エクスガンナー・イオータ~追撃

作者:林雪

●計画続行
『見張りのみを正確に狙え。極力無傷で手に入れろ』
 指令を受け、エクスガンナー・ゼータたちは重たい足音をたてて工場へなだれ込んだ。
 部隊を率いるのはエクスガンナー・イオータ。黒髪の、若い男性型のダモクレスである。
 彼らの目的は、工場内部の機械部品であるらしかった。見張りを次々と倒し、ごく冷静に作戦は遂行される。略奪した機械部品を3体のゼータが運び出し、もう3体とイオータは、自分たちの周辺を強烈に警戒する。
『……よし』
 イオータの声音はあくまで揺るがない。だがイオータは明らかに襲撃者の影を強く警戒していた。
 彼らの大いなる『計画』の障害となるだろう、ケルベロスの影を。

●追撃
「グランネロス攻略のときから行方の知れなかったエクスガンナー・シリーズが動き出したよ。どうやら中断されていた『エクスガンナー計画』を再始動する気らしい」
 説明するのはヘリオライダーの安齋・光弦。
「計画の内容は残念ながらまだハッキリしない。ただ彼らは工場を襲撃して、必要な機械部品を略奪しようとしている……もしかして、またでっかいロボットでも作る気かな?」
 先の戦いで、移動拠点グランネロスは驚くべきことに巨大ロボに変形しケルベロスたちを迎撃した。何があってもおかしくないよね、と光弦がしれっと言う。
「君たちにはエクスガンナー・イオータの部隊の計画遂行を阻止してもらいたい。イオータは率いている配下のうち3体を機械部品の運搬に割いて、残り3体と自身で周辺の警戒に当たるみたいだ」
 前回の戦いで、足止めに当たったケルベロスたちの奮闘によりイオータは部隊のエクスガンナー・ゼータを4体を失っている。
「エクスガンナーさえ倒せば敵の計画を阻止できる。各個撃破をお願いしたいんだ」
 だが現状で、イオータの部隊には6体のゼータが残されている。
「まずはこのゼータたちを削っていくのが作戦としては有効なんじゃないかと思う。襲撃される工場からはすでに一般人は避難済みだから、人命に被害は出ない。エクスガンナーたちが機械部品を運び出し始めた後で、攻撃を仕掛けて欲しい。そうすれば敵戦力は半数に分断されてるはずだからね」
 3体のゼータが機械部品を運び出す間、イオータは残る3体を率いて部品運搬の時間を最低10分は稼ごうとするだろう。
「イオータは君たちと戦闘を構えるけど、時間を稼いだと判断したら撤退するはずだ。出来る限り撃破に持って行って欲しいけど、無理はしないで」
 ポイントとなるのは、ケルベロス側からの襲撃のタイミングである。
「君たちが襲撃を早く仕掛ければ、つまり機械運搬が始まる前に戦いを仕掛けた場合は、当然だけどエクスガンナーは君たちの迎撃にまわる。7体をいっぺんに相手にしなくてはならなくなるね」
 逆にタイミングを遅くした場合は、エクスガンナー側はケルベロスを足止めする時間が短くて済むので、撤退までの時間は5分ほどになる。戦力に自信のない場合は、無理にイオータの撃破までは狙わず、ゼータを着実に削っていくのも手だろう。
「ああそれと、機械部品運搬の方のゼータを狙うと部品の運搬は阻止出来るけど、やっぱり7体全員を相手にすることになるからね。気をつけて」
 状況の説明を終えた光弦が一息おいて付け足す。
「エクスガンナーたちは一筋縄ではいかない相手だ。着実に対処していこう。頑張ってねケルベロス」


参加者
エステル・ティエスト(紅い太陽のガーネット・e01557)
スノーエル・トリフォリウム(白翼の花嫁・e02161)
ジド・ケルン(レプリカントの鎧装騎兵・e03409)
