秋の風誘う者

作者:幾夜緋琉

●秋の風誘う者
 9月も始まり、まだまだ暑い日が続く頃。
 山梨県は富士河口湖町の、とある小さな神社では、少し早い例大祭……神社の秋祭りが開かれようとしている。
 とは行っても、そんな秋祭りへと訪れる人派、周囲の町内会の人位で……アットホームな町のお祭り。
 ……しかし、そんなお祭りに、招かれざる者。
『ほー、これがお祭りですかー。よーっし、それじゃー思いっきり楽しみますヨー!!』
 何だか独特な口調の、浴衣を着た女性。
 それならまだ普通かも知れない。
 でも、彼女はマグロのかぶり物、の様な物を被っている。
 ……そして彼女は、そんな奇妙な出で立ち。
 祭り会場に現れるやいなや、出て来た子供達に。
『わー、なんだあれー。まぐろのかぶりものしてるー』
『へんなのー。あははー』
 と笑われると、それに。
『こらーー! 笑うなー!! 笑うと、痛い目見るぞー!』
 と、顔を紅くして怒る彼女。
 そんな彼女の言葉に、少年達は耳を貸す事無く……そして、彼女は。
『もー、怒ったぞー!!』
 と、その手にゾディアックソードを構えて、子供達、そして大人達へと、剣を振り回し始めるのであった。
 
「ケルベロスの皆さん、集まって頂けた様ッスね! 早速ッスけど、説明、始めさせて貰うッスよ!」 
 と、黒瀬・ダンテが、集まったケルベロスらに一礼すると、早速今回の依頼の説明を始める。
「どうやらエインヘリアルに従う妖精8種族の一つ、シャイターンが行動を開始した様なんッス」
「今回動き出したのは、マグロのかぶり物をしたシャイターンの部隊。彼女達は日本各地の祭り会場を襲撃し、一般人を殺害してグラビティ・チェインを得ようとしているらしいッス」
「彼女達が祭り会場を狙う理由は分らないッスけど、お祭りという場を利用して、効率良くグラビティ・チェインを収奪する作戦なのかも知れないッスね」
「シャイターンの彼女達……仮にその外見からマグロガールと名付けてるッスけど、彼女が現れる祭り会場へ先回りし、事件を未然に防いで欲しい所ッスよ!」
 そして、更にダンテは。
「このマグロガール。得手としている武器はゾディアックソードの様ッス。このゾディアックソードを、ぶんぶんと振り回して攻撃してくる様ッスね」
「又、この他に、砂の嵐を周囲に撒き散らしての催眠攻撃と、掌から炎の塊を作りだし、それを放つという攻撃がある様ッス。一撃毎にかなり重い一撃を思って居る様ッスから、油断大敵ッスよ!」
「又、注意しておく点としては、先に祭り会場の人を避難させることは出来ないッス。そうすると、マグロガールが別の場所を襲ってしまう為ッス」
「とは言えマグロガールは、ケルベロスの皆さんを倒す事を優先と考えて居る様ッスから、多少挑発を仕掛けつつ、人の少ない場所へ誘導すれば、被害を抑える事は可能ッスよ!」
 そして、最後にダンテは。
「総合的な戦闘能力という意味では、マグロガールの戦闘能力は余り高くないッス。とは言え阻止に失敗すれば、祭り会場が惨劇の会場となってしまうッス。つまり、負ける事は出来ない闘いッスから、どうか宜しく頼むッスよ!」
 と、拳を振り上げ、皆を送り出すのであった。


参加者
星喰・九尾(星海の放浪者・e00158)
萃・楼芳(枯れ井戸・e01298)
飛鷺沢・司(灰梟・e01758)
燈家・陽葉(光響凍て・e02459)
磯野・小東子(球に願いを・e16878)
スノー・ヴァーミリオン(深窓の令嬢・e24305)
英桃・亮(謌却・e26826)
仙道・風(しゃべくり鎌鼬・e31694)

