豚たちの饗宴

作者:さわま

●歌って踊れて、罵れる?
「相変わらずブクブクと肥え太ってますね~、豚の皆様方」
「この会場にオメェらの匂いが篭って臭くてしょうがねぇぞ!」
「脂ぎった顔が沢山だね〜、キモッ☆」
 ステージ上の美少女3人組から、とんでもない発言が飛び出ると観衆たちがワァッと喝采を上げる。
 彼女らを知る者は地元にも殆どいない。毒舌アイドルユニットとしてほんの一部の奇特なファンたちから絶大な支持を得ている地下アイドルであった。
 ステージが進むにつれて彼女たちから容赦の無い罵倒を受け続けたファンたちの顔に恍惚の表情が浮かぶ。第三者から見れば異様な光景だが、彼らはみな幸せそうであった。
 と、その時であった。ステージ上のアイドルが悲鳴を上げた。
 突然、ステージ上に怪物――オーク達が乱入してきたのだ。
「失礼、私はギルビエフ・ジューシィ。あなた方をスカウトに参りました」
 白スーツ姿のオークがアイドルたちに恭しく名刺を差し出す。
「あなた方の『毒舌』は、わが主の『ドラゴンハーレム』に相応しい。是非、ハーレムで繁殖に励んでいただきたい! ……もちろん、ギャラも拒否権もありませんがね!」
 いうや、ギルビエフの背後に控えていたオークたちがアイドルを捉えようと動きだす。
「ヌォオオッ!!! 我輩らの女神様を守るでゴサルよォオオオ」
 アイドルの豚たち、もといファンたちがアイドルを守るべくオークへと向かっていく。
「ブヒヒ、無駄無駄」
 しかし無残にもオークに次々と蹴散らされていくファンたち。
 そして、オークの触手がアイドルへと伸びていくのだった。
 

「ギルビエフ・ジューシィと名乗るオークが、全国の地下アイドルたちを無理矢理スカウトして連れ去るという事件が発生している」
 集ったケルベロスに山田・ゴロウ(ドワーフのヘリオライダー・en0072)が口を開く。
「ギルビエフは手下のオークを引き連れ地下アイドルのライブ会場を襲撃する。周囲の一般人にすすんで危害を加えるような事はしないが、アイドルの連れ去りを阻止しようとすれば容赦無く殺してしまう。今回判明した予知では周囲のファンが無謀な抵抗を始め、全員殺されてしまう結果になった」
 ゴロウの顔が曇る。
「ファンたちは貴殿らが現れようと、自分たちのアイドルを守ろうと無謀な抵抗を始めてしまう。また、地下アイドルのライブを中止すれば、ギルビエフは別のライブ会場を襲い犠牲者が出る事になる。オークたちが出現してから被害を最小限に抑えて、襲撃を阻止する必要がある」
 ゴロウがケルベロスたちを見回し頭を下げる。
「貴殿らがファンたちを説得する事ができれば余計な血が流れる事は無いはずだ。どうかよろしく頼む」
 
「出現するオークは10体。標準的な強さの個体で特殊な能力などは持っていない。ライブ会場は屋内で多少手狭であるが戦闘を行うのに問題は無い」
 オークたちはアイドルに危害を加える事は無いので、ファンたちの説得に成功すれば戦闘に集中できるはずだ。なお、ギルビエフ自身はケルベロスが現れるといつの間にか姿を消してしまうので戦闘には加わらない。ギルビエフの撃破は難しいだろう。
「ファンの説得には彼らの『信頼』を勝ち取る事が不可欠だ」
 『同じアイドル愛を持つ同志と思わせる』『その幻想を打ち砕く』『むしろ自分のファンにしてしまう』など特殊な説得が必要だろう。今回、ファンの趣向は分かりやすいのでそこを突くような説得も効果的かもしれない。
 
「貴殿らならば上手くやってくれると信じている。どうかよろしくお願いしますだよ」


参加者
鉋原・ヒノト(駆炎陣・e00023)
一条・雄太(一条ノックダウン・e02180)
リンディ・グレイ(豪放磊落ってどう読むの・e05541)
参麓・丸一(おにぎりとメイドと時々野球・e08588)
アリス・リデル(見習い救助者・e09007)
神籬・聖厳(日下開山・e10402)
エルピス・メリィメロウ(がうがう・e16084)
屍・桜花(デウスエクス斬り・e29087)