バフォメット・アイベックス(山羊座の守護の下・e14843)
月城・黎(黎明の空・e24029)
オランジェット・カズラヴァ(黎明の戦乙女・e24607)
小柳・玲央(剣扇・e26293)
エルディス・ブレインス(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e27427)

■リプレイ

●邂逅再び
『……よし。お前たちは運搬を急げ』
 襲った工場の裏手で、3体の配下に指示を出す、エクスガンナー・イオータ。若い人型の表情は相変わらず薄いが、どこか緊迫した空気を醸し出していた。
 その気配を十分に感じながら、ケルベロスたちは工場の建物付近に身を潜めていた。
 遠ざかっていく足音に、エステル・ティエスト(紅い太陽のガーネット・e01557)は歯噛みする。
(「もう、そうやって動いていられるのも今のうちなんだからね……!」)
 敵の『エクスガンナー計画』を潰すため、少しでも敵の戦力を削ぐ方針をケルベロスたちは採った。物資運搬を担当する3体はひとまずそのまま行かせ、残ったイオータ率いる3体のゼータで構成された、計4体を相手取ることにしたのだ。
 勿論、イオータの撃破を念頭に置いた作戦だ。
 運搬係の姿がまだ肉眼で確認だけに、行かせるのは惜しかった。だが。
「……とりあえずイオータをやっつけたら多少は計画も停滞するはず」
 スノーエル・トリフォリウム(白翼の花嫁・e02161)の言葉に、一同頷き、イオータたちと対峙すべく飛び出した。その姿を認めると、2体のゼータが前に出て構えたが、まだ撃っては来ない。
「お久しぶり……というほど間は空いていませんね」
 オランジェット・カズラヴァ(黎明の戦乙女・e24607)は、前回のグランネロス攻略時に、イオータの足止めを担当した一員である。
『同じ個体か。執拗だな』
「覚えていて頂けたとは、案外ですね……」
 オランジェットの言葉にも表情を変えないイオータに、ジド・ケルン(レプリカントの鎧装騎兵・e03409)が鋭く言い放った。
「我らはケルベロス。地球の人々を守る番犬にして、地球に害なす者を狩り立てる猟犬である」
 両手を後ろ手に組み、堂々たる立ち姿を見せ付けてジドはエクスガンナーたちを見据えた。
「今この場においては、貴様らこそが獲物なのだと理解するがいい」
 言葉での牽制が通じているのか、イオータはまだ仕掛けてこない。距離を詰めつつ、小柳・玲央(剣扇・e26293)も挑発的に言った。
「エクスガンナー計画は、完成したエクスガンナーの複製量産、戦力増強ではないのかな」
『……』
「だんまり? まあいいよ。君を壊すため、なんだってするよ」
 玲央が一歩前へ出る。並んで歩み出たのは、黒いカソックに身を包んだバフォメット・アイベックス(山羊座の守護の下・e14843)である。
「神の怒りを恐れぬ者たちよ」
 そう言ってバフォメットは十字を切った右手を抜き手の形にして左斜め頭上にかざし、握りしめた左手を腰溜めの位置に固定し、右手で弧を描いた。
「獣・身・変!」
 平和を祈る姿から戦う者へと姿を変えたバフォメットの様子に、
「ボクらも!」
 と、月城・黎(黎明の空・e24029)が戦闘配置につく。黎と同じく援護回復役のエルディス・ブレインス(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e27427)も頷き、皆の位置を確認しながら言った。
「では、戦闘開始といきますか。援護は私と月城さんに任せて下さい」

●撃ち合い
 ケルベロスたちの前に、装甲を盾にした2体が身を寄せて立ちはだかった。
