●『嫌悪』を抱かせるヘビ
地面を這いずり、鎌首をもたげるヘビ。
手足を持たず、とぐろを巻いて威嚇してくるその姿。むき出す牙からはぽとり、ぽとりと何かが滴って……。
「い、いやっ……」
アレを見るたび、クラスで男の子がヘビを持ってやってくるあの光景が蘇ってしまう。
その女子小学生、西野・美保は身を震わせて、近場の公園へと走っていく。
彼女は身を震わせ、公園の水飲み場でうがいする。
「ヘビこわい、ヘビこわいよぉ」
ガラガラガラガラ。その次は隣の蛇口で頭を冷やす。できるだけ、あの気持ち悪い姿が頭からなくなってしまうように。
「あー、もう気持ち悪いよぉ……」
それでも震える美保の後ろから、ゆらりと忍び寄る影。そいつは手にした鍵で美保の心臓を一突きした。
「あ……」
美保は意識を失い、ぐったりと倒れてしまう。ただ、胸を貫かれたはずなのに、そこには傷痕どころか、血が出る様子もない。
そして、鍵を引き抜いたのは、両手が翼のようになっており、その翼にモザイクが掛かった女……第六の魔女・ステュムパロスだ。
「あはは、私のモザイクは晴れないけど、あなたの『嫌悪』する気持ちもわからなくはないな」
ステュムパロスの声に応じるようにして、新たなドリームイーターが現れる。
「シャアア……」
人間大、いや、それより一回りは大きな褐色のヘビだ。全身に淡いモザイクを纏ったそいつは、鎌首をもたげて威嚇するように鳴き声をあげる。
ヘビはそのまま舌を伸ばし、獲物を求めていずこともなく去っていったのだった。
ヘリポートに集まるケルベロス達。
これから現れるドリームイーターが『嫌悪』に関連しているということで、集まったメンバーは自身が嫌いなモノを語り合う。
歴戦のケルベロスとて嫌なものは嫌だし、嫌いなものは嫌いなのだ。
「嫌いな物ってあるよね。分かっていてもどうしようもないというか……」
リーゼリット・クローナ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0039)もそれに理解を示す。自身にも嫌いなモノがあるからだ。
そんな話をしていると、集まるケルベロスの中からバジル・サラザール(猛毒系女士・e24095)が話を持ちかけてきた。
「巨大な蛇のドリームイーターが現れるそうね」
「うん、その通りだよ」
『嫌悪』を奪ったドリームイーターは既に姿を消しているようだが、奪われた『嫌悪』を元にして現実化した怪物型のドリームイーター……今回は巨大ヘビの形をとり、事件を起こそうとしているようだ。
「被害が出る前に、この巨大ヘビのドリームイーターを撃破してほしいんだ」
また、『嫌悪』を奪われた女子小学生、西野・美保は下校途中に襲われ、水飲み場近くで倒れている。
このドリームイーターを倒す事ができれば、『嫌悪』を奪われてしまった少女も、目を覚ましてくれるはずだ。うまく事件が解決できたなら、介抱の上でフォローなどあるとよいだろう。
現場となるのは、愛媛県某所の住宅地にある公園だ。ドリームイーターはこの近辺を這いずり回り、奇怪な鳴き声を上げて獲物を求めている。
「事件が起きるのは夕方だから、人通りもちらほらとあるはずだよ」
一般人が先にドリームイーターと出くわしてしまう前に人払いなど対処を行い、速やかに討伐へと当たりたい。
現れる巨大ヘビのドリームイーターは1体のみ。その全長は2メートルを超える。
相手は『嫌悪』から生まれたドリームイーター。その体躯は寒気すら覚えさせるような威圧感を放っている。
「全身がドリームイーターらしく、淡いモザイクに包まれているようだね」
