井戸の底にはヤツがいる!

作者:ハル


「井戸の底から幽霊……ねぇ。お話的には王道だけれど……」
 昏い……昏い……底の見えない井戸を覗きこみつつ、少女は呟いた。
 ――――この井戸の底から幽霊が現れる。そんな噂が、まことしやかに流れているのだ。
「いるならどんな姿をしているのかな……ともかく、オカルト好きとしては放ってはおけないわよね?」
 言いつつ、少女はカシャリと井戸の周辺、そして中へとカメラを向け、シャッターを切っていく。
 すると、サァーと、冷たい風が吹いた。
「……っ!」
 その風に、少女は何かよからぬ予感を抱いたのか、痩身をブリルと震わせる。
「そ、そろそろ帰ろう!」
 恐怖に囚われた少女は井戸に背を向けた。
 その背に、
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
「……ぇ?」
 声と共に、少女の心臓を一突きする鍵。
 崩れ落ちる少女の変わりに井戸の前に佇むのは、第五の魔女・アウゲイアス。そして――――。
 ミシリミシリと音を立て、井戸をよじ登ってくるのは……長髪で顔を覆い、その隙間から覗くのは真っ赤な瞳……それに加え、異常な程に白い肌をした女の姿だった……。


「……似たような幽霊が出てくる映画を昔見たのを思い出してしまいました……」 
 恐怖に頰を引き攣らせた、セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は、鼓動を落ち着かせるように、深呼吸を一つしてからケルベロス達に向き直る。
「佐竹・駒(ケルベロスの人間離れ・e29235) さんの懸念通り、不思議な物事に強い『興味』をもって、実際に自分で調査を行おうとしている人が、ドリームイーターに襲われ、その『興味』を奪われてしまう事件が起こってしまったようです」
 元凶となるドリームイーターは姿を消しているが、井戸から現れる幽霊の噂を元に生み出されたドリームイーターは健在だ。
 当のドリームイーターの姿形だが、やはり某有名ホラー映画が元になっていると見て間違いないだろう。
「どうか被害が出る前に、このドリームイーターを撃破して下さい! また、ドリームイーターを倒す事ができれば、『興味』を奪われてしまった被害者も、目を覚ましてくれるはずです!」
 セリカは資料を捲り、
「ドリームイーターは、真っ赤な瞳で睨むことで冷静さを失わせたり、知識を奪って動きを拘束する、または鍵で切り裂くといった攻撃方法を主にとってくるようです。また、ドリームイーターは人間を見つけると『自分が何者であるかを問う』ような行為をして、正しく対応できなければ殺してしまうという性質を持っているようです」
 正しい解答を示せば見逃してもらえるが、そう上手くいくものでもないだろう。正しい解答を示せなかった場合は、より積極的に襲ってくるが、どちらにせよ結果は同じで倒すしかない。
「それに加え、ドリームイーターは自分の事を信じていたり噂している人が居ると、その人の方に引き寄せられる性質があります」
 現場となった井戸について、妄想を想像を膨らませるといいかもしれない。
 井戸の傍は荒れ地で足場が悪いが、すぐ近くには足場のいい空き地もある。
「ドリームイーターは恐ろしい姿をしているようですが、どうかそれに負けず、被害者の少女を助けてあげてください!」


参加者
七海・渚(真夜中・e00252)
草火部・あぽろ(超太陽砲・e01028)
瀬戸口・灰(忘れじの・e04992)
ヒマラヤン・サイアミーゼス(カオスウィザード・e16046)
ジェミ・ニア(星喰・e23256)
錆滑・躯繰(カリカチュア・e24265)
植田・碧(紅の癒し・e27093)
佐竹・駒(ケルベロスの人間離れ・e29235)