「……壁役、ってことだね。こちらも負けないよ」
 玲央が臆することなく仲間を守る位置に出れば、スノーエルのボクスドラゴン、マシュがその上を舞う。
「イオータ……バラバラにしてやる!」
 攻撃手を担うエステルの闘志は爆発寸前、バフォメットの黒い体は刃の如く研ぎ澄まされる。
 壁役の2体の後ろに、妨害役のゼータが1体、イオータは最後方で構える。遠距離からの狙撃の狙いが正確そのものであることをオランジェットはよく知っていたが、こちらも負けるつもりはない。ケルベロス側は、防御よりも攻撃に重きを置いた布陣である。
「今回は仕留めてみせますとも……!」
 燃え上がる炎の色の髪をなびかせ、オランジェットが武器を構える。前回は足留めに徹したが、今回はそうはいかない。
「マシュちゃんはみんなを守ってね……いくよ!」
 戦端を開いたのはスノーエル。普段はふわふわとした笑顔の似合う彼女だが、戦場においては別の側面を見せた。その表情に気を更に引き締めてエステルが飛び出す。スノーエルの生み出したドラゴンの幻影を追う形で、妨害担当のゼータを狙い激しい蹴りを繰り出した。ゼータは素早く身をかわそうと横っ飛びに飛んだが、竜の咆哮の方が早かった。
「のろまではない、ってことか……こっちもテンポあげていこう。戦場にリズムは欠かせないからね♪」
 言って玲央が鉄塊剣を振るう。無骨なはずの巨大な剣は、彼女の手の中でまるで優雅な扇の如く戦場を舞った。青い炎が飛び散り、エステルとバフォメットの武器に絡みつくとその輝きは増した。
『俺に合わせて火力を集中。1体ずつ落とす』
 イオータのバスターライフルから冷凍光線が発射された。狙いはジドだ。
「面白い、相手になってやろうではないか。カウントを開始する!」
 片腕をかざして光線の威力を軽減させながら、ジドが手元のタイマーを起動させた。イオータ撤退までの時間を切り詰めて使い、撃破まで持っていこうという工夫である。
 ジドの黄金の果実が最前線へと伸び、敵を迎え撃つ。
「この拳に、切り裂けぬものは無し!」
 バフォメットが気合いと共に腕を振りぬく。が、装甲を前面に押し出し、2体のゼータは寄り合ってその威力を殺した。
「何……?!」
「……なるほど、一筋縄ではいかないようです」
 落ち着きを失わず、エルディスはまずイオータの一撃を受けたジドへ治療を、そして念には念をと光の盾を発生させた。その直後。
 エルディスの懸念通り、2体のゼータは一斉にガトリングガンをジドへ向け、激しい連射を開始した。武器を振りまわし、直撃を避けるものの攻撃は苛烈である。
「生意気な、ゼータども……!」
 激しい攻撃に晒されるジドに、更に弾丸の雨が降り注ぐ。
「っさせるもんか!」
 飛び込んだ玲央が、剣圧でそれを叩き落す。爆炎が収まった中、闘志を剥き出しにしたジドの眼光が光る。
「待った、ジド! お医者さんの緊急診療だよー!」
 今すぐにでも飛びかかっていきそうなジドを宥めて黎がオペレーションを開始した。
『それでいい。時間をかけて構わん、狙い撃て』
「そう容易くいくとは思わない事です……!」
 ゼータたちに指令を出すイオータを、オランジェットが槍の穂先で指したが早いが、攻撃へと転ずる。
「ジャイアントキリング・ブリューナク!」
 魔槍ブリューナクがイオータを穿つ。火花散る戦いは幕開けから激しいものとなった。
 ケルベロスたちも火力を集める作戦である。
 スノーエルの魔法光線が、狙いをつけたゼータをじりじりと削っていく。ここだ、と飛び出したエステルは、思わず叫んでいた。
「スノーエルさん! みててください!」
