エクスガンナー・ゼロ~グッドナイトフィーバー!

作者:螺子式銃

●深夜、工場にて
 東海地方の、とある工業地帯。
 張り巡らされたパイプ、巨大な煙突から漂う白煙、独特のフォルムを見せるタンク達。
 深夜でも煌々と照明を輝かせ、稼働する工場群は一種異世界のように鮮やかな夜景を見せている。
 だが、――無慈悲な騒音が、突如その景色を乱した。
 銃声、爆音、そして鳴り響く警報。 
「さァ、楽しい略奪の始まりだ。根こそぎ土産を貰ってこうぜェ! 思い切りブチ壊せ!」
 両手に銃を構え、コートを靡かせるダモクレス――エクスガンナー・ゼロは先陣を切ってその身を躍らせる。配下達も一斉に従い、工場へとなだれ込んでいった。

 行われたのは、一方的な略奪に他ならない。
 半壊した工場の一室は広く、地面にはベルトコンベアが、天井にはダクトやパイプが張り巡らされている。
 何かの部品を製作する工場だったのだろう、巨大な機械が並ぶ一角は、念入りにゼロと配下のゼータにより解体されていた。
「オーケィ、上出来だ。一体、運搬に回れ。他の連中は、」
 思考するよう、ゼロは周囲を見渡す。ゼータ一体で、今回手に入れた機械部品を運ぶことは叶うだろう。鳴り響く警報は依然として喧しく。
「運搬が終わるまで警戒に当たる。部品の持ち出しは最優先だ、――念の為、な」
 そうして略奪の跡地にエクスガンナー・ゼロと、二体の配下が残された。
 周到にゼロは首を巡らせ、状況を監視する――。

●襲撃の契機
「今日もお疲れさま。――じゃあ、始めようか」
 招集に応じてくれた皆へと一礼すると、トワイライト・トロイメライ(黄昏を往くヘリオライダー・en0204)は資料を手に口を開く。今回彼が説明するのは、グランネロス強襲に関連するダモクレスの事件だ。
「ダモクレスの移動拠点、グランネロス。――ケルベロス達の活躍により、撃破が叶ったのは記憶に新しい。今回は、この事件の生き残りである、エクスガンナー達の動向が判明した」
 トワイライトは、静かに状況を説明する。
 エクスガンナー達は、グランネロス撃破により中断された、エクスガンナー計画の再始動を目論んでいる。そして、その為に必要な『機械部品』を略奪しようと、工場地帯の襲撃を行った。
 襲撃後は配下によって目的の機械部品を運搬、エクスガンナー本人は、残りの配下と周辺の警戒に当たるとのこと。尚、工場から既に一般人は避難を終了している。
「エクスガンナーの撃破が叶えば、この計画を阻止することが出来る。よって、エクスガンナーと交戦、撃破をお願いしたい。今回、判明したのはエクスガンナー達の一人、エクスガンナー・ゼロの襲撃事件だ」
 格闘と銃撃を得手とするエクスガンナー。一度は、ケルベロス達と交戦し、不利を悟って撤退したダモクレスだ。
 エクスガンナーの襲撃後、配下が運搬行動にあたった時点でケルベロス達が攻撃を仕掛ければ、相手の戦力を減らした状況で交戦が叶う。
 よって、このタイミングで攻撃をしてほしいと告げてから、トワイライトは皆の顔を改めて見遣る。
「知っての通り、彼は強敵だ。配下もいるとなれば、撃破はそう容易いことではないだろう。作戦としては今回の攻撃では無理にゼロ本人の撃破を狙わず、配下を減らすことを優先するという手もある。
 配下の一体が、部品の運搬に専念。ゼロと残りの配下達は運搬を最優先に支援する為、ケルベロス達が交戦を仕掛ければ応じるだろう。
 十分間は運搬する配下が離脱する時間稼ぎとして戦闘を行い、その後、戦線を離脱すると予測される」
 エクスガンナー・ゼロは二丁拳銃を操り、火力と命中力に長ける生粋の射撃手だ。
 そして、彼の部下としてエクスガンナーゼータが行動を共にしている。ゼータは量産機だが、ゼロの指示に従い思考能力を持ちチームでの連携を行う。
 また、攻撃のタイミングについてだが、機械部品の運搬が始まる前に交戦をすると、ゼロ本人と配下二体に加えて、運搬用の配下も敵勢力として加わる為に総力戦の様相を呈してしまう。
 逆にタイミングが遅くなると、運搬作業が進んでいる為、ゼロ達が足止めに費やすべき時間が減少する。つまり、撤退する時間も早くなるということだ。
 更に、運搬している配下を攻撃した場合は、全員が合流し交戦を行う為、結局はやはり総力戦となる。
「――何処までの成果を狙うかは、君達に委ねられる。手堅く配下を減らしていくのも、いきなりゼロの撃破を狙うのも自由だ。
 前回、ゼロを劣勢に追い込めたお陰か、配下の数は少なくはあるから撃破自体は困難だが不可能ではない。ただ、容易に挑めるものでもないだろう。
 どうか、君達が悔いの無いよう。そして無事に帰ってくるように。――いってらっしゃい」
 トワイライトは最後に皆の顔を一人ずつ見渡して、穏やかな笑みでケルベロス達を見送る。