■リプレイ


 シンシンと夜が更けていく。辺りは真っ暗で、足元さえ覚束ない、田舎の山間部。
「ランプ点けましょーか」
 ヒマラヤン・サイアミーゼス(カオスウィザード・e16046)が言いながら、手元に用意してあったランプを灯す。
 その灯りによって夜闇に浮き上がるのは、ヒマラヤンを含めて6人の姿。
「オカルト好きな女の子はやっぱり多いわね」
 いかにも平気な風を装いながら、目を凝らせば肩を強張らせている植田・碧(紅の癒し・e27093)。
「幽霊ねぇ」
 呟きながら、錆滑・躯繰(カリカチュア・e24265)は厭世的な視線を井戸の方角へと向けている。
「本物なんでしょうか?」
 躯繰の視線を追うように、白のチャイナドレスに黒のタイツを着用した佐竹・駒(ケルベロスの人間離れ・e29235)が、ポツリと言葉を漏らした。
「まさか、呪いのビデオがある訳じゃあるまいし」
 それを草火部・あぽろ(超太陽砲・e01028)がすぐに否定する。
 だが、オカルトは確かに存在する。その事は、彼らが誰よりもよく知っている。
 要は、その正体が何であるかだ。デウスエクスならば、容赦はいらないので楽ではあるが……。
「ゆーれーですか? いますよ、私よく見かけますから」
 その時、ヒマラヤンが何気なく告げた一言に、巫女であるあぽろ以外の一同は凍り付く。
「……サイアミーゼス……さん?」
 碧が「冗談でしょう?」とばかりにヒマラヤンの顔を見ると、ヒマラヤンは不思議そうに首を傾げた。それで、その言葉が冗談ではないと理解した。
 サァーと、冷たい風が吹いた。
 ウイングキャットのスノーとヴィー・エフトが無邪気にじゃれ合っている。それだけが、暗い闇の中での唯一の癒やしだった。
「えっと、彼女は大丈夫でしょうか?」
 必要も無いのにおどろおどろしい空気になってしまったので、方向転換をするべく駒が言う。
 そこから少し離れた場所にて、被害者の少女は寝かされていた。
「大丈夫みたいだねぇ」
 何も異常がない事を確認して、躯繰が笑いを浮かべる。それは、比較的恐がっている碧と駒を面白がっているようで、二人は罰が悪そうに視線を逸らす。
 ともかく、準備を終えた五人のケルベロスは、ディフェンダー陣が敵の引きつけを完了する時を息を潜めて待つのだった。
 

