エクスガンナー・カッパ~支援機としての矜持

作者:陸野蛍

●エクスガンナー計画の為に
「お前達、急ぐアル! エクスガンナー計画の再始動、これこそがワタシ達にドクターエータが託した、作戦アル!」
 エクスガンナー・カッパは、工場を襲撃するガンドロイド達に強く言う。
「他のエクスガンナー達も動いているアルが、ワタシは彼等の負担を減らさなければならないアルよ。彼等は、エクスガンナー計画の中枢。負担も大きいアル。その負担を減らす為にワタシは……ワタシの部隊は存在するのアル」
 カッパの機械の瞳に強い意志の炎が灯る。
「制圧次第、ガンドロイド631から636は、機械部品の運搬に従事! 必要部品の運搬を10分で終わらせるアル! 641から646はワタシと一緒に周辺警戒アル。怪しい者が現れたら、即時発砲。阿修羅クワガタさんであろうと、ケルベロスであろうと邪魔する者は全て排除するアル! 全ては、新たなエクスガンナー計画の為にアル!」
 紅き武闘派射手の頭脳からは既に『油断』の二文字は消えていた。

●『エクスガンナー・カッパ』撃破作戦第一陣
「みんな、揃ってるな? グランネロスの撃破……それを行ったチーム、それを支援したチーム、全員にお礼を言うよ。ありがとう」
 そう穏やかに言うと、大淀・雄大(太陽の花のヘリオライダー・en0056)は、深く頭を下げる。
 そして、頭を上げると、雄大はヘリオライダーの顔で今回の任務の説明を始める。
「ダモクレスの移動拠点グランネロスの撃破後、行方をくらましていた、ダモクレス、エクスガンナー達が再度動き出した事が予知された」
 エクスガンナー……グランネロスを拠点に『エクスガンナー計画』に沿って生み出された、強力なダモクレスの精鋭達である。
「エクスガンナー達は、グランネロス撃破により中断された、エクスガンナー計画を再始動させる為に必要な機械部品を略奪しようと、日本各地の工場を襲撃するみたいなんだ」
 エクスガンナー計画の全容は明らかにされていないが、地球側にとって良くない計画であることだけは間違いないだろう。
「エクスガンナー達は、工場襲撃後、配下の半数を機械部品の運搬に、そして残り半分とエクスガンナー自身が周辺の警戒にあたるみたいだな。エクスガンナーさえ撃破出来れば、奴らの計画を潰す事が出来るんだけど……事はそう簡単にいかないんだよな」
 雄大は敵戦力が書かれているであろう、資料に目を通す。
「俺から、撃破を依頼するエクスガンナーは、エクスガンナー・カッパ。エクスガンナー計画における、サポート機だ。サポート機と言っても、戦闘力が他の機体に劣る訳じゃない。実際に前回の迎撃の際には、迎撃班を撤退寸前まで追い詰めたと報告を受けている。ハッキリ言って、強敵だ。そして、侮れない戦力として、ガンドロイドを12体引き連れているんだ」
 実際に雄大が報告書を作成した際には、カッパの戦闘判断能力に眩暈がした程である。
「と言う訳でだ、今回のエクスガンナー・カッパ撃破作戦は、数回に分けて行う。まずは、配下のガンドロイドの殲滅を行い、カッパ単体もしくは、ガンドロイド込みでもカッパの撃破が可能な状態まで持って行こうと思う」
 1体で8人のケルベロスを凌駕するカッパ、そしてケルベロス1人と同等以上の力を有したガンドロイドが12体では、どう考えても分が悪い。
 その為の、長期視野での作戦である。
「襲撃される工場からは、一般人は避難済みだから、襲撃後、半数のガンドロイドが機械部品を運び出し始めた後に、攻撃を仕掛けるようにして欲しい。この状況で戦闘を仕掛ければ、敵戦力の半分を戦闘から除外する事が出来る。カッパも周辺警戒をしているから、カッパとの戦闘を避けられる訳じゃないけどな」
 敵の総合的な戦闘力を考えると、この状態でも五分五分とは言い難い。