ドリームイーターが獲物と見定めた相手に対しては、長い体を伸ばして敵陣を薙ぎ払い、締め付けてくる。さらに、毒の牙を突き刺して相手を弱らせようとするようだ。
「被害者の少女は本当にヘビが苦手だったんだね……」
ヘビが苦手なものは、その見た目だけで受け付けないという。だからこそ、全体的にモザイクに覆われたような見た目をしているのだろう。
リーゼリットの説明を聞き終えた、雛形・リュエン(流しのオラトリオ・en0041)が語る。
「ヘビか。夢喰いの力によるものか、それとも『嫌悪』の力がそれだけ強いのか……」
話を伝え聞くだけではいまいちその感触は伝わりづらい部分があるが。比較的ヘビは大丈夫と考えるリーゼリットでも、やはりその威圧感には寒気を覚えていたようだ。ヘビに睨まれたカエルのような感覚を覚えたのだろう。
「これ以上、被害を拡大しないように、どうかドリームイーターの撃破を」
よろしく頼んだよと、リーゼリットは事態の収拾をケルベロス達に願ったのだった。
参加者 | |
---|---|
レクス・ウィーゼ(ウェアライダーのガンスリンガー・e01346) |
綾小路・鼓太郎(見習い神官・e03749) |
佐藤・非正規雇用(スネークアイ・e07700) |
村雨・柚月(無量無限の幻符魔術師・e09239) |
南條・夢姫(朱雀炎舞・e11831) |
久堂・悠月(悠久の光を背負うもの・e19633) |
バジル・サラザール(猛毒系女士・e24095) |
レオナルド・ドール(沈む獅子・e26815) |
●蛇の捜索
ヘリオンでの移動中。
現場到着を待つメンバー達は、ヘビについて語り合う。
「蛇は好きっていう人、少ないだろうなあ」
「蛇……、蛇ですか……。わたしもあまり好きではないですね……」
村雨・柚月(無量無限の幻符魔術師・e09239)は怖がるほどではないが、触りたいかと聞かれれば抵抗があるようで。
南條・夢姫(朱雀炎舞・e11831)も、うねうねと這いずり回るあの姿がどうにも苦手だと顔を顰める。
「俺は好ましいと思っている方ですね、蛇」
神社で育った綾小路・鼓太郎(見習い神官・e03749)は、岩国の白蛇などは神様の使いでもあると好意すら抱いている。好き嫌いは人それぞれと彼は仲間へと話す。
「蛇は好きだけど……、好きだからこそ気に食わないわね」
こちらは大好きというレベルのバジル・サラザール(猛毒系女士・e24095)。心なしか、彼女の緑の髪はヘビを彷彿とさせる。
「バジルさんって、蛇っぽいよな……」
佐藤・非正規雇用(スネークアイ・e07700)はそんなことを考える。もしかして、舌もヘビのように……と脳裏にちらつかせるが、彼女はシャドウエルフだからさすがにと、その考えを捨て去っていた。
「しかし、好きだから~とかいう理由での行為だろうが、男なら惚れた女は笑顔にしてこそだろうにな」
ハードボイルドなカピバラのウェアライダー、レクス・ウィーゼ(ウェアライダーのガンスリンガー・e01346)が語るのは、今回被害に遭った少女がトラウマを抱くに至ったきっかけ。なんでも、クラスメイトの男の子にヘビを突きつけられたのだとか。
「小学生くらいだと『好きな子にいたずらする』とかあるのかもしれないが、蛇持っていくのはまずいだろ」
その少年に呆れる以前に、よくヘビを持てたなと柚月は考えてしまう。
「お説教してやりたいけれど、思春期特有のやつなのかねぇ」
レオナルド・ドール(沈む獅子・e26815)も少年に対して思うことはあるが、ここはヘビがトラウマになってしまった被害者の少女、西野・美保の心のケアが先だろう。
「ともかく、敵を倒して少女を救いましょうっ」
「ああ、少女をケアする為にも、ヘビのドリームイーターをさっさと片付けないとな」
