●幻の蝶々
植物園の森に棲む、幻の夜光蝶。
その噂の植物園が自分の勤めている園だと知った時、森野・一花は好奇心に駆られたのだろう。この日、仕事を終えた一花は温室の戸締りを終えた後に、ライトとスマホを手に温室裏の森へと向かった。勿論、夜光蝶を探す為にである。
「先輩達には真に受けるなーって言われたけど、ね!」
気になるものは気になるのだから、仕方がない。
そう呟きながら、一花は森の中へと進んでいった。
しかし、幻と言うだけあって中々蝶には出会えない。それでも一花が森を彷徨っていると、彼女のライトは不思議なものを照らし出した。それは探していた蝶ではなく、大きな鍵を持った女。すると、女は一花が悲鳴をあげるよりも先に、彼女の胸に鍵を突き刺した。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
そうして胸を貫かれ、一花は意識を失った。
やがて奪われた興味から生まれたのは、一花が探し続けていたもの。
倒れる一花の傍で佇む魔女の傍を、ひらひらと舞う蝶の群れ。
それは一花が呟いていた通り、夜の闇を照らすように光輝いていたのである。
●隠れ上手の夜光蝶
不思議な物事に対する強い興味が奪われ、ドリームイーターになる事件。
興味を奪われた人を目覚めさせ、これ以上の被害を出さない為に、この個体を撃破して欲しい。ジルダ・ゼニス(青彩のヘリオライダー・en0029)はそう言うと、この事件を危惧していた星廻・十輪子(惑いの一等星・e15395)に目を向けた。
「ドリームイーターの姿ですが、十輪子さんの仰っていた通りのものです」
「……わたしの? もしかして、キラキキラ光る、蝶々なの?」
「はい。隠れ上手の夜光蝶、という噂が元になっているそうです」
この夜光蝶は、魔女に奪われた一花という女性の興味から生まれたもの。
これまでの事件と同様に、自分の事を信じていたり、自分の噂話をしている人間に引き寄せられる性質がある。よってまずは現場に赴き、敵を誘い出して欲しい。
「植物園の……この広場で噂をすれば、そのまま戦いに持ち込めるかと」
そうしてジルダが地図に記された広場を指すと、十輪子は訊ねた。
「噂話は……蝶のことなら、なんでも、いいの?」
「はい。元の噂話を調べましたが、随分と色々な話がありました」
夜光蝶は普段は一匹で飛んでいるのに、お気に入りの花を見つけると一羽から群れへと姿を変えるのだとか。光る色も気儘に変わって、夜の森を舞う姿はとても美しいとか。
「夜光蝶の好きな花は何か――という話なども良いかもしれませんね」
ともあれ、色々思いを馳せて、蝶を誘い出して欲しい。魔女によって作り出された夜光蝶は倒すべき敵だけれど、一花の興味から生まれた蝶の姿は、きっと美しいと思うから。
参加者 | |
---|---|
疎影・ヒコ(吉兆の百花魁・e00998) |
花喰・香鹿(標星の宿り木・e01575) |
木戸・ケイ(流浪のキッド・e02634) |
月霜・いづな(まっしぐら・e10015) |
星廻・十輪子(惑いの一等星・e15395) |
速水・理央(夜蝶・e17103) |
ミネット・ドビュリ(白猫・e20521) |
苑上・郁(糸遊・e29406) |
●秘密の話
硝子張りの温室が点在する植物園の敷地内。
「夜光蝶も良いが、この植物園もなかなかだな」
閉園済みである事を惜しみつつ、先頭を行く木戸・ケイ(流浪のキッド・e02634)に続き中央広場へ向かう道中、月霜・いづな(まっしぐら・e10015)と花喰・香鹿(標星の宿り木・e01575)は緑溢れる通路で、空気を胸いっぱいに吸い込んだ。