■リプレイ

●秋風に……
 山梨県は富士河口湖町。
 町にある、とある小さな神社において開かれる例大祭……神社の秋祭り。
 そんな大きくない例大祭は、町の人達にとっては大事で、ささやかなお祭り。
 でも……そんなお祭りに現れたのは、マグロの被りものをした女性、マグロガール……。
「……シャイターンって、こんなのもいるんだね……いやまあ、どんな奴であれ見過ごす訳には行かないんだけどさ!」
 と、磯野・小東子(球に願いを・e16878)が苦笑気味に拳を握りしめると、それに頷く燈家・陽葉(光響凍て・e02459)、星喰・九尾(星海の放浪者・e00158)
「本当迷惑な奴らだよね。きっちりと倒さないと!」
「そうじゃな。しかしマグロ……というよりも若干深海魚みたいじゃしなぁ」
 そんな仲間達の言葉に対し、スノー・ヴァーミリオン(深窓の令嬢・e24305)が。
「しかしマグロガールねぇ……? 何それ。マグロのお寿司になりに来たお魚の妖精さんとかじゃないの? 実は……」
 と、どこか訝し気味に目を細める。
 ……でも、マグロガールが現れるのは真実な訳で。
「……まぁ、確かにふざけた敵ではあるな」
 と、髪を掻きながら言う、飛鷺沢・司(灰梟・e01758)に、仙道・風(しゃべくり鎌鼬・e31694)と英桃・亮(謌却・e26826)が。
「そうでござるな! きししっ! そんなマグロガールの前でぴゅぴゅぴゅーんと駆け抜けて、格好良く敵を粉砕でござるよ!!」
「そうだね……と、そろそろ時間かな? あ、戻って来た」
 と上空を見上げる……すると、翼飛行で跳んで、周囲を確認していた萃・楼芳(枯れ井戸・e01298)が降り立つ。
「……ふう。神社裏手だろうな……人気の少なそうな所は」
「了解。それじゃ、現れたらそこに誘導する事にしようか」
 と頷き合い、そして小東子も。
「そうだね! さあ、いくら、頼んだよ。あんなロクデナシマクロより、あんたの方がずっとイケてるからね!」
 小東子の言葉に、凶器を振り上げ、えいえいおー、と振る舞うテレビウムのいくら。
 そしてケルベロス達は、マグロガールの被害が出る前に急ぎ向かうのであった。

●湖を見据え
 そして、ケルベロス達は、その例大祭会場へと到着。
 ……ささやかなお祭りが行われている神社の境内には、子供、大人含めてとても楽しんで居る空間。
 そんな空間に、ケルベロス達がやって来ると……次の瞬間。
『わー、まぐろー、まぐろーー!』
『だからぁ、まぐろって言うなぁあ!!』
 そんな子供と、まぐろガールの叫び合い。
「あれか……やけに目立ってるな」
 と肩を竦めながら亮がぽつり……。
 そんな叫びに対し、ケルベロス達は即座に。
「みんな大丈夫、落ち着いて。僕たちはケルベロス」
「みんな、あっちに移動して欲しいな。そうするとアタシたちも嬉しいんだよ!」
「そうそう。あっちにもっと面白いオがあるからね」
 陽葉、小東子、亮がフェスティバルオーラなどを使い、皆の避難方向を指示……そしてスノー、司は、逃げたところをキープアウトテープ等を張り巡らすことで、更に人気を排除していく。
 対し、まぐろガールには。
「「おお、そこの女子!! ちょっと、ちょっといいでござるか!!」
 と風が親しげに話しかける。
 早々に挑発していた子供達は逃げてしまい、もうこの場には居ない……はぁ、はぁと肩で息をしながら、ケルベロス達に。
『何よ、貴方達!!』
 と苛立ち気味に叫ぶ。
 そんなマグロガールに。
「そのマグロ頭! とっても素晴らしいでござるよ! そうそう、あっちでマグロ美少女コンテストをやっているようでござるよ! 是非ともそのマグロガールさんには行ってみてほしいでござる!」
 目を爛々と輝かせながら言う風……それにマグロガールは。
『何ですってぇ? マグロガールコンテストっ!? ……それ、面白そうねっ!』
 ……そんなコンテストを、本当に信じてしまったマグロガール。
 一般人達が避難する方向とは逆方向へと向かい……そして、神社の境内の裏手の方へと向かう。
 ……そして、マグロガールが到着する、人気の無い所……当然、そんなコンテストなんて開かれている訳がない。
『あれ? 何よ、ここ……コンテストは!?』
 と、きょろきょろ周りを見渡している彼女に、司と亮が。
「何故マグロ……まぁ、好きだけどね。炙り焼きは美味しいよな」
「そうだな。炙り焼きね……」
 とぽつり。その言葉に。
『何言ってるのよ! それ、私への宣戦布告かしらっ!?』
 と顔を真っ赤にさせて怒るマグロガール。
「おっ……と、怒るなよ。短期は損気ってね?」
「うむ。そこまで頭に血が上っていると、冷静な判断が出来ぬぞ?」
 司と九尾の言葉。そして更に風が。
「そうでござるよー! 魚介類なんてきょうび流行んないでござるよ! 一人回遊してればいいでござるよ!!」
 と、笑みを浮かべながら言うと……キィィイィ、と色つやの良いマグロの赤みの如く、更に顔を真っ赤にさせて、そして傍らのゾディアックソードを抜く。
 ……でも、ケルベロス達は、そんなマグロガールに。
「久しぶりのマグロの解体と行きたいところじゃが……あれ、被り物を斬り取るとどうなるんじゃろうなぁ? ……ああ、あれか。無個性になって可哀想な事になるんじゃろうか? ……という事で、今日は刀を持ってきたのじゃ」
 と、そんな論理を展開させながら、九尾も日本刀を抜き、構える。
 何処か余裕の雰囲気を漂わせる九尾に……マグロガール、一瞬、一歩後ずさりするが。
『な……何よ何よ!! これは被り物じゃないわよっ!!』
 と怒りの声を上げて、手にしたゾディアックソードで攻撃を嗾ける。
 その一撃を、横から楼芳が。
「穿て、『四奪』!」
 と、カ式剄襲【四奪】を叩き込み、その軌道を逸らす。
 軌道をそらされ、攻撃失敗。くっ、と睨み付けるマグロガールに対し。
「それじゃあ始めるとするかの」
 と、九尾が刀を構え。
「……ぬしにこれが見切れるか?」
 と星喰流”霞”の一閃。続く司も。
「逃げるなら、今のうちだよ」
 と、零雷。
 ……クラッシャー二人の、強力な一撃が立て続けに決まり、がっつりとマグロガールの体力が削れていく。
 そして、削れた後に、続くスノーが前衛陣に紙兵散布を配り強化。
 ……そして、一般人を避難させていたメンバーも、ターンの終わり頃には合流。
「お待たせ皆! さ、ちゃっちゃと片付けて縁日に行こうじゃないか!」
 と小東子の掛け声に皆も頷き、そしてメディックの亮が、前衛に盾アップのサークリットチェインを飛ばしていくと、一方スナイパーの陽菜、小東子、風が稲妻突き、ゼログラビトン、スターゲイザー。
 そんな連携攻撃に、少しずつバッドステータスが蓄積していく。
 対しマグロガールは、そんな攻撃をどうにかかいくぐる様にしながら、更に反撃。
 ゾディアックソードを大きく振り回すマグロガール……大振りの攻撃は当れば痛い。
 ……しかし、大振り故に、攻撃の命中率は低い様で。
「そんなに大きく振り回していては、当らぬぞ?」
 と九尾が挑発……更に怒り、命中率は下がり、攻撃力がアップする、その繰り返し。
 ……そんな挑発と攻撃を繰り返して行くこと、十数分。
『はぁ、はぁ……く、くううう!!』
 と、流石に疲れが溜まり、肩で息をする彼女。
 そんな彼女に。
「……そろそろ諦めたらどうかしら? もう、勝負は決まった様ですわよ?」
 とスノーの宣告。
 でも、当然ながらマグロガールは。
『うるさいうるさいうるさあああい!! 絶対に諦めないわっ!!』
 一層、言葉尻が強まる彼女。
 そんな彼女にふぅ、と肩を竦めて溜息を吐くスノー。
「そう……なら仕方ないわね。妾の一撃受けてみなさい。気持ち良いわよ」
 と、卑屈の囁きを囁き、一瞬の油断を誘い出すと……次の瞬間、楼芳のフロストレーザー。
 対し、いくら、ウルは両者、楼芳の回復を行いつつ、九尾が旋刃脚で斬り付ける。
 その一閃に、がくっ、と腰から崩れ落ちるマグロガール。
 そして……。
「……炙り焼き。ミディアムは、ちょっと難しいな……ウェルダンでいこう」
「確かに……俺も火力調整は難しいね。じゃあ……仕方ないな」
 と、司と亮の二人がダブルドラゴニックミラージュの一閃。
 その攻撃に、マグロガールの身体は大きな炎へと包まれ……そして次の瞬間、マグロガールは体中から煙を上げて……そのまま崩れ墜ちて行くのであった。

