ホムンクルスを生み出す儀式

作者:なちゅい

●ホムンクルスを生み出す儀式……?
 その少年は、自宅の自室でぶつぶつと何かを呟いていた。
「これはこっち、あと、この人形をここにおいて……」
 彼の名は、出口・拓郎。中学2年生だ。拓郎は最近、親からスマートフォンを買い与えてもらい、色々な人達と知り合いになっていた。
 元々、オカルトに傾向する嫌いがあったのだが、全国各地の同じ趣味を持つ人々と話をするようになって、その趣味は高じる一方。様々なオカルトチックな話を聞くうちに、自分もあれこれと試してみたいとさえ考えるようになる。
「ホムンクルスなら、僕にだって作れる。きっと……」
 ホムンクルスとは、いわゆる人造人間のこと。漫画などで目にする存在だが、オカルト仲間内で語り合ううちにその生成方法を聞いた彼は、試してみたいとかんがえていたのだ。
 もちろん、それは実在しない方法。そもそも、ホムンクルスを何も力を持たない一般人の拓郎が作ることなどできようはずもない。
「ううん、何か間違ったかな……うっ……!?」
 考え事をしていると、胸から鍵のようなものが突き出ているのが見えて。拓郎はそのまま倒れてしまう。
 その鍵を突き入れたのは、ぼろぼろの黒い衣装を纏い、ひどく病的な肌をした魔女だった。
 第五の魔女・アウゲイアス。モザイクに包まれた腕を動かすドリームイーターは、鍵をその体内から引き抜きながらこう告げる。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 貫かれたはずの胸は傷痕すら残ってはいないが、拓郎は完全に意識を失っていた。
 その拓郎の近くに、人型をしたモノが生み出される。一見すると少年にも見えるが、いびつな骨格をしており、頭と手足だけが異様に大きい怪物。その顔はモザイクに包まれていた。
 新たなドリームイーターの誕生を見届けたアウゲイアスは、満足気に微笑んでからその場から姿を消したのだった。
 
 ヘリポートへとやってきたケルベロス達。
 他のケルベロスが集まるまでの間、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)がこんな質問をしてくる。
「皆、ホムンクルスがいたらって思ったことはあるかな」
 その反応は様々。確かにいたらいいなと考える者もいれば、サーヴァント持ちのメンバーなどは、さほど必要性を感じぬ者も多いようである。
 そこへやってきたコール・タール(多色夢幻のマホウ使い・e10649)が、こんな話を持ちかけてくる。
「錬金術の産物。ホムンクルスに『興味』を抱いた奴がいるらしいな」
「うん、そうだね」
 リーゼリットは肯定した後、説明を始める。
 それは、SNS……ソーシャルネットワークなどにおいて、オカルト仲間内でのみ伝わる噂話のようなものだが、ホムンクルスを生み出すことができるなどという話が出回っている。
 だが、それに強い『興味』を持って、実際に自分で試してみようとする少年がドリームイーターに襲われ、その『興味』を奪われてしまう事件が起こってしまうようだ。
「奪われた『興味』を元にして、怪物型のドリームイーターが現実化してしまっているよ。この夢喰いが事件を起こそうとしているようだね」
 すでに 『興味』を奪ったドリームイーターは姿を消している。そいつを探しに行きたくはあるが、今は被害が出る前に、怪物型のドリームイーターを討伐して欲しいとリーゼリットは語る。
「このドリームイーターを倒す事ができれば、『興味』を奪われてしまった被害者も、目を覚ますはずだよ」
 今回、『興味』を奪われたのは、男子中学生、出口・拓郎だ。
 感情を奪われた彼は、自宅の自室で倒れている。無事にドリームイーターを倒したのならば、何かフォローがあってもよいだろう。
 現場は、栃木県某所の住宅地だ。
「『興味』から生まれたドリームイーターは、何かを求めるように自宅周辺を彷徨っているようだね」
 ドリームイーターは、自分の事を信じていたり噂していたりする人が居ると、その人の方に引き寄せられる性質がある。それを利用して相手をうまく誘い出せば、有利に戦うことができるはずだ。
「現れるドリームイーターは怪物型1体のみ。配下などはいないようだよ」
 そいつは、人型をとってはいるが、頭と手足だけが大きい怪物だ。顔はモザイクで包まれており、ドリームイーターだと一目で分かるはずだ。
「怪物型のドリームイーターは、人間を見つけると『自分が何者であるかを問う』ような行為をしてくるよ」
 場合によっては相手を殺そうとするようだ。その答えはさておき、ケルベロスとしてドリームイーターを見過ごすわけにはいかないので、早々に討伐してしまいたい。
 ドリームイーターはモザイクを飛ばす他、大きな足での蹴り、大きな手でビンタを繰り出すので、くれぐれも注意したい。
 説明を終えたリーゼリットはさらに言葉を続ける。
「知的好奇心を利用するドリームイーター……許してはおけないね」
 少年を救う為にも、そして、新たに生まれた夢喰いによる惨劇を止める為にも、このドリームイーターを倒して欲しい。彼女は改めてそうケルベロス達へと願うのだった。


