夏の祭りはロックに乗せて

作者:三ノ木咲紀

 ある田舎町の神社で、夏祭りが開催されていた。
 毎年八月最終日に行われる祭りは、決して有名とは言えない。
 だがこの土地の人々にとっては、夏の終わりと秋の始まりを告げる大切な風物詩となっていた。
 神社の境内に設けられた櫓の上では太鼓や三味線、笛の演奏がされていて、裾野長く飾られた提灯の下では奉納踊りが賑やかに踊られる。
 参加する人々のほとんどは浴衣や甚平。手に団扇。
 境内に続く参道には、色々な出店が軒を連ねている。
 射的に輪投げに金魚すくい。綿菓子焼きそばりんご飴。
 各種の出店から香るいい匂いを切り裂くように、一体のマグロガールが現れた。
 頭に被ったマグロは死んだ目をしていて、朝顔柄の浴衣を一分の隙も無く着こなしていた。
 周囲の人々が、ぎょっとしたように踊りをやめてマグロガールを注視する。
 マグロガールはおもむろに手元の音楽プレーヤーのスイッチを入れると、いわゆるヘヴィメタルが大音量で流れ始めた。
 耳をつんざくような速いギターや、腹に響くベースの重低音。
 マグロガールはおもむろに両手を上げると、アップテンポの曲に合わせて奉納踊りを踊り出した。
 トランス状態のように踊るマグロガールの腕が振り下ろされる毎に、悲鳴が上がった。
 マグロガールが手にした惨殺ナイフが高速で閃き、周囲の人々を切り裂いていく。
 逃げ惑う人々。
 その背中を惨殺ナイフが切り裂き過ぎる。
「……奉納踊り、おわり……」
 マグロガールが呟くように言った時、境内は血の海と化していた。


「エインヘリアルに従う妖精8種族の一つ、シャイターンが行動を開始したようです。現れたのは、マグロの被り物をしたマグロガールです」
 セリカ・リュミエールは山間の地方を指差しながら、ケルベロス達を見渡した。
 日本各地の祭り会場を襲撃し、一般人を殺害してグラビティ・チェインを得ようとしているらしい。
 祭り会場を狙っている理由は不明。だが、お祭りという場を利用して、効率よくグラビティ・チェインを収奪する作戦である可能性が高い。
「祭りを楽しんでいた人々を殺戮から救うために、皆さんの力をお貸しください」
 マグロガールが現れるのは、奉納踊りが踊られている祭り会場。
 神社の境内にしつらえられた櫓の足元で、たくさんの人が和気あいあいと踊っている。
 奉納踊りが始まってすぐに、マグロガールは現れる。
 マグロガールは惨殺ナイフを使って、無言で周囲の人々を切り刻んでいく。
 祭り会場の人を避難させてしまうと、マグロガールが別の場所を襲ってしまうため、事前の避難は行えない。
 マグロガールはケルベロスが現れれば先に邪魔者を排除しようとする。
 挑発しつつ、人の少ない場所に移動するなどすれば被害は押さえられるだろう。
 事前に戦闘のできそうな場所を探したり、マグロガールと接敵してから人々を避難させたりするのもいい。
 マグロガールはそれほど戦闘力は高くないが、油断は禁物だ。
「戦いが終わったら、是非夏祭りを楽しんできてください。八月最後の夏祭り。きっといい思い出になりますよ」
 セリカは力づけるように微笑むと、ケルベロス達を送り出した。


参加者
ミズーリ・エンドウィーク(ソフィアノイズ・e00360)
一式・要(狂咬突破・e01362)
蒼天翼・真琴(秘めたる思いを持つ小さき騎士・e01526)
ヴィヴィアン・ローゼット(色彩の聖歌・e02608)
七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)
エルザート・ロッソ(ファントムソード・e24318)
リリー・リー(輝石の花・e28999)

