魅惑のフェイクスイーツ

作者:狐路ユッカ


 シルクハットの女、ミス・バタフライは道化師の姿をした少女に告げた。
「あなた達に使命を与えます」
 少女の傍らにしゃがみ込んでいるのは、手品師の少年だ。
「なんでしょう、ミス・バタフライ様」
「この町に、フェイクスイーツアクセサリーを作ることを生業としている人間が居るようです。その人間と接触し、その仕事内容を確認・可能ならば習得した後、殺害しなさい。グラビティ・チェインは略奪してもしなくても構わないわ」
「フェイクスイーツ?」
 首をかしげる少年。
「ライア、知らないの?」
 少女が顔を覗き込むと、ライアと呼ばれた少年はこくりと頷いた。
「レイア、教えて」
 レイアは胸をそらす。
「フェイクは偽物、スイーツは甘いお菓子のことよ! でもどうやって作るのかしら」
 作り方までは知らないわ。とレイアはしょんぼりする。
「そう、だから探ってくるのです」
 こくん、とライアは頷く。
「了解しました、ミス・バタフライ。一見、意味の無いこの事件も、巡り巡って、地球の支配権を大きく揺るがす事になるのでしょう」
 よろしい、と唇に弧を描くミス・バタフライ。それを確認すると、二人は宵闇に溶けるようにその姿を消すのであった。


「ミス・バタフライっていう、螺旋忍軍が動き出したみたいなんだ」
 秦・祈里(ウェアライダーのヘリオライダー・en0082)はよく聞いてね、と念を押す。
「そいつが起こそうとしている事件は、直接的には大した事は無いみたいなんだけど、巡り巡って大きな影響が出るかもしれないんだよ。バタフライエフェクト、ってやつ」
 そして、祈里はホワイトボードにピンクのマカロンの絵を大きく描き始めた。
「今回は、フェイクスイーツを作ってるアクセサリー作家の、モモコさんのところに現れるようなんだ」
 僕もアクセサリーは作るけど、リアルなお菓子のアクセサリーを作っちゃうなんてすごいよね! と祈里ははしゃいでいる。そしてふと我に返り、付け足した。
「あっ……。そんな素敵な作品を作る人が襲われるんだよ」
 なんでも、螺旋忍軍はこの仕事の情報を得たり、或いは、習得した後に殺そうとするようなのだ。
「モモコさんはもちろんのこと、放っておいたらケルベロス皆になにかよくないことが起こる……それが狙いなんだ」
 だから、事件が小さいうちに食い止めなくちゃ。そう言って、祈里はぎゅっとこぶしを握る。
「流れとしては、モモコさんを警護して現れた螺旋忍軍と戦うという感じだね。事前に説明して避難させてしまったら、敵が別のターゲットを作ってしまうかもしれないからそれは出来ないね。早い段階でこの事件を知れたから、事件の3日くらい前から皆はモモコさんに会えるよ!」
 それでね、と祈里は希望を込めた瞳でケルベロスたちを見た。
「モモコさんに事情を話せば、仕事内容を教えてくれると思うんだ。そしたら、螺旋忍軍はターゲットをケルベロスに変えてくれるかもしれない。まあ、囮になるためには見習いくらいの力は欲しいから、かなり頑張って修行する必要があるだろうけど……」
 みんなならできるって信じてるよ! 祈里はそう言って屈託のない笑みを見せるのだった。
「えと、螺旋忍軍は二体。道化師の姿の少女と、日本刀を持った手品師の少年だよ。うまく囮になれたなら、『技術を教えてあげる』っていう体で、こちらに有利に戦闘を始めることができそうだよね」
 螺旋忍軍が現れるのは、モモコが住んでいるマンションだ。彼女が買い物から帰ってくるのを狙って、襲うつもりらしい。
 祈里はぺこりと頭を下げる。
「なんの罪もない人を手にかけるなんて、許しちゃいけない。君たちにしかなしえないことだと思うんだ。だから、どうか……お願い」