 エステルが初めてケルベロスとして戦った時も、スノーエルは同じ陣営にいた。あの頃は本当にデウスエクスへの憎悪しかなかったが、先輩として尊敬してきた人に成長した自分を見せたい、エステルのその願いが降魔の拳に力を与えた。
「おおお!」
 吼声とともに叩き込んだ一撃を引き抜くと同時、ゼータの体のあちこちから火花が上がり爆発した。
「やった!」
 1体目を先制し、ケルベロスたちの意気が上がる。
 だがイオータの狙撃は相変わらず正確だった。狙いがジドにあると分かっていても、何故か弾道が読みにくい。エネルギー光弾が、玲央の体ひとつぶん横を擦り抜けていく。
「しまった! エル!」
「わかっています!」
 光弾がジドに命中すると同時に治療に入るエルディスが、視線で黎に合図を送り、黎が頷く。攻撃を凌いで回復、の流れで戦線を維持するものの。
「くっ……どうやら向こうも、形振り構っている余裕はないようだな」
 敵の二陣はやはりジドを集中して狙った。防御に走る玲央とマシュを、爆炎が遮った。
 砲火の中で身を守りつつ、ジドは先の展開を考える。恐らく敵はこのまま自分を狙い続け、落ちれば次は攻撃手を狙う……。
「案ずるな……」
 辛うじて身を支えつつ、ジドは冷静を失わなかった。心配して駆け寄った仲間に言い放つ。
「任務の遂行、それが果たせればいい……」
『同感だ』
 赤い視線がかちあった。イオータの次の一射が放たれ、あわやと思われたところ割り入ったマシュがジドを守る。
「マシュちゃん!」
 スノーエルが攻撃を再開した。エステルもそれに続く。
「落ちろぉ!」
 だが前衛を守るゼータの装甲は厚く、動きは速い。バフォメットの強烈な獣の一撃が、正面から叩き込まれたが尚、ゼータは武器を構える。ガトリングの音が無情に響き渡った。
「ぐぁっ……!」
 遂にジドが膝をついた。更に照準を合わせようとするイオータを、オランジェットが槍で牽制した。
「させませんよイオータ……!」
「後は、ボクたちに任せて」
 その隙に、黎がジドの体を運び出し、色鮮やかな爆発を起こして仲間を奮い立たせる。
 イオータの前を守護する2体の壁をなんとか取り除こうと、スノーエル、エステル、玲央が呼吸を合わせて斬りかかる。
『次だ』
 玲央がアームを引いた瞬間、イオータの狙撃がバフォメットを射抜いた。
「この、程度では……私の歩みは止まりません!」
 苦痛に耐えながらロッドを振り上げて叩きつけ、ゼータへ激しい電流を流すバフォメット。
「……これは……」
 だが彼のダメージが決して小さくないとわかっているエルディスの表情は険しい。
「わかってるよ、エル!」
 意を汲んだ玲央は、ゼータたちがバフォメットへ向けて放った爆炎の中へ、己を顧みず身を投じた。防護を固めているとは言え、彼女も無傷では済まない。
「続けて、いきます……!」
「もう1体倒せれば、一気に有利になるんだよ!」
 オランジェットとスノーエルが一気に魔法光線をゼータに集中させ、そこへエステルが組み付いた。そのままゼータを抱え揚げるように飛び上がり、
「落ちて行けええぇぇっ!」
 ガシャッ! と派手に地面に叩きつけられてもゼータはまだ機能していた。
 そこへイオータの冷凍光線が発射される。狙いは勿論バフォメットだ。
「しつこい奴!」
「玲央! 無茶しちゃダメだ!」
 背中で光線を受ける玲央に、黎が叫んだ。庇われたと知ったバフォメットの目に闘志の炎が燃え上がる。
「小柳さん……!うおおぉっ」
 咆哮をあげ、ゼータへと突進し、そして。
「この拳に、切り裂けぬものは無し!」
 気合一閃! 振り下ろしたバフォメットの手刀は聖なる剣と化してゼータを真っ二つにたたっ斬った!