参加者
天壌院・カノン(オントロギア・e00009)
ナコトフ・フルール(千花繚乱・e00210)
百鬼・澪(澪標・e03871)
鋼・業(サキュバスのウィッチドクター・e10509)
マユ・エンラ(継ぎし祈り・e11555)
ジェミ・フロート(紅蓮風姫・e20983)
響命・司(霞蒼火・e23363)
宝来・凛(鳳蝶・e23534)

■リプレイ

●邂逅
 煌々と照明が輝く室内、エクスガンナー・ゼロのアイランプが瞬く。銃口は、人の気配の方に向けられていた。
 来襲に気づかれているのは明らかと皆が駆け出す刹那、ナコトフ・フルール(千花繚乱・e00210)がヒヤシンスを放る。
「早撃ちの『勝負』と洒落こもうじゃないか。主観だが、好きそうだろう、そういうの?」
 花が地に落ちるより先に指先で作った銃は、真っ直ぐ花を指し示して。「BANG!」と唇が気障ったらしく音を紡ぐ。
「嫌いじゃねェぜ、相手が――番犬なら」
 応じるゼロに、侮りはない。むしろ相対を楽しむような素振りは、先日の交戦の成果か。
 昂揚じみた笑みを浮かべるのは、こちらも。マユ・エンラ(継ぎし祈り・e11555)が先陣を切って走り出す。
「よお、押し込み強盗は犯罪ってもんだぜ? 持ってったもん全部返すか、手前らの命で代価を払っていきな!」
「地球のセオリーは知らねェなァ! 俺様が知ってんのは、殺せばタダってことくらいだぜ!」
 接敵に合わせてトリガーを引けば炎が舞い散り、前列を飲み込んでいく。
「行って――ください」
 燃え盛る紅に天壌院・カノン(オントロギア・e00009)の華奢な体が立ちはだかる。翼までをも焦がしながら、辛うじて作った間隙へと百鬼・澪(澪標・e03871)を逃して。
 澪は目礼で応じ、駆け寄る勢いの侭オーラを立ち上らせる。先日ぶりですね、と囁く姿はたおやかながら見据える青は凍てつくよう。
「先日は沢山銃弾をいただきましたから、その分沢山、お返しをさせていただきますね」
 編み上げるのは雷弾。ゼータが動き、ゼロから軌道を逸らすとすかさず次の攻撃が降り注ぐ。幾重にも竜の轟きが響き渡る!
「えらい派手にやってんなぁ、うちも混ぜてよ、ぶち壊すんは大得意やで。そう――あんたらの目論見を木っ端微塵に打ち砕くんは特に、ね」
「さて、じゃあ始めるか。ゼロ、お前は此処で仕留める」
 宝来・凛(鳳蝶・e23534)明朗な声と共に挑戦的に笑い、響命・司(霞蒼火・e23363)は首を竦めて淡々と敵を見据える。
 立て続けの二発がゼロの体を掠めるが動じた様子はない。動じるという感情自体、持ち合わせがないのだろう。
「今日は強敵よばるどぅーる! 気合入れていきましょ!」
 凛々しく表情を引き締めて、ジェミ・フロート(紅蓮風姫・e20983)が声をかけるとボクスドラゴンもブレスを吐いて応える。更に降り注ぐ砲弾は雷雨の如く。
 ゼータ達もまた動く。ディフェンダーと、ジャマー――、片方がゼロを修復する傍らで、絡めとる電子網を後衛陣へと投擲する。
「さぁて、景気よく頼むよ!」
「任せろ!」
 痺れた腕の代わり、オウガメタルは鋼・業(サキュバスのウィッチドクター・e10509)の意志に従い銀色の粒子を鮮やかに巡らせる。受け止め、マユが銀纏う光弾をゼロへ正面からぶつけに行く!
「おコンバーン! 俺俺、番犬の業だよ。ゼロちゃんに会いたくて来たって言ったら信じる?」
 業の陽気に踊る眼差しの奥――確かに灯る熱がある。知ってか知らずか、ゼロは彼に銃口を向けた。
「信じる」
 投げ出すような一言。即時、業に向けて無数の散弾がばら撒かれる。早すぎる弾道に半ば割り込むよう、猫が飛び出し全身を撃ち抜かれながらも気丈に羽根を揺らす。
「精々、――良い夜にしようぜエ!」
 番犬達の統制のとれた行動、狙い。それから導き出せる答えは、ひとつ。番犬達は戦力の削減でなく――ゼロの殺害に来たのだ。
 ならば、殺し合いを始めよう。とびきりの、良い夜を。