「この近くにも井戸あるんだそうですね」
 井戸のすぐ傍の空き地にて、チラチラと井戸の方を振り返りつつ、ジェミ・ニア(星喰・e23256)は言った。
「そうみたいね……。それに、こう暗くて人気がないと、何だか怖いよね……。あの……井戸の底から幽霊がってやつ……ほんとに出てきたらやだなぁ……」
「確かに暗くって深くって……井戸って何かが出てきそうな感じはあるんですよね。得体のしれないものが這い上がって来そう」
 七海・渚(真夜中・e00252)とジェミの言う通り、近くの井戸には独特の雰囲気というか、気配がある。本当に、何かが這い出てくるかもしれない……そう人に感じさせる何かがあるのは確かだった。
「井戸は死後の世界に繋がってるって話もあるんだったか。確かに何か出てきそうな雰囲気はあるが、そんなまさか……まさか、な」
 そう言いつつ、念のために殺気の波を放つ瀬戸口・灰(忘れじの・e04992)は、どこか落ち着かない様子だった。幽霊はいないと内心では否定しつつも、断定する事はできない。
 何か音がしないかと耳を澄ますと、まったく関係ないものまで恐ろしく感じてしまうから不思議だ。
 井戸から這い出てくる幽霊と聞いて、多くの者はアノ有名映画を思い出すことだろう。
 だが、例外的に渚にとってはそうではないようで、
「(私にとって井戸から現れる幽霊っていうと、子を求める幽霊なんだよね。あの、ゴーストをハントするやつ)」
 渚の脳裏に浮かぶのは、幽霊に加えて役立たずの巫女さんの姿。渚の口元に、クスリと淡い笑みが浮かんだ。
「ど、どうした?」
 突然笑みを浮かべた渚に、灰が怯えたように問いかけた。すると、渚は自分が笑みを浮かべたことを自覚して、「あっ、なんでもないですよ、瀬戸口さん」と軽く誤魔化して、気を引き締めた。
 そして、その時――――。
 ……ズリ、ズリ……ズリ、ズリ……。
 何かが地面を這いずるような、不気味な音。その音は灰のみならず、ジェミと渚の耳にも確かに届いていた。
 ……ズリ、ズリ……ズリ、ズリ……ズリ、ズリ……ズリ、ズリ……!
 その音は、一歩一歩、だんだんと近づいてきている。
「……聞こえますよね?」
 堪らず、ジェミが仲間に問う。渚はゴクリと生唾を飲み込みながら頷き、灰は明らかに視線を泳がせつつ頷いた。
 その足音ならぬ怪音は、もうすぐ傍まで近づいてきていた。だが、ふいに停止する。その訳を考えて、ハッとしたジェミはハンズフリーライトで辺りを照らす。
 まず目に入ったのは、地面に付着した液体だった。夜闇のせいで、その液体が何か最初こそ分からなかったが、すぐに気付く。
 ……血だった。
 そして、ジェミが自分のすぐ足元を照らすと、そこに真っ赤な瞳が爛々と輝いており……。
「きゃっ!?」
「う、うおっ!」
 渚と灰……そしてジェミは慌ててその場を飛び退いた。
 身体を覆う長髪に、その隙間から垣間見えるのは、ファンデーションを塗りたくったかのような、異常なまでに白い肌。
 それは、間違えようもなく、例のドリームイーターだ。
 ドリームイーターは、
「く、か、ああ゛、げッ……」
 そんな奇妙で理解不能な言語を繰り返し発しながら、折れそうな程に細い指で地面に何か文字を書いていく。
 その内容は――――私は何者? ……そういった意味だ。
 さて、それに対しどういった解答を示すのか、先陣を切ったのはジェミであった。
「それは見た目通りの者ではない、ということですか。では、ズバリ! あなたは男性ですね!?」
 ジェミは自信満々に、背後にズバーン! というオノマトペを浮き上がらせそうに勢いで言い切る。
「ア、ア……あ゛あ゛?」
 それに対し、ドリームイーターはまるでヤンキのようにドスを聞かせて不機嫌を露わにする。
「えっと、井戸の底から這い出た幽霊ですよね……?」
「いやいや、井戸の中に住んでる井戸マニア……は冗談として『井戸の管理者』なんてどうだ?」
 ジェミが先陣を切ってくれたおかげで、緊張感が些か和らいだおかげか、渚と灰も後に続いた。
「く、けけけけッ……ガァ……おげげ、んがっ!」
 その瞬間、ドリームイーターが瞳に明確な殺意を宿すのが分かった。伏せた体勢からバネ仕掛けのように跳び上がり、手にした鍵で斬りつけようと迫ってくる。
 そこへ――――。
「俺は巫女だぜ? 呪ってみろよ、逆に跡形もなく成仏させてやる」
「くけっ?」
 唐突に、ドリームイーターの不意を完璧について、あぽろの声は夜闇に響いた。無防備なドリームイーターの背後に、緩やかな弧を描く斬撃が叩き込まれる。
「げげ……かはっ?」
 何が起こっているのか、ドリームイーターは未だに理解できていないようで、疑問符を頭にいくつも浮かべている。
 ならば、手を休める暇はない。
「……もう夏も終わりよ? 自分のあるべき所へ帰りなさいな」
 本物の幽霊でなかったことにホッと安堵しながら、碧はカラフルな爆発を発生させて攻撃陣の力の底上げを促す。同時に、スノーが羽ばたきで邪気を払った。
「前を見て、敵を睨め付け、討ち滅ぼすべき悪を視て。目を逸らさず立ち向かい、ただひたすらに蹂躙せよ」
 浪々と紡がれるのは、渚の古代語による詠唱。地面の魔法陣から光が立ち上り、前衛を包み込む。
 仲間の援護によって、力の充実と視覚聴覚が研ぎ澄まされていくのを感じながら、躯繰がドリームイーターを派手に返り血を浴びながら切り裂き、
「お焚き上げなのです!」
 ヒマラヤンが掌から「ドラゴンの幻影」を放つと、ドリームイーターから派手に火柱が上がった。
「そこで痺れていなさい!」
 そこへ、さらなる追撃。駒の電光石火の蹴りが、ドリームイーターの頭部に綺麗に入った。ドリームイーターは吹き飛び、数度地面をリバウンドしてようやく停止する。
 だが、同時にドリームイーターは現状を把握し始めていた。
「イヒヒヒヒッ!!」
 土煙を上げながら、地面を高速でドリームイーターは這いずり、改めて鋭い鍵を夜闇に光らせ、ジェミに向かって飛びかかる。
 ジェミはそれを真っ向から受け止めた。
「結局男性なのですか? 女性なのですか?」
「いい゛あ゛!」
 答えがない。……もしかしたら答えているのかもしれないが、理解できなかったら意味がない。ジェミはこういう輩の行動パターンをインストールしなくて良かったと心から思いながら、傷を負いつつもそれが致命傷にならないようドリームイーターを投げ飛ばし、仲間を聖なる光で包んだ。
「それだけボコスカ殴られてたら安心だな」
 投げられた先にいたのは灰だった。灰にとって、幽霊かそうでないかの違いといえば、殴れるか殴れないかが大きい。ゆえに、お前は幽霊などではないと断じ、灰は炎を纏った激しい蹴りをドリームイーターに見舞うのだった。