■リプレイ


 歌声と歓声に震える空気、目に焼きつくほどに明滅する色鮮やかな照明、会場全体を包む人々の熱気、そして汗の匂い。
 その場に居合わせないと感じる事の無いリアル。ライブ感。
 その渦中に放り込まれた鉋原・ヒノト(駆炎陣・e00023)は作戦が始まる前から既に疲れた顔をしていた。
「ヒノト、大丈夫か?」
 声をかける一条・雄太(一条ノックダウン・e02180)もゲンナリ顔である。
 観客席に紛れ込んだ彼らは、ファンに怪しまれないように周囲の観客の反応を見よう見真似で真似ていたのだが、これがガリガリと精神力を削っていた。
「くっさい鼻息飛ばさないでよ!」
「ブヒヒーン☆」
 アイドルに罵倒され喜ぶファンたち。ヒノトと雄太もヤケクソ気味に声を張り上げる。
 と、その時であった。
 突然、歌声が止まりステージのアイドルたちの動きが止まる。
 戸惑うアイドルの視線の先には続々とステージに乗り込んでくるオークの姿があった。


 騒然とする周囲のファンを尻目にヒノトと雄太は互いに頷き合いステージ上を注視する。
「失礼、私はギルビエフ・ジューシィ。あなた方をスカウトに参りました」
 白スーツのオークがアイドルに悠然と近づいていく。
 そして……。
「あーあーてすてす、OK?」
「Hey! 汚い手でアネさんに触ろうとしてんじゃねぇよ!」
 スピーカーから流れる大音量の少女たちの声。
 続いてマイクを手にしたその声の主、特攻服の赤髪少女――アリス・リデル(見習い救助者・e09007)と軍帽ボンテージ姿のセクシー少女――リンディ・グレイ(豪放磊落ってどう読むの・e05541)がステージ上に姿を現す。
 予想外の乱入者にギルビエフが立ち止まり、少女たちへ向き直る。
「あなたたちは一体?」
「見ての通り、アイドルよ」
 その問いに2人の少女の後ろからひょっこり顔を出す着物姿の少女――屍・桜花(デウスエクス斬り・e29087)。そしてやる気無さそうにピースをして見せる。
 一方でアイドルたちを助けようとステージに押し寄せるファンたち。すると特攻服のアリスが手のバールを力任せにステージに叩きつける。
 ドガッという乾いた大きな音。直後、静まり返る場内 。
「豚が人間様のステージに上がろうとかチョーシ乗ってんじゃねーぞ!」
 ステージにめり込んだバールにファンがたじろぐ。
「ねえねえ、豚同士の争いなんてキッツくて見てらんないし、キミらぶっちゃけ役立たないよね? 近くにいると臭いし、大人しくしててくんない?」
 ファンを見下ろしリンディがニッコリと言い放つ。さらに桜花のゴミを見るかのような無言の視線が突き刺さる。
 こうして会場中の注目が3人の少女へと向かう中。この事態に呆然となったアイドルたちの足元にこっそりと近づく小型のシベリアンハスキーがいた。
 それに気づき、視線を下げるアイドルたち。
 眼前でエルピス・メリィメロウ(がうがう・e16084)が動物変身を解除する。
「ワタシたちはケルベロス。ミンナを助けに来たのよ」
 そういうや、背中にアイドルを庇うように立ち上がり、オークたちに向き直る。
「なッ、こいつらケルベロスブヒ!」
 それに気づいた配下のオークが反射的にアイドルに向け触手を伸ばす。
「お嬢様方には指一本触れさせませんわよ!」
 掛け声と共にメイド服姿の参麓・丸一(おにぎりとメイドと時々野球・e08588)がアイドルに駆け寄り、触手を金属バットで叩き落とす。
「……もう始めていいのね? いいのよね?」
 ギルビエフの命令でアイドルに迫るオークの触手、それを迎え撃つエルピスと丸一。そこに、もう待ちきれないとばかりに刀を抜いた桜花が飛び込んでいく。
「貴方達……どんな斬れ味……?」
 先ほどまでとは打って変わって喜々とした表情を見せる桜花であった。