現場空域が近くなってきて、夢姫、レオナルドが意気込みを見せる。
上空から現場付近を見下ろしていた、久堂・悠月(悠久の光を背負うもの・e19633)に鼓太郎。索敵するが、人間より多少大きな程度の敵を見つけることは難しい。
その為、メンバー達は降下し、直接現場付近で探すことにする。
「先ずは嫌悪の権化を滅ぼしますか」
そう呟いた鼓太郎は、仲間と共にヘリオンから降下していくのだった。
愛媛県某所の住宅地。
地面へと降り立ったメンバー達は2人組の班となって敵、ドリームイーターの捜索に当たる。
夢姫、悠月ペアは公園付近を歩いて回る。ちらほらと見かける人影は無関係の一般人。夢姫はラブフェロモンを振りまき、声をかけ、悠月も危険を伝えて遠ざかるよう促す。
(「奇怪な声上げて、這いずってると言っていたな」)
その上で、悠月は声を頼りにして敵の姿を探す。
「……そもそも、蛇って鳴きましたっけ」
少し離れた場所で、鼓太郎は同行するレクスへと尋ねる。やはり彼も時に一般人を発見し、避難するよう呼びかけていた。
「普通の蛇は鳴かないはずだが……な」
レクスが言う様に、ヘビは声帯を持たず、シャーと言う音も尻尾から出ている。ただ、嫌悪の感情から生まれたそれに、その常識は通用しないのだろうか。
スマートフォンと防犯ブザーを手にしたレクスは、先に発見した場合の伝達に備えるが、なかなか視界に敵を捉えることができない。
こちらは、非正規雇用と柚月。彼らは人払いしながら索敵を続ける。
彼らはその際、ライドキャリバーに乗るサポーター、木下・昇を見かけた。
「あっ、また木下さんがいる……後でサイン貰おう」
再び索敵に戻る非正規雇用。同じく、敵が出す音を聞きわけるべく、耳を傾ける柚月が戦術論などのうんちくを語らぬことにやや安堵する非正規雇用は、同行する雛形・リュエン(流しのオラトリオ・en0041)へと尋ねる。
「リュエンさんって、爬虫類とか嫌い?」
「それほど、苦手と言うわけでは……!?」
リュエンが突然、表情を歪めて驚いていたのは、非正規雇用がヘビのように舌をチロチロと出して驚かせてきたからだ。
それに柚月がやや呆れながらも、さらに音を頼りに捜索を進めるのである。
残る、バジル、レオナルド組。
「独特のフォルム、可愛らしい目、とっても素敵じゃない?」
歩きながら、そう語るバジル。よほどヘビが好きなのだろう。だからこそ、蛇の姿を借りた敵の存在が彼女にとっては許せないようだ。
各メンバー達はSNSで連絡を取り合ってはいるが、今のところ発見の知らせはこない。
それもそのはず、何やらずるずると擦るような音が聞こえてくる。そして、少しずつ「シャアアッ」という音も近づいてきていた。
レオナルドはすぐさま周囲に人がいないことを確認し、キープアウトテープを周囲へと張り巡らす。バジルも殺界を形成した後、仲間達へと連絡を入れていた。
その間に、敵は2人へと接近してくる。淡いモザイクに覆われた褐色のヘビだ。
「Buon giorno。巨大な蛇さん。すぐにお別れする事になるけどな」
イタリア語で「こんにちは」と挨拶するレオナルド。彼はライオンの雷の名を冠する槍を握り、構えを取る。
そこに、悠月、夢姫ペアが駆けつける。鎌首をもたげる敵を見て、悠月が身震いしてしまって。ヘビに睨まれたカエルのような気分をリアルに味わう。
「でもまぁ、こんくらい怖い気持ち持ってるってことか。振り払ってやんなきゃな!」
仲間が揃うのを待ちたいところだが、ドリームイーターはお構いなしに襲い掛かってくる。
この場のケルベロス達は已む無く応戦、その討伐へと当たり始めるのだった。
●『嫌悪』を打ち砕け!
