豚と黄緑色のアイドル

作者:香住あおい

 熱気に満ちた空間。ここは鳥取県中部にある梨の記念館の一室だった。
 しかしここは現在ライブ会場と化している。
「みなさーん! 準備はいいですかー!? 次はメドレーやっちゃうぞ!」
 彼女は涼月・さゆり(りょうげつ・さゆり:本名非公表)。梨についての豊富な知識をもとにして、梨の素晴らしさを皆さんにお届けするご当地アイドルである。
「超絶かわいいさ・ゆ・りー!!」
「しゃゆー! 結婚してくれー!」
 黄緑色のペンライトを一心不乱に振りつつ、10名ほどの熱心なファン達は熱く応援している。
「次の曲は『梨色のキミ☆』いっくよー!」
 彼女の代表曲のイントロが流れてファン達のコールが重なる。
 盛り上がりはまさに最高潮。彼女の涼やかな歌声が聞こえてくるそのタイミングで突如部屋の明かりが落とされた。
「何!?」
「どうもこんにちはお嬢さん」
 姿を現したのはスーツ姿のオーク。9色――9体のオークを引き連れたそれはさゆりに名刺を差し出す。
「あなたの知識は我が主の『ドラゴンハーレム』に相応しい。食べ頃の梨の見極めをすると同時に是非ハーレムで繁殖に励んでいただきたい」
「は、んしょく……?」
 思考がついていかないさゆりは首を傾げた。だが、オークはにいっと厭らしい笑みを浮かべる。
「もちろん、あなたにはギャラも拒否権もありませんよ!」
 この言葉をきっかけに配下のオーク達がさゆりを誘拐しようとする。
「こ、この豚野郎! しゃゆりには俺達親衛隊が指一本触れさせないごふぅ」
 ペンライトを武器代わりにファン達は守ろうとするが触手で蹴散らされてしまう。
 そしてオークはその触手をさゆりへと伸ばすのであった。

「皆様、お集まりいただきましてありがとうございます」
 ヘリオライダーの御村・やなぎは深々と頭を下げた。
「早速ですが、ギルビエフ・ジューシィというオークが、各地の地下アイドルを無理矢理スカウトしてハーレムに連れ帰るという事件が起こっているようです」
 ギルビエフ・ジューシィはいわゆる地下アイドルのライブ会場に配下のオークとともに突如現れ、ステージ上のアイドルを襲う。
 抵抗しなければアイドルを攫うだけで去っていくが、抵抗すれば殺されてしまうらしい。
「だからといってライブを中止してしまうと別の会場が襲撃されてしまいます。そうなってしまえば阻止することは非常に難しくなってしまいます」
 オークが現れてから戦闘を開始するのが好ましい、とやなぎは言う。
「それから、ファンの皆様はケルベロスの皆様がいたとしても命を掛けてアイドルの方をお守りします。オーク達はアイドルの方を攻撃することはございませんが、ファンの皆様は躊躇なく殺してしまうでしょう」
 彼らを避難させるにはアイドル愛を語るなり同志だと思ってもらうなり現実を突きつけるなり推し変させるなりと少々特殊な説得が必要となるだろう。
「うまく説得できればファンの皆様は迅速に避難してくださるかと。どうやらファンの皆様は結束力が固いようですけれども……」
 集団行動は彼らにとって朝飯前のことである。説得に成功すれば誰に迷惑をかけることなく避難するだろう。
「オークは全部で9体。回復グラビティは使ってこないようです。ポジションは前衛と後衛に別れているようですが、詳細な配置はわかりません。それぞれの個体はグラビティを2から3種類ずつ使ってくるようです」
 会場は狭く閉鎖的で、立ち見でも40名ほどしか入らない室内で出入口は一箇所のみ。
 また、ギルビエフ・ジューシィは戦闘が始まるといつの間にか姿を消してしまう。よって撃破することは難しいだろう。
「オークの私欲を満たす行為、放置することはできません。皆様、どうか早急にオークの撃破をお願いいたします」
 やなぎはそう言って深々と頭を下げた。