 一進一退の攻防は続いている。だが、それはあくまでも一対一ならばいう前提での話。ケルベロス8人を同時に相手取り、かつ回復手段を持たないドリームイーターの体力は、着実に削られている。
「コード・トーラス! これで殴られたら痛いですよ!」
 ヒマラヤンは、両手に纏ったオーラを遠隔操作可能な巨大ガントレットに変える。これにより、ヒマラヤン自身の非力さは問題にはならない。ヒマラヤンがドリームイーターを殴る仕草を見せると、ガントレットは瞬時に反応し、ドリームイーターを殴り飛ばした。
 ゴロゴロと転がるドリームイーターに向け、躯繰が「ドラゴンの幻影」から炎を放つ。
 いつの間にか、駒は燃え盛るドリームイーターの正面に立っていた。
「降魔の力を宿した一撃を受けなさい!」
 鋭く空気を切り裂く駒の蹴り。それに伴って、降魔の一撃が放たれようとする。
 だが――――。
 同時に、駒はドリームイーターの冷静さを喰らう真っ赤な瞳と目を合わせてしまう。襲いかかる赤いモザイクを防ぐべく、駒は咄嗟の判断で降魔の一撃をモザイクにぶつけるべく軌道を変えた。
 だが、ほんのコンマ一秒間に合わず、降魔の一撃はドリームイーターの僅か脇を抉り、駒はモザイクに心を食い荒らされる。
「佐竹さんっ!!」
 攻撃を受け、冷静さを保てなくなっている駒に、碧がオーラを溜めて回復をはかる。
「ヴィーくん!」
「夜朱、頼んだ!」
 これ以上のドリームイーターの追撃を防ぐため、ヴィー・エフトが尻尾の輪を飛ばし、夜朱が白い翼を羽ばたかせる。
「ギギギギギ、ギギギギギギギ!!」
 ドリームイーターは思い通りにいかない戦況に、ギリギリと歯ぎしりをする。
 その赤い瞳が碧を捉えた。恐らくは、ケルベロス唯一のメディックである碧が邪魔であると判断したのだろう。
 狙いを定めると、ドリームイーターの動きは素早い。
「ギエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッ!!」
 甲高く怖気の走るような奇声を上げながら、這いずって碧に突撃する様は、まさしく化け物。
 碧の背後に回ったドリームイーターは、先程の赤ではなく、黄色いモザイクを瞳から放出した。それは、痺れを誘発させるもの。動きを拘束して、集中的にラッシュをかけようという魂胆なのだろう。
 しかし、そんなドリームイーターの思惑はすぐに崩れ去ることになる。
「やらせません!」
 ジェミが、碧を庇いに入ったのだ。その身を走る苦痛と痺れにも、ジェミは顔色一つ変えることはない。眼前の敵は最早未知の存在ではなく、特に珍しくもないデウスエクスでありドリームイーター。興味を示すような対象ではなくなっていた。
 ただ、オーラを溜めて己の回復をはかるのみだ。
 そして、そんなジェミの身体を飛び越える二つの影があった。渚と灰だ。
 卓越した技量からなる渚の一撃が、ドリームイーターの身体を宙に飛ばす。
 そして、宙に浮いて無防備なドリームイーターに、灰が「砲撃形態」に変形させたハンマーから竜砲弾を浴びせていく。
「……ギィ! アッカッ……ぎい゛い゛い゛い゛!」
 ドリームイーターの口から迸るのは、奇声ではなく苦痛の呻き。
「ホラー映画を見て知ってるぜ。怪異の弱点、そいつは圧倒的な光だ!」
 動けないドリームイーターの頭部に、あぽろは掌を突きつける。太陽神をあぽろの身体に降霊させた事により、その髪は太陽の如く目映い輝きを放っていた。
「喰らって消し飛べ! 『超太陽砲』!!」
 掌から轟音を立て、巫術と魔法の融合による火力の極致が顕現する。それは、極太の焼却光線。
 やがて、あぽろの髪の輝きが収まった頃、ドリームイーターがいたはずのその場所には、細胞の一つすら残されてはいなかった。