「――まあ、なんてすてきな、かくればしょ!」
「夜露を吸って、朝に花開いたら……もっと、つよく香るだろうね」
眠る蕾に香りを秘めた、甘くて美味しそうな季節の花。
夜光蝶も、この香りに惹かれて森を彷徨うのかもしれない。
(「……わかるよ。おいしそうだもの」)
花弁と香りの違いはあれども、蝶に共感する香鹿。
やがて広場に到着すると、一同は早速話を始めた。
「ちょうちょ、どんな花がすきなのかな。夜に咲く花って、だれか知ってる?」
秘密を分かち合うような心地で訊ねる香鹿に、苑上・郁(糸遊・e29406)は草の上に腰を下ろし、テレビウムの玉響を膝に抱きながら、思い付く花の名を口にした。
今の時分の花といえば、桃色の百日紅に、赤ならば彼岸花。
すると郁は疎影・ヒコ(吉兆の百花魁・e00998)を見た。
「疎影さんの髪の白梅も、綺麗ですね」
人馴れしていない郁が、ぎこちなくも紡いだ声。
それに一度だけ苔色の瞳を瞬かせたヒコは、照れ代わりに頬を掻いた。
「……之だけの植物が有れば、夜光蝶の好むモノもあるんだろうよ」
蝶が翅を休めるのは、風揺れる花弁なのか、あるいは緑が繁る木々の枝か。吸う蜜一つとっても、甘さを尊ぶのか苦い樹液を好むのか、思いはとめどなく溢れていく。その時、速水・理央(夜蝶・e17103)はヒコの言葉にふと思いを過ぎらせた。
「想像も付かないが、かくれんぼが得手と云うのも興味深い」
(「隠れ上手の夜光蝶、か。……いいや、まさかね」)
思い浮かぶは、行方の知れない彼の事。
それを拭うように、理央は話に加わった。
「昔から、蝶は幻想的でどこか危うい存在だよね」
胡蝶の夢という言葉があるように、現と夢の狭間を象徴する蝶々。ならば夜光蝶も幻想を見せてくれるのだろうか。理央はそう語ると、続けて嘯くように囁いた。
その幻想が綺麗で、幸せであれば良いけれど、
「ひと時の夢に飲み込まれてしまったり……なんてね」
「隠れ上手で惑わし上手なのは、ちと放っておけないな」
どこか楽しげに零す理央とヒコ。そんな彼らの傍、星廻・十輪子(惑いの一等星・e15395) とミネット・ドビュリ(白猫・e20521)も考え事の真っ最中。
「夜が好きな、チョウチョさんなら、夜のお花から、蜜、もらうの、かしら?」
「わたくし、ちょうちょさんはあまいミツが好きだって聞いたの」
十輪子の疑問に、ミネットはこう紡いだ。甘い蜜が好きならば、夜光蝶はきっと甘い匂いの花が好き。加えて、夜に咲く花の方が好みなのではないだろうかと。
「だってちょうちょさんも、つぼみより咲いたお花を見たいはずですもの」
「お昼のお花は、夜、見えない、もの、ね」
今度は十輪子がミネットの言葉に頷くと、香鹿と郁も言葉を添えた。
「……きれいにひかるための秘密。光る花に、光を分けてもらってたりして」
「蜜を吸う花の色によっても、煌く鱗粉の色が変わるのかもしれませんね」
例えば、月光に照らされて光る花の蜜を吸い、鱗粉の色を変える夜光蝶。沢山の花の蜜を味わって森をひらひら舞う中、粉は星のようにきらきら輝く事もあれば、七色に彩られた虹を架ける事もある。一方、ケイは夜光蝶が好む花を、こんな仕立てで語り始めた。
「 ……俺が聞いた話によると、人に咲く紅い華だっていうぜ」
ケイ曰く、夜光蝶が幻と言われているのも、当然の話。
何故ならこの蝶は、鮮血を求めて飛ぶ吸血蝶だというのだ。
一羽の蝶と思い、惹かれて近づけば一巻の終わり。
目撃者はことごとく、群れと化した蝶達によって鮮花を散らされ――、
