翠の瞳の黒豹の慟哭

作者:陸野蛍

●湿地の魔神
 北海道、釧路湿原の奥地。
 月明かりだけが辺りを照らす中、女の声が聞こえる。
「そろそろ頃合ね、あなたに働いてもらうわ。市街地に向かい、暴れてきなさい」
 女……獣毛をフードの様に被ったその女、テイネコロカムイは、空を泳ぐ魚の中心に佇む、黒い毛並みのウェアライダーにそう言った。
「貴女の意のままに、テイネコロカムイ様……」
 翠のガラス玉の様な瞳で、そのウェアライダーは答えると、背負った巨大な剣に右手を一度かけると、空を泳ぐ死神達を連れ、市街地へと歩を進める。
 数刻後、市街地には泣き叫ぶ子供の声が響いていた……。

●ウェアライダー……地球の同胞
「みんな、今から北海道に飛んでもらいたい」
 大淀・雄大(太陽の花のヘリオライダー・en0056)は、ケルベロス達にそう切り出した。
「釧路湿原近くで、第二次侵略期以前に死亡したデウスエクスが死神にサルベージされ、近隣の市街地を襲う未来が予知された。サルベージされたデウスエクスは、釧路湿原で死亡したものでは無いみたいで、なんらかの意図があって、釧路湿原に運ばれたと推測される」
『なんらかの意図』釧路湿原と死神、見えない繋がりがあるのだろうかとケルベロス達は考える。
「今回サルベージされるのは、ウェアライダーでタイプは黒豹になる。死神によって、変異強化されているから、当然生前より強い。意識も希薄ながら残っているみたいだけど、死神の命令を聞く事と殺戮衝動のみと考えていい。会話や交渉は無理だろうな」
 神造デウスエクスである、ウェアライダーは