月喰島奇譚~いずなを救う絆

作者:久澄零太

 高足の草履を鳴らし、童子切・いずな(最強にかっこいい最強な拙者・e12222) は木に登り、現在地を確認する。
「大分近づいてきたでござるな……」
 時間をかけて目指すは、キャンプ地とは逆の地点に位置する海岸。遠目に建物も見えており、人の気配を思わせるそこへ向けて少女は再び地面を蹴る。
「敵が現れた場所から離れている事を考えるに、やはり生存者がいるならこちらでござろうか?」
 屋根が見えたこともあり、駆ける脚に力が籠るいずなだったが、いざ辿り着いたそこは生活感の欠片もなく、とうの昔に廃墟となったことが見て取れた。しかし、その程度で落ち込む程最強ないずなはヤワではない。
「誰もいないようでござるな。でも、昔は人が住んでいたということは、何か記録や手がかりみたいなものが残されていてもおかしくないでござるよな!」
 むしろここからが始まりだ、と言わんばかりにぼろい壁を蹴り破ってみたり、腐ったタンスを斬り捨ててみたり、ひび割れた壺をかち割ったりしてみるが、情報は何もなく。
「そういえば、ここは漁村でござったな。ならば、まだ使える船があるかも知れないでござるな!」
 散々荒らし回り、その途中で見つけた写真や大漁旗を思い返した彼女は村のはずれ、海岸へと出てみるが……突如飛来する銛を叩き切り、すぐさま背を向けて走り始める。
「船はあったでござるが、敵もいたでござるか……おのれ、拙者が探索で疲れてさえいなければ最強な刃でカッコよく倒してやるところでござったのだが、いや、仕方ないでござる!」
 チラと後方に目をやれば、夜の海に揺れる漁船が迫って来ていた。接岸するなり普通の四肢に加えて四本の腕と背中から上に向かって生えた二本の足を持つ屍がのそり、のそり、と上がってくる。
 さざ波に紛れて聞こえるうめき声と、曇り空からわずかに差す月明かりに揺れる真っ赤な眼光。追手をはるか後方に引き離した彼女はひとまず森の中に姿を隠す。
「最初の接舷場所が、こっち側なら最初から戦闘になったのでござろうか? いや、拙者達が来たから警戒の為に船を出したのでござるな。さすがにあの数が相手では……とにかく、救援が来るまでは下手に動けないでござるな」
 少女は愛刀を抱き空を見上げる。月は厚い雲に隠され、わずかに残されていた淡い光は闇夜に飲み込まれていった。

「皆、良く聞いてね」
 大神・ユキ(元気印のヘリオライダー・en0168)は真剣な眼差しで番犬達を見回した。
「月喰島の調査に向かったケルベロスからの連絡がなくなったの。ここを発見したって連絡があった後に途絶えたんだけど、ドラゴン配下の敵が島内に隠れてたみたい。詳しい状況は分かんないけど、調査に向かったケルベロス達が、バラバラになって島内に隠れようとしている事がわかったよ」
 ユキは地図を広げて、本島から月喰島までを指でなぞる。
「ヘリオンなら月喰島まで1時間くらいで救援に向かえるから、皆には隠れてるケルベロス達の救援に向かってほしいの。でも……」
 不安を表すように、彼女の耳が伏せてしまった。
「敵の情報とか、島の状況までは詳しく分かってないから、現地のケルベロスと合流して確認してもらうしかないの。それから、島へはヘリオンから降下してもらうんだけど、竜十字島のドラゴンを刺激しないように、すぐに離れなきゃいけなくて……」
 仲間を助けに行くはずが、自分はすぐに逃げなくてはならない。その事実に少女は胸を押さえて俯くが、すぐに顔を上げた。
「でも、安全が確保されればすぐに迎えにいくし、もし本当に皆がピンチの時は、必ず助けに行くから……!」
 決意を込めた強い瞳を向けて、少女は続ける。
「さっき言った通り、現地の状況はほとんど分かんないの。まずは隠れてるケルベロスとの合流を優先して、情報を共有してから調査に当たってね。それと、島の電波状況は不安定みたいで、多分無線の類はアテにならないよ。他の部隊と連携するより、このチームで何ができるかを考えた方がいいかも……皆、必ず帰ってきてね?」
 最後に告げるヘリオライダーの瞳には、信頼と不安が入り交じっていた。