「最後の一滴まで吸い尽されちまうんだから……なんてな!」
と、情感溢れる語り口から一転、一気に砕けた口調に戻るケイ。
「美しいものほど不気味で、妖しい噂が付き物なのさ」
「有り得ない話と一刀出来ない感じが、またそれらしいね」
それに理央がくすりと笑むと、話に聞き入っていたいづなが呟いた。
「もしかしたら――まっくろなおはなかもしれませぬ」
少女からの思わぬ声に、ふと目を向ける一同。
対し、いづなは袖口を口元に添えて、花から花へと舞う蝶を思い浮かべながら言葉を続けた。蝶はきっと、どれが一番己を、己が放つ光を引き立てるかを知っている。
「ゆえにまっくろなおはなだと。わたくし、そんなきがいたします――まぁ!」
「どうなさいましたの? いづなさま……後ろになにか……」
その時、いづなは驚きの声をあげた。しかし、ミネットや皆が振り向いても、見えるのは暗い森の入口だけ。すると、ヒコは軽く手を叩いてみせた。
「蝶さん此方、手のなる方へ――」
それは隠れ上手な蝶へ捧げる、招きうた。
その旋律を追うように十輪子が音を重ねていくと、
「……みぃつけた! かの方のゆめ、あちらにございます!」
再び闇の中から現れた夜光蝶の姿を見て、いづなは声を響かせた。
●隠れ上手の夜光蝶
一羽から群れへと姿を変え、虹色のアーチとなって襲い掛かる夜光蝶。
対し、ヒコの盾となったミネットのウイングキャット、ノエルがその直撃を受けた瞬間、虹の橋は花が開くように八方へと弾けた。
「――まぁ、まぁ!まるでひかりの花ですわ!」
「群れそのものが一つの意思を持つかのような動きだ……!」
それを後方より目撃して、声を弾ませるいづなとケイ。しかし、どれ程美しい姿であろうと、あれが人を襲ってしまえば、夜光蝶という噂話が本当に悪しき物になってしまう。故にいづなは気を引き締め、ケイは眼前の蝶に興味津々のボクスドラゴン、ポヨンに言った。
「やるぞ、ポヨン。気持ちは分かるが、仕事はしっかりなー」
瞬間、雷の霊力を帯びた斬霊刀で、鋭い突きを放つケイ。
そこに風の如く駆け、軽やかな跳躍から蹴りを見舞ったのはヒコだった。
音を殺して爪先から降り立ち、衣の袖を返すヒコ。すると、彼はこう嘯いた。
「夜光蝶。見事で美しい姿だと思うぜ。ただそうだな……」
少々お転婆が過ぎる分、淑やかさがちと足りない。
こう易々と現れて捕まれば、幻という謳い文句も霞むだろう。
「蝶ならばもう少し上手に隠れ手招き、人を翻弄させるもんだ」
まるで釘を刺すように、言葉で蝶を煽るヒコ。
「ねえ可愛い子、私と一緒に宝物を見つけましょう?」
そこにミネットが紡いだのは、とある物語の一節だった。悪戯好きな姉猫の尻尾を追いかけた仔猫が、街で一番高いモミの木の元まで辿り着く物語。
二匹が見つけたのは、親猫にも内緒の宝物。
「……一番星をみつけたの」
それをミネットが読み上げた瞬間だった。
星に照らされたかの如く冴え渡る、後列の面々の感覚。
するとミネットは蝶を見て、やはり少しだけ残念そうに囁き、
「これもオシゴトですもの、がんばりますわ」
「わたくしも、神子のはしくれ、やすやすとまどわされはいたしませぬ!」
一番星の恩恵を受けたいづなも、蝶の眼前で腕を大きく振り被った。
犬耳と同じ色に変化した獣の腕。しかし、小さな腕と侮るなかれ。
今宵担う役目が常ならぬ攻め手でも、いづなの心は揺らぎはしない。
「わがちから、まもるのみにあらず。うちはらい、たちきってみせましょうぞ!」
思い告げる少女に続いたのは、武器を具現化して勇ましく戦うミミックのつづら。そうして連撃が続く中、香鹿は小さく呟いた。掌に集めた、満月に似たまあるい光球。それは綺麗な光であると同時に、香鹿にとっては少しだけ怖いもの。