飛び込んでくるドリームイーター。まずはその長い体躯を利用し、尻尾を振り回してくる。
タイミングがいいのか悪いのか、駆けつけた鼓太郎と夢姫。特に前へと布陣した夢姫がそれに叩きつけられてしまう。
「……成程。蛇を嫌う方が見ると、このように感じるのでしょうね」
構えを取る鼓太郎。確かに、その威圧感で身が竦んでしまいそうな気分になってしまう。
この場にいたメンバーも、次々に攻撃を加えていく。
仲間の盾となっていたビハインドのソフィア。彼女は念を込めた周囲の石を飛ばして夢喰いへと叩きつけ、同列にいたレクスは縛霊手で敵に殴りかかり、網状の霊力でその身体を縛り付ける。
続き、レオナルドが稲妻を帯びた高速の突きで、夢喰いの身体に痺れを走らせると、悠月が後方から叫びながら攻め入ってきた。
「うらぁ! だいぶキモイ見た目してんだよ、お前は!」
彼は手にする斧の動力炉を起動し、自身の力を上昇させる。
「コア・イグニション 《動力炉点火》。悠久の光を今ここに……こいつは効くぜ! ブラストグロウッ!!」
展開させていく魔方陣。悠月は悠久の光を統べる一撃を夢喰いに叩き付けた。
仲間達が攻撃する間に、バジルは仲間達の手前へと雷の壁を展開していく。夢喰いへと鋭い視線を向けつつ。
(「形こそ蛇だけど、ただ悪戯に嫌悪感を煽ってるだけ。私は認めないわ」)
そんな彼女に対し、鼓太郎は害虫駆除にも近い感覚で戦いに臨む。
「汝を裁くは吾なるぞ!」
この世の恨み辛みを一本の棒と成し、ヘビの身体へと何度も打ち据えていく。力いっぱい敵の顔面を殴りつけた直後、前に立つ夢姫が敵を捕捉する。
「これを避けられるかしら?」
複数枚の螺旋手裏剣をグラビティによって、1枚に見えるように彼女は投げ飛ばす。夢喰いに尻尾で叩き落とされても、手裏剣は執拗にヘビを狙い、モザイクに覆われた身体を切り裂いていく。
交戦が続くうち、非正規雇用と柚月も遅れて駆けつける。
毒を滴らせながらも、襲い来る夢喰いの牙を非正規雇用のオルトロス、店長が受け止める。その主はドローンを展開し、仲間の手前へと盾を張っていった。
そこで、夢喰いへと突然、ライドキャリバーに乗って昇が突撃を繰り出す。リュエンも杖を振りかざして迸る雷で敵を射抜くと、身体を痺れで硬直させたヘビに対し、柚月は微かに笑う。
「お前の動きは見えてるっての!」
精神を極限にまで集中させた彼は、敵の顔面を爆発させた。
大きく仰け反る夢喰いだったが、それでも長い身体を巻きつけてこようと、尻尾を伸ばしてくるのだった。
徐々に増えてくるケルベロスにも、夢喰いは勢いを衰えさせることなく襲い来る。
特に長い身体を活かした締め付けは強力で、縛り付けるケルベロス勢の体力を大きく削ぎ落とす。
しかしながら、メンバーを健気に護るサーヴァント達。オルトロスの店長、ビハインドのソフィアが盾となってくれる。
夢喰いがそちらへと気を取られている隙に、ケルベロス達も攻撃を繰り返す。
「Farò piegare il Suo mondo.」
『貴様の世界を歪めてやろう』とレオナルドは高く飛び上がり、かかと落としで敵の首を狙い、敵の怒りを自身へと向ける。
そうなると、夢喰いの攻撃はレオナルドへと集中する。サーヴァント達が積極的に彼を庇うものの、一撃が強力なこともあってすぐに彼の息が上がってしまう。
「レオナルドさん、回復するわね」
その為、バジルは誰を回復するかを仲間に示してから緊急手術を施し、少しでもその体力を回復させる。これは効率的に仲間を回復する為だ。
リュエンも敵に氷や痺れと動きを苛む攻撃を仕掛ける合間に、癒しの雨を降らして広域の回復に当たる。
さらに、非正規雇用が仲間の背後へとカラフルな爆発を起こす。それによって仲間の士気を高めると、夢姫が敵の腹目掛けて電光石火の蹴りを叩き込み、その動きを止めようとする。
明らかに夢喰いの動きは鈍ってきている。のろのろと動く敵の頭上からレクスが強襲し、流星の煌きと重力を宿した蹴りをその背中に食らわせた。
「憎悪なんてあんまりない方がいいんだ、消えな」
ドラゴニックハンマーを振り上げた悠月は超重の一撃を叩き込み、グラビティの力でその箇所を凍りつかせる。
じたばたともがく夢喰い。その動きがまた嫌悪を抱かせる。
「こやつに蛇塚など不要ですね、滅べ!」
全身をオーラで包み込んだ鼓太郎が、食らいつくオーラの弾丸を繰り出す。弾丸は狙い違わず夢喰いへと飛んでいき、背中のモザイクごと食らいついた箇所を持っていってしまう。
だが、ヘビはしぶとい。生きるのを優先と考えたのか、ケルベロスの間を縫って逃げ出そうとする。
それを見た柚月が光の力を宿すカードを取り出す。
「暗闇射抜くは漆黒の瞳! 顕現せよ! スナイパーアイ!」
彼の声に応じ、全身を光が包み込む。そして、光をルーンアックスへと込めて。
「故無き現は幻想へと還れ!」
「シャアアアァァァ……」
大きく振りかぶったそれを、柚月がヘビの脳天へと振り下ろす!