参加者
シルク・アディエスト(巡る命・e00636)
ジン・フォレスト(魅猿為我猿機械猿・e01603)
滝川・左文字(食材・e07099)
端境・括(鎮守の二挺拳銃・e07288)
ユイ・オルテンシア(紫陽花の歌姫・e08163)
紗神・炯介(白き獣・e09948)
童子切・いずな(最強にかっこいい最強な拙者・e12222)
シルヴィア・アストレイア(祝福の歌姫・e24410)

■リプレイ

●少女が照らすは夜の海が灯台の如く
「……ござ?」
 童子切・いずな(最強にかっこいい最強な拙者・e12222)の耳が揺れた。身を隠す木の枝葉が奏でるせせらぎ、遠方より届く波の旋律、夜風が運ぶ……ヘリオンの声。
「来たでござるか……」
 木の葉の隙間から遠方を覗う……見えた。敵に勘付かれるリスクを覚悟の上でライトを点灯、振り回して存在をアピール。いずなからの合図に気づいたヘリオンが旋回、彼女の付近で番犬達を降下させ……。
「―――!?」
 二つの人影が空中で反転、空を滑っていく傍ら、若干一名、口にガムテ貼られてジタバタしてるけど、気にしてはいけない。彼は降りたんであって、落ちたんじゃないから(多分)大丈……ズバン!
「大丈夫かのー?」
 余裕をもって着地した端境・括(鎮守の二挺拳銃・e07288)が狐のウェアライダー型の穴に向かって声をかけてみる。ナスカの地上絵っぽく綺麗に自分の形にくりぬいた滝川・左文字(食材・e07099)は高所恐怖症故の絶叫を防ぐためのガムテを剥しながら、プルプルしつつ這い出して来る。
「だからヘリオンは嫌なんだ……!」
 仕方ないじゃない、陸路がないんだもん。船? 知らない子ですね。
「これは、罠にかかった狐で鍋の流れでござるか?」
 ユイ・オルテンシア(紫陽花の歌姫・e08163)とシルヴィア・アストレイア(祝福の歌姫・e24410)に抱えられて運ばれて来たいずながじゅるり。
「俺の耳は厚揚げじゃないって!!」
「あぁ、尻尾はまた生えてくるお約束が……」
「ないよっ!?」
 まじまじと尻尾を見つめる紗神・炯介(白き獣・e09948)から隠すように、左文字がひしっと抱きしめた時だ、かさり。何かが迫る音に一同が身構えた。
「やれやれ、団体さんがいらしたようだな!」
 ジン・フォレスト(魅猿為我猿機械猿・e01603)はいずなを庇うように前へ。吹き抜ける潮風が連れてきたのは磯の香と……無数の屍達。番犬の三倍はいようかという数に、シルク・アディエスト(巡る命・e00636)が苦笑する。
「やはりというか、照明を使うとすぐに見つかっちゃいましたね……」
「無事合流できたお祝いに一曲! ……ってわけにもいかないねぇ、これは……」
 せっかくギターを構えたものの、奏でるには至らないシルヴィアが苦い顔。
「もしかして、さっき私たちが空飛んでたことも関係してる?」
「いずなさんのライトで場所を知られた所に、私たちが飛んだことで目立ってしまったから、居場所を教えてしまったのかも……?」
 首を傾げるユイに、炯介はまぁ待て、と言わんばかりに首を振る。
「過ぎたことは気にしても仕方ないし、このくらいは覚悟してきただろう? 今は他にやることがある」
「お? なんじゃー?」
 敵に注意を向けたまま、目だけで彼を見る括への炯介の答えは。
「逃げるんだよぉ!!」
「そういえばそんな作戦じゃったな!?」