 周辺のヒールを終えて被害者の少女を寝かせた場所に戻ると、そこには目を覚ました少女の姿があった。
「大丈夫?」
「大丈夫ですか? 何処か痛い所は?」
 渚が声をかけながら、少女の服についた土や草などの汚れをはらい、ハンカチを差し出した。
 ジェミは少女の様子を伺い、どこにも怪我がない事を確認すると、ほっと安堵の息をつく。
「通りかかったらあなたが倒れていたので。何があったかは存じませんけど、お一人でこういう所に来られるのは危ないですよ」
 何がなんだか分からないといった少女に、駒が告げる。
 だが、このまま帰してしまうのも憚られた。今日の事など早くに忘れた方がいいが、また同じ事を繰り返してもらっても困る。
「好奇心旺盛なのは結構だが、あまり危険な事はするんじゃないぞ?」
「ご、ごめんなさい」
 言いながら、灰は少女に手を差し伸べて立ち上がらせる。
「噂に首突っ込むのも程々にしろよ? 洒落にならねーからな」
 言外に、この世にはおかしな事……それも普通の人間には手に負えない事がいくらでも、ハッキリと存在するのだということを伝え、あぽろは少女の背中を軽く叩く。
 少女はその言葉に何かを感じたのか、神妙に「はい」と頷いた。
「興味もほどほどにね。……それと、怖くないのかしら? 何か秘訣でもあるの?」
 碧は少女の心配をしつつ、同時に少女が一人でこんな山間部の井戸に来られた、恐怖を克服する秘訣に興味津々だ。
「こんな所にいつまでもいたら、風邪を引くのですよ? 危ないので、お家まで送ってあげるのです」
 ヒマラヤンが少女の肩を押す。
 その背に、躯繰がヒラヒラと手を振っていて、少女は改めてケルベロス達に頭を下げた。
「こ、混乱しててよく分かりませんが、あ、ありがとうございました!」
 今はそれでいい。少しして、落ち着いた時に反省してくれればそれでいいのだ。
 山間部らしく、冷たい風が吹く。 
 それは、とても気持ちの良い風だった。

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 4
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