 ステージ上で勃発した戦いにファンの間で戸惑いと騒めきが起こっていた。
 そんなファンたちをステージ上から睨みつける2人の女王様がいた。
「アァん? てめぇら、ブヒブヒするだけの(ピー)がアネさんたちを助けようたぁ、ずいぶん偉くなったじゃねぇか。この(ピー)が、汚ねぇ(ピー)にバールぶち込むぞ!」
 アリスがファンを口汚く罵る。そしてさらにリンディが。
「豚どもがライブ潰すなっつってんの、ファン人口の維持もできねーのか。おとなしく会場の外でブーブー鳴いてろ!」
 いって、手にしたチェーンソーをファンたちに向かって突きつける。
「……返事は!」
「ブヒィイー☆!!」
 嬉しそうに鳴いたファンたちがいそいそとステージから離れていく。
「2人ともやるな!」
 ヒノトが感心の声を上げる。場合によってはサクラとしてフォローに入るつもりだったが2人の迫力あるパフォーマンスに手助けは必要なかったようだ。
「早く出るんだ!」
 いつの間にか出口付近に移動していた雄太が出口の扉を開け放ち避難を促す。
 同じくヒノトが避難誘導に加わる。と、多くのファンがステージからの避難をする中、数名の男たちがステージから去ろうとしないのに気が付いた。
「あいつら?」
 男たちを移動させようと近づくヒノトの狐耳に男たちの呟きが入る。
「安易なご褒美に釣られ、すぐ動くのは愚か者のする事よ」
「この場に留れば、ずっと罵って頂けるという我らの深謀」
 眩暈を覚え、思わずよろけるヒノト。こうなったら力尽くでもと更に近づいていくと、別の声が聞こえてきた。
「それは……どうじゃろうか?」
「何やつ!?」
 背後からの声に男たちが振り向くと幼い少女……否、長い時を生きたドワーフのロリBBA、神籬・聖厳(日下開山・e10402)がいた。
「今、お主らに向けられておる罵声は所詮、肥え太った容姿やらその身から漂う異臭やらの外面に向けられたモノじゃ。その程度で、お主らは満足しておるのか?」
 やれやれと聖厳が肩をすくめる。
「なっ!?」
「その程度で満足しておるかと問うておるのじゃ!」
 目を見開く男たちにビシッと指を突きつける。
「良いか? オークに襲われたアイドルを見捨てて逃げるという選択肢ッ! これを選ぶことによって生じる罪悪感ッ! それを抉るように背中に越しに浴びせられる罵声ッ!」
「おおオッ!?」
「これぞ、最上級の御褒美とは思わんか?」
 聖厳の言葉にコクコクと頷いた男たちがくるっとステージに背を向ける。
「このクズッ! 無能!」
「ブヒヒ、ブヒィィィ☆!!」
 すれ違い様に見てしまった彼らの恍惚の表情に、ヒノトはどっと疲れを感じてしまう。
「……ともかく、これで全員避難させたぜ!」
 急ぎステージへとヒノトが駆け寄る。
「臭い豚さんはこっちこないで! さっさと豚小屋に帰って豚丼でも食べてれば?」
 ステージ上から浴びせられたエルピスの声に思わず足を止める。
「……ヒノト? うそうそ、今のうそなのよ! ヒノトは臭く無いの、良い匂いなのよ」
 声をかけてからヒノトである事に気が付き泣きそうなエルピスの顔。
「あいつら……何やってんだ?」
 出口の扉をしっかりと閉めた雄太がそんな2人のやり取りに呆れ顔を見せた。


