パンティーズの悲劇

作者:ハル


「みんなー、ちゃんと見てるかしら!」
「目を離しちゃやだよー?」
「もっと、もーと盛り上げてぇ、私達を熱くさせてぇー!!」
 岡山県岡山市の繁華街から少し外れた場所には、決して大きいとは言えないライブハウスがポツンと地下に建てられていた。
 そして、そこを中心として活動をしている、とある三人組の地下アイドルグループがいるのだが……。
『オオオオオオッ、見てるよ! ちゃんと見てるよッッ!!』
 アイドル達のパフォーマンスに、熱心なファン達が一糸乱れぬ動きでペンライトを振り回す。
 だが、おかしい。何かがおかしい。
 その『何か』。それはきっと、ファン達の体勢に原因があった。彼らは皆、しゃがみこんでいるのだ。しゃがみ込みつつ、オタ芸。ものすごい足腰である。
 そして、どうして彼らがしゃがみこんでいるかというと、
「見てる! 見られてるよ、私の……パンツが!!」
 そうアイドル達の格好にあった。超ミニスカート姿。彼女達は、岡山において知る人ぞ知る、パンモロ系アイドル! そのパンツもまた、彼女達の私物という徹底ぶりである。そこに、スパッツやアンスコのような異物は決して許されない!
「ぐへへっ、見えてるよ! 最高だよ~!」
 その歌を、そのダンスを、そのパンツを……すべてをファン達が目を皿にして見つめている。
 その時――――。
 ライブハウスのドアが勢いよく開いた。
 姿を現したのは、ギルビエフ・ジューシィと触手をウネウネと蠢かす十体のオーク。
 キルビエフは名刺を取り出し、アイドルに告げる。
「あなた達のパンツは、わが主の『ドラゴンハーレム』に相応しい。是非、ハーレムで繁殖に励んでいただきたい! ……もちろん、ギャラも拒否権もありませんがね!」
 その言葉と同時、オーク達の触手がアイドル達の柔肌に絡みつく。パンツ越しにお尻を撫でられ、
「「「い、いやああ!」」」
 三人は嫌悪の表情を浮かべ叫んだ。
「待てぃ! 薄汚い貴様らに、彼女達のパンツ……もとい見た目と違って清い心と身体を奪わせるものか!」
 ファン達は気勢を上げ、オーク達に対抗しようと立ち向かうが、
「ぎゃああああっ!!」
 瞬く間に蹴散らされてしまう。
「ヒヒヒ……」
 邪魔者のいなくなったライブハウスにて、改めてアイドル達に触手が伸びていく……。


「大変、大変です! ギルビエフ・ジューシィというオークが、各地の地下アイドルを無理矢理スカウトして、ハーレムに連れ帰るという事件が起こっています!」
 慌てて会議室に飛び込んできた笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)が、開口一番そう叫んだ。
 ギルビエフ・ジューシィは、地下アイドルのいるライブハウスに現れ、アイドル達を襲う。
 抵抗しなければ被害に遭うのはアイドルだけだが、抵抗した者がどうなるか……それは口にするまでもないだろう。
「問題なのは、ライブを中止した場合、オーク達の狙いは別のライブハウスになってしまうのです……。そうなると、阻止が難しくなってしまいます……」
 その関係上、オーク達が現れるのを待つ必要があるし、事前の避難も難しい。
「オーク達はアイドルを攻撃する事はありませんが、ライブハウスにいる他のファンについてはその限りじゃありません!」
 そこに、躊躇はない。
「また、ファン達は皆の存在に気付いても、命を懸けてアイドルを守ろうとします!」
 ファン達と同等のアイドル愛を示す、むしろ自分のファンにしてしまう……そんな少し特殊な説得が必要になるかもしれない。
 もしくは……。
「彼女達……パンティーズというグループ名らしいのですが……」
 そう言って、ねむは一枚の写真を取り出す。そこに写っていたのは、メンバーの三人がそれぞれイケメン男子と仲むつまじげにしている姿。
「……まぁ、そういう事なのです。これは最終手段、切り札として持って置いてください」
 可哀想だが、人命には変えられない。説得に成功さえすれば、ファン達は整然と迅速に避難をしてくれる。
「ライブハウスは最大収容が50程度の狭く閉鎖的な空間です。皆に相手してもらうオークの数は10体で、触手でお尻を執拗に狙って連続で叩いてきたり、抱きついてきたり、臭くてネバネバの液体を放ってきたりと、オークは不快な攻撃ばかりしてきます!」
 また、
「……非常に残念ですけど、ギルビエフ・ジューシィはいつの間にか姿を消してしまうようで、撃破するのは難しいようですね」
 そこまで告げてから、ねむは頭を下げた。
「オークを相手にする時はいつもそうだと思いますが、きっといっぱい嫌な思いをすると思います! デロデロでメチャクチャにされますからね! それでも、皆なら連れ去られようとしているアイドル達を救ってくれると信じてます!」