■リプレイ

 マグロガールがスイッチを押す寸前、その背が炎に包まれた。
「……せっかくの祭りを血の宴にさせるか」
 マグロガールの背中へシャーマンズカードを放った蒼天翼・真琴(秘めたる思いを持つ小さき騎士・e01526)は、炎を帯びるシャーマンズカードを突きつけた。
「冥土に送ってやるよ、シャイターン」
 ゆっくりと振り返ったマグロガールは、真琴の姿に眉をひそめた。
「ケルベロス……!」
 現れたケルベロスの姿に、マグロガールは惨殺ナイフを振りかぶった。
 一撃で命を奪うナイフはしかし、透明な盾で防がれた。
 構えたDie Feenに赤い刀身の惨殺ナイフが突き刺さり、涼やかな音を立てて翅のように舞い落ち消える。
「……させないわ!」
 一気に頬張った屋台グルメを飲み込んだ一式・要(狂咬突破・e01362)は、後ろで腰を抜かす子供に微笑んだ。
「立てる? 仲間が安全な場所まで誘導するから、もう少しだけ頑張って」
「う、うん……」
 テレビウムのお面を側面で被り、適当に買ったお祭りグッズを手にした姿に、子供は少しだけ笑うと立ち上がった。
 一拍遅れて騒ぎ始めた客の耳に、声が割り込んだ。
「みんな、落ち着いてあっちに避難してー! 大丈夫、あたしたちが必ず敵を倒して、お祭りもすぐ再開するからー!」
 ヴィヴィアン・ローゼット(色彩の聖歌・e02608)の声に、パニックを起こしかけた客たちが立ち止る。
 その声に呼応するように、リリー・リー(輝石の花・e28999)の声が響いた。
「落ち着いてここから離れてなのよ」
 拡声器を使って避難を促すリリーに、制服を着た警官も避難を促すよう動き出す。
 避難に向けて動き出した客たちに、マグロガールは音楽プレーヤーのスイッチを入れた。
 耳をつんざくようなヘヴィメタルが境内に響き、同時にマグロガールの殺気が膨れ上がる。
 威圧するようなロックな気配が、逃げる一般人に迫る。
 警官までも一瞬萎縮する気配に、リリーは再び拡声器を口元へやった。
「皆のことは、ケルベロスが絶対に守るの! だから安心して!」
 ケルベロス、の一言に客たちが少し落ち着く。
 その耳に、歌声が響いた。
 ヘヴィメタルをかき消すように、ヴィヴィアンが奉納踊りの歌を歌った。
 割り込みヴォイスで響く歌声に、奉納踊りの歌に慣れ親しんだ人々が顔を上げる。
(「このお祭りに必要な歌はこっちだから」)
 そんな気持ちを乗せた歌に呼応して、リリーもまた大きな声で歌った。
 大好きなお祭り、大好きな屋台。それらを守りたいという気持ちに、逃げる客の一人が歌い始めた。
 歌声はさざ波のように広がり、いつの間にかヴィヴィアンとリリー、逃げる客が一緒になって奉納踊りの歌を歌う。
 歌によって繋がったケルベロスと客達は、冷静にその場を後にした。

 響くヘヴィメタルに気を良くしたマグロガールは、移動を始めた客に追撃を仕掛けた。
「逃がさ……ない」
「届け、雲耀の速さまで!」
 逃げる客の最後尾にナイフが届く寸前、行く手を阻むように日本刀が奔った。
 クリスナシュ・リドアレナ(銀閃・e30101)が放った雲耀の一撃が、マグロガールに向けて放たれた。
 攻撃を食らう寸前に避けたマグロガールの動きを読んでいたかのように、七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)の蹴りが叩き込まれた。
「電光石火の蹴りを、避けられますか?」
 クールな声と共に放たれた蹴りがマグロガールの腹を直撃し、客たちとは反対方向へと吹き飛ばされる。
 着地したマグロガールの耳に、奉納踊りの歌が届いた。
 遠ざかる歌に、苛立ったように惨殺ナイフを構えたマグロガールは、ふいに空を見上げた。
 視線の先には、祭りの櫓。
 騒ぎに驚き、降りるに降りられず。祭囃子を奏でていた青年たちの怯える気配に、マグロガールは口の端を上げた。
「まだいた……」
 地面を蹴ったマグロガールは、櫓へ足を掛けた。
 信じられない速さで櫓を駆け登ったマグロガールは、大きくジャンプすると櫓の上に着地しようとした。
 その体が、宙に浮いた。
「テンション低いな! 楽しんでるか!?」
 翼飛行で上空に待機していたミズーリ・エンドウィーク(ソフィアノイズ・e00360)が、マグロガールめがけて惨殺ナイフで斬りつけた。
 ギターの側面で殴りつけるように放たれた一撃に、マグロガールの体がぐらりよろける。
 そのまま地上へ落下するマグロガールに、エルザート・ロッソ(ファントムソード・e24318)の攻撃が突き刺さる。
 攻撃を受けたマグロガールは、惨殺ナイフを構えた。