参加者
赤堀・いちご(ないしょのお嬢様・e00103)
水無・ゆかり(目指せ未来系女子高生・e00258)
扶桑・睦月(正義執行者・e07372)
矢武崎・莱恵(オラトリオの鎧装騎兵・e09230)
茅乃・燈(キムンカムイ・e19696)
イグノート・ニーロ(チベスナさん・e21366)
鴻野・紗更(よもすがら・e28270)
佐竹・灯子(無彩色の原石・e29774)

■リプレイ

●ライブ開催前の出来事
 アイドルの控え室。そこには鴻野・紗更(よもすがら・e28270)と扶桑・睦月(正義執行者・e07372)、そして赤堀・いちご(ないしょのお嬢様・e00103)がいた。
「ここが狙われるということですか……?」
 事情の説明を受けたさゆりは困ったように3人の顔を見た。
「事が起こったら速やかに避難してほしい。その際、ファン達に抵抗せず速やかに避難して貰う事を伝えて貰えるか?」
「大丈夫です。さゆりさんもファンの皆さんも私達が護ります」
 睦月といちごの言葉にさゆりは戸惑いながらもうなずいた。
 場所は変わって、ここはライブが始まる前の会場。
 ここで囲まれている者がいた。取り囲む人々の眼差しは尊敬そのもの。
 この渦中にいるのはイグノート・ニーロ(チベスナさん・e21366)。
「これはさゆりちゃんのファンクラブカードですか!」
「自作と見受けられたがなんたるクオリティ」
「いえ、私など皆様に比べたらまだまだです。今回が初めての現場です」
「狐先輩とお呼びしてもよろしいでしょうか!」
 紳士的で控えめな立ち振る舞いとカードのおかげですっかりファンと打ち解けて紛れることに成功したイグノートだった。
 同じ会場の片隅でエメラルドグリーンの髪に鉢巻をつけた少女がいた。佐竹・灯子(無彩色の原石・e29774)は大の仲良しであるナノナノの餅子とともにさゆりの曲と振りとコールを熱心に練習してきた。
 シャーマンズカードを黄緑色のペンライトへ持ちかえて彼女はライブの開始をファンとともに待っている。
 彼女と同じようにファンに紛れているのは矢武崎・莱恵(オラトリオの鎧装騎兵・e09230)。ちっちゃい少女がアイドルを応援する姿に周りのファン達も微笑ましく見守り、受け入れている。
 女性アイドルの現場に同世代の女性がいることは珍しくはない。ただ、水無・ゆかり(目指せ未来系女子高生・e00258)と茅乃・燈(キムンカムイ・e19696)は普通よりも大きめな胸のおかげで若干の視線を集めている。
 しかしゆかりはそんな視線を気にも留めず、黄緑色のペンライトを両手に持ってさゆりが出てくる舞台を凝視しており、燈も同じく舞台を見ている。
 そのときだった。会場の照明が落とされ、きらびやかな照明がたかれた舞台に登場したのは梨の素晴らしさを皆さんにお届けするご当地アイドル涼月・さゆり。
 会場のボルテージは一気に最高潮に達した。