参加者
アリス・ティアラハート(ケルベロスの国のアリス・e00426)
ルベル・オムニア(至高の赤・e02724)
罪咎・憂女(捧げる者・e03355)
ラームス・アトリウム(ドルイドの薬剤騎士・e06249)
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
シエラシセロ・リズ(勿忘草・e17414)
保村・綾(真宵仔・e26916)
一瀬・栞里(博学篤志・e27796)

■リプレイ


「というわけで、モモコさんの技術を狙ってくるデウスエクスから、しっかりお守りするのじゃ!」
 保村・綾(真宵仔・e26916)は、今回の事件の概要を説明し、ぺこっとモモコに頭を下げた。シエラシセロ・リズ(勿忘草・e17414)は同じように頭を下げたあと、モモコを見つめて宣言する。
「技術を教わっておいて殺すとか許せないよ。モモコさんのこと全力で守るからね!」
「……騎士として、一般人に被害なく終わらせるとしよう」
 落ち着いた静かな声で同意を示すのはラームス・アトリウム(ドルイドの薬剤騎士・e06249)だ。モモコは安心したように柔らかく笑うと、部屋へケルベロス達を招く。
「皆さん、ありがとうございます。狭い部屋だけど、どうぞ!」
 あ、と罪咎・憂女(捧げる者・e03355)は何かを取り出した。
「モモコさん、お世話になります。あと、よければですがこれを」
 Art chocolateだ。いわゆるコインチョコを見つめて、モモコはひとつ瞬き。
「いいの? ありがとう。ん、そうね、これをお手本に何か作るのも良いかも」
 早速作家としてのスイッチがはいったらしく、何か言いながら道具箱を取り出す。
「すごい……綺麗。自分で作れるようになれるなんて、嬉しいな」
 ルベル・オムニア(至高の赤・e02724)は、棚に飾ってあったフェイクスイーツを見つめて、柄ではないと思いながらもそうこぼした。
「綺麗……美味しそう。すごい……!」
 本物のお菓子と見まごうほどの出来に、感嘆のため息を漏らす機理原・真理(フォートレスガール・e08508)。


「今から、皆さんもこんなフェイクスイーツが作れるようにお教えしますね!」
 モモコはみっちり三日間しごきますよ、と宣言する。
「プロの方に技術を教えてもらえるなんて、貴重な経験……! よろしくおねがいします!」
 はりきっちゃいますよ、と一瀬・栞里(博学篤志・e27796)は腕まくりをする。早速席に着くと、粘土をこねはじめるケルベロス達。
「紙粘土が基礎で……なるほど……お菓子作りとは違う感じでしょうか」
 憂女が問うと、モモコは手を動かしながら答える。
「重量が出ても良い時は樹脂粘土にしますね。パフェとかの盛り付けはお菓子作りとほとんど同じかも。でも、素材は一から生み出さないとだから」
「こういうのを上手く作るコツってあるのかな?」
 ルベルは、トリュフの指輪を作るつもりらしい。シンプルなチョコレートだからこそ、質感が難しい。
「まずは形よね。丸めてから指先で……そうそう、そんなかんじ。なるべく滑らかになるように」
 言われた通り、ルベルは丸めた粘土を計量スプーンの背で押して凹凸をつけ、指先に水をつけて表面を撫でつける。
「どうかな?」
「うん、上出来です!」
 アリス・ティアラハート(ケルベロスの国のアリス・e00426)がおずおずと差し出したのは苺。
「モモコ先生、こんな感じでしょうか……?」
「苺ですね! このままでも可愛いけど……何を作るんでしたっけ?」
「ベリーのタルトを作りたいです」
「あ、じゃあ断面も入れてみるとよりリアルになりますね! まず半分に切って」
 アリスはモモコの手元をじぃっと見つめている。ラームスも同じように、頷きながらその様子を見つめた。真理はというと、黙々とホイップクリームの絞り出しに熱中している。
「たい焼き……たい焼きパフェなども作ってみようかのう……?」
 たい焼きの形を作ってやすりでこすると、綾は首をかしげる。
「斬新! いいですね」
「……モモコさま、これは本当に食べれないのかのうー?」
 尾をゆらゆらと揺らしながら問う綾にモモコは笑った。
「ダメですよ、おなか壊しちゃう」
 栞里は、向学心に火がついているようだ。
「ん……アイスの質感難しいですね……」
 モモコがスッと歯ブラシを手渡す。
「はい。これで叩くと良い感じになりますよ」
 細かい作業が不得手なシエラシセロがむむんと唸った。彼女の手には愛らしい薄桃色の円形をした粘土。
「マカロンのピエも、ちぎった後はこれで叩くといいですよ」
「わ、ほんとだ……!」
 みんなのは? と作品を見せ合うケルベロス達。その時、シエラシセロのお腹がくきゅる、と鳴った。ほんのり頬を染めて、笑う。
「美味しそうだったからかな……へへ」
「そろそろお茶にしましょうか?」
 モモコが立ち上がり、戸棚からクッキーを取り出した。見本になる、なんて言いながら、一息つくケルベロス達。観察し、作る。作って、観察して、作って……。3日間みっちり修行をして、ケルベロス達は立派なフェイクスイーツを一品ずつ作れるようになっていた。