弾け飛ぶドリームイーター。飛び散ったモザイクもすぐに消えていった。
「悪い夢はこれで終わりっと」
敵の消滅を見届け、悠月は武器を収めた。
メンバー達が戦闘態勢を解く中、バジルは消えたドリームイーターを見下ろし続ける。
「蛇は何も悪くないのよ」
彼女は少しだけ寂しげにそう呟くのだった。
●本当に怖いのは……
無事、夢喰いを討伐したケルベロス達は、戦場となった現場にヒールを施す。
夢姫は桃色の霧を展開し、バジルは杖の先から電気ショックを飛ばして活力を与え、辺りの修復に当たる。
「後は、美保のフォローだな」
レオナルドが仲間へと声をかけると、ヒールを終えたメンバー達はそのまま公園へと向かうことにしていた。
メンバーは公園に倒れる美保を介抱する。
「大丈夫ですか?」
隣人力を使い、鼓太郎が声をかけると、目覚めた美保は恐怖の為かわんわんと泣き始めた。
「よしよし怖かったな、もう悪い蛇は居ないからな」
「君が嫌いなものはお兄さんたちが倒したから、安心してくれ」
レオナルドが頭を優しく撫で、柚月が励ましの言葉をかけ、美保が落ち着くのを待つ。水道水で濡らしていた美保の頭を、悠月がタオルで優しく拭く。
「落ち着くまで、ゆっくり休憩しましょうね」
鼓太郎は近場のベンチへと移動し、美保を座らせる。
「怖かった、怖かったよ……」
ヘビに対する恐怖もそうだが、何者かに襲われたことも含め、美保は泣きながら自分の胸の中の恐怖を全て吐露する。
バジルはヘビを思わせるアクセサリーをとった後で、彼女のメンタル面を慮りつつ声をかける。
「怖かったわね、でも大丈夫。また悪いやつが来ても、私たちがやっつけてあげるわ」
「もう安心だぜ。それにしてもヘビってやべぇなー。竦むわ、あれ」
悠月がヘビと口にするだけで、美保はひっと小さく呻く。だが、悠月は彼女を安心させるようにとこう続ける。
「でもまぁ、俺らの敵じゃなかったな。どうだ、頼りになるだろ?」
実際、こうして助けに来てくれた。美保はケルベロス達へと小さく頷く。
その彼女へ、レクスが美保へと視線を合わせるように屈み、連絡先を書いたケルベロスカードを渡す。
「こいつは、俺達ケルベロスが付いてるって証さ。もし何かあっても、俺らがついてりゃ安心だろう?」
渋さ漂わせるレクスだが、孤児院で子供の世話していることもあって、対応は慣れたもの。
「其れに悪ガキの悪戯に我慢できんようになったら連絡をくれ。俺がやってきて悪ガキを怒ってやるからよ」
ようやく、美保は小さく笑う。
「ははっ、お前も俺ほど……とは行かないが、自信満々でいったほうがこの先楽しいぜ」
常に前向きに。悠月はそんな思いで彼女を諭した。
「もっと勇気を出すわん!」
同じく、オルトロスで顔を隠していた非正規雇用が言葉をかける。爬虫類顔だと自覚する彼は、面を向けて美保と語るのを避けていた。
非正規雇用はふと、真横のバジルに向けて舌をチロチロと出してみせる。驚かそうと思ってやってみたのだが、すぐに平手打ちが返ってきた。
「蛇を馬鹿にしないで」
「蛇より、バジルさんの方が怖いや」
本気で怒るバジルに、非正規雇用が頬を腫らせる。それに、リュエンは嘆息してしまうのだった。
作者:なちゅい |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年9月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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