●暗き森の逃走戦
 数が違い過ぎる敵を前に、援軍の危険性。その場で戦うのは得策ではないと判断した番犬達は海岸線から離れるように森の中へ。先導するシルクの前で木々が道を開け、誘導されるようにして二つの一群が駆けていく。
「いつまでも逃げているわけにもいきませんね」
 シルクの姿が花弁を模したような盾とアーマードレスに変わり、そこだけが花園であるかのように菫の花が咲く。無数の屍の一体が何かに引き寄せられるようにウロウロし始めた。
「さぁ、いらしてください? 不死たるデウスエクスが死後の姿をとるなんて、なんという皮肉……フフフ」
 お淑やかに微笑むシルクだが、目が笑っていない。命が散り、継がれ、次なる命の糧となる。生命の連鎖こそ美しいとする彼女にとって、ゾンビデウスエクスなど、醜悪のフルコースに等しいのだろう。盾を構えているにもかかわらず、それが巨大な鈍器に見えてくるほどの、殺意。
「あっ……」
 と、ずっと一人で耐えてきた疲労がたたったのか、いずなが木の根に躓き、倒れこそしないが屍に追いつかれて……。
「行かせませんよ?」
 伸ばされた腕の前に、シルクの盾が滑り込んで吹き飛ばす。花弁の鎚と化した防具に殴られた隙にいずなはすぐに駆けだすが、どうも調子が上がらない。
「いずながピンチ!? はっ! そういう事かっ!!」
 ジンのリュックから団子が生えた。なんかこう、ニョキッて。
「いずなよっ! 受け取れぇ!!」
 そして団子をシューッ!
「はっ! みたらしの香りでござるッ!?」
 その甘しょっぱい匂いに釣られて目を輝かせる幼い侍が跳び、パクッ。その動きが目についたのか、団子を幸せそうに頬張るいずなの背後に屍が迫るが。
「食事の邪魔とは無粋だぞ!」
 ジンのリュックからチェーンソーが伸び、木を素早く伐採、削り、重力鎖を込めて構える。
「君にはこの丸太を進呈しよう! 遠慮はいらん、受け取れぇ!!」
 丸太という名の大槍は屍の頭を吹き飛ばし、その身を瓦解させた。
「一体一体は連携すれば軽く葬れそうだが……」
 その様子を見ていた炯介は苦虫を噛み潰したように。
「いくらなんでも数が多すぎる……!」
 数にして、番犬一人で三体ほど相手にしてもまだ足りない。ここに増援でも呼ばれたなら……そこまで思案した時、敵の一部が後退していくのが見えた。
「逃げた? いや違う、『引いた』のか……こいつらにも役割的な物がある、ということか?」
「む、そういえばこやつらには頭のような者がいたでござったな」
 口の周りにみたらしをくっつけたいずながふと、自分が見た物を思い出し、迫る攻撃を防ぎ、いなしつつ共有。
「てことは、こいつらは普通のゾンビと違って思考能力と組織力を持ってる可能性があるな……」
 走りながら、左文字は敵の方を向いて。
「腐ってるくせに物を考える頭があるってどういうことだよ? あれか? 男同士女同士の恋愛物の薄い本ばっか書いたり読んだりして部屋に引きこもってカビついた腐れ頭か? 来るな寄るな近づくな! ただでさえ生臭いのに腐臭が混ざってカオスなのに頭の中身からも腐敗臭とか臭ェんだよ!!」
 突然の暴言。聞いてんだか聞いてないんだか分からないが、ものすごく左文字を追いかけてくる個体が現れた。
「……アレは挑発に乗ったんだよな? そういう目で俺を見てるんじゃないよな!?」
「最近の左文字はそういう意味でも美味しく頂かれてしまうんじゃな……」
「俺は食い物じゃないしソッチ路線でもねぇよ!?」
 ツッコミをスルーして括は古めかしいオートマチックを構える。
「安心せい、わしはどんなお稲荷さんも受け入れる系神様じゃ……」
「何も安心できないんだけど!?」
 女神たらんとした優しい微笑みと共に屍の足元を狙う牽制射撃を行うが、数が多すぎる故にあまり効果がないようだ。
「効いとらんの……やはり堅実に仕留めていくしかあるまいよ!」
 ポーチから取り出したのはリボルバー。襲い来る四肢に弾を撃ちこみ鈍らせて、その眉間めがけて機関拳銃の銃口を向ける。
「死してなお弄ばれる御魂に、せめてもの救済じゃ」
 引き金を握れば、後は宿った荒魂が動く。御業に鎮魂の祈りを込めて、もう痛みすら感じないかもしれない犠牲者へ、吹き抜ける風の如く弾幕が突き抜けた後には形も残さない。
「元が人かどうかわからないけど、せめて安らかな眠りを、か……とはいえ」
 炯介の目が撤退、討伐してなおも番犬の二倍以上の数がいる屍を滑る。
「全員寝かし付けるのは骨が折れそうだな」
 肩越しに食らいつこうとする頭をステッキの持ち手で打ち据えて、振り回すように手の中を滑らせてグリップを握り、振り返りもせず顎を突き砕くのだった。