「エクスガンナー・カッパと周辺警戒をしているガンドロイドは、機械部品を運搬するダモクレスが無事に撤退する為に時間を稼ごうとするから、10分の間戦闘を行い、その後撤退しようする。その10分で可能な限りガンドロイドを撃破してくれ」
 グランネロスを失った事で、これ以上のガンドロイドの増援は無いらしいが、止めを刺しきれなかった場合、修復期間が出来てしまい、与えたダメージ箇所は次の戦闘では完全修復されてしまうとのことだ。
 つまり、1体1体確実に撃破する事が求められる。
「それじゃ、敵の攻撃方法を改めて説明するな。カッパは、サポート機に恥じない、どんな状況にも対応できる機体で、多くのグラビティを扱うことが出来る。旋刃脚、降魔真拳、クイックドロウ、制圧射撃、ブレイジングバースト、バレットタイム、これだけのグラビティを使用可能だ。だけど、カッパの何が一番秀でているかと言えば、その時の最善のグラビテイを取捨選択出来る、知能にあると俺は思ってる」
 普通、使える技が増えれば増える程、どの技を使うべきかと言う思考が入る。
 だが、カッパの場合は、闇雲に技を放つ訳でもないのに、その思考時間が極端に短い。
 10分と言う限られた時間、全てにおいて最善策を取られた場合、こちらの被害の方が大きくなってしまうかもしれない。
「ガンドロイドは運搬要員を含めて12体。全員、武装はリボルバー銃でヘッドショットと跳弾射撃を使って来る。カッパの命令に忠実な兵隊と思ってくれていい」
 そこで雄大は、頭をわしゃわしゃと掻く。
「一応言っておくな。襲撃タイミングを早めて、運搬要員と警戒要員が分かれる前に、戦闘を開始する事も可能と言えば可能だけど……敵戦力全てが迎撃に回るから、正直止めた方がいいだろうな。逆に、運搬作業が開始された数分後に襲撃する事も勿論可能だ。この場合、足止め及び戦闘時間が少なくて済むから、こちらの負傷も減ると思うけど、カッパ達は運搬作業を開始して10分経ったら撤退する為、ガンドロイドを数多く撃破するのは難しくなる」
 運搬自体を阻止しようと、運搬するガンドロイド達を襲った場合は、運搬自体は止まるが、すぐにカッパ達が合流する為、この場合も敵の全戦力との戦闘になってしまうと言うことも付け加えられる。
「今回、奪われる機械部品に関しては、工場関係者にも話してあるから、仕方ないものだと思ってくれていい。だけど、エクスガンナー計画に必要な部品が揃えば、エクスガンナー達は地球を一度離れると思う。多くの時間は無い……だから、一戦一戦を確実にこなして、カッパが機械部品を揃えて、他のエクスガンナー達と合流する前に、カッパを撃破出来る様にして欲しい」
 ダモクレス本星に戻られてしまえば、こちらから撃って出る事も出来ず、いずれエクスガンナー計画の産物が地球へと送られて来るだろう。
「今から俺のヘリオンに乗るみんなは、エクスガンナー・カッパ撃破作戦の第一陣になる。カッパを倒す為の傷穴を作る役割と言ってもいい。カッパを自分の手で倒したいって奴も当然居ると思う。けれど、止めを刺すだけが戦いにおいて重要な訳じゃない。最初の一矢を確実に的に射るのも重要な役割だ。……準備が出来次第、ヘリオンを飛ばす。頼んだぜ、みんな!」
 最後に『ニカッ』と笑うと、雄大はヘリオンへと駆けて行った。


参加者
岬・よう子(金緑の一振り・e00096)
エニーケ・スコルーク(黒麗女騎・e00486)
呂・花琳(鉄鍋のファリン・e04546)
モンジュ・アカザネ(双刃・e04831)
雪村・達也(漆黒纏う緋色の炎剣・e15316)
舞阪・瑠奈(サキュバスのウィッチドクター・e17956)
ユーディット・アルニム(装甲砲士・e29597)
リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)