参加者
シェラーナ・エーベルージュ(剣の舞姫・e00147)
ベルフェゴール・ヴァーミリオン(未来への種・e00211)
レクシア・クーン(咲き誇る姫紫君子蘭・e00448)
ニーナ・トゥリナーツァチ(幽愁暗恨に呑まれて・e01156)
月海・汐音(紅心サクシード・e01276)
レイリス・スカーレット(空想科学魔導師・e03163)
コール・タール(多色夢幻のマホウ使い・e10649)
フォスター・アーレイガーブ(ホテル管理人・e22720)

■リプレイ

●『興味』が生み出した人造人間
 ケルベロス達は栃木県の住宅地へと降り立っていた。
「住宅地かぁー……。出来れば、被害を出さないように戦いたいわよね」
 シェラーナ・エーベルージュ(剣の舞姫・e00147)は周囲を見回す。近辺に人通りはあまりないが、この中を『興味』から生み出されたドリームイーターが徘徊しているはずだ。
「……ドリームイーターは本当になんでも奪うな……」
 コール・タール(多色夢幻のマホウ使い・e10649)は静かに呟く。その上、奪った後は面倒なモノを残し、自身はさっさと去っていくドリームイーターに、コールは苛立っている。
「罪の無い少年の為にも、さっさと倒してやらねぇとな」
 頷くメンバー達。そこで、それにしてもとレクシア・クーン(咲き誇る姫紫君子蘭・e00448)が呟く。
「実在しないものが形をもって現れるというのは、不思議ですね」
 一体どのような姿なのだろうかと、レクシアは言葉で聞いたドリームイーターを想像する。
「どうも最近、ホムンクルスとは妙に縁があるわね……」
 黒い外套を羽織る月海・汐音(紅心サクシード・e01276)は他の依頼で、別の形で生み出されたそれと出会っているらしい。
「まぁいいわ。どうであれ、この世界に悪を為す存在なら……私が討ち滅ぼすわ」
 これも作戦の為。汐音は再び、ホムンクルスの打倒を目指すのである。