●秋の風の下に
 そして……マグロガールが消えた跡。
「ふぅ……終わったねー。みんな、お疲れさま」
 と陽葉がにこっと微笑みながら、皆を労うと、それに小東子が。
「そうだね。でもお祭りの前に一仕事をしなきゃ。さ、ヒールだよ!」
 とにっ、と笑いながら小東子、そしてスノーがヒールをし始める。
 幸い神社の裏手だから、被害もそこまで多くは無い訳で……一通り片付けを行う。
 そして一通り終わった所で。
「さて……これで茉莉も再会か。俺も少し、楽しんで行こう」
 と司の言葉に、そうだなと頷く楼芳。
 そして傍らのボクスドラゴンのウルが、くいくいっ、と楼芳をつつくと。
「ん……ああ、そうだな」
 と楼芳はウルに小銭入れを紐で括る。
「ほら、行ってこい」
 と送り出す。ウルはこくっ、と頷き、とててて、と祭り会場に走って行く。
 そんなウルの後ろ姿に、思わず笑みがこぼれる仲間達……テレビウムのいくらも、羨ましそうに。
「大丈夫。ほら、いくらも行くよ!」
 と小東子はいくらの手を引いて、ウルの後を追いかけるように祭り会場へ。
 ……そんな仲間達とサーヴァントの動きを後ろから眺めながら。
「さて、祭りじゃ。楽しまねば損というものじゃろ? いなり逗子はあるのじゃろうか?」
「んー……確か無かったと思うでござるよ?」
「そうか、残念じゃ。でも楽しみたいのは変らぬ。さあ、行くとしよう」
「そうね。焼きそば~たこ焼き~綿飴~。館で一人で食べるんじゃなくて、こういった沢山の人が居る場所で食べるのもまた趣があっていいわね」
「そうでござる。お祭りはやっぱり心がうきうきするでござるな! あ、ヤキソバ大盛りで、でござるよ!!」
「……太るわよ?」
「大丈夫でござる。それ以上に運動しているでござる!」
 そんな会話を交しつつ……ケルベロス達は、お祭り会場へと戻っていくのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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