■リプレイ

●最初の一矢
「……ガンドロイド631から636は、機械部品の運搬に従事! 必要部品の運搬を10分で終わらせるアル! 641から646は…………」
 人の気配のしない工場にエクスガンナー・カッパがガンドロイド達に指示する声が響く。
「……カッパが部隊を分け始めましたね。完全に分かれたら攻撃開始ですね」
 カッパに気付かれぬ様に注意を払い、声を潜め、舞阪・瑠奈(サキュバスのウィッチドクター・e17956)が仲間達に言う、
「皆さん、思う所があると思いますが、無茶はしないで下さいね。帰りを待っている人がいますから」
「カッパは強敵……だから、極力ガンドロイドの数を減らし、次は追い詰められるようにしたいね」
 瑠奈の言葉に答える様に、リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)が呟く。
「派手な作戦ではない。しかし戦争の趨勢は往々にして、こういった小さな戦果の積み重ねが左右するものだ」
 自分達にもカッパ達にも同様に言える言葉を、ユーディット・アルニム(装甲砲士・e29597)が口にする。
 そして、ユーディットは息を殺し身を潜めながら先行すると仲間達に合図する。
 極力物音を発てず、工場内に潜入するケルベロス達……だが、一人攻撃的に、工場に侵入する者が居た。
『グワッシャーン!!』
「ガンホーガンホーガンホー!」
 ド派手に、工場の扉を蹴破る者……エニーケ・スコルーク(黒麗女騎・e00486)だ。
「侵入者アルか!?」
 その音に、カッパがすぐさま声をあげて反応する。
「大きな作戦が潰えたのにまだ凝りませんのね……二度とナメた事ができないようスクラップにしてあげましょうかしら」
 伝承器砲『ヒルフェンファイア』を構え、エニーケが挑戦的にカッパに言う。
「……ケルベロス……アルね。まさか、一人と言う事は無いアルね?」
 カッパが、探る様に静かに言う。
 その言葉に反応する様に、ユーディットの声が工場内に響く。
「各個撃破を狙う、総員散開!」
 身を潜めていたケルベロス達も姿を現すと、それぞれのポジションに陣取り、武器を構える。
「ガンドロイド641から646! 迎撃開……!」
「遅いですわ! イッツアデストロイタイム!」
 カッパの指示が響く前に、エニーケの主砲が一斉発射され、前に出ようとしたガンドロイドを狙い撃つ。
「我が生は我が思想の為に」
 強い意志の言葉を口にすると、岬・よう子(金緑の一振り・e00096)が盾となるドローンを、射出する。
(「地球の資源は地球のもの……。ましてや職工の努力の結果を掠め盗ろうなど、噴飯ものだ。全てきれいに置いて帰るのであれば、今だけは剣を収めもするが……この姿勢、無駄だろうな……」)
「神と対話が出来るのならば、とうにどちらかが滅びていたさ」
 言うと、よう子は左腰に差した刀を引き抜き構える。
「1体ずつ、確実に仕留めさせてもらうぜ」
 モンジュ・アカザネ(双刃・e04831)が紅き烈風の様な蹴りをガンドロイドに決める。
「ケルベロスに押されるなアル! 警戒班攻撃アル」
 カッパの声にガンドロイド達のリボルバー銃から、次々と弾丸が発射されていく。
 それを確認すると、カッパ自身も前を固めるケルベロス達に、拾弾の雨を降らせる。
「初めて話を聞いた時から、お主に会ったら絶対に言ってやろうと思っていた事がある……」
 纏う『中華鍋』と言う名のオウガメタルに、オウガ粒子を放たせながら、呂・花琳(鉄鍋のファリン・e04546)が、カッパに挑戦的な目を向け言葉を発する。
「そう言う話に興味は無いアルね」
 カッパが視線を送ると、後ろに控えるガンドロイドの素早い銃弾が、花琳に向かって放たれる。