 各自、それぞれの作ったフェイクスイーツを身に着けてモモコと一緒に買い出しに行く。
「普通のご飯の材料買い出しなのに手伝って貰っちゃってすみません」
 モモコのマンションの入り口。その時、全員が背後から歩み寄る影に気付いた。
(「モモコさん、早く中へ」)
 ルベルはモモコに耳打ちし、サッとマンションの中へ押し込んだ。
「フェイクスイーツ作家のモモコさんはこちらにいらっしゃるのかしら?」
 少女が、問うてきた。にっこりと笑ってルベルが応答する。
「見学者かな? モモコさんは忙しいけど、私でよかったら教えようか?」
 スッと掲げた彼女の指には、見事なトリュフの指輪が。チョコレートソースが艶めいている。
「へえ、すごい」
 少女の傍らにいた少年が頷いた。ラームスも、自分で作成したショートケーキのキーホルダーをさり気なくちらつかせる。少年の視線がそれを追っているのは明らかだった。
「モモコさんは忙しいから教えられないけど、見習いでよければ教えられるよ」
 ボクだって作れるんだよ~とシエラシセロが取り出したのは、ピンク色のマカロン。ホイップクリームと苺がのっているそれは、間違いなく少女の鷲掴みできる代物だ。
「なにこれめちゃくちゃ可愛いじゃない。ほんとにあなたが作ったの?」
 少女、レイアは驚きに目を見開く。
「わらわたちも教えられるよ!」
 綾が差し出した本物さながらのたい焼きにライアが首をかしげる。
「……さかな?」
「たい焼き! とっても美味しい和菓子なのじゃ~」
 ほうっとため息をつく綾に、ライアはふぅんと頷いた。
「あなた達もこういうの、作りたいのですか?」
 真理が差し出したのは、小さなホールケーキを象った小物入れ。愛らしいミニサイズの苺が、キラキラ光っている。自慢げに見せつけられて、レイアは大きく頷くしかなかった。
「是非、教えて欲しいわ」
「一緒に作ってみましょうか? 材料を買い出ししないとですが」
 端が少しとろけた美味しそうなアイスクリームをあしらったヘアアクセサリーを身に着けた栞里がそう言うと、ぴくり、とレイアが眉を動かした。
(「さて、誘いに乗ってくれるといいのだが……」)
 憂女は、半分銀紙を剥いたデザインのコインチョコを首から下げ、レイアとライアの出方を見る。
「私達がお教えしますから……まずは買い出しにいきませんか……?」
 アリスは胸元の真っ赤なハートのベリータルトのブローチを見せながら、レイアの顔を覗き込んだ。
「そうね、材料がないんじゃ作れないわね……」
 ――よし。顔にこそ出さないものの、ケルベロス達は作戦が上手く行った事に少し安堵し、マンションを出る。シエラシセロが事前にモモコから聞いていた、マンションの裏の空き地が目的地だ。レイアとライアの間に割るように並んで、ケルベロス達は歩いた。歩きながらラームスが殺界を形成する。
「ねぇ、本当にこっちにお店があるの……」
 言いかけて、レイアがヒュッと息をのむ。
「翼を震わせ響け、祈りの光響歌……!」
 シエラシセロが巨大な光鳥を呼び出す。光の弾丸となったそれが、ライアへと襲い掛かった。
「ライア――!!」
 完全に不意打ちだったため、ライアの身体は大きく後方に吹っ飛び、レイアと距離が出来る。駆け寄ろうとしたレイアに、半透明の御業が纏わりついた。アリスがまっすぐにレイアを見つめ、宣言する。
「モモコ先生に……手出しはさせません……!」
「ッチ、ケルベロスか!」
 レイアが舌を打った。