参加者
内阿・とてぷ(占いは気の向くまま・e00953)
エルネスタ・クロイツァー(下着屋の小さな夢魔・e02216)
六連星・こすも(ヤクトフロイライン・e02758)
狩魔・夜魅(シャドウエルフの螺旋忍者・e07934)
天野・司(不灯走馬燈・e11511)
アルテミス・カリスト(正義の騎士・e13750)
空舟・法華(ほげ平・e25433)
千葉・楓斗(降魔拳士・e32268)

■リプレイ


「「「楽しんでる~~?」」」
『オオオオオオッ!』
 地下のライブハウスに、大音量の音楽とファンの声援が轟く。舞台の上に立っている少女三人組は、大人気アイドル『パンティーズ』! という訳ではないものの、魅力を充分に持ったアイドルである事に違いない。
「わぁ! パンツが見える角度を計算した踊り! すごいです!」
「フリルちゃんっ、いいですよ!」
 そんなファン達に混じるようにして、内阿・とてぷ(占いは気の向くまま・e00953)と空舟・法華(ほげ平・e25433)の姿があった。
 とてぷはファン達を『誘惑』する踊りに腕を組みながらウンウンと頷き、男装しパンティーズの公式グッズで身を固める法華は、メンバーの一人であるフリルの名前を力一杯に叫んでいる。
 名が示す通り、彼女達の売りはパンモロである。それも、すべては彼女達の私物! それを拝むため、ファンは必至になってしゃがみ込みつつ、オタ芸を披露するのである。
 そういった特殊な客層であるゆえに、とてぷには時折心配そうな視線が向けられる。
「どど、どうしてこんな所に?」
 時折、直接問われる事も度々あるが、とてぷが「セクシーさを教わろうと思って!」と元気一杯に返すと相手はそれ以上何も言ってはこなかった。
「パンツ! パンツ! パンツウゥッ!」
 そして、後方入り口付近にて、ここにも一人のパンツを愛する男がいた。もちろん、天野・司(不灯走馬燈・e11511)である。
「司……」
 そんな司の様子を呆れたように見ながら、千葉・楓斗(降魔拳士・e32268)が呟く。身に纏うのは、警備員用の服だ。中性的な相貌に加え、細身の体躯にどこか胸が膨らんで見えるとあって、本来であれば警備員服を着た楓斗は目立つだろうが、何分ここにいるのはパンティーズのファンばかりだ。
「……そろそろかな」
 エルネスタ・クロイツァー(下着屋の小さな夢魔・e02216)が、小さな身体に理性と知性を宿して言う。
 同時にエルネスタが思うのは、自宅のランジェリーショップFoxTaleから持ってきた三枚の下着と、その着用者達の事だった。
 と、その時――――。
 司とエルネスタのすぐ傍のドアが開け放たれる。そこからファン達を掻き分けてやってきたのは、ギルビエフ・ジューシィと十体のオークだ。
「あなた達のパンツは、わが主の『ドラゴンハーレム』に相応しい。是非、ハーレムで繁殖に――――」
 そして、ギルブエフが名刺を取り出しながらステージに上がろうとした所で、
「みなさーん、コズミックこんにちは☆」
 不穏な空気に一瞬静まりかえろうとしていたライブハウスに、六連星・こすも(ヤクトフロイライン・e02758)の声が響く。ステージ衣装に、超ミニのスカートを着用したこすもの服装は、極めて際どい。こすもが頰を赤らめながらスカートを抑えても、チラチラとエルネスタの選んだサテン地でフロントにリボンのついたローライズ目のピンクのショーツが覗いている。
「先ずはオレ達のショーを見ていきな。お代はテメェ等の命でいいぜ」
「ギャラも拒否権もなくアイドルに仕事を強要しようなんて、この正義の騎士……いえ、正義のアイドル、アルテミスが許しません!」
 こすもの後に続いて、こすもと似た衣装と黒の黒猫褌……の下に黒のTバックを履いた狩魔・夜魅(シャドウエルフの螺旋忍者・e07934)と、ブレザー制服に超ミニスカートを着用したアルテミス・カリスト(正義の騎士・e13750)が、バックプリントの可愛いくまさんを披露しながらステージに上がり、オークの前に立ち塞がった。
 さらにアルテミスは、ステージに上がると同時に、正義のグラビティでオークを挑発もする。
 ざわつくファン。困惑するパンティーズ。
 そこへ、ギターに擬態したオウガメタルを激しく扇情的にかき乱し、警備員用の服から黒を基調としたステージ衣装にチェンジした楓斗も、フェスティバルオーラを発してステージに乱入する。オーラに煽られ、ファン達は楓斗を歓迎し、熱狂する。