 だが、それをすかさず、雪村・達也(漆黒纏う緋色の炎剣・e15316)が地獄の炎に包まれた右腕で庇うと、黒煙の鉄塊剣に雷を纏わせ、ガンドロイドに高速の突きを放つ。
(「俺も戦闘では、盾になりながらサポートに回る事が多い。支援機に徹しようとするカッパには、シンパシーを感じもするが……それを理由に手を抜く気はない。むしろ……」)
「ライバル意識を感じるくらいだ!」
 強く言うと、達也は更に深くガンドロイドを刺し貫き、一気に剣を抜く。
「敵戦力確認……データベース照合……火器管制システム、アップデート完了。最新パッチ、配信します」
 リティは静かに口にしながら、ドローンの群れを操り、カッパ達の位置情報を正確に把握すると、分析結果をグラビティを通して仲間達に伝える。
「これだけ、情報があれば私の拳で捉えられないものはありませんよ」
 銀の生命体を拳に宿し、瑠奈が強烈なパンチでガンドロイドを撃ち据える。
「アインクラート……達也と共に、皆の援護を頼む。わたしは……」
 相棒のライドキャリバーにそう言うと、ユーディットはバスターライフルの引鉄を引く。
「機動力を活かして仲間の援護……司令塔として動く」
 ユーディットの放った光線は初撃で傷を多く負ったガンドロイドに向かったが、別のガンドロイドが庇う形でダメージを肩代わりする。
「……あの目は」
 次の攻撃に移ろうとグラビティを高めていたモンジュは、カッパの瞳がケルベロス達の動きをあまさず観察している事に気付く。
 その機械の瞳の動きに、モンジュは何故か寒気を覚えた……。

●それぞれの戦略
「喰らえ! 竜の鉄鎚!」
 達也の振り下ろしたハンマーは、クラッシャーに僅かに残っていた、グラビティ・チェインを叩き潰し、身体ごと粉々にする。
「まず1体!」
「Sehr gut! 次だ!」
 達也の攻撃に賞賛を贈ると、ユーディットは次のクラッシャーに照準を合わせて、光線を放つ。
「……そろそろ頃合いアルね」
 己の感覚を研ぎ澄ます為に動きを止めていたカッパが呟く。
「……一々お主は癪に障るのう」
 花琳が低い声音で言うと、激昂した様に一気にカッパとの距離を詰める。
「なんじゃその喋り方は!! 貴様中華をディスっとるのか!? 語尾にアルを付ければ中国っぽくなるとか適当な理由じゃあるまいな!? 中国人はそんな喋り方はせぬわーー!!」
 叫びと共に放たれた花琳の刃の如き蹴りは、カッパの左腕にヒットする。
「ワタシはエクスガンナー計画機。製作者の意図通りに作られているアル。それは、神への侮辱に等しいアル」
「お主の士気の高さ、そこは嫌いでは無い。良いぞ……その信念ごと喰らってやろうではないか!」
 空中で一回転をすると、一旦距離を取り、花琳が言い放つ。
「何を言っているアルか? もうお遊びは終わりアルよ」
「何じゃと?」
 カッパの言葉に、花琳が聞き返す。
「ガンドロイドに指示。最優先攻撃目標、最後衛の銀髪のレプリカント。回復手を優先撃破アル!」
「何ですって!?」
 明日からの誓いの炎をクラッシャーの足元から噴出させていた、エニーケが声をあげる。
 炎に包まれた、クラッシャーのリボルバー銃がリティに向けられる。
 それだけでは無い……全てのガンドロイドの銃口がリティへ向けられたのだ。
 次々に放たれる銃弾。
「そうは、いくか!」
 達也が身を挺して、放たれる銃弾を受けて行く。
 アインクラートもそれに習う様に、リティの前に走り込み庇うが、それでも2発の銃弾が、リティの身体を傷つける。
「相手のリーダー、カッパは戦闘もこなせる強力な支援機……。分かっていた事。でも、こっちだって、強力な仲間が揃ってる」
 リティはそう口にして、自らに魔術手術を施し傷を塞ぐ。
「協力して、互いを補えれば……負けない。その為には、仲間が誰一人倒れないように支える」
