポート上空で、飴井・ゆゆ(あめ玉のヘリオライダー・en0200)は、ケルベロスたちに頭を下げると「あのね」と言うと次のことを話し始めた。
 ギルビエフ・ジューシィというオークが、地下アイドルを無理矢理スカウトして、ハーレムに連れ帰るという事件が起きているということ。
 ギルビエフはライブ会場に10体ほどのオークと共に現れて、ステージ上のアイドルを襲うということ。
 抵抗しなければアイドルを攫うだけで去って行くけれど、抵抗すると殺されてしまうこと。
 オークたちはアイドルを攻撃することはないけれど、会場にいるファンなどは躊躇いなく殺すということ。
 そして予知に従って、ライブを中止すれば別のライブ会場を襲撃してしまい、阻止が難しくなるので、オークたちが現れてから戦闘に持ち込む必要がある、ということ。
「なるほどな、厄介なオークだな」
 ゆゆの話しを受けて、ケルベロスの一人が眉間に皺を寄せる。
「ファンたちは、その場にケルベロスがいても命懸けでアイドルを守ろうとするから、簡単には避難してくれないよ。だからね『同じファンアピール』とか『アイドルの幻想を打ち砕く』とか『むしろ自分のファンになってもらう』とか、ちょっと特殊な説得が必要になると思うよ。もし説得出来たら、集団行動の得意な彼らは素早く避難するよ」
 そこまで話すとゆゆはケルベロスたちの顔を見回して、彼らの真剣な表情を確かめる。
「それじゃ、敵について教えるね。戦うべきオークは全員で8名。ギルビエフについては、残念ながら戦闘が始まると姿を消しちゃうから、撃破は出来ないと思う。オークの攻撃は『触手乱れ撃ち』と『触手締め』『触手溶解液』のみっつ。会場は50名程度が収容可能のライブハウスで、観客の数は40名ほど。それから、ファンの人たちはひなまんちゃんの言葉のセンスが好きみたいだから、説得はその方向でアプローチしたら成功しやすいと思う」
 だいじょうぶそう? 最後にそう付け加えたゆゆに、ケルベロスの一人は大丈夫だ、と力強く頷いた。
「ありがと。頼もしいな」
 ゆゆはにっこり笑う。
「それじゃ、みんなお願いねっ。オークの触手から、いたいけなアイドルちゃんとそのファンを守ってあげてっ」
 そう言うと彼女は、ぺこりと頭を深く下げた。


参加者
フレナディア・ハピネストリガー(サキュバスのガンスリンガー・e03217)
トルテ・プフィルズィッヒ(シェーネフラウ・e04289)
神籬・聖厳(日下開山・e10402)
音無・凪(片端のキツツキ・e16182)
盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)
ハチミツ・ディケンズ(彷徨える琥珀・e24284)
リルン・ブランエール(クライフェネクス・e24337)
レア・ストラスブール(ウィッチドクター・e29732)

