ナースアイドル隊の危機!

作者:秋津透

 埼玉県所沢市。
 その日、この街の一隅にある小さなイベントスペースで、地下アイドルグループ「TOKOROZAWAナース隊」のライブが行われていた。
 グループのメンバーは三人。オーソドックスな白いナース服にナース帽姿のMIHO、小柄で金髪、ピンクナース服姿のSAORI、グリーンナース服姿で長身長髪のNAOMI。登場した当初はナースコスプレ愛好者を狙ったキワモノグループと見られていて、確かにその通りではあるのだが、「みんなを癒すナース隊!」というキャッチフレーズのもと暖かく奉仕的なファンサービスに努めた結果、大ブレイクとまではいかないが、確実に独自のファンを掴みつつある。
 その日のライブも、小さな会場で三十人ほどのファンを相手の小規模なものだったが、その分、盛り上がりは凄かった。
「ナース! ナース! ぼくらのナース!」
「ありがとう! みんな、ありがとう!」
 熱心に唱和するファンたちに感極まった声で礼を述べ、さあ、次のナンバーに移ろうとした、その時。
「ふふふ、はじめまして。私の名は、ギルビエフ・ジューシィ。『後宮選定者』とお呼びください」
 いったい、いつ、どこから入ってきたのか、白い背広の上下に白い帽子、ネクタイという姿の触手豚……オークが、慇懃無礼という言葉そのままの口調で告げ、名刺を差し出す。
「あなたがたの癒しの力は素晴らしい。ぜひ、わが主の『ドラゴンハーレム』に三人そろって参加され、繁殖に励んでいただきたい。もちろん、イヤだと言っても聞きはしませんが!」
「な、何をほざく、この豚野郎!」
 最前列にいたファンの男性数人が、憤然としてギルビエフ・ジューシィに殴りかかるが。
 次の瞬間、ギルビエフ同様、いつの間にか会場に入り込んでいた十体ほどのオークが、びゅんと触手を伸ばして、ファンの男性たちを文字通り粉砕する。
「ひ、ひいーっ!」
 返り血を浴びてしまったSAORIが、悲鳴をあげてへなへなとへたりこむ。同時にMIHOが、声を限りに絶叫する。
「みんな、逃げて、逃げてーっ!」
「し、しかし……」
 真っ青になりながらも、愛するアイドルを守ろうと踏みとどまるファンたちに、MIHOは更に叫ぶ。
「オークに連れて行かれるのはイヤだけど、みんなが死んじゃう方が、もっとイヤ! あたしたちには構わず、逃げて! 逃げてーっ!」
「くっ……必ず、必ず助けに行くから!」
 命が惜しいわけじゃないが、MIHOちゃんを悲しませるわけにはいかない。ファンたちは、男泣きに泣きながらその場を離れる。
「ふふふ、聞きわけの良いことで、重畳、重畳」
 嫌らしく嗤いながら、ギルビエフ・ジューシィは触手を伸ばしてMIHOを拘束し、他のオークが、気絶したSAORIと、茫然と立ち尽くすNAOMIを、それぞれ捕えた。

「埼玉県所沢市にギルビエフ・ジューシィというオークが十体ほどの配下を率いて現れ、ライブ中の地下アイドルグループを襲撃。邪魔をしようとしたファン数名を惨殺し、グループメンバーの女性三人を誘拐するという事件が、起きようとしています」
 ヘリオライダーの高御倉・康が厳しい表情で告げ、プロジェクターに地図と画像を出す。
「ライブ会場はここ、襲撃が行われるのは夕方から始まるライブの終盤なので、八時ごろでしょうか。今から行って充分に間に合うタイミングですが、ライブを中止したり、みなさん……ケルベロスが警戒していると悟られてしまった場合は、オークたちはおそらく現れず、他の場所を襲うでしょう。そうなったら、阻止する方法はありません。一般の人たちを危険に晒すのは心苦しいですが、オークたちが現場に現れるまでは、目立つ行動はできないと考えてください」
 そう言いながらも、康は苦しげな表情で続ける。
「ただ……ギルビエフ・ジューシィが現れたらすぐに、ファンの人が怒って喧嘩を売って……瞬殺されてしまうんですよね。これを阻止するには、事前にライブ会場に入っていなければ無理ですが……何というか、目立った行動をしたり、容姿そのものが目立つものだったり、サーヴァントを連れていたりすると、ケルベロスだとバレる可能性があります。地下アイドルのファンは、ほとんど地球人の男性で、何というか、あまりぱっとしない容姿の人が多いので……そこに違和感なく紛れるのは、工夫が必要かもしれません」