 だがそこへ、この隙を待っていたと言わんばかりにもう1体のゼータが撃ちかかった。
(「間に合って下さい……!」)
 エルディスがシールドを飛ばした直後、ガトリングが火を吹く。低い呻き声をあげて、バフォメットが地に伏した。致命傷は避けられたものの、動く力は残されていなかった。
「よくも……!」
 撃ち終えたゼータへと、オランジェットの怒りの槍先が向けられ、叩き込まれた。
「次はきっと……」
 スノーエルがふと不安げな視線をエステルに送る。イオータが次に狙うのは恐らく攻撃手を担う彼女だ。
「私は逃げません、大丈夫です!」
 エステルがきっぱりと答えた。倒れたジドもバフォメットも、一歩も退く姿は見せなかった。自分も、と、強がりではなく研ぎ澄ました心で答えることが出来た。その言葉に、スノーエルの気持ちも前を向く。
「あなたが立ち向かっているのが誰なのか、改めて見せつけちゃうんだよ……?」
 彼女の気持ちを反映してか、一際巨大なドラゴンの影がスノーエルの後ろに現れた。
「さぁここに、おいでっ!」
 なお残るゼータに熾烈な攻撃を加える手を休めず、イオータの狙撃を受け続ける。狙いはやはりエステルだった。
 エルディスと黎が全身全霊で治療を続けて戦線を保ち、残る全員で攻撃。全員疲労の色が隠せなかった。
 イオータの狙撃は相変わらず正確無比だったが、徐々にその軌道は読めてくる。エステルとイオータの間の軌道に身を投じたマシュの綿のような体が消え失せた。
「……ごめん!」
 一瞬悲痛な表情で視線をやったエステルはしかし、そのまま攻撃に転じ掌でゼータを突いた。
「今だ!」
 螺旋の力がまだ蟠るゼータの胸元を、玲央のドリルが貫く! ゼータは黒い煙を上げてその場に崩れ落ちた。壁がついに崩れた。
「残るはあなただけ……逃がしませんよ、イオータ」
 オランジェットがそう言った次の瞬間、エステルの体はレーザーの衝撃に吹き飛ばされた。
「ああっ!」
 その時、戦場の隅でタイマーの音が鳴った。倒れたジドが仕掛けていたものが、今総攻撃の合図を告げたのである。
「……攻撃、を……!」
 ジドと身を支えあっていたバフォメットの声に、エステルは立ち上がる。
「月城さん、いきましょう!」
 エルディスの言葉に黎も力強く頷いた。
「……わかったよ!」
 正直、医者としての黎に、躊躇がないわけではなかった。だがここで攻めきれば、イオータを倒せる。
『……!』
 ケルベロスたちの総攻撃に焦ったのか、それとも何か別の作戦を立てたのか。これまで単騎を狙ってきたイオータは両手にバスターライフルを構え、魔力の奔流を後方に布陣するスノーエル、オランジェット、エルディスと黎に向けて放った。
「くっ……!」
 流れに飲まれそうになりながら、エルディスは今日初めて檄鉄を起こし、黎は剣を突き込んだ。
「イオータぁ!」
 エステルの大技、宵街月からの玲央の炎の衝撃で、イオータの体は吹き飛ぶ。土煙の中、立ち上がったイオータが構え、引き金を引いた。しかし追撃はなかった。
『……』
 ガチリと鈍い音をたてて沈黙したバスターライフルを投げ捨てると、イオータは開いた距離を利用し、無言でケルベロスたちから遠ざかっていく。
「……待つんだよっ!」
「捕まえる!」
「……!」
 一瞬、血の沸騰するような感覚にエルディスは襲われた。イオータを倒せるならば、今の己の心を捨ててでも……、と。だが彼の心は、悪友の玲央の姿を見たことで宥められる。彼女が、己と全く同じことを考えているのがわかったからだ。玲央の肩に手を置き、ゆっくりと首を横に振るエルディス。
「……エル」
 彼はそのまま黎とともに、傷ついた仲間たちの治療に当たる。
「……任務は成功、だよ。皆で帰れることを、喜ばなくちゃなんだよ」
 少し悔しげに、それでもスノーエルが笑顔を見せる。その笑顔に、エステルの目の奥は熱くなった。
「あと少し……届きませんでした……」
 肩を落とすオランジェットだったが、視線は既に遠くを見ていた。
 砂と化した3体のゼータたちが、風に流されていく。エクスガンナー計画阻止のため、イオータを倒さねばならない。何処かで補給を受けて再度現れるだろう強敵に、新たな闘志を燃やすケルベロスたちだった。

作者:林雪 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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