 強い意志を言葉に乗せ、リティは今一度ヒールグラビティを放つ為に、グラビティ・チェインを高めて行く。
「そちらがその気ならば、容赦はしない。元よりそのつもりも無いがな」
 いつもなら扱わぬゲシュタルトグレイブを華麗に構えると、よう子は雷を纏わせた突きをクラッシャーに放つ。
「普段と勝手は違うが、扱えぬものを戦場に持ち込みはしないさ。とくと御覧じろ、軽さとは疾さであり、疾さとは――迅雷である」
 クラッシャーは槍から伝わる雷撃で、身体を振るわせる。
「そう来るなら、無傷の俺達が雑魚を早く潰せばいいだけのことだよな」
「1体でも多く、迅速にですね」
 モンジュの言葉に瑠奈は頷くと、同時にクラッシャーへと攻撃を仕掛ける。
「紅に染まりし我が腕よ。拭わぬその身を今見せろ!」
 御魂刀『霊呪之唯言』を赤く染め上げ、血が躍っているかのような一撃をクラッシャーに与えるモンジュ。
 クラッシャーの身体が傾いたのを好機と、瑠奈はグラビティで透明な硝子状のメスを作りだす。
(「生成完了。これを見切れるかしら」)
 瑠奈が素早く透明なナイフを振るう……が。
「え!?」
 ディフェンダーが素早く動くと、クラッシャーを庇い、瑠奈のメスは砕け散る。
「それでよい! そのまま攻撃を続けるのじゃ! カッパの抑えは我に任せるのじゃ!」
 花琳が仲間達を鼓舞する様に言うと、カッパが笑みを零す。
「それでいいアルね?」
「……どう言う事じゃ?」
 カッパの質問に、花琳は更に疑問で返す。
「元よりお前の相手は、ワタシがするつもりだったアルよ。お前の撃破優先順位は3番目アルからね。1番と2番は、ガンドロイドだけで削り切れるアルね」
 カッパの言葉は、ケルベロス達に疑問を生じさせる。
 最優先がリティで3番目が花琳なのであれば、2番目の撃破対象は……?
「何時まで庇い続けられるアルかね?」
「ガッ!?」
 その時戦場に、リティの死角への銃弾を庇った、達也の痛みに耐える声が響いた。
「ワタシにはもう『油断』の二文字は無いアルよ」

●傷つきし者達
「リティ、少しの間の辛抱だ。!? アインクラート!?」
 ヒールドローンを飛ばし、リティの回復補助を行っていたユーディットは、自分の相棒がグラビティ・チェインの枯渇によって姿を保てなくなったのを目にし、思わず声をあげる。
「ニクソンくん、吾輩の癒しも受け渡そう」
 よう子もドローンを飛ばすが、ドローンは盾とはなっても、癒しの力は低い。
「……達也、それ以上私を庇うと、あなたがもたない」
 達也に魔術手術を行いながら、リティが達也に言う。
「……大丈夫だ、これくらい……グラビティ・チェインは奴らのを頂く!」
 地獄の炎弾をスナイパーに放つことで、達也は自らの傷を塞いでいく。
(「……仲間を守り、仲間が最大の戦果を上げられるように!」)
「中々、しぶといアルね。お前も、お前の仲間も」
「……はあ、はあ。これしきで倒れはせぬ!」
 カッパの言葉に花琳が息を整えながら気丈に答える。
 既にクラッシャーとディフェンダー2体ずつをケルベロス達は撃破していた。
 だが、既に消えてしまったアインクラート、そして……リティ、達也、花琳の負傷は、目に見えて酷かった。
 それ以外の5人は、ほぼ無傷と言っていいのに対し、3人は立っているのもやっとの状態だ。
 特に、花琳とリティ、両方を庇っていた達也のダメージは、ディフェンダーの防御力をもってしても、こらえきれるものでは無かった。
 ケルベロス達が狙っていたのは、ガンドロイドの各個撃破だったが、同じ作戦をカッパも選んで来たのだ。
 花琳がカッパに行動阻害のグラビティダメージを与えても、カッパも同じく行動阻害のダメージを与えて来る……花琳の動きも十分に鈍ってしまっていた。