●緊迫
 ジャマーによる、執拗な電子網の投擲。着実に痺れをばらまく網は列を変えては蝕んでいく。
「さぁこい! あたしのボディは負けないわ!」
 レプリカントたる部位よりは鍛え上げられた生身が目立つジェミは狙いを知って尚ひるまない。苦痛を腹筋で受け止め、それでも残る痺れはばるどぅーるがせっせと属性を分け与えて解して。
 仕返しとばかり差し向けるのは、凍てついたレーザーだ。
「瑶、手伝ったって!」
「こっちも手分けだ」
 猫達も、時には攻撃を後回しにして凛と司の指示に従い飛び回る。その姿も、けして万全とは言えない。何故なら――前衛を焦がす炎があるからだ。
 空気が、紅く塗り替えられる。澪を守ろうとして優美な花嵐の毛並みもまた炎に焦がされていく。
「私の、後ろへ」
 マユの前で翼を広げ庇う度、カノンの白い肌は火に炙られてじくじくと苛む苦痛を訴える。可憐に揺れる胡蝶蘭すら、今は熱気に痛めつけられ。
「すぐ、痛いのなんか治しちゃうからね」
 一目見れば、致命傷に近いことは業には分かる。護り手の怪我には特に手厚くを心がけるのは前回の経験があってこそ。治療行為にすら痛みを伴うような大怪我の手術を、執刀に慣れた指先が軽やかにやってのける。
「有難うございます、まだ守れます」
 苦痛をおくびにも出さず、カノンは凛と声を張る。呼び出した竜の幻影は、ゼロへと襲い掛かり避けに横に飛んだところで反対側から回転する鎌が襲い来る。ランタナの花が絡む刃は、ゼロの肩を穿ち装甲を剥ぎ取る。
「『協力』すれば、君が如何に早くとも――捕らえることは出来るのさ」
 口端を計算しつくされた角度で引き上げて、ナコトフが微笑む。戦線がどれほど緊迫していようが、己の在り方を変えるつもりなど彼にはない。
「さあ、休んでる暇はないぜ!」
 怒涛の連撃を、彼等は仕掛ける。マユが切り込みに氷の弾丸を纏わせてルーンアックスを振り翳せば、澪が遠慮なく全力で鈍器をぶつける。
 司が炎を纏う蹴りを叩きつける、そのタイミングで凛は氷を真っ直ぐ発射する。サーヴァント達のサポートも最大限に活かしながらの攻撃は、強固な弾幕となって敵へと襲い掛かる。
 けれど――。
 ゼータが、幾つもの攻撃を身を挺して庇う。盾は一体、しかしながらゼロ自身の回避性能もあり盾役としては十二分に機能している。
「攻撃の手応えが、やはり少ないな」
 司は己の中の成果を確かめるよう眉を寄せる。強力なダメージを叩き出せるだろう攻撃は、ゼロの立ち位置により届かない。
「直接、殴り倒せたら楽なんだけどね」
 ぐ、と拳を作るのは肉体派レプリカントのジェミ。あまりにも遠い、ゼロとの距離を見据えて。
「それでも、まだ狙うやろ?」
 刀傷を刻まれた側の瞳を瞬かせて、朗と凛が笑う。だって、この場の誰もが諦めてやしないのだ。持てる機会を、力を――ゼロに注ぎ込むと決めていた。
「5分経過。――このまま、いっちゃうよ!」
「作戦続行、了解だよ」
 ゼロがどれほど削れているか確信はない。だが、仲間達が積み上げてきたものもけして少なくはない筈だ。
 雷の壁をせめてもと満身創痍の皆に纏わせながら、業は少し掠れた声で方針を告げれば楽しげにナコトフが声に出し皆に伝達する。
 狙いは未だ、――変わらない。