 メンバー達はその後、被害者の自宅周辺で戦うスペースを取ることができる場所……公園や駐車場を探す。
 あちらこちらを探したものの、手頃な広い場所を見つけられなかった一行は已む無く、道幅の広い交差点で出迎えることとしたようだ。
「逃げられやすいから、注意して戦わないとね」
 シェラーナは住宅地という場所を考え、殺界形成を使わないようにと考えたのだが。コールが先に殺界を展開していたようだ。
 それもあり、周囲の人々が危険を感じ、急いで自宅から避難していく。
 被害の拡大を防ぐ意味では悪いことではない。ただ、作戦に若干の認識のずれがあったとメンバー達は考えながらも、敵の誘い出しを開始する。
「最近、よくホムンクルスの情報が入ってくるような気がする……」
 最初に口を開いたのは、ベルフェゴール・ヴァーミリオン(未来への種・e00211)だ。レプリカントの彼は、やや機械的な口調で仲間達に話を振る。
「えぇ……。ホムンクルス、本当に生成されていたりしてね」
 汐音は相槌を打ちつつ、いつでも動けるようにと構えを崩さない。ただ、上手く誘導できるかどうかと若干の不安もあったようだが。
「残念ながら、私にその手の知識はありませんが……」
「ホムンクルス、か……。生物系はどうも苦手で……」
 ドイツ人のレクシアは、同じドイツの文才、ゲーテの戯曲『ファウスト』にホムンクルスが登場する話をしてみせた。物語の中では、人造人間として想像されるのだそうだ。
 聞いていたコールが独学で得た錬金術でその創造を幾度か試してみたという。自動人形なら作れると言いかけたが、分野が異なるかと話を途中で自ら遮っていた。
「毎回失敗してなぁ……。実物を見れば、もしかすれば……」
 しかしながら、今回登場するモノは参考になるだろうかと、コールは疑問を抱く。
「まず、ホムンクルスとは何者であるかを定義すべきだ」
 そこで、レイリス・スカーレット(空想科学魔導師・e03163)が違う切り口から持論を展開する。
「人工的に作られた人間……であるなら、レプリカントもホムンクルスだろう」
 そもそも、ホムンクルスはラテン語で小人を意味する言葉で……と、レイリスはしばし、自身の見解を語る。
 それに対し、聞き手に回るレクシアが時に相槌を打つ。執事服を着たフォスター・アーレイガーブ(ホテル管理人・e22720)も誘い出しの会話は仲間に任せ、視線を周囲に走らせていた。一見、戦闘用に見えない格好のようだが、フォスターはその服の下に革鎧を仕込んでいる。
「ホムンクルスか……錬金術の産物ね」
 シェラーナも自身の考えを語る。
 錬金術に限らず、今ならばクローン技術なども存在する。発展した科学は魔法に匹敵すると、彼女は耳にしていた。
「現在はまだホムンクルスを作り出せるほど、解明はされてはいないわ。今は夢物語ではあるけれど……。将来的に、お手伝いとして社会に出てきたら面白いわよね♪」
 そんな日は訪れるだろうかと、シェラーナは嬉しそうに語った。
「そうかしら、今の科学技術であれば簡単だと、私は思うのだけれど」
 対して、ニーナ・トゥリナーツァチ(幽愁暗恨に呑まれて・e01156)は根拠こそないものの、何処かの国で密かに創り出されているかもしれないと考える。
「でも……、人工の生命であっても魂は存在する……。どんな、味がするのかしらね」
 ニーナがちらりと視線を後に向けると、それはケルベロス達へとゆっくり近づいてくる。頭と手足だけが大きい怪物。そして、その顔はモザイクで包まれていて。
「オレ、ハ……何ダ……?」
 片言で、それでいて低い声で、その怪物は問いかけてきた。
「人間のような人工生命体……人のようで人ならざるもの……かな……」
 ベルフェゴールは一般的な回答をしてみる。ホムンクルスには多少なりとも興味を抱いているベルフェゴールは、どういう反応が返ってくるかと注視していた。
「興味を奪う怪物。今の貴方はそれ以上でも以下でもないわね」
 汐音もまた、そっけなく怪物に言葉を返す。
「……何者かを知りたいのなら、私達を超えて自分で見つけてみせなさい。やれるものなら、ね」
 答えた2人はそうして、相手の出方を見る。しかし、その言葉にさほど反応を示すことなく、次なるメンバーへと怪物は同じ問いを行う。
「お前は敵だ。今は、それ以外にありえない」
 質問してきたその相手に対し、偽者ではあるが立派なホムンクルスだとコールは考える。
「『自分が何者であるか』なんて、人工生命では考え付かないでしょう? ……それが答えよ」
 存在を肯定しつつ出した答えを口にし、ニーナは様子を窺う。
「お前が何者か……、全ての存在は他者によって観測されることでその存在を維持できる。だが、他者の観測はお前の正体を変える事はない。お前の正体、真実の姿とは他者の回答の先にある」
 レイリスもその問いに対し、哲学的な切り口で語る。
「他者の観測とは、常に一方向からの物でしかない写真のようなものだ。お前自身の観測もその写真の一枚でしかない。お前は、お前が思った通りの存在か? いや、違うはずだ。だから問い続けるのだろう? 私は何物か、と。その疑問は正しい」
 相手を肯定しながらもレイリスは主張し、問いかけるのだが。怪物はこの答えがお気に召さなかったようだ。その大きな手を振り上げて、ケルベロスへと襲い掛かってくる。
「人であっても、していい事と悪い事があるのよ」
 ニーナもすぐさま鎌を手にして応戦を始める。メンバー達はこのドリームイーターを止めるべく、武器を抜いてグラビティを繰り出していく……。