■リプレイ


「今日はお客さんがパンパンに入ってくれてうれしいよぉっ! ひなまんの大事なところがずっとドキドキしてるぅっ」
 ステージの上でアイドル・ひなまんがそういうと、客席から「うおおおお!」と地響きのような声があがった。
(「ふわりもひなまんちゃんと一緒にステージに立てないかなー」)
 観客に紛れる盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)は憧れの眼差しでひなまんを眺めていた。
「行く時は~?」
「一緒にー!」
 お決まりのコールが決まると、ひなまんの歌が始まる。それは予知によれば、オークが近くに来ているという合図でもあった。
 歌がサビへ差しかかると、客席の盛り上がりも最高潮に達する。
 その時、騒々しい足音とともにスーツ姿のオークと8体のオークが舞台の上に現れた。
 それと共に8名の女性ケルベロスたちも舞台の上へ駆け上がる。
「何ですか、貴方たちに用はありません」
 スーツのオークは差し出そうとした名刺を懐へしまうと、オークたちへ目配せをする。
 するとそれを合図に触手がうにょうにょ伸び出して、ひなまんに絡みついた。
「ひぁぁっ!」
「やめろ! 俺たちのひなまんに!」
 ファンたちが舞台の上へと押しかける。
「まだ……いっちゃだめです……ここは我慢して下さい……」
 ファンたちの前に立ちはだかったのは、トルテ・プフィルズィッヒ(シェーネフラウ・e04289)だった。
 サイズ小さめ緋色のビキニ姿は、ただでさえ男性の目を惹くというのに、そこへきてラブフェロモンを漂わせるものだから、ひなまん一筋のファンたちもトルテに注目せざるを得ない。
「オークは私たちが倒しますから……そのあとで一緒に気持ちよくなりましょう♪」
「でも……」
「皆さんに何かあったら……胸が締め付けられるように感じちゃいます……」
 真っ赤な顔でもじもじしながら、トルテは二の腕でぎゅっと胸を寄せると胸の谷間の深淵を見せつける。
「皆さんとは、もっと胸が弾むような気持ち良いこと……したいです♪」
 トルテが切なげな吐息を吐くと、それに呼応するようにファンの男たちも「はぅぅ」と息を吐いた。
「えぇと……」
 続いて説得をしようと現れたのは、若草色の髪を持つハチミツ・ディケンズ(彷徨える琥珀・e24284)だ。
 弱冠九歳の彼女には、下ネタだなんてハードルが高くて混乱気味だけど、でもハチミツにはケルベロスとしての使命感とサキュバスの血がある。
 こほんとひとつ咳払いをした後に、ラブフェロモン全開でハチミツは口を開いた。
「皆様の大事なものは朝になると硬くなってしまう……というのは本当ですか?」
「朝だけじゃない! ひなまんを想うといつでもビンビンなんだ〜!」
 ファンたちが声を上げる。
「更に興奮すると練乳が出ます、とか?」
「溢れる想いはスイートだー!」
 一生懸命調べたものの、言ってるハチミツは意味がよくわかっていない。けれどもファン達のリアクションを見るに間違っていなかったんだろうな、とそっと胸をなで下ろす。
「フッ……」
 そこへ不敵な笑みを浮かべて現れたのは、神籬・聖厳(日下開山・e10402)だった。
 下ネタには心得りの彼女は、ファンを取り込む自信に満ちている。
「猛り立ちて己を爆発させるは男の性なれど、精気(いのち)果てるは、愛しき女の腕の中で……。子供の頃、ママンに教わらなかったかね?」
 身体の3点を隠しただけのような極小ビキニの姿で、彼女は舞台の上から男たちを見下ろして言う。
「今、若さに任せてイキ急ぐ必要は無いぞ。彼奴等に死を喰らわせてやるのは儂の使命じゃ。一本スジの通った女の生き様を見せてやろう」
 場内がしーんと静まりかえる。けれど次の瞬間ファンたちは一斉にこぶしを振り上げた。
「お〜! 女のスジ−!」
 盛り上がるファンたちを前に、聖厳はカッカッカッと高笑いをする。アングラ系アイドルとしてデビューする日もそう遠くないかもしれない。
「皆−、オークの太くてごつい触手はアタシ達ケルベロスが受け止めるから、皆は早く避難して。大丈夫、ひなまんちゃんの体は綺麗なまま守ってあげるから」
 ラブフェロモン全開で現れたフレナディア・ハピネストリガー(サキュバスのガンスリンガー・e03217)がファン達に呼びかける。
「それでも太くてごつい触手を受け止める気なら、代わりにアタシの太くてごつい得物を皆のお尻にプレゼントしちゃうぞ♪」
 フレナディアは悪戯っぽく微笑むと、前屈みになってダイナミックな胸元を惜しげもなく観客達に見せつけた。
 フロア中がごくりと息を呑む。
「一緒に行きたいのも分かるけど、ここは我慢なの。頑張れ、頑張れ、なのー!」
 ふわりの方もダイナマイトな変身で、チューブトップにショートパンツという姿でファンたちの説得に当たる。
「みんなで交わるのも良いけれど、今日はふわりとオークが交わるところ、いっぱい見て欲しいの! だから、今はちょっと避難して欲しいの! 後で何でもするから、お願いなのー!」
 ふわりはぺこりと頭を深く下げる。
(「ケルベロスはこんな仕事もするんだな、初めて気の毒に感じたよ……。いや、私も今は自分の心配をするべきだな」)
 説得のやりとりを背中で聞いていたリルン・ブランエール(クライフェネクス・e24337)は、そんな風に思う。
 舞台の後方では、リルン、レア・ストラスブール(ウィッチドクター・e29732)、音無・凪(片端のキツツキ・e16182)の三名がオークたちと睨み合って互いに牽制していた。
 ひなまんは触手に捕まっていて動けない。
「ひなまんさんを離して下さい!」
 レアは大きな胸を弾ませて、オークたちへ立ち向かう。本能的なものだろうか、オークたちの視線が一斉にそこへ集まる。
「おい豚共、化け物も人間もルールを守りな。アイドルにお触りは厳禁なんだ、知らないのかい?」
 挑発的な笑みでそう言うと、凪はオークの腹を蹴り上げる。
 彼女が選んだ死経装は、黒いエナメルのビキニタイプのボンテージ。ただし胸元はハート形に大きく開いていて、ショーツのデザインも三日月のように浅く露出が高い。見えそうで見えないその姿に、オーク達の目は一斉に惹き付けられた。
 そこへ連なるように、リルンのオウガメタルが黒太陽を具現化し、オークたちを絶望の黒光で照らした。かと思えば、サールブールがオークの体へタックルを決める。
 続く攻撃に、オークたちはひなまんや他のケルベロスたちへ気が回らない。
 その間にも雷の壁がレアによって築かれて、守りを固める。
「お願いします。中は危ないので、外へ……」
 トルテは熱っぽい眼差しで男たちを見詰めると、出口の方を指し示す。
「わかったよ。きみたちがそこまで言うのなら……信じよう」
 きのこ型のサイリウムを持った男がそう言うと、他のファンたちも頷く。
「ひなまんの貞操を守ってくれ」
 男たちは一斉に、会場から退避を始めた。