●応援する者達
「さーゆりんっ! ハイッ! さーゆりんっ! ハイッ!」
 早速ファン達に負けない声量でコールをするゆかり。
 燈はその真似をしながらペンライトを振るう。
 ゆかりに負けず劣らずで灯子も激しく動く。振りコピは当然として合いの手も他の熱心なファンと同じタイミングで完璧に入れる。
 イグノートは周りのファン達の迷惑にならない程度に動いて声を出してはいるが存在感を見せつけながら、さゆりを応援する。
 莱恵も同様にペンライトを振って応援している。
 そんな中、異変に気付いたのは紗更と睦月だった。人ではないもの――豚が姿を現し、舞台上の照明が突如落ちる。
「どうもこんにちはお嬢さん」
 スーツ姿のオークであるギルビエフ・ジューシィと配下のオーク達の姿を見てファン達がパニックに陥る前に、イグノートが舞台上のさゆりとオークとの間に割って入ってファン達へと呼びかける。
「私はケルベロス、そして皆さまと共に涼月様を心より応援する者です。オークは私達が引き受けましょう」
 次いで舞台袖から睦月も強化甲冑の響を装着し、割り込んで壁となる。
「彼女は俺達が命に代えても護る! だから君達は逃げろ!」
「ですが、ただ逃げるのではなく、皆さまに涼月様と共に無事避難する役をお任せしたいのです。涼月様を真に想う同志だからこそお願い申し上げます」
 さゆりを想う同志からの言葉にファン達は取るべき行動に迷いが生じているようで。
「どうぞこの場はわたくし達にお任せくださいますよう。涼月さまの御身に何かあっては一大事以上でございます。皆さま、涼月さまをお守りください」
 紗更も後押しをしつつ、さゆりへとファンへ説得をするようアイコンタクトを出す。
「さゆりさん、ファンの皆さんへの呼びかけをお願いします!」
 舞台袖で待機していたいちごもさゆりへ言えば、さゆりはファン達のほうをじっと見て訴える。
「ケルベロスの皆さんに任せて早く避難して!」
「同志の言葉も大切。しかし命を掛けてさゆりを護るのが我々の使命」
「だがしゃゆりの言葉を無視するわけには……」
「そうです、狐先輩もおっしゃってます!」
 渋るファン達だが、同調する声もあがる。その中でも極めて大きい声が響く。
「早く避難しないとさゆりんに迷惑掛かっちゃうよね!」
 それはゆかりの声だった。ゆかりは朗々と語りかけるように皆へ声を掛ける、
「さあ、みんな! 避難しましょう!」
 ゆかりが呼びかければ燈も後押しをする。
「さゆりんも言ってます。慌てず脱出してくださいっ」
 客席からの避難の呼びかけ。さらに強く後押しするように莱恵が言う。
「ボク達は皆と同じファンだけど、この豚をミンチに出来る力がある! ファンは常に応援し続けないといけないから、こんな所で犬死にしてはいけない!!」
 小さな体から発せられる熱い演説とも取れる言葉にファン達はどよめく。
「だからここはボク達に任せて皆はここから一時的に離れてほしいんだ。そう、一時的にね! 皆は豚の掃除が終わってライブが再開した時のために力を温存しておいてよ!」
 彼女の言葉に同調するように灯子はペンライトで出口の方を差す。
「これは、これからもさゆりさんを応援していくための戦略的撤退だよ。さゆりさんが悲しむ顔は見たくないよね? なら撤退しようよ!」
「ファンというのはなんだ? ここで君達が死んでしまったら彼女は悲しむではないか! それがファンのやる事だと君達は言うのか!」
 壁役に徹していた睦月も声を荒げてファン達へと声を掛けた。
「皆さま、これは涼月様のためでもあり、涼月様の想いでもあります。これを無下にしないためにも、どうか速やかな避難を」
 イグノートが再度の申し出をすればさゆりもうなずき、避難を促す。
 同志の熱い言葉に従い、ファン達は規律を乱すことなく、しかし速やかに退避した。
 最後にさゆりもいちごに護衛されながら退避する。
「あとは任せてくださいねっ」
 いちごがさゆりへ笑顔を見せれば、さゆりはうなずいた。
「すみません、皆さんよろしくお願いしますっ!」