 そう言って、康は小さく溜息をつく。
「最初の瞬殺さえ防げれば、アイドル自身が、ファンに逃げるよう呼びかけてくれます。とてもファンを大事にしている、けなげな女性です……だからこそ、ファンに犠牲を出すことなく助けてあげたいんですが……オークが警戒して出て来なかったら、彼女たちは助かっても、他のどこかで犠牲が出てしまいます。それでは意味がない……」
 無理を言って申し訳ありません、どうかよろしくお願いします、と、康は深く頭を下げた。


参加者
戦場ヶ原・将(ビートダウン・e00743)
上月・紫緒(テンプティマイソロジー・e01167)
アルメイア・ナイトウィンド(星空の奏者・e01610)
レイ・ジョーカー(魔弾魔狼・e05510)
彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)
睦月・冬歌(やらしく治療したい・e15558)
雪乃城・菖蒲(純白舞武・e22721)
レピーダ・アタラクニフタ(窮鼠舌を噛む・e24744)

■リプレイ

●刹那の攻防戦
「ナース! ナース! ぼくらのナース!」
「ありがとう! みんな、ありがとう!」
 大盛り上がりに盛り上がっている、地下アイドルグループ「TOKOZAWAナース隊」のライブ会場。
 その最前列に入り込んでいる四人のケルベロス、戦場ヶ原・将(ビートダウン・e00743)レイ・ジョーカー(魔弾魔狼・e05510)彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)レピーダ・アタラクニフタ(窮鼠舌を噛む・e24744)のうち、隠密気流の効果で目立たない状態の将、レイ、悠乃の三人は、油断なく周囲の気配を窺う。
 なお、隠密気流が使えないレピーダだけは他のファンと一緒に盛り上がっているが、それが万が一にも不審を抱かれないよう周囲に溶け込む演技をしているのか、それともついつい熱い雰囲気に浸っているのかは、定かではない。
 そして、不意に悠乃が動いた。
「見えましたっ! ここっ!」
 小さく告げ、悠乃がステージ前に飛び出す。そして、次の瞬間、その場に出現した白いスーツ姿の触手豚……ギルビエフ・ジューシィに、回避不能な必殺技『刹那の知らせ(セツナノシラセ)』を叩き込む。
 しかし、攻撃が命中したか、しないか、誰にも分からないタイミングで、白スーツのオークは再び姿を消す。そして、慇懃無礼な嫌らしい声だけが、ライブ会場に響き渡った。
「これはこれは……まさかここで待ち伏せとは、さすがケルベロス、侮り難し。しかし私とて、そう簡単に罠に嵌りはしません。何人いるのか知りませんが、我が精鋭たちを阻めますかね?」
「くっ!」
 身構える間もあらばこそ、ギルビエフ同様空間から湧いて出たとしか思えないオーク十体が、一斉に悠乃へと触手攻撃を仕掛ける。
「させるかっ!」
 やはり隠密気流を使って横手に潜んでいたディフェンダーのアルメイア・ナイトウィンド(星空の奏者・e01610)が、悠乃を庇って飛び出し、四本の触手の直撃を受ける。悠乃自身も、防御し、躱すが、三本の触手に手痛く打たれる。
「こ、これは……」
「君たちを攫おうとして、デウスエクスの手先、触手豚オークが襲って来たんだ!」
 立ちすくむナース隊の前へ飛び出し、レイが口早に告げながら、愛用のリボルバー銃『冥淵銃 アビス』『魔狼銃 フェンリル 【The Second】』を撃ち放つ。
「俺たちは、ケルベロス! オークは俺たちが倒す! 皆に逃げるように告げてくれ! そして、君たちも外へ逃げるんだ!」
「はいっ!」
 うなずいて、白衣のナース……MIHOが叫ぶ。
「みんな逃げてっ! 急いで逃げてっ! あたしたちもすぐに逃げるから、先に逃げてっ!」
「わ、わかった!」