 オークからアイドルを守るために集まったケルベロスは全員女性で、その上半分以上のメンバーは露出が高く、オークたちはどこか浮き足立っているように見えた。
「その天を衝かんとする汚れしバベルの塔、神の姓を冠する儂への挑戦と受け取ったァ!」
 聖厳はオークたちを前にそう言い放つと、着ているものへ手を掛ける。
「触手のデカイ奴からかかって来い! 我が奥義を以って貴様の増長したモノを握り潰してくれるわ! さぁ、我が腕の中で息絶えるがよい!」
 そう言うと聖厳は瞬く間に、身に纏っているものを脱ぎ捨てると目の前のオークへ飛びついた。
「おっ……ほぉ……」
「裸神活殺四肢固縛!」
 オークの巨体に抱きついた聖厳は、腰に足を絡ませて背後でぎゅっと締め上げる。彼女の体は幸いオークの影になっていて見えない。セーフ。
 聖厳の締め付けは穏やかにオークの力を奪っていく。
 やがてオークは七つの穴から体液を流し、その場へ倒れ、絶命した。
「ドラゴンハーレムは無節操すぎじゃないかしら?」
 そう呟きながら、フレナディアはミサイルランチャーを取り出すと、オーク後列に狙いを定めて撃つ。
 衝撃音がオークへの着弾を知らせ、それと同時に石化ガスが撒き散らされた。
「お、おぉぉ……」
 オークの触手が石化して、ひなまんへの拘束が解けた。
 するとレアが素早くひなまんを庇うように前へ出て、トルテがひなまんの手を引いて舞台の下へ送り出す。
 咄嗟の事でオークの視線は、ひなまんとレアの揺れる胸との間で泳いでしまう。
「アイドルか……。何にもない時であれば『興味ないね』で済ませるんだが……」
 ひなまんの背を目に、凪が呟く。
「ま、愚痴ってても仕方ない、ちゃちゃっとカタを付けようか」
 斬霊刀を手にした凪は、空の霊力を帯びた刃でオークの傷跡をジグザグに斬り拡げた。
「くっそ! 逃がしてたまるか!」
 オークたちは一斉に、ひなまんへ向けて触手を伸ばそうとする。
 けれど立ちはだかるは、トルテ、ふわり、レア、リルン。
 彼女たちは自ら触手の中へ飛び込んで、足止め役を買って出る。
「きゃあ! どこ触ってるんですか!」
 触手が胸に絡みついてリルの胸をぎゅんっと縛り上げれば、
「きゃぅんっ! ひぁっ!」
 無数の触手がトルテの身体を這いずり回って幾度も乱れ打つ。
 そして、また別の触手はリルンとふわりをべとべとの粘液まみれにした。
「あはははっ」
 ふわりは子供のように楽しそうに笑いながら、両手にナイフを握って踊り始める。
 粘液のせいで服がはだけて、今にも脱げ落ちそうになる中で、踊る刃先は正確に、血飛沫の中でオークを斬ってばらばらに解体する。
 やがて一体のオークが倒れる。
「にしても私、オークって好きじゃないんだよなぁ。変な汁出るし、触手は気持ち悪いし……」
 リルンは眉を顰めながら、天空から無数の刀剣を召喚して、オークたちの上に解き放った。
 かと思えば今度は、ハチミツが喚んだ氷河期の精霊がオークを氷に閉ざし、ババロアのブレスもオークを包む。
 一体のオークが倒れ、これで合計3体の死体が舞台の上に出来上がる。
 その間にも、ライトニングロッドに破壊力へと変えたグラビティ・チェインを載せて、レアが目の前のオークを叩きつけ、そこへサールブールがタックルする。
 またオークが倒れた。
「な、何だよ。おねーちゃんたち!」
 立て続けの攻撃にオークたちが声をあげる。けれども戦いはまだこれからだ。