 叩き付けられた地面から体を起こしたマグロガールはゆっくり立ち上がった。
 叩き付けられた衝撃で、音楽プレーヤーが粉々に砕ける。
 櫓を守るように立つクリスナシュは、正宗・影打ちを鞘に納めた。
「拙者たちがいるからには思い通りにはさせぬでござるよ……どうするでござるかな?」
「……私は、踊るの。そしてグラビティ・チェインを奪う。……それだけ」
 惨殺ナイフを構え、腰を低く落としたマグロガールは、マグロの被り物を目深に被りなおした。
 その瞬間、マグロガールの姿が消えた。
 トランス状態に入ったマグロガールの両手が踊るように舞い、凶刃が無数の軌跡を生み出した。
 クリスナシュは咄嗟に防御し、我を忘れたような苛烈な攻撃をぎりぎりで耐え抜いた。
 マグロガールの攻撃が終わった直後、クリスナシュが動いた。
「一撃で仕留めるでござるよ!」
 納めた正宗・影打ちが閃き、無数の攻撃を切り裂いて必殺の一撃がマグロガールを捉える。
 腕を深々と斬りつけられたマグロガールは、踊りをやめて被り物の下でブツブツ何かを呟いている。
 そんな姿に、クリスナシュは軽く膝をついた。
「あ~……やっぱり一撃は無理でござったよ……というわけで回復プリーズでござる」
「大丈夫ですか、すぐに治しますので暫しのご辛抱を……」
 クリスナシュの声に、綴は天高く気功を放った。
「身体を巡る気よ、空高く立ち昇り癒しの力を降らして下さい」
 空へ放たれた綴の気功が、優しい雨となり降り注ぐ。
 同時に、真琴も動いた。
「響け、壮麗の調べ。生命の息吹、来たれっ!」
 放たれた蒼い闘気が、吹き抜ける癒しの風となりクリスナシュを包み込む。
「助かるでござる!」
 体力を回復させたクリスナシュにホッとしたように頷いた綴は、マグロガールを改めて見た。
 ある種の不気味さを醸し出すマグロガールの姿に、綴は思わず呟いた。
「マグロですか、マグロは寿司ネタとしても美味しいですよね。でもなぜマグロの被り物なのでしょう?」
「そうねえ。それに、マグロって地球産よね……?」
 要は以前のシリアスシャイターンとの落差に戸惑い混乱し、どうでも良いことを気にし始める。
 そんな迷いを振り払うように、綴の明るい声が響いた。
「深く考えても仕方ないので、早く倒すことにしましょう」
「……それもそうね!」
 一つ頷いた要は、地面を蹴ると一気に駆け出した。
 水の闘気が要に呼応して拳を覆い、流動する水の拳がマグロガールの頭を貫いた。
 被り物を引き裂かれたマグロガールは、意味不明な叫び声を上げると惨殺ナイフを闇雲に振り回した。
 攻撃をひらりと避けたミズーリは、ギターをひと鳴らしした。
「やりたいようにやるのがあんたのロック? 悪くないケド、それはちょっと流行りじゃないかなーって」
 ロック、の一言に我を取り戻したマグロガールは、破れた被り物の向こう側からミズーリを睨みつけた。
「……したくないこと、するのがあなたのロック?」
「そうじゃない。お祭りだし、皆でヤらないと楽しくないだろ?  ほら、同じ躍るならケルベロスとか!」
「……なら、あなた達と踊って……奪う!」
「やれるもんなら、やってみろ……!」
 ひと鳴らししたギターを激しく掻き鳴らしたミズーリは、惨殺ナイフを振りかぶると一気に急降下した。
 大上段からギターを叩き壊すように放たれた一撃が、マグロガールを切り裂く。
 ミズーリに呼応したエルザートとの連撃を受けたマグロガールは、よろりと立ち上がると惨殺ナイフを構え直した。