「勉強するのは良いことですが、人の命を狙うのは許しませんよ」
 栞里は、そう言うと周囲に殺界を形成する。
「痛い、酷い事するなぁ」
 ライアがゆらりと起き上がり、日本刀をずらりと引き抜く。己を取り囲むように立っていたルベル、憂女、シエラシセロ目がけ、素早く薙ぐ一撃を繰り出した。
「プライド・ワン!」
 レイアと対峙していた真理が叫ぶ。ライドキャリバーが、勢いよく走った。
「私の相手をしていただこう」
 ライアの刃を受けながら、背にシエラシセロを庇って憂女は言う。ルベルの代わりに斬撃を受けたプライド・ワンは、タイヤを鳴らしながら後退した。
「技術を教える気がないならお前らに用はないよ」
 ライアが刀を引く。ゆるりと憂女は首を横に振って鋭い眼光を向けた。
「技術の模倣や盗むこと……それそのものが悪いとは言わないが、奪うことは……面白くないな先を見据えてこその技術だろう」
 その言葉のすぐ後、憂女は息を吸い込み、闘龍の咆哮を響かせる。前衛のケルベロスの周囲に漂う重力が塗り替えられた。
「守り続ける事が、私の戦いなのです……!」
 真理がヒールドローンに防衛陣形を組ませる。レイアとライアに前衛で対峙する者達を守るように飛ぶドローン。イラついたようにレイアが叫んだ。
「クソッ、騙しやがって! ライアァ!」
 真理と綾を蹴散らしてライアの元に向かうつもりなのだろう。綾目がけて炎の蹴りを放つレイアに、真理は立ちふさがる。
「っつ、ぅ!」
「真理あねさま――!」
 これ以上の攻撃は許さないとばかりに、己を庇って傷ついた真理の前に出て綾はジグザグに変形した刃の惨殺ナイフでレイアを切り裂く。
「うあぁ!」
「レイア!」
 ライアが身を乗り出してレイアの安否を確認しようとした。その隙にラームスが地に描いた守護星座が光り、真理を癒して前衛のケルベロス全員を守る。
「よそ見している暇はあるのかな?」
 ルベルの唇が弧を描く。彼女の瞳は完全に戦闘狂のそれだ。
「!」
「君の切れ味はどうかな?」
 くるりと鮮やかに回転して繰り出す旋刃脚が、ライアの胴を抉るように命中する。
「かは……ッ」
 咳き込むライアに、続けて文の爪がばりばりと襲い掛かる。
「これ、が、俺の切れ味だ!」
 文が離れると同時に、ライアはルベル目がけて月光斬を繰り出す。咄嗟にルベルを庇って飛び出た憂女が、袈裟懸けに斬りつけられて低く唸った。再度日本刀を振り上げるライアの耳に、栞里の叫びが聞こえる。
「当たって!」
 ごう、と燃え盛るドラゴンの幻影が、ライアへと迫る。
「あ、あぁぁ!」
「どけ! ライアッ、ライア……!」
 レイアは苛立ちながら真理へとスターゲイザーを放つ。
「っう」
 重たい蹴りに、真理はわずかに呻いた。それでも、ここを通すわけにはいかない。立ちはだかり続ける。着地したレイアの足目がけ、惨殺ナイフを振り降ろした。
「いっ、うあぁぁ!」
 レイアが、がくんと膝をつく。綾がナイフの刀身を光らせた。
「や、やめ、ライア――!」
 ライアが傷つけられるトラウマがレイアを襲う。ラームスはその隙にと、急いで真理へウィッチオペレーションを施した。しかし、ライアとてレイアの元へ向かおうとしないわけではなかった。
「レイア!」
 目にもとまらぬ速さで、居合い斬りを放つ。憂女は受け流す気でいたが、それは叶わなかった。バッサリと斬りつけられた腕が、痛む。
「くっ……あぁぁあ!」
 消耗した己を鼓舞するようなシャウトが、響きわたった。