「パンティーズさん、貴女方の身に危険が迫っています。どうか避難を」
 ファンの意識が逸れている時間を利用して、楓斗はパンティーズの三人に声をかける。パンティーズの三人も馬鹿じゃない。オークの姿を見た瞬間に、事態は深刻であることを理解しているはずだ。
 そうして楓斗が避難を促している間にも、
「あたし達はパンティーズ公式ライバル、ネオパンティーズです!」
 こすもが自分達の趣旨を説明し、
「(しかしパンモロ系アイドルって、一歩間違えたら風俗じゃねぇか……)」
「(こ、こんな格好で人前に……!)」
 夜魅とアルテミスは呆れと羞恥に心を支配されながらも、ファンとオークの舐めるような視線に耐えていた。
 だが、当然いつまでも悠長にはしていられない。
「き、貴様等! 何をしようとしている!?」
 オークがパンティーズに襲いかかるような様子を見せると、ファン達は一気に爆発する。
 そんな血気盛んなファン達の襟首を法華が掴み、
「落ち着け、皆の命は豚にやるような安物じゃねぇ! せっかくパンティーズと出会ってファンになれるという奇跡に巡り会えたんだぞ? 死んじまったら彼女達と同じ時を歩めず、その未来を拝むことも出来ねぇ。ファンなら生きて彼女達の支えになれよ! 俺達ケルベロスが必ず皆の未来を護る。此処は俺達に任せてくれ!」
 司が自らの身分を明かしつつ、夜空を纏った腕で天を指さし、隣人力と割り込みヴォイスを駆使して、ファン達を抑え込む。
「みんな、とにかくおちついて!」
 エルネスタもファン達の前に回って必至に呼びかけるが、どうも反応が薄い。
 かといって、こすも、夜魅、アルテミス、楓斗の四人は、パンティーズを狙うオークの相手をしなければならない。
「ダメ! みんなじゃオークと戦ったら死んじゃうから!」
「死ぬ事なんか怖くない! そんな事より三人を守らないと!!」
 ラブフェロモンを発するとてぷの絶叫に、ファン達も必至の形相で言い返す。
「死んでもいい? みんなが死んだら、パンティーズさんが悲しみますよ! ファンがいるから、アイドルなんですよ!」
 誰も犠牲は望んでいない。ファン達にだって、自分達がオークに適わないことなど、分かっているはずなのだ。それを吹き飛ばす愛情と男の矜持は、確かに尊いものかもしれないが……。
「大丈夫、ケルベロスのネオパンティーズと私たちで何とかします! みんなでパンティーズのライブの続きを見ましょうよ! 死んだら見れないですからね!」
「だ、だが!」
 今だけはなんとか堪えて欲しいというとてぷの懇願に、ファン達の心にも僅かに緩みが出始めていた。だが、あと一歩足りない。
 そして、その時だった。
「ぼく、帰ります。そしてフリルちゃんと恋人になります!」
 フリルグッズに全身を包んだ法華が言った。
「は、はぁ!」
 その法華の襟首を今度は逆にフリルファンの一人が掴む。だが、法華は顔色一つ変えないまま続けた。
「みんなここで死んじゃったらライバルはいません。生き残るぼく一人で彼女達を支えます」
「お、お、お前、それでも!」
「死んだら絶対恋人になれませんよッ!」
「っ!?」
 その法華の迫力に、ファン達は怯んだ。法華の弱気で卑怯な発現にムカついたからじゃない。多少は邪なファン真理などもあったかもしれないが、それ以上に、自分達が自己満足で自殺しようとしている事に気付いたらかだ。
「あっ、やぁっ……、触手がスカートの中に?! きゃ、きゃあっ!」
 アルテミスの悲鳴が上がる。オークの触手がアルテミスの身体を這い回り、あまつさえショーツを半ばまで脱がせてお尻を叩いていた。
 それでも、アルテミスはファンの視線に気付くと笑顔で言うのだ。
「皆さんはいまのうちに避難してください!」
 ……と。
 こすもは溶解液でドロドロだし、夜魅は触手に絡まれつつ組み合っている。パンティーズを逃そうとしている楓斗にしろ、似たような状況だ。
 本来、オークは強敵ではない。ならば何故、ケルベロス達がそんなにも苦戦しているのか……。
「……避難するぞ。俺たちは邪魔になってる。俺たちにできる事は逃げる事だ。無意味な自殺じゃない……」
 ファンの一人が、小さく言った。その一言を合図に、ファン達は整然とした動きで避難を始めるのだった。