 ゆらりと立ち上がったマグロガールは、頬を伝う血を拭うと再びトランス状態へと入った。
 音楽の代わりに歌うのは、奉納踊りの歌。
 ヘヴィメタル調にアレンジした歌に己を鼓舞したマグロガールは、櫓を壊すべく惨殺ナイフを振り上げた。
 血襖の色に染まった二本の惨殺ナイフの攻撃が櫓の足を破壊しようとした時、小さな影が割って入った。
 ヴィヴィアンのボクスドラゴン・アネリーが惨殺ナイフの前に飛び出し、強烈な攻撃を受けて吹き飛ばされる。
 視界から消えたアネリーの姿に一瞬眉をひそめたヴィヴィアンは、空に輝く七色の交響曲を歌い上げた。
「さあ一緒に行こう、手と手を取って みんなの気持ちが集まれば、迷いも恐れも吹き飛んじゃうよ」
 希望に満ちた歌が、マグロガールの歌とぶつかり合う。
 その歌に、ミズーリは己のギターを乗せた。
「あんたのロックは嫌いじゃないが、人騒がせなのは戴けないな!」
 ギターの音色が、情熱を帯びる。
 ヴィヴィアンの歌と共に奏でられる「幕切れの彩」が、マグロガールに閉幕の帳を幻視させ、動きが一瞬止まる。
 その隙を逃すケルベロス達ではなかった。
「リィはお祭りを楽しみたいから、マグロさんには退場いただくのよ」
 ヴィヴィアンと共に駆けつけたリリーは、妖精弓を番え、放った。
 心を震わせる矢がマグロガールを射抜き、揺さぶっていく。
 そこへ、鋼鉄が突き刺さった。
「お前をここで、止めてみせる!」
 真琴の熾炎業炎砲が、再びマグロガールを包み込む。
 炎に包まれのたうち回るマグロガールに、綴はすっと忍び寄った。
 マグロガールの死角から、一本の指が突き刺さる。
「気脈を断ちますよ、これでも食らいなさい!」
 気脈を断たれ、硬直したマグロガールに日本刀が迫る。
「お祭りを楽しみに来た人々が大変な事に……そんな事絶対にさせるわけにはいかないでござるよ」
 決意と共に放たれたクリスナシュの一撃が、唐竹割のようにマグロガールを斬りつける。
 そこへ、要のクイックドロウが炸裂した。
「さーて、ノリの悪いのはここまでだ。退屈させて悪かったわね」
 投擲した弾丸がマグロガールを貫き、エルザートの一撃にマグロガールの頭が揺れた。
 肩に突き刺さった団扇を引き抜いたマグロガールは、ゆらり立つと惨殺ナイフを口元へやった。
「私……は、踊るの。それだけ」
 惨殺ナイフについた血をなめとったマグロガールは、再びトランス状態へ入ると一気に駆け出した。


 戦いは続いた。
 マグロガールは一人でも多くのグラビティ・チェインを得ようと櫓への攻撃も織り交ぜながら、ただひたすら攻撃を繰り返していた。
 櫓への攻撃を最優先で押しとどめたケルベロス達は、攻撃を受けながらも致命的なダメージは受けていない。
 戦いは常に、ケルベロス達の優位で進んでいった。