●天気
 黒の嵐が、吹き荒れる。護りすら剥ぎ取る暴威にナコトフは千切れかけたシャツの釦をいっそ自分から剥ぎ取る勢いで胸元を晒す。面差しに宿るのは、明らかな昂揚だ。
「随分足取りが重そうだ、楽しくなってきたじゃあないか!」
 彼が指摘したよう、着実に阻害はゼロに降り積もっている。幾ら、ゼータが回復をしたところで手数の多さはこちらに利があった。更に――。
「させねぇよ。こっちも必死なんでね」
 ナコトフの砲撃からゼロを庇った直後に、司が身を低めエアシューズを駆って腹を蹴りに行く。なんとかゼータが反応するが、これもまたフェイク。
「土産には炎と氷、オマケに弾丸も大サービスしたるわ!」
 ゼータが身を捩らせた間隙を縫うのは、凛が構えたガトリングの連射。
「女を無視したら痛い目見るって教えてやりな」
 狙いを澄ましていたナース姿のビハインドは、落書き紙片の上から医者に応じて投げキッス。異形の力はゼロへと絡みつき、束縛を与える。 
「もうちょっと、押さえてくわよ!」
 ハンマーで殴りつけたい衝動を堪え素早く砲撃形態へと切り替えてジェミは砲弾を浴びせていく。簡単なゴールがないことなんか、百も承知だった。
 足りない部分は、皆で積み重ねていけばいい。
「耐えます、立てます。――一歩でも、どうか」
 カノンの傷は、一番深い。薄れゆく意識を無理やり奮い立たせる声は熱に掠れた。死はこんなにも身近で――けれど、守りたいと思う心は、細い膝を折らせはしなかった。
 翼が、紅く揺らめく。地獄の炎が、巻き起こる。炎弾が途中で盾役に遮られたとしても傷だらけの身を癒すことこそが重要だった。今、立ち向かう彼等を支える為に。
 ジャマーから放たれる痺れを攻撃手に渡す訳にはいかないと、カノンは身を晒す。たちまち、その細い腕も羽根も張り付けられた蝶のよう動きを封じられるけれど。
「はい、助けて頂きます。――進みます、皆で!」
 澪は、その姿を見て柔和に笑みを作る。彼女の行動を無駄にしない為には、進み続けるしかない。飴色の髪が大きく、風もないのに靡く。決意に呼応してかバトルオーラが、強く撓み強大なる弾を編み上げる。
「じゃ、――行くぜ!」
 属性を分け与えられ、網に一瞬絡めとられたマユは直ぐ動くことが叶う。とは言え、肌を切り裂くその鋭い痛みの全てが癒されたわけでもない。
 しかし、頬に走る傷口から零れた赤を拭うその瞳は、前しか見ていなかった。澪が思い切り雷弾を叩きつけるのに合わせ、炎纏う武器がゼロを切り裂いていく。
「ッたく、番犬つうのは、性質が悪いぜ。次から次から、――治しやがるし」
 ぼろぼろになった帽子の鍔を無理やり引き上げ、ゼロが首を竦める。彼もまた、番犬達しか見ていない。
 最後の言葉は、オーロラの如く柔らかな光を操るカノンと、雷撃の強さをマユに宿している業に告げたものだろう。ぼやくような言葉に業が笑って、告げるのは。
「8分、経過」
 終局に向かう、合図だった。