「その先には行かせません。貴方と一緒なら、どんな敵でも、怖くありません!」
 出口に向かって駆け出すパンティーズの三人の背に、オークの触手が迫る。その触手の間をバイクに擬態したオウガメタルに跨がって駆け抜け、楓斗はオークをその場に釘付けにする。
 敵の陣容は、クラッシャー5にディフェンダー5。何も考えていないオークらしい形だった。
「みんな、だいじょうぶ!?」
 前衛には、すでにダメージやバットステータスを受けた者が複数いる。まずは体勢を立て直すために、エルネスタは力を帯びた紙兵を大量散布する。
「やっぱこっちの方が動きやすいぜ」
 夜魅はすでにステージ衣装を脱ぎ捨て、着慣れたサラシと褌姿だ。
「突き立てろ、獣の牙!」
 夜魅は身体の感覚を確認するように、腕をブンブンと振り回すと、まずは同じ攻撃手のこすもに螺旋の力を注ぎ込んだ。
「うう、ドロドロ……テラコズミック気持ち悪い……」
 夜魅に力を注がれたこすもが、オークをきっと睨む。頭から悪臭とネバネバした液体を吹きかけられ、衣装のほとんどを溶かされた気持ちの悪さと恥ずかしさをぶつけるように、
「輝け! ムーンライトバタフライ!」
 こすもは虹色に輝く蝶の羽根を表し、光の粒子をバラまいた。
「ファンのために行くぜ! あと、パンツのために!」
 オウガメタルを纏った司の身体は、まるで星空に包まれているよう。狭い空間内であることを利用し、司は壁を蹴って最もダメージを受けているオークへと接近する。振るう拳は、まるで「鋼の鬼」の如く、オーク一体を易々と屠る。
 だが――――。
「や、やめっ! ん、ふぁっ!」
 挑発の結果、狙われやすくなったアルテミスの肢体にオークが絡みついている。全身を探るような触手に、アルテミスの背筋がゾワリと震えていた。
「アルテミスさん! 大丈夫ですか!?」
「回復します!」
 ピンチのアルテミスに、法華が光の盾をとてぷが桃色の霧として放出して癒やし、マミックが時間を稼ぐためにその身で仲間を庇いながら、時折オークに食らいつく。
 援護を受けたアルテミスは、振り返りざまに雷の霊力を帯びた神速の突きでまた一体を消し炭にするも、衣装はほぼなく、法華の光の盾にかろうじて隠されている程度。最早、下着が見え隠れどころの話ではない。 アルテミスは全身を真っ赤にしつつも、改めてオークに向き直り言った。
「さ、さあ、オークの皆さん、本番のステージはここからです!」
 