「……!」
 櫓へ向けて言葉もなく放たれた攻撃を受け止めた真琴に、リリーがウイングキャットを振り返った。
「リネット! お願いなの!」
 リリーの声に、ウイングキャットのリネットは天使の羽を輝かせた。
 祓われた邪気に力を取り戻した真琴は、腕を覆う封魔守装を握り締めた。
「夏祭りは、絶対に守る……!」
 握り締めた拳が、鋼の塊に変わる。
 放たれた拳を腹に受けたマグロガールが、地面に落ちる。
「真琴さん!」
 回復しようとしたヴィヴィアンを、真琴は視線で押しとどめた。
 何度か攻撃を受けた櫓は、あと少しの衝撃で壊れてしまうかも知れない。
 マグロガールはかなり手傷を負っていて、あと少しで倒せそうだ。
 真琴の意思をくみ取ったヴィヴィアンは、爆破スイッチを押した。
 よろり立ち上がったマグロガールが、大爆発を起こす。
 爆炎の合間を縫い、リリーが拳を構えた。
「リィパーンチ!」
 放たれた降魔真拳の一撃に、マグロガールは倒れ伏す。
 それでもなお立ち上がり、櫓へ向かおうとするマグロガールに綴の達人の一撃が突き刺さった。
「マグロはお祭りで暴れてないで、海へお帰り下さいね」
 耳元でそっと囁く綴に、マグロガールは目を見開いて、そのまま仰向けに倒れる。
「……っともう動かないですか」
 綴の声に、マグロガールの体は塵となって消えていった。


 賑やかな祭囃子を聞きながら、ヒールを終えた綴は出店を見て回った。
「リンゴ飴とか美味しそうです、私もお一つ頂いても良いでしょうか?」
「あいよ!」
 リンゴ飴を受け取った綴の隣で、クリスナシュは周囲を見渡した。
「色々と目移りするでござるな。……迷うくらいならいっそ全部買うでござるよ」
 あれもこれもと買うクリスナシュに、綴は驚いて目を見開いた。
「私も色々買っていますが……沢山買われますね?」
「伊達に普通にも働いてござらんよ。それに、なかなかお祭りを楽しむ機会も無いでござるからな~……しっかり楽しんで帰るでござるよ」
 クリスナシュが手にした綿菓子に、リリーは大きな目を更に見開いた。
「リィね、綿菓子が食べたいなあ」
 目を輝かせながら綿菓子を手にしたリリーは、テレビウムのお面にふとマグロガールを思い出した。
「マグロさんの、あの頭は食べられたのかしら。じゅるり」
「……ただの被り物だから、無理じゃないかしら?」
 苦笑いしながら牛串を頬張る要に、リリーは少し残念そうにした。
「そっかぁ。リィ、マグロの解体ショーって憧れなの!」
「なかなか、見ごたえあるものね?」
 美味しそうに飲み物を飲み干す要の袖を、リリーが軽く引っ張った。
「一色さま、今日ならくじ引きあたるかもしれないのよ!」
「本当?」
 首を傾げながらも引いたくじの結果に、要は溜息をついた。
「せっかく祭りに来たんだし、土産でも買って帰るか」
 リリーが持つ綿菓子に、真琴も綿菓子の屋台に顔を出した。
 真琴の声に、エルザートも楽しそうに大きく頷く。
 一緒に回っていたヴィヴィアンも、綿菓子を手にする。
 一緒に屋台を回って、チャレンジした射的でアクセサリーを手に入れた真琴に拍手を送る。
 やがて、音楽が変わった。
 今日皆で歌った、奉納踊りだ。
 祭り最後の曲に、周囲の人々が皆集まって踊り出す。
 始まった奉納踊りに、ミズーリは周囲の人に気軽に問いかけた。
「奉納踊りってどうやるの?」
 その問いに、人々は親切に踊り方を教える。
 皆の熱気が一つになって、賑やかに夏の終わりを楽しんでいく。
「夏にサヨナラと、秋にヨウコソ、だ!」
 ミズーリの笑顔に、皆笑顔で応えた。
 屋台を離れたヴィヴィアンも一緒に、奉納踊りに身を任せた。
 歌を口ずさみながら、今年の夏を思い返す。
(「……今年の夏は、結構いい夏だったな」)
 来年は、もっといい夏になりますように。
 そんな願いを込めながら、夏の夜は更けていった。

作者:三ノ木咲紀 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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