●厄介は排除すべし
 いつの間にかギルビエフ・ジューシィは姿を消し、残ったのはオークが9体。
 さゆりにあんなことやこんなことをしてやるつもりだったオークは意気消沈しつつもケルベロス達(主に女の子)を見てやる気を取り戻したようである。
 まず緑色と桃色と黄色のオークが狙いを定めたのは燈。
「桃くん黄色くん、あのナイスな胸部を見たまえ!」
「縛り上げて観察する必要がございますな」
 オークはきゃっきゃと楽しそうにそんなことを言いながら燈へと触手を伸ばすが、それをかばいに入るのはいちご。しかし。
「いちごちゃんに触手が! あかりんバリア!」
「え、ゆかりさん、ぼくを盾にしないで!」
「触手が……!」
 いちごを触手の魔の手から守るべく燈を盾にしようとするが、そんな2人を守ろうといちごも前に出る。そして結果としていちごはゆかりと燈の胸に挟まれてしまう。
 2人はいちごを女の子だと信じて疑っていないので揉まれようが顔をうずめられようが吸われようが平気なのだが、いちごはたまったものではない。
「ご、ごめんなさいっ!」
 ボクスドラゴンのアリカとオルトロスのブリュレに引っ張って貰って触手から引っ張り出されたいちごの顔は真っ赤であった。
「まだまだ、こんなもんじゃないですよね?」
 ゆかりの戦乙女の微笑み(ヴァルキリースマイル)といちごのサキュバスミストで触手によって受けたダメージを回復させた。
「いざ、参りましょうか」
 多少のハプニングがあったりしたが、紗更は触手をくぐりぬけて茶色オークへと近付き、蹴り飛ばす。
「行くよ、タマ!」
 子竜のタマを肩車し、武器を振り回しながら突撃するドラゴニックフュージョン。莱恵が茶色オークをハンマーでどつき回している最中、タマは泣き声で挑発する。
 くらくらと目を回し気味の茶色オークへ燈の気咬弾がクリティカルヒットした。オルトロスのレタルも口に咥えた剣で斬り付ける。
「茶色先輩、大丈夫ですか!?」
「大丈夫じゃねえな。だからこそ最後にあのでっけえのを(自主規制)して(放送禁止)してやらあ! 行くぞ!」
 欲望全開で茶色と白と黄金のオークは燈へ触手を伸ばして服を溶かすべく溶解液を飛ばすが、それを代わりに受けるのはレタル。
 目論見が失敗してものすごく悲しそうな表情を浮かべていようが、オークへの手加減など無用。イグノートは玻璃の狸を出現させた。
「さてさて現れましたるは美しい玻璃の狸。いえいえよくよくご覧になって下さい」
 玻璃の刃狸(ハリノハリ)。見事な毛並みの一本一本が、全て氷で出来ている玻璃の狸は刃となってオーク達へと襲い掛かる。
「さて掃除の時間だ。覚悟して貰おうか」
 灯子の放った禁縄禁縛呪によって鷲掴みにされた茶色オークを的とし、睦月はキャバリアランページで超加速突撃をして一気に蹴散らす。
 この際、桃色オークは怯んで足止めを受けたしまう。
 そして茶色オークは地に伏せたまま動かなくなった。
 続いて足止めを受けた桃色オークへとケルベロス達は猛攻を仕掛ける。
「わたくしの持つ、魔術のひとつでございますれば」
 高々と放り出されてひらひらと落ちてくる桃色オークへ紗更が放つ雨久花(ミズアオイ)。身に宿したグラビティ・チェインを不可避を宿す魔術へと変換し、ほの光る青い雨粒となったそれを身に纏い、狙い澄ました一撃を放ち、オークを撃ち貫く。オークはそのまま空中でぱっと消え失せた。
 続いて狙うのは攻撃をかばいに入る白色オーク。ケルベロス達は守りが堅いそれに対して手数で勝負をする。
「私の力を貴方に。聞いてください、この歌を」
 いちごは「苺の守り人に捧げる、呪いを打ち破る力の唄」(アナタニチカラヲ)を歌う。
 それでもオークの数も多いので、ゆかりとアリカの回復グラビティでも追いつかない時はいちごと灯子、そしてタマと餅子も回復側に回る。
 ゆかりが何度目かのオラトリオヴェールで傷を癒すが、白色オークの触手は莱恵を狙う。しかし、莱恵はそれをひらりとかわすとハンマーを振り下ろすことで時空凍結弾を精製し、白色オークへと撃ち込んだ。
 白色オークは氷漬けになったと思えばそのまま蒸発して消えていく。
「我、空になりて邪悪を断つ。人を超え、獣を超え、カムイとならん。大自然のお仕置き、やってやります!」
 黄色オークへ超獣装攻(アグレッシブビースト)で突撃する燈。熊変身した本人、ファミリアロッドのシマフクロウ「フレ・クンネ」、オルトロスの白狼「レタル・ホロケゥ」の三者が蒼白いオーラを身に纏い、高速で突撃し、三位一体攻撃で黄色オークを穿つ。
 のけぞった黄色オークにイグノートが炎を纏った激しい蹴りで攻撃し、触手に炎が回る。
 数本の触手を炎上させた黄色オークのいる周辺へと灯子の御霊殲滅砲が炸裂した。
 巨大な光弾に包まれたオーク達をキャバリアランページで吹き飛ばす睦月。その際、大ダメージを喰らっていた黄色オークはころころと転がっていき、壁に頭を打ち付けて目を回す。
 そんな黄色オークにとどめを刺すべくいちごは「殲剣の理」を歌う。魂に訴えかけるそのメロディは黄色オークの肉体も精神も死へと導いた。
 紗更も列攻撃によってじわじわとダメージを蓄積していた赤オークへ雨久花を放つ。
「多少手荒になりますが―――失礼致します!」
 狙い定められた青い雨粒はそれと対象的な赤い体を刺し貫き、赤オークは姿を消した。
 数が減ったとはいえオークの攻撃はまだ激しく、ゆかりが戦乙女の微笑みで癒す。
 莱恵は緑オークが放つ触手をひらりとかわし、ドラゴニックスマッシュで襲い掛かってきた触手を叩き潰す。
「雷の、おまじない」
 灯子の符呪【電気石】でびりびりと痺れる緑オーク。
 次いでイグノートの玻璃の刃狸にも襲われる。
「欲望全開とは醜いモノだな」
 睦月は痺れている緑オークの死角に入り込むとブーストナックルを叩き込んだ。重拳撃を喰らったオークは吹き飛ばされて壁にぶつかり力なく地に落ちて消えていく。
 残るオークは2体。列攻撃によって双方とも相当な体力を奪われていた。
「貴様らだけは許さん!」
 最後の力を振り絞って黄金オークが触手を放とうとする。
 しかしそれより早くイグノートが全力でぶん投げたエクスカリバールが脳天にジャストヒットし、黄金オークは頭に刺さったバールを残して消え失せた。
 最後の1体となる黄緑オーク。灯子の召喚した御業が放った炎弾によって業火に包まれ、そして炎が消えたとき、その場には何も残ることはなかった。