「もう来ないならこちらから行くわよ?」
 刃を滴る血を楽しそうに振り払う桜花を遠巻きに見るオークたち。
 桜花の足元は真っ赤な血溜まりが広がっていた。
 それはアイドルを捕まえようとしたオークの触手を叩っ斬った際に飛び散ったもので、桜花のピンクの髪や着物の一部も同じように赤い血で染まっていた。
 そこに避難誘導を終えた仲間たちが駆けつけ、オークたちとアイドルの間に割って入る。
「もう大丈夫ですわ。ここは私達にお任せ下さいませ」
 丸一がアイドルに微笑みかける。ファンの説得と避難の間、丸一はアイドルたちの側に寄り添い、桜花が斬り逃した触手を撃ち落とし続けていた。
 人数的に余裕ができた今こそ、アイドルたちを逃すチャンスといえた。
「私が囮になります。ほら私を狙いなさい、オークたち」
 オークたちの気を引きつけるべく丸一が前に出でメイド服のスカートの裾をチラリとたくし上げる。
「男に用は無いブヒッ!」
 しかし、全く興味無しとばかりのオーク。
「何故、私が男だとバレた!?」
 日常的に行っていた女らしい仕草の訓練に加えて、声でバレ無いようにとボイスチェンジャーも装着した。女装は完璧だと自信を持っていた丸一が驚きの声を上げる。
「そんなデカいメイドが女なワケあるか、ブヒ!」
「そこかぁッ!?」
 丸一の身長は180cmを越える。確かにそんな大柄のメイドは滅多に居ないだろう。
 とは言え、女装を見破られた最大の原因はオークの種としての本能にある。どう見ても女にしか見えないような女装であってもオークには見破られてしまうケースが多いのだ。
 気をとり直し、ケルベロスたちはオークへと攻撃を仕掛けていく。
「『ぐるるー(コッチニクルナ)』」
「いくぜ!」
 素早く飛び出したエルピスとヒノトが襲いくる触手の弾幕をかい潜り1匹のオークへと接近。左右からほぼ同時に爪で切り裂かれたオークが絶命する。同じ標的を狙った息の合ったコンビネーションは群れを成す野生の獣を彷彿とさせた。
「手早くいかせてもらおうかの!」
「ブ、ブヒッ!?」
 接敵する聖厳にオークたちから驚きの声が。オークの視線が聖厳のクールな裸神活殺拳のバトルコスチュームに注がれる。
(「アタシの格好もちょっとキワドイかな? って思ったけど……」)
 自分のボンテージ姿をチラリと返り見てリンディがため息をつく。「世の中上には上がいるもんだ」と、どうでもいいような感想が心に浮かんだ。
 聖厳が素早くオークの腕に取り付き、小柄な身体を密着させる。そして、お尻を見せるように上下反転。素早くオークの背後に回りこむと、大股に開いた片足がオークの眼前に現れ首元に絡みつく。
「『裸神活殺三極完了』!」
 同時にオークの背中にもう片足の膝を叩きつけるとそこが支点となり、エビ反りになったオークが宙を回転。足が地面からフワッと離れる。
 そして、その勢いで後頭部から地面に叩きつけられる。
「ブヒャァッ!」
 倒れ込んだオークが鼻から盛大に血を噴き出す。
「Oh、あたしらも負けてらんないっしょ! ミミくん、リンちゃん♪」
「了解だよ! 豚に御褒美くれてやんよー」
「こんの……ぶち撒けやがれ!」
「ブヒィッ!?」
 アリスのバールと、相棒のミミックのミミくんの凶器、更にリンディのチェーンソー剣に襲われたオークが、悲鳴を上げて挽肉へと変わっていく。
「オラァ!」
 雄太の螺旋掌がデップリした腹を捉えオークが嘔吐、汚物に顔から崩れ落ちていく。
「アイドルを辞める時は普通の女の子になる時だけ、豚の餌になるためじゃないってね」
 オークの阿鼻叫喚の声が響く会場。いそいそと立ち去っていくアイドルたちをチラリと確認した雄太は次のオークへと狙いを定めるのであった。