 早期撃破を狙う作戦はばっちり決まって、ケルベロス側の消耗は少ないままでオークたちは次々と倒れていく。
 残るオークは2体だった。
「数ばかり多くて嫌になっちまうね!」
 凪が地獄の炎弾を放って、オークの生命力を喰らえば、大きな胸を弾ませて、レアがロッドを振りかざして雷を放つ。
 そこへ畳みかけるように、サールブールから放たれた炎のブレスがオークを包んで灼いた。
 オークが呻き声を上げて膝を付く。
 あと少しだった。
「どんどん行くわよ〜」
 フレナディアは両手のバスターライフルから、巨大な魔力の奔流を放つ。
 オークたちが身じろぎする。どうやらパラライズがかかったらしい。
(「加減はしない、火力押しだ」)
 リルンによって虹色の輝きを持つ強大なエネルギーがオークへ向けて一気に放出する。集束した光は高い威力でもって、オークを吹き飛ばした。
 一体のオークが倒れ、残すところ最後の一体となる。
「すぐにいかせてあげます……」
 トルテは銃に口付けると、引き金を引いて銃口から螺旋快楽弾を発射した。
 その反動で、全身が激しい快楽に襲われて彼女の身体は熱っぽく色付く。
「もっと、もっと欲しいの……ふわりに、あなたを頂戴? あなたの全部をふわりが愛してあげるの……」
 地獄化されたふわりの正気が、視線を通じて業火として世界に染み出して、オークの心を見る間に侵食した。
「皆様の為に歌います」
 そんな中で、ことりのさえずりのように、清らかな響きで歌うハチミツの声は、前衛の消耗を癒やした。
「得物をぶら下げたまま帰れると思うたか?」
 最後の一体になったオークを見据えると、聖厳はそう言い放つ。
「儂の渇きを……癒やせぇぇぇえええ!!!」
 電光石火の蹴りが、思い切りオークの股間に炸裂した。そこへ飛び出したババロアも思い切りタックルを決める。
 残り一体となったオークは満身創痍でその場に蹲る。
「最後はあたしが直々に逝かせてやるよ!」
 凪はローラーダッシュの摩擦で炎を生み出すと、熱く激しい蹴りでをオークに見舞った。
 オークが倒れる。
 こうして8体のオークはすべて倒された。


 戦闘が終わると、凪、レア、トルテ、ハチミツの四人はそれぞれ戦場となった舞台を中心に、ヒールを施した。
 ステージは概ね元通り。
 だけどなぜか照明がピンク色だったり、床や壁が透けていたりする。
「……ン? 何か間違えたかねぇ?」
 芸術的センスが皆無な凪は、首をかしげる。

 会場の修復が終わると、レアによってそれを知らされたひなまんとそのファンたちが、戻ってきた。
 彼女は感謝の気持ちも込めて、中断してしまったライブの続きをすると言い、すぐにステージへ上がった。
 ——お願い、あなたの熱いの、たっぷり注いでね♪
 甲高い声で歌うひなまんを前に、トルテは恍惚とした表情で彼女を眺めている。
「はぁっ……生ってすごく……良いですっ……♪」
「そうですわね、最高ですの!」
 ハチミツも満面の笑みで、ステージを楽しんでいる。
 曲が最高潮に盛り上がる頃、ふわりもステージへ上がりひなまんと共に踊り始める。
 その姿にファンたちも歓声を上げて、ライブは一層の盛り上がりを見せた。
(「今日は厄日……いや、貞操の危険日じゃったな。まぁ、そんなブルーにならずとも、儂らケルベロスに任せておけば、オークが多い日も安心、朝までぐっすり、超ガードじゃ!」)
 楽しそうに舞台で歌うアイドルを目に、聖厳はケルベロスとしてそんな風に心の中で声を掛けるのだった。

作者:市川あこ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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