 戦況は進展を見せ、残りのオークは五体という所まで来ていた。各個撃破の方針をとったのが正解だったようだ。
「ほげっ?!」
 そう一瞬気が緩んだ所で、法華の悲鳴が上がる。
 オークの触手は、法華のお尻を撫で回し、スパッツを引っ張っていた。そのスパッツの下から現れたのは、まさかの白ブリーフ!
 色気もへったくれもないそれに、触手が苛立つように法華のお尻を叩く。
「痛っ! すみません、これが一番安かったので……」
 パンツに男物がある事を知らなかったゆえの、悲しい誤りであった。ともかくこのまま叩かれ続けるのもアレなので、
「舞い立ち昇る龍の鳴き声をお聞かせします」
 法華は龍笛を吹き、龍の嘶きを響かせる。
「うおっと!」
 次いで、夜魅の声が木霊する。夜魅もまた、別のオークの触手にて黒の黒猫褌越しのお尻を狙われていた。
「やられたら、やり返す!」
 夜魅は自分がやられたように、オークのお尻に螺旋を籠めた掌を叩き付ける。すると、内部からオークの身体は爆散して果てた。
「こ、のっ!」
 四方八方からドロドロの溶解液責めにされていたこすもが、武器にグラビティ・チェインの破壊力を乗せて砲撃すると、また一体のオークが絶命する。
「あと少し!」
 楓斗が仲間を鼓舞するように声をだし、拍子を打ちながらリズムをとっている。梵字が刻印された二対のゾディアックソードを構えるその姿には、まるで力みがない。襲い来るオークの触手をリズムに乗って、いなし、逸らしつつ、楓斗は超重力の十字斬りを叩き込む。
「っ!?」
 その時、アルテミスへ溶解液が降りかかり、その身が毒に侵される。毒に侵されながらも、アルテミスはカウンター気味に空の霊力を帯びた斬撃を繰り出し、また一体のオークを仕留めるが、同時にアルテミスは膝をついてしまう。挑発し、怒りを一身に浴びた事で、序盤に集中砲火を浴びた事が影響していた。
 だが、前衛はアルテミスに限らず多数の手傷を負っている。
「さぁさぁお立会い! このヒトガタの紙をこう飛ばせば~……ふふふ~、見分けられるかな?」
 慌ててとてぷが人形に切った紙を前衛の周囲に飛ばして、回復を測る。
「みせられないよ!」
 次いで、エルネスタがサキュバスミストを守りたい感情で透明化してアルテミスを包むと、その顔になんとか生気が戻った。
「ありがとう、ございます」
 そう感謝を告げるアルテミスの声がヘリウムガスを吸った時のように高くなっており、ケルベロス達の間の空気が僅かに和らいだ。
 ともかく、残る敵は一体のみ。
「待ってろよ、アルテミス! とっとと終わらせるぜ!」
 そう告げて、司が指先に無色の炎を灯した。迫る触手の間をすり抜け、司が炎を灯した指先でオークをつつくと、その無色の炎はオークの原始的恐怖を蘇らせ、断末魔の叫びと共に、燃やし尽くすのだった……。

 会場が元通りになると、そこにはパンティーズとファンの元気な姿があった。
 恩人で、かつアイドルという事で、こすももステージに上って、パンティーズと一日限定ユニットを結成している。最初こそ、知名度のまったくなかったこすもだが、今では、
「コズミック楽しんでますか☆」
 というこすもの煽りに、ファン達が「コズミーック!」と返してくれるまでになっていた。
 その様子をとてぷを筆頭に、ファン達に混じって他のケルベロスもライブを楽しみ、
「FoxTaleから、ぱんてぃをあいするぱんてぃーずにぷれぜんとです!」
 エルネスタは自宅の店の宣伝もかねて、『パン☆リク』というイベントを行っていた。ファンが購入する場合、住所バレの心配もないという気遣い付きだ。もちろん、そのラインナップの中にはネオパンティーズのものもあり、こすもと夜魅とアルテミスが微妙な顔をしていた。一体どんな使われ方をするのやら。
 なんにせよ、アルテミスもなんとか無事であり、パンティーズ最大の秘密もバレる事なく、悲劇は悲劇となる前に、終わりを迎えるのだった。

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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