「これであと半分ですわね」
 丸一が大きく振りかぶった『エクスカリバット』がジャストミートし、ステージの外に吹っ飛んだオークが動かなくなる。
 ケルベロスに各個撃破されていくオークたち。数は彼らの方が多かったものの、突発的な戦闘であった事もあり、組織的に動くケルベロスの前に一方的に駆逐されていった。
「もっと熱く! もっと激しく! 盛り上がってこーぜ! 『まるで恋する生娘のように(レット・ヒート・イット)』」
「出し惜しみは無しだっ! 『エテルナレイズ』!」
 アリスのアップビートな燃え上がる楽曲に合わせ、ヒノトが紫電を放つエネルギーの大槍を振るう。眩い閃光に包まれたオークたちが次々とステージの外へと放り出されていく。
「よくも……」
「ふふふふふふふふふふ……あはははははははははは!」
「ブヒャァ!?」
 地面を転がり立ち上がったオークが悲鳴をあげる。
 オークを追ってステージを飛び出した桜花の刃が眼前に迫っていたのだ。
 楽しそうに笑い声を上げた桜花がオークを斬り裂き、斬り落とし、斬り刻み、斬る、斬る斬る斬る斬る斬る斬る……。
 絶命するオークの眼に舞い散る血飛沫による『血桜』が映し出される。
「オラァ!」
 雄太が掌に螺旋を生じさせるのを見て、カウンターを狙っていたオークが雄太の掌底より一瞬早く間合いを詰める。
「……ってな、こいつはフェイントだ!」
 小さな螺旋を宿した掌が素早く貫手へと変化。
「見切ったぁ! ここが、急所だ! 『地獄突き(ザ・ブッチャー)』」
 カウンターのカウンターの形で、雄太の貫手がオークを貫く。
「肉切り男の異名を持つ男の得意技だ。オーク相手にはちょうどいいってな!」
 絶命し、地面に転がるオークにニヤリと笑みを浮かべる。
「仕留めたのじゃ」
「こっちも片付いたの」
 同じくオークにトドメをさした聖厳とエルピスが声を上げる。
 残るオークは1匹。
「こ、こうなったら……」
「どうするの? はい、つっかまーえた!」
 出口に向けて後ずさるオークの背中にかかる声。
 オークが振り返ると10歩程離れた位置に笑みを浮かべるリンディがいた。
「何がつかまえたブヒか……驚かせるんじゃ……」
 リンディが無造作に自分の足元にチェーンソー剣を突き刺す。すると、突然オークの身体に衝撃が走る。
「これぞ『忍法ドラゴニック影縫いの術』。影からグラビティを叩き込む、しのびのわざだよ……って聞こえてないか?」
 ショックでこと切れ、地面に倒れたオークを見てリンディが肩をすくめた。


「さてさて、大した被害も無く何よりじゃわい」
 ふうと息をつき聖厳が出口の扉を開ける。そして飛び込んできた外の光景に目を細める。
「カカッ、筋金入りの豚ということかの。万が一わしらが負けたらどうするつもりじゃったんだか……」
 外には逃げたはずの人々がいた。ケルベロスたちの登場にワァッと喝采が上がる。
「ありがとうございました!」
「ご無事で何よりですわ」
「こっちこそ、楽しいライブを台無しにしちゃってゴメンね」
 こちらに駆け寄り、頭を下げるアイドルたちに丸一とリンディが優しい目を向ける。
「お前たち、ファンにも悪い事したな」
 雄太の言葉にとんでもないと感謝を述べるファンたち。
 エルピスがヒノトに声をかける。
「ヒノト、本当の本当にゴメンナサイなの……」
 突然謝られ、ポカンした表情のヒノト。
「ゴメンって、何が?」
「ヒノトのこと豚さんって……」
 また泣き出しそうなエルピスに、ヒノトがニッコリと笑う。
「ああ、もうすっかり忘れてたぜ! そうだ帰りに豚丼でも食べにいこうぜ」
「……怒ってないの?」
「エルピスは人を傷付ける嘘はつかないって知ってるからな! ああ、豚丼より牛丼の方がいいか……」
 
 アリスがファンたちにニヤリと笑みを見せる。
「テメェらは最高のファン……いや、豚どもだ! これからもアネさんたちの応援、宜しく頼むぜ!」
 ファンたちの豚のような鳴き声が夕焼け空に消えていった。

作者:さわま 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 3
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