「……ちょっぴり、力をかして、ね」
けれど、香鹿は月の力をその身に宿した。
頭に飾った角のような花木の枝から、地につけた足の先まで、柔らかな光に包まれて高まる香鹿の力。そんな香鹿の立つ中衛を飛び越え、十輪子のケルベロスチェインが前方へと翔け抜けた。十輪子の鎖は蝶を穿つものではなく、守護の魔方陣を描いて仲間の守りの一助となり、片や狙撃手となって技の精度を高めた郁が放った鎖は、舞い踊る蝶を捕まえる為に飛来した。まるで籠に囚われて慌てふためくように舞う夜光蝶。
その翅から零れる鱗粉の煌めきに、郁はこう呟いた。
「――ユラにも見える? 星の砂のようね」
手は止めず、それでも視線は蝶の元に。
すると十輪子も、くるくる回る蝶を見つめた。
「図鑑に、のってない、チョウチョさん。幻の、チョウチョさん」
蝶の翅から零れるのは、十輪子が想い描いたように、きらきら瞬く星の輝き。
それが舞う姿を見て、理央は幼い頃を思い出していた。
機械仕掛けの蝶を造るのが好きだった、彼のこと。
その蝶が舞う特別な温室に、自分だけが招かれた時の気持ち。
そして血に染まった己の右腕に、無数の蝶が群がる夢を。しかし今この時においては夢ではなく、理央の拳には無数の蝶が集まっていた。それは理央のオーラが象る幻影であり、美しくも残酷な親友との絆の象徴。そうして右の脇を締め、心を研ぎ澄ましたその瞬間、
「――覚悟しろ」
理央は拳を打ち放った。
ロンズデーライトをも砕く拳。
たとえその輝きが、己が心さえ縛り兼ねないものであろうと。
●夜に舞うのは
必要に応じて攻守の術技を使い分け、優勢を維持する一同。
仲間達の治癒で攻撃に専念していた理央は、惜しみなく体技を披露した。オーラを覆う拳に力を込め、敵の懐に入る理央。その拳が音速を越え、群れを抉るように打ち込まれる。
「飲み込まれるわけにはいかないからね、休まずいくよ」
対し、攻め手から崩そうと前衛を狙い続ける夜光蝶。
しかし、態勢を整えるべく蝶が治癒を施すと、
「念仏を唱えな。それとも、辞世の句でも詠んでみるかい?」
ケイは刀を鞘に収めた途端、瞬く間に抜刀した。
桜吹雪を伴う居合の一閃で、蝶の群れを斬り裂いたケイ。そして間髪を入れずに納刀すると、巻き上がる風は戸惑う蝶を捕え、風に遊ぶ桜吹雪は炎と成りて燃え上がった。
その光景にケイが思い出したのは、自分のした噂話。
人の血を啜る吸血蝶。すると、ケイはこう言った。
「魔女の作り出した蝶には、相応しい話だったかもな。だが」
一花が本来思い描いた蝶は、人を襲うものではない筈。そして、そんな一花を救う為に、十輪子も巡りの中で訪れた攻めの機会を逃さずに、古き言葉を紡ぎ始めた。
十輪子が零す詠唱に合わせて、膨らみ続ける魔法の光。
やがてその光は前方へ爆ぜるように翔け、光る蝶に直撃した。
傷付いた翅から零れる光。それは宝石や星のように輝いているけれど、
「零れる、お星さまは、誰かの、命。持ち主さんに、返してあげないと、ね」
そう囁き、子守唄のように柔らかな音を口遊む十輪子。すると、ミネットは星辰を宿した二つの剣で十字を刻んだ直後、ぽつりとこう呟いた。
「……こう思うのは、ミミのわがままかしら」
このまま消えてしまうのが、勿体無い。
けれど、同時にミネットはこうも思う。
「でもね。わたくしは、どこかにいると信じていますの」
今宵の蝶は魔女の見せる幻だけど、きっとどこかに蝶はいる。
「だって、そう思っていたほうが毎日が楽しいわ、きっと」