 MIHOの呼びかけを受け、ファン一同は素早く出口に向かう。すると、姿を消したギルビエフの声が、配下に指示を出す。
「逃げる人間どもは放置して、まず小癪なケルベロスを倒すのです。ただし、アイドルを逃がしてはなりませんよ」
「……好き勝手ほざきやがって」
 唸りながら、アルメイアは手にしたバイオレンスギター『Starlight Himmel』を掻き鳴らす。
「救済など求めない 終焉など認めない ただ牙だけを求め続ける 甦れ 蘇れ 黄泉帰れ 黄金郷は輝き続ける 今 再臨の時♪」
 アルメイアオリジナルの治癒歌『黄金郷の再臨(リベンジ・オブ・エル・ド・ラド)』が発動、黄金の粒子が悠乃を癒やす。
「す……すごい、本物の治癒歌だわ……」
 目を見張るNAOMIに向かって、レイが吠える。
「おい! 驚いてないで、早く逃げてくれ!」
「で、でも、あの魔物たちは、あたしたちを狙っているんですよね? なのに、みんなと一緒に逃げたら、魔物の攻撃を引き寄せることになって、みんなを巻き添えにしちゃいます!」
 真顔でMIHOが応じ、レイは一瞬詰まる。そして将が、にやりと笑う。
「ああ、正解だ。この世界中に、俺たちケルベロスの背後ほど安全な場所はない。ケルベロスが希望をもたらすヒーローなのと同じく、あんた達アイドルもまた希望なのさ!」
 安心しな、必ず護る、と言い放って、将は数枚のオリジナルカードを取り出す。
「オープン・ザ・ゲート! フューチャライズ! 数で攻めようったってそうはいかねえ。この戦場……掌握するのは俺だ!」
 雑魚相手じゃ物足りねーが、俺は油断も隙もないぜ! と、将は初手から必殺技『絶対戦術(コントロール・ストラテジイ)』を繰り出す。
「そのアクションを封じる。そのテキストは打ち消す。そのカードは無効だ。抵抗は許さない」
 こいつらにゃ少々勿体ねーが『絶対戦術』は誰も逃さない、と、呟きながら、将はオークの群れへとカードを飛ばす。ハンデス。ランデス。ロック。タップ。カウンター。数多あるカードの中から「封じる」「打ち消す」「無効化する」ものを組み合わせ、相手の行動を一切阻害する戦術が発動、何体かのオークが硬直する。
「……凄い! 凄い、ケルベロス様! かっこいい! 最高!」
 ピンクナース服姿のSAORIが、両眼をハートマークにして叫ぶ。
 そしてレピーダが、変装用の帽子と眼鏡、マスクを一瞬で外し、オークたちの前に立ち塞がる。
「キュッキュリーン☆ ケルベロスにしてアイドルのレピちゃん参上です! 同じアイドルの危機に黙ってはいられません☆」
 パラソルのようでもあり、バールのようでもある何か……勇者の武器エクスカリバールを軽やかに振りかざし、レピーダはオークたちに言い放つ。
「力づくってのは感心しませんね? そんなんだからいつまでたってもドラゴンなんかの配下どまりなんですよー。ヴァルキュリパワーで、灰燼に帰しなさい!」
 それゆーたら、あんたらヴァルキュリアだって、エインヘリアルなんかの配下どまりだったろーが、とオークが思ったかどうかは知らないが、レピーダは委細構わず全身から激しく発光し、強烈な突撃で一体のオークを完全に吹っ飛ばす。
 そして、出口脇で避難するファンを誘導していた雪乃城・菖蒲(純白舞武・e22721)が、少々癖のある口調で告げる。
「ファンのみなさんは、おーむね無事に逃げたみたいですにゃ。これから、外で待機してたケルベロスの増援が入って来ますにゃ」
「ブ……ブヒ?」
 ケルベロスを一人も倒せないまま、仲間の一体を倒され、オークたちは指示を仰ぐ……あるいは救いを求めるように虚空を見上げる。
 しかし、もはやギルビエフ・ジューシィは、声すらも送ってこなかった。

●雑魚はしょせん雑魚
「しつにゃいでテンペスト招ぶの初めてにゃね、ちょっと小さく呼ぶかにゃ?」
 呟いて、菖蒲はオリジナルの必殺召喚符『【暴風竜テンペストの息吹】(ボウフウリュウテンペストノイブキ) 』を取り出す。
「今こそ、我が前にて現れ吹き荒れよ、汝は大気に満ちて大地を覆う者……契りに従い大いなる力の一端を貸し与えたまえ、暴風の主テンペストよ」