●人工生命体の夢喰い
 異形の怪物、ドリームイーターは、その大きな手で平手打ちを振るってくる。
 それは非常に強烈なる一撃。盾となるレクシアはそれを浴びて目眩すらしてしまうが、すぐに地獄の翼で体勢を立て直し、前方へと紙兵を散布していく。
 その横から、汐音が敵に迫る。彼女は惨殺ナイフを手にして目の前の怪物を切り裂いていく。その返り血によって、ビンタで受けた傷を癒していたようだ。
「――パラケルススよ、我が光をご照覧あれ――」
 同じく、火力役として前に立つコール。彼が取り出したるは、伝説に語り継がれる武器を再現したもの。5つの宝石を埋め込んだ儀礼用ナイフだ。
「――火、水、風、土、そして、空。元素は混ざりて星となる――」
 そのナイフを触媒に作り出した擬似エーテルをコールは放出し、夢喰いの身体を分解しようとする。
 前線の仲間が気を引く間、後衛のベルフェゴールは敵を狙い、リボルバー銃の照準を定める。
「……行くよ」
 敵への興味は尽きないが、戦いとなれば話は別。ベルフェゴールは素早く弾丸を撃ち放ち、敵の大きな手足を撃ち抜いて行く。
 大鎌を構えたニーナも、仲間に続いて攻め入っていた。
「影は揺らぎ、死は踊る」
 ニーナは因果を捻じ曲げ、その結果を顕現する。いつの間にかニーナは怪物の背後へと立っていた。ざっくりと夢喰いの背中に大きな傷跡が残り、身体には痺れが走る。夢喰いには何が起こったか分からなかっただろう。
 そこで、さらに翼で飛行するレイリスが古代語の詠唱を行い、魔法光線を打ち出して怪物の胴体の一部を石と化す。
 ただ、怪物はそれだけでは動きを止めない。フォスターが魔導書の禁断の断章を紐解き、シェラーナへと常軌を逸した強化を施す。
 次なる敵の狙いは、そのシェラーナ。敵は高く飛び上がり、巨大な足で踏みつけてくる。
「今代が剣の舞姫が舞いる!」
 全身に呪紋を浮かび上がらせた彼女は残像すら残す勢いで飛び掛かり、斬霊刀『真達羅』を舞うようにして振るい、敵の急所を掻き斬った。仲間の与えた痺れを大きくし、その動きを鈍らせた上で彼女は夢喰いを攻め立てる。
 夢喰いは唸りながらも、なおもケルベロスへと飛びかかるタイミングを見計らっていた。