 荒い呼吸を繰り返すライアへと、シエラシセロがリボルバー銃の引き金を引く。
「ぅあっ……」
 ぐらり、とライアがその場に崩れ落ちた。
「レイ、ア、ごめ……」
 それきり言葉を発しなくなったライアが、消えた。
 直後響くのはレイアの慟哭。
「よくも、よくもおぉお!」
 守りたいものがあるのはこちらも同じだ。アリスはすっとクイーンオブハートキーを掲げると、火の玉を放つ。その身を火の玉に焼かれながらも、レイアは前衛のケルベロス目掛けてレガリアスサイクロンを放った。暴風を伴う蹴りを受けたルベルはズズ、と後方へ押されつつその拳に鋼の鬼と化したオウガメタルを纏って殴り掛かる。
「私も足技は自信があるんだけど、ね!」
「あぐっ」
 そんなんじゃ私は倒せないねと笑うルベルに、レイアは悔しげに歯ぎしりをする。
「ルベルさん……! 手当てしなきゃ」
 栞里が駆け寄り、気力溜めを施すと、ルベルはからっと笑って礼を言った。あと一押し。
「この槍も……フェイクスイーツですよ☆」
 己目がけて突っ込んでくるレイアに、アリスは真正面からリトルプリンセス・フノスを突き立てる。戦闘で消耗しきったレイアの胸をずぶり、とその槍が貫いた。
「が、っ……」
 無鉄砲に突っ込んできたレイアは、そのままがくりと体の力を失い、さらさらと消えて行った。
「……にしてもレイアとライアって双子だったのかな。仲良くてなんか……まぶしかった」
 シエラシセロはぽつりと呟く。自分も最近出逢った双子の兄さんとあの位仲良くなれたら……ふと作ったマカロンを渡そうかなんて思い立つ。
 ぱたぱたとマンションの方からモモコが走ってくる。戦闘が終わったことに気付いたのだろう。
「皆さん、お怪我は……!」
 ケルベロス達を案ずるモモコ。既にヒールで回復したケルベロス達は、大丈夫と笑って見せた。
「モモコさんっ、修行ありがとう、楽しかった!」
 シエラシセロにそう礼を言われ、モモコは照れくさそうに笑う。
「いえ、こちらこそ、ありがとうございました」
 ラームスはスッとケルベロスカードを差し出し、モモコに問う。
「またたまに来てもいいか?」
 寡黙な彼にとって、黙々と細かい作業をするフェイクスイーツ作りはいい趣味になりそうだ。憂女は指先でコインチョコを弾くと微笑む。
「折角学ばせてもらった技術ですし、何かに活かしていきたいですね」
 他のものも作ってみようかな、と笑うルベル。タルトのブローチを指でなぞると、アリスはふわっと微笑んだ。
「モモコ先生から教わって作ったこのアクセサリー……大切にします……」
「嬉しいです!」
「フェイクスイーツみてたら、本物のスイーツも食べたくなるですね……皆さん、良かったらどうです?」
 綾がうんうんと頷く。
「本当のお菓子も恋しくなったのう……たい焼き食べに行くのじゃ!」
 さっそく! と飛び出してゆく綾。朗らかな笑い声が広がる。
「バタフライエフェクト、かぁ……。わたしが学んだフェイクスイーツの技術も、巡り巡って誰かを救うことになるかもしれませんね、ふふっ」
 栞里はそういって笑うと、秋の気配を感じる空を見上げるのだった。

作者:狐路ユッカ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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