●いざ実食
 オークを片付け終え、戦場となった部屋のヒールも終えた紗更は梨を吟味している。
 莱恵はタマと一緒に記念館を歩き回り、中でも資料展示室の鈍器――農具に見入っていた。
 また、ここでは季節ごとに様々な梨を食べ比べすることができる。今回は3種類、二十世紀と新甘泉と豊水。
 灯子は餅子と一緒に梨を食べる。しゃくしゃくと食べ比べ、どうやら彼女が気に入ったのは酸味が少なく甘みが強い新甘泉。
 一通り食べた後は食後の運動とばかりに記念館で年相応にはしゃぐのであった。
 睦月はといえば、戦闘後に異常の有無を確認し、皆と同様に梨の試食をする。梨が食べたいという本音は隠さない。
「ドラゴンも、もうちょっと配下を選ぶべきだと思うんだけどねぇ」
 などとぼやきながら美味しく梨を試食する。
「なるほど。ではこちらの梨を頂きましょう」
 試食したイグノートは売り出し中の新種だとおすすめされた新甘泉を買って帰ることとした。あらかじめ仕入れていた梨の知識から、これが新品種で他では栽培されていないと知っていたこともある。
 いちごとゆかりと燈は3人で一緒に試食している。いちごがさゆりを誘ったのだが、お詫びライブがあると申し訳なさそうに言われていた。
 しゃくしゃくと二十世紀を食べる燈。次に豊水に手を伸ばしてふと、ゆかりといちごを見てみれば。
「いくらでも食べられそうな味が良いんですよね。いちごとどっちが美味しいんでしょうね」
「……あの、ゆかりさん、そのいちごは果物の事ですよね……?」
 仲良いことは美しきかな。おろおろとするいちごを笑顔で見守るゆかりの背中に、燈は混ぜてくださいと言わんばかりに抱きつくのであった。

作者:香住あおい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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