●星空の下に二人は歌う
「そろそろでしょうか……」
 敵の数が安定し、もう撤退しようとしない。これ以上走ったところで、さほど効果はないだろう。足を止めて、ユイが息を吸った。
「今日の星空は少し寂しくて 隣の空白が心を締めつけて……」
 奏でるそれは、独りきりの夜に見上げた空。ユイの声に応えるように、星が煌めく。
「君もどこか遠い空の 同じ星見てるかな……」
 声は重力の鎖を引いて、人を繋ぐ糸となる。前衛で傷ついた番犬を癒し、無事を願う祈りを加護に変えてその身を包んだ。
「歌……それなら、私だって!」
 シルヴィアの指が弦を駆ける。奏でるリズムは留まる事を知らない蛮勇の歌。互いが互いを守らんとする意思を具現するように、ユイの旋律と重なり、加護をより強固な物へ。
「ただの歌と侮らない事です」
「私たちの声は、皆を守るんだから!」
 呼吸を合わせ、歌い続ける二人。声色に釣られてそちらに注意が向く屍だが。
「余所見するとは言語道断でござる!」
 二本目の団子を口にくわえたいずなが愛刀の鯉口を切った。
「数は多かれど、所詮は屍。団子を食べ終えるのが先か、貴様らを斬り捨てるのが先か、いざ!」
 抜いた刀の切っ先を地面に、彼女の背後に巨大な般若の幻影を映す。屍はたたらを踏むが、いずなは顔をしかめた。
「かかりが甘い……やはり、一閃できる程度の数でなければ……!」
 【鐚】。それは本来、殺気を具現させるのではなく、刃に乗せて斬痕から直接叩きこみ、魂に恐怖を刻み込む技。薙ぐことを良しとしているにしても、その一太刀では届かない程の数が相手では、精神効果も薄れてしまう。二の太刀に向けて納刀するいずなに代わり、シルクが紫の盾を起こした。
「ならば一体ずつ、命の連鎖に導いてあげればよいだけのことです」
 花弁の形をしていたそれは、捻じれ、細長く姿を変えて蕾状の砲塔へと姿を変える。
「さぁ、眠りなさい。その命を無限の連鎖に返すのです」
 撃ち出された砲弾もまた蕾のような貫通性の高い形状をしており、屍の胴体に深く突き刺さり、花開く。
「哀れなる者よ、新たなる開花の時まで、しばし種となりなさい」
 開花する砲弾に命を奪われ、屍が朽ち果てて地面に還っていった。散りゆく命が次なる命への糧と化したところで、木々の隙間を一本の鎖が駆けまわる。複雑に張り巡らされる鎖は屍の腕を、脚を、腰を、首を絡め、吊上げた。
「悪いな、すぐに終わらせるから……」
 左文字の声だけが森に木霊して、一陣の優しい風に運ばれ……異形の首が落ちた。いつの間にか遺体の背後に立っていた彼は鎖鎌を胸に当て、そっと黙祷を捧げる。
「はやる気持ちを抑えても 跳ねる体は止められない 扉開いて手を繋いで さぁ、一緒に……」
 皆と過ごすささやかな日常を想うユイの声が、番犬達に帰る場所を想わせて、得物を握る手に力を籠らせる。
「そうだ、僕たちに帰るところがあるように、君たちにも逝くべき場所があるのだろう?」
 コン。ステッキの先端が、屍の眉間を叩いた。
「いつになるかは見当もつかないが……」
 屍の足元に魔法陣が描かれ、現れたのは巨大な二本の白骨化した腕。両側から叩き潰すようにして鷲掴みされた屍からメキメキと悲鳴があがる。
「地獄で会おう」
 上空から赤黒い炎に包まれた巨大なしゃれこうべが落ちてくる。骸の顎は腕ごと屍を食らい、鈍く乾いた音を響かせて消えていった。
「ひとふたみぃよぉいつむぅ……なな」
 数える毎に屍を取り囲むように地面を撃つ括。六発式の弾倉に、特別な七発目を込めれば彼女と埋まった弾丸が結ばれて陣を描き、弾丸が御業の分身と化す。
「すまぬが、此方側に仇成す輩を見過ごせんのが神様というモノなのじゃよ」
 カチリ、シリンダーが七発目を撃鉄の前に運び、括と分身、計七人が銃口を向けた。
『葦原の地から去るが良い!』
 七つの声に、一発の銃声。浄化された御魂が天に還っていく……。
「いずなよ、一気に片付けるぞ!」
「承知!」
 新手の丸太を構えるジン。それにいずなが飛び乗り、ぶん回し、一体を丸太で叩き潰す。舞い上がる粉塵で視界が塞がれる中、白刃が煌めいて。
「む、団子に砂が……」
 空腹に襲われ始めたらしいいずながちょっと悲しそうな顔をする背後、袈裟切りの斬痕を刻まれた屍が崩れ落ちていく。
「この数なら……!」
 シルヴィアの胸が、肺に溜められた空気で膨らむ。
「みんなまとめて、私の歌を聴けーっ!」
 絶叫と共に、ギターをかきならして紡ぐ言葉は葛藤の肯定。けれどそれは、立ち止まることを良しとするのではなく。
「迷って 困って 転んで その脚だけ止めないで!」
 重力鎖と共に、心を乗せたそれは聞く者の胸を打つ。たとえ、屍であろうとも。
「答えなんてなくても 助けなんてなくても その一歩は無駄じゃない! 今、踏みだすんだその先へ……」
 感化された異形はボロボロと崩れ去り、シルヴィアがフゥ、と呼吸を整えた時だった。死に損ないが、腕を伸ばしていて。
「え……?」
 迫るのは、乾き、しわがれた冷たい手と……串。屍の思考が一瞬止まる。なんで串? なんで俺の手に刺さってるん? そんな雰囲気と共に、刹那動きが鈍る。
「最強な拙者の前で、その程度の速さで攻め込めると思ったら大間違いでござる」
 団子を食べ終えた串を屍に向けて吹矢のように吐きつけたいずな。その刃が交差する煌めきを残して両の腕を落とし、引き絞られる。
「油断一瞬、怪我一生。戦場で気を逸らすのは愚か者のすることでござる」
 突き出された刀は顎から頭蓋を貫通。最後の一体にトドメを刺した。