 その見た目に反して異様に素早いドリームイーターは、大きな手足を使って襲い来る。
「異相次元との限定接続実行……これもまた、観測の力だ」
 レイリスは鉤爪付き鎖でその動きを封じつつ、その効果を強めようと小型攻撃機型の使い魔を召喚した。
「ここではない次元が存在すると定義する事で、その存在を利用できる。もっとも……お前の観測は、ここで終わるのだがな」
 彼女が告げる間にも、使い魔達は敵の全方位へと展開して。
「……タイプブラック出撃。もう、引き返せない……お前も、私達も」
 それらへとレイリスは指示を出し、高出力ビームを放射させる。
 だが、敵はそれに耐え切り、レイリスを狙ってモザイクを飛ばす。
 レクシアが代わりとなり、モザイクを受け止めてくれたものの。立ち回りをさほど気にしていなかったレイリスは油断があったことに気づき、気を引き締め直していた。
 そのレクシアは全力で仲間を庇いながらも、蒼い光の尾を引いて敵を襲う。
「追い縋る者には燃え立ち諌め、振り離す者には燃え上り戒めよ。彼の者を喰らい、縛れ――迦楼羅の炎」
 彼女は敵へと地獄の炎弾を無数に放つ。それらはごく微量の生命力を奪って炎に転化し、静かに燃え続けさせることで相手の足止めを行う。
 だが、ホムンクルスとして呼び出されし怪物はなおも顔のモザイクを飛ばし、ケルベロスの動きを阻害してきた。一転集中で強力な蹴りを繰り出し、ビンタやモザイクで広範囲に攻撃してくる。
 それを、回復役として振舞うフォスターが癒しの雨を降らせることで前線を支える。フォスターはまた、特に盾として身をはるレクシアへと緊急手術も施していた。
 なかなか敵の動きが鈍らないことを気がけながらも、コールは腕からブラックスライムを槍のようにして飛ばし、貫いた夢喰いの身体を毒へと侵す。
「罪を背負った魂は見過ごせないの。ごめんなさいね」
 ニーナはその夢喰いに何を見ているのか。彼女は鎌を回転させながら投げつけ、そいつの身体を切り刻む。ついたその傷を、シェラーナが空の霊力を纏わせた斬霊刀でさらに幾度も斬ることでより大きく広げていく。
「ウ、ウアアッ……!」
 なおもモザイクを飛ばす夢喰い。それは再び前線のメンバーへ飛んでいき、痺れによって彼らを苛む。
「……大丈夫?」
 ベルフェゴールは仲間を気遣いながらも、いち早く戦いが終わるようにと、リボルバー銃からオーラの弾丸を発射する。それは敵に食らいつき、夢喰いの体力を大きく削ぎ取った。
 さすがに多勢に無勢と察した夢喰いは、この場からの脱出を図る。
 ケルベロス達はさほど布陣に気を配っていなかったこともあり、包囲網は緩い。しかも、十字路という場所が敵の逃走を許す形となる。
「……敵が逃げるよ」
 ベルフェゴールが夢喰いの逃走を察して、仲間に注意喚起する。
 それに素早く対処したのは、汐音だった。
「鋭刃の雨よ、踊りなさい!」
 自身の記憶から具現化した様々な形をした短剣。彼女はそれらを敵に向かって降り注がせる。全ての短剣は緋色に染まっていて、まるで血の雨が降るようにも見えた。
「ヴ、ヴェェッ……」
 無数の短剣に真上から突き刺された夢喰い。ついにそいつは力尽き、地面の上でモザイクに包まれる。程なく、それは綺麗に霧散してしまった。
 ニーナは倒した相手の魂を掬い上げ、か細く揺れる人工の魂を見つめる。
「……次は、与えられないけれど、ゆっくり休んでね」
 そう告げたニーナは、その魂の口の中へと放り投げた。

●その興味を忘れないで
 ドリームイーターを倒したケルベロス達。
 メンバー達は手早く現場を片付け、被害者となった出口・拓郎少年宅へと向かう。
 一行は両親に事情を説明した後、拓郎へと会いに向かう。彼は夢喰いの消滅によって目を覚ましていたようだ。
 レクシアが拓郎を介抱しつつ、事情を説明する。ただ、彼の興味によって夢喰いが現れた件に関しては伏せていた。興味を持つこと自体は悪いことではないと、皆考えていたからだ。
「素人の魔術弄りは感心しないな。何が起こるかわからない」
 ただ、その行為に関しては窘めるべきだとコールは考えていたようだ。
「もっと勉強する事だな……。現代では、錬金術は科学と名を変えている」
 不可能であれば、現状で可能な方法を使って試すべき。コールはそう少年を諭す。
「……その興味は、忘れないで欲しい」
 その様子を傍から確認していた汐音は、この場のフォローを仲間に託すことにしていたようだ。
「人間若いうちは、色々なものに興味を持つもの。それは成長過程でとても大事なことです」
 フォスターもまた、この場でお茶を振舞いつつ少年へと語る。これまでどこにティーセットを隠していたかは言わないお約束である。
「そういった経験を経て、出来ることと出来ないこと、現実とファンタジーの区別を付けていくわけですよ」
 その夢見る心も、大事な成長の1つと言えるかもしれない。
「以上です」
 そうして、フォスターはしばしのティータイムを、拓郎や仲間達と一緒に楽しむのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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