 別人のように重々しい口調で菖蒲が召喚呪文を唱えると、小さいが強力な旋風が生じる。
「さてさて……あのオーク斬り刻むにゃ、女にゃの敵に容赦にゃしにゃ!」
 命令一下、生きた旋風は手負いのオークに襲いかかり、その体表をずたずたに裂く。
「ギアアアアアッ!」
 絶叫する血みどろのオークを見据えながら、悠乃はアルメイアに治癒術を施す。
「ありがたいけど……あいつ潰す方が先じゃね?」
「いえ、敵が最後の一体とか、タイムリミットがあるとかいうなら別ですけど、この場合は味方を癒やす方が優先です」
 攻撃手は他にもいますし、と、悠乃はレイを見やる。青年は小さく苦笑し、目にも止まらぬリボルバー銃の早撃ちで、二体目のオークを斃す。
 そして次の瞬間、残った八体のオークのうち硬直した二体を除く六体が、悠乃へと触手攻撃を行う。再びアルメイアが悠乃を庇い、更に出入口から猛然と走り込んできた一輪バイク……レイのサーヴァント『ファントム』が、悠乃とアルメイアを庇う。結果的にオークの攻撃は分散し、悠乃が一撃、アルメイアが二撃、『ファントム』が同じく二撃受けたが、致命的な傷にはならない。
「……やってくれたな」
 低く唸ると、アルメイアは手負いのオークをエクスカリバール『Metal Messiah』でぶん殴る。
「ちょいと地獄を見て行けや、豚野郎ッ!」
「グヒイッ!」
 まともに頭蓋を砕かれ、オークは血を噴いて昏倒する。
 続いて『ファントム』が別のオークに体当たりをかけ、階段を駆け下りてきた上月・紫緒(テンプティマイソロジー・e01167)が、そのままの勢いでドラゴニックハンマーを叩きつける。
「グアバッ!」
 手負いとはいえ、オークの上半身が一撃で完全に潰れ、血泥の塊と化す。
「さあ、オークさん、こっちこっち。私の愛を、全身で受け止めてくださいね」
 妖艶だが、どこか怖い笑みを浮かべて紫緒が告げ、オークたちは顔を見合わせる。これがもっと欲望丸出しタイプなら、身の破滅でもヒャッハー突撃したかもしれないが、幸か不幸か、たぶん不幸だが、このオークたちは本能より上位者の命令に従うよう調整されているらしい。
「ああ、逃げられはせんさ……雑魚は雑魚らしく、為すすべもなく滅びるがいい」
 一転して冷やかに告げると、将は眼鏡に手をかける。きらり、と瞳が妖しい光を放ち、残った六体のオークの動きが、明らかにおかしくなる。
「キュッキュリーン☆ ヴァルキュリパワー攻撃第二弾、いきますよー☆」
 レピーダが宣告し、エクスカリバールで殴りかかる……と見せかけて、いきなり柄からナイフを引き抜き、オークの喉笛をかっさばく。
「ひいい、血、血がぁ……」
 相次ぐスプラッタ攻撃に、SAORIが引き攣った声を出す。すると紫緒が、怪訝そうに尋ねる。
「あら? ナースなのに血が苦手なんですか?」
「はい……ホントはそれで、ナース辞めちゃったんです……ナースアイドルならだいじょぶかなと思ってたんですけど、甘かったですね」
 SAORIが消え入りそうな声で応じ、MIHOが困ったように告げた。
「SAORIは……あの、つらい経験をしているんです。血が苦手なのも、そのせいで……」
「わかった。皆まで言うな」
 そう言うと、将はSAORIの手をぎゅっと握る。
「大丈夫、もう何も怖いことはない。君が困った時は、最強無敵のフューチャライザー・ジェネがいつでも駆けつけるぜ」
「ううううう……ありがとうございます……」
 べそべそと泣きだすピンクナース服のアイドルを、将はいつになく優しい表情で見やる。
 その間に、待機していた最後のメンバー睦月・冬歌(やらしく治療したい・e15558)が階段から降りてきて、ダメージのある悠乃、アルメイア、『ファントム』に、オリジナルの列治癒魔法『トリプルW(ウィンターワンダーワンド)』を施す。
「冬の魔法で楽しくなれーっ♪」
「……いや、さすがにちょっと、時期的に早すぎゃせんか?」
 治癒してもらったのはありがたいけど、と、アルメイアが突っ込むと、冬歌はにっこり笑って応じる。