●腹が減ってはなんとやら
「……以上が、拙者の見てきた物でござる」
 両頬を団子で膨らませて情報を吐き出したいずなの頭に、左文字がそっと手を添える。
「ここまで一人でよく頑張ったな」
「拙者は最強でござるからな!!」
 ぽむぽむ、ドヤァ。同じ狐の獣人とあってか、親子のようにも見える光景に炯介は微笑みながら追加の団子を並べていく。
「ふむ、こうしてみるとまだまだ分からないことが多いねぇ……さっきの相手を見るに、行動範囲が限定的なことも予想できる。色々と調べたいねぇ……」
「なんでそんなこと分かるの?」
 料理セットを広げて、簡単に調理を始めるシルヴィアに、炯介は苦笑。
「さっき帰った屍がいただろう? あれが証拠さ。もし行動範囲が決まっていないのなら、今頃援軍が来ているし、もっと素早く引いただろうね。もし援軍を呼ぼうとしてたなら、見逃したりしないよ」
 この男、乱戦状態の中でずっと離れていた敵を観察していた!
「あちらの頭とやらも気になるが、やはり最初に派手になり過ぎてしまったからな……」
「うむ、情報が足りぬの……こうなれば、その頭とやらが出たという漁村を調査か……にゅお!?」
 赤飯おにぎりを頬張るジンに、彼からもらった生姜ベースの中に甘酸っぱさを残した、ピリ辛炭酸に括の耳が跳ね、一同にユイが地図を見せた。
「現状と、頂いた情報をまとめてみました。いかがですか?」
 物凄くわかりやすく、綺麗にまとまっている。が。
「こ、個性的ですね……」
 添えられた独創的な絵を前に、シルクが苦笑するのだった。

作者:久澄零太 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 9
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