●終夜
 度重なる、炎の襲来。避けきれぬ熱に顎を上げて立ち向かった凛を――、真横に突き飛ばす小さな影は、猫のもの。
「――瑶、」
 小さく名を呼ぶ暇も、あればこそ。主によく似た快活な瞳で、猫はふてぶてしく顎を逸らして見せる。身を飾る椿もろとも、炎に包まれ崩れ落ちるその瞬まで。
 回復を捨てての総攻撃。その代償は、サーヴァント達から削っていく。立て続けの攻撃に、ゆずにゃんもまた羽ばたきを止めて司の傍へと崩れ落ちる。司が触れていれば致命にもなっただろう傷を、代わりに負って。
「止まらねぇよ」
 未だ体が動く以上、するべきことは一つしかない。司は駆け出し様、大きく身を撓めてからの跳躍。ゼロとゼータの間に割り入るかのように大きく蹴り飛ばせば――会心の攻撃はゼータへと直撃する。その装甲に無数の罅が入り、爆ぜ割れた。
 もう、ゼロの守り手は居ない。
「さぁ――遊んどいで」
 凛が何処からか炎の欠片を拾い、呼ばわる。増える幾つもの炎、紅い胡蝶。火の粉を散らす姿は、凛が咲かせる椿に似て鮮烈に舞う。切ない程に鮮やかな光景は、やがてゼロを包み込んでいく。遮るものの無い炎が、焼き払い。
 その幻想的な光景に、ナコトフは微かに目を細める。普段なら、美を賛美する言葉は幾らだって尽くせるが今はその余裕もない。残された時間は、僅か。
 彼は再三鎌へと指先を這わせる。ゼロの位置から、取れる手が限られているのは先刻承知。繰り返し、繰り返し――けれど、それはけして無為ではない。
「『継続』も、また美を生む。――水が岩を穿つようにね!」
 ゼロへとウィンクひとつ。まるで花でも差し向けるかのような気安さで、禍々しい鎌を渾身の力を込め投擲する!
「――最後は、気合。絶対倒しきるっ!」
 ジェミは、肩にガトリングガンを担ぐ。己の手で殴れないとはいえ、この武器だってもう随分馴染んでいた。気合注入、とばかり砲身を叩いて、――撓めた光弾が眩しく視界を染める。ゼロへと叩きつけるのと、丁度彼が渾身の銃撃を放ったのがほぼ同時。
 澪か、マユか。どちらかを削ぎ落とせば未だ生き残れる契機はある。最大出力の蒼い光が溢れ、避けようもない勢いで放たれる。
 だからカノンには身を晒せばただで済まないと分かっていても踏み出す他選択肢はない。少女の胸を、無慈悲な閃光が貫いていく。内臓が軋んで唇から血が零れた。それでも重傷に届かなかったのは奇跡ではなく、ジェミの阻害あってのもの。立ち上がろうと羽根が弱く揺れて――そのまま崩れ落ちる。
 ゼータは問うよう、ゼロへと首を巡らせる。意識を失ったカノンなら、致命傷に追い込むことも容易いだろう。
 ゼロは首を振った。言葉無くカノンを一瞥して――番犬達を、見据え。
 ゼータの銃声が、響く。澪へと届く筈だった一撃は、花嵐を撃ち抜いて終わる。澪が、マユが駆け出す。
「わざわざ略奪までもして、部品を何処に運ぼうとしてるんだ? ――答えろよ。お前等は何を作ろうとしてた?」
 最後の契機とばかり、司が言葉を捻じ込む。彼等の戦いは終わらない、情報は少しでも必要だ。だが、答えられぬことも分かっていた。
「パーティに夢中で、忘れちまった」
「最後の夜にしよう。楽しんでいってくれよ、ゼロちゃん」
 返答に業が喉で笑い、黒色の魔力弾を放つ。気楽に投げ放ったようにも、研ぎ澄ましたたった一つを放ったようにも見える仕草。
 幾重にも状態異常に絡めとられたゼロに、確かに届く。
「対価は、回収するぜ」
 シスター服を翻しマユが、斧を振り上げる。炎が巻き起こり――ゼロを、真正面から捕らえた。
「これで、幕引きです」
 澪は胸に手を当てる。静かな微笑みと共に、指先には雷が纏わりついて真っ直ぐゼロへと差し伸ばされた。
 全ては一瞬にも、長くも思える時間。
「――……もうちょい、遊びたかったなァ」
 先日の番犬、再会した番犬、今日出会った番犬。誰とか、誰ともか。
 ゼロはそんな風に呟き、炎と雷に包まれ――潰えていった。丁度十分が終わる頃合い。残ったゼータは撤退するが、流石に追う余地はない。
 運搬役も、今は行方を晦ましている。
「勝ったわ…エクスガンナー・ゼロ、討ち取ったり、ね!」
 沈黙を打ち破ったのはジェミの明るい声だった。胸を張る少女の様子に、幾人かの唇から笑いが零れる。
「あー……、この工場はヒールで直るかねぇ?」
「調査、と行きたいところだが、ね」
 司とナコトフは言葉を交わす。自動車部品工場らしいが、激戦に荒れ果ている。その上まともに動けるものの方が少ない有様となれば調査まではなかなか難しい。
 それでも、彼等はやり遂げたのだ。
 ゼロの体は次第に崩れるよう消えていく。
「狂宴はこれで、仕舞にしよか。――オヤスミ」
 凛の囁く声は静かに、醒めぬ眠りを見送るもの。業により意識を取り戻したカノンも、状況を察してか束の間目を伏せた。
 まるで、祈りのように。

 エクスガンナー・ゼロは、最後の夜を終えた。

作者:螺子式銃 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 10/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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