「んーとね、暑い時期だからこそ、冬の魔法が涼しくてキモチいいと思うの。でもね、寒い時期には暖かいお部屋でくつろいでる冬の魔法を使うの。だから、季節を問わず、いつでもキモチいいの」
「……ま、いいけどさ」
 でも、それって、わざわざ「冬」の魔法と季節名入れる意味あるのか、と、アルメイアは釈然としない表情で呟く。
 一方、菖蒲は強力なシャーマンズカード【黄金の融合竜】(ゴールドシンクロドラゴン)で攻撃を仕掛ける。
「にゃ? 何か、当たりが浅い気がするにゃ?」
「それはそうだ。理力による攻撃を連続すれば、見切られて命中率は半減するぞ」
 普通、命中しなくなるが、相手が雑魚だから当たるだけは当たったな、と、カード戦闘の権威を自任する将が告げる。
「……命中率、半減?」
 それはまずいにゃ、と、菖蒲も釈然としない表情になる。
 そして、間に治癒を挟んで見切り効果を解消した悠乃が、必殺の『刹那の知らせ(セツナノシラセ)』でオークを粉砕する。
「……本当は、これでボスを仕留めたかったんですけどね」
 当たったかどうかは分かりませんが、倒せずに逃げられたことだけは間違いないですね、と、悠乃は呟く。
 残るオークは四体、半数を切って明らかに動揺しているが、逃げようにも、唯一の出入口前には、ドラゴニックハンマーを構えた紫緒が凄く妖艶で怖い笑みを浮かべて待ち構えている。
 ためらうところへ、レイが必殺の一撃『光葬魔弾・ブリューナク(コウソウマダン・ブリューナク)』を撃ち込む。
「確実に仕留めるッ……撃ち貫け! ブリューナク!!!」
「グバッ!」
 高密度弾で胴中を撃ち抜かれ、更に一体のオークが崩れ倒れる。
「もらった!」
 アルメイアが地獄の炎を乗せた『Metal Messiah』で一撃し、オークは炎に包まれて倒れる。残り二体のオークは、絶望的な叫びをあげて自分の傷を癒す。
「あなたの自己愛は、私の愛に勝てますか?」
 意味不明だが怖い呟きとともに、紫緒が必殺技『黒翼の流星(アナタヲツラヌクワタシノツバサ)』を放つ。地獄をまとった黒い羽に貫かれ、直前の自己治癒もむなしく、オークはばったり倒れ伏す。
「はぁ……」
 脆い、と、紫緒は溜息混じりに呟く。そして最後の一体に、将が重力蹴りを叩き込む。
「チェンソーで真っ二つにしてもよかったんだが、SAORIちゃんを怖がらせたくないんでね。地味に倒すぜ」
「グフッ!」
 背骨をへし折られ、最後のオークは血反吐を噴いて倒れる。
「ちぇっ、血を見ないで倒そうと思ったのにな」
「いえ、だいじょぶです。ケルベロス様がいてくだされば、血を見ても、だいじょぶです。怖くありません」
 SAORIが真顔で応じ、将は小さく苦笑する。
 一方、NAOMIはアルメイアに走り寄り、真剣な口調で頼み込む。
「本物の治癒歌を歌う方と、とうとう巡り合えました! お願いです、治癒歌の会得、私じゃ無理かもしれないけど、修行させてください!」
「な、なんだとぉ?」
 お前、単なるアイドルじゃないのかよ、と、アルメイアは相手をまじまじと見やる。
 一方MIHOには、悠乃が歩み寄って告げる。
「みなさんの力を貸して下さい。私はヒールで復興をお手伝いしています。でも心を癒す事はとても難しい。ですから優しいみなさんに癒しのライブをお願いしたいんです。そのために連絡先の交換をお願いします」
「……わかりました。私たちは、まだ仲間の心を癒すこともできない未熟者ですけど、ケルベロスの皆さんのお手伝いができるなら、とても光栄です」
 生真面目な口調でMIHOが応じ、悠乃はにっこりと笑う。
 そして冬歌は、小さく肩をすくめる。
(「戦闘が終わったら味方やアイドルを脱がして、体の隅々まで確認して治療しよう……と思ってたけど、そんな雰囲気じゃないね。残念!」)  

作者:秋津透 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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