 そして、狙われている3人のポジションがバラバラと言うのも、回復効率の低下を引き起こしていた。
 リティの癒しの雨を使っても同時に癒すことは出来ないのだ。
 ユーディットとよう子が回復に回れば、当然攻撃手も減る……エニーケ、モンジュ、瑠奈は傷を負っていないが、焦りを感じていた。
「俺達は、攻撃の手を止めないことしか出来ない! 早くガンドロイドを落とすしかねぇ!」
 スナイパーに刀を振り下ろしながら、モンジュが叫ぶ。
「了解していますわ。あなたに未来なんていりませんのよ。自らの行いをあの世で悔いながら死ぬがいいですわ」
 モンジュの言葉に答えながらエニーケは、アームドフォートから、回避を許さない特殊軌道の光線を発射する。
 その光線は、スナイパーの命を奪うだけのダメージを与えると消えていく。
「ダモクレスにトラウマがあるかは知りませんが、皆さんをこれ以上傷つけるのは許しません」
 瑠奈の手から放たれた悪夢のの魔力弾は、確実にスナイパーにダメージを与えていた。
 だが、それでも、スナイパーは銃口をリティに向ける。
 スナイパーの放った弾丸はリティを真っ直ぐに狙った……だが。
「達也くん!」
 リティを庇い、遂に倒れ伏した達也によう子が癒しのドローンを飛ばすが、達也は立ち上がらない。
「これで盾は居なくなったアル。次はお前が地に伏す番アルよ!」
「グガァァァァッ!!」
 カッパが爆炎の魔力を込めた大量の弾丸を花琳に放てば、花琳も膝を付き、前のめりに倒れ意識を手放す。
「……私の回復も間に合わないっ」
 リティがボロボロの身体で呟く。
「リティ、あなたは自分の回復を。スナイパーだけは、わたし達が何としても」
「神に至らぬ傀儡なぞ解体してしまおう」
 ユーディットのバスターライフルが強烈な光線を放つ中、よう子の勇ましい言葉が皆の耳に響く。
「恐るることはない、奢るることはない、戦場で共に踊ろう」
 スナイパーの目に映るのは、華やかな少女。
 よう子から目を離せず動くことも敵わない。
 よう子の、刀とグレイブが自分を完全に切り裂くまで、スナイパーの目は、よう子を追い続けた。
「カッパ巻きさん、少々おイタが過ぎた様ですわね。覚悟してもらいます」
 灰色の前髪に隠れた漆黒の瞳を燃やし、エニーケがカッパに言う。
「……フフッ。もう、ここに用は無いアル」
 そう言うとカッパは、後方に向かって大きくジャンプする。
 運搬を担っていた、ガンドロイド達の作業が終わったのだ。
「ワタシの最優先事項は、エクスガンナー計画の再始動アル。命拾いしたと思えばいいアルよ。……次に顔を見せたら、殺すアル」
 カッパはハッキリと言葉にすると、俊敏な動きで残ったガンドロイドと共に、工場から姿を消した。
 殆ど傷を負わなかったケルベロスと、目を覚まさないケルベロスを残して……。

●そして……次なる戦いへ
 モンジュの背中に達也、エニーケの背中に花琳が背負われていた。
 カッパの去った工場でケルベロス達は、傷ついた身体にヒールを施したが、二人は目を覚まさない。
 早急にヘリオンへと連れ帰る必要があった。
 カッパが迎撃に出した、ガンドロイド6体は修復不能なまでに破壊した。
 残り6体のガンドロイド、そしてカッパ……。
 次に対峙する時は、今回以上の打撃をカッパに与えなければならないとケルベロス達は誓う。
『エクスガンナー計画の再始動』
 それだけは、絶対に防がなければならないのだから……。 

作者:陸野蛍 重傷:呂・花琳(デウスエクス飯・e04546) 雪村・達也(漆黒纏う緋色の炎・e15316) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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