まるで秘め事を明かすように、大切に思いを紡いで笑むミネット。
直後、郁は距離を詰めるべく疾走し、螺旋を籠めた掌で蝶に触れた。
「幻は幻のまま、夢は夢のまま。誰も傷つけない泡沫の夢幻で、終わらせよう」
内部に螺旋の力を流され、痛みの分だけ鱗粉を零す蝶。そこに郁はそっと手を伸ばしたが、蝶の粉は掌に触れた途端、溶けるように消えていく。暑さも冷たさも与えず、儚く消えゆく光の幻。その光の余韻を見つめる郁の瞳に映されたのは、瞳を閉じる香鹿の姿だ。
「まぼろしなら、いっしょに。朝を焼いて、ゆめからさめよう」
香鹿が想い馳せるのは、星の銀貨の物語。
全てをなくした少女が幸福を祈る時、空から星が降り注ぐ。
それは少女を幸せに導く為に、天が授けた銀貨の流星。
「――きみの、しあわせをねがうよ」
それを体現するかの如く、戦場に降る数多の星。
やがて蝶が再び群れを成して己を癒すと、
「いざや共に参らむ、昼ひなかの天座す霜と呼ばれしや……」
奉る神、清き宮の護り部へと、いづなは祝詞を奏上した。
高らかな柏手をふたつ響かせれば、現れ出づるは月の姫、月の彦たる雌雄二頭の子狼。それらは仲睦まじくいづなの両傍に並び立ち、
「しろがねの爪牙打ち鳴らせ! わがぬしさまのいかり、ふれてみおおせ!」
神託の元、一陣の銀風と化して夜光蝶を斬り裂いた。
だが一方で、後ろ髪を引かれる想いを抱くいづな。
(「ああ、きえてしまわないで――、ほんとうは」)
本当であれば、連れて帰ってしまいたいのに。
それでも、手を伸ばしたい思いを抑える娘の横、ヒコは先の一撃で勇姿を見せた三毛猫の錦を杖へと戻し、双翼の羽ばたきによって辻風を巻き起こした。
「東風ふかば にほひをこせよ 梅の花――……忘れるな、この一撃」
一夜のうちに千里を翔け、懐かしい香りを抱いて舞う春の風。
瞬間、春を告げる為に綻ぶ花、馥郁たる梅花の香りと共にヒコは跳躍し、降下の勢いそのままに輝く蝶を蹴りつけた。それが、最後の一撃となったのだろう。
蝶の姿が皆の前から消えていく。すると、ヒコは餞の代わりにこう告げた。
「何れ夢などではなく、ホンモノになる事が出来たなら覚えて置くんだな」
次に見舞える事があれば、その時はこちらも、梅花を差し出してやるからと。
●いつか
「ちょっぴり探検、してもいい?」
「植物園は閉園してるが、道すがらなら構わないよな」
夜に咲く花を探しに。そんな香鹿の提案に乗って、往路とは別の道を進むケイ。
その景色に、郁は故郷の山々を重ねながら歩いていた。
森に咲く花にそっと頬を寄せ、花の香りを楽しみながら思いを馳せる郁。
月明かりを浴びた花に惹かれる自分達も、思えば夜光蝶のようであると。
「お疲れ様、ユラ。今夜はきっと綺麗な夢が見られそうね」
そんな自分の姿を真似た玉響の頭を撫でて郁は微笑み、ミネットや十輪子も花を見つめながら、時折足を止めている。そんな仲間達と逸れないように、歩調を緩めるヒコと理央。
その時、いづなは森の奥を見つめていた。
「……ちょうちょ、さん」
今宵のあれは、夢の繭から生まれた蝶。けれど、
「――どこかにいてくださると、わたくしは」
いつかまた。そう願い閉じた目蓋の裏には、まだ蝶の輝きが残されている。
作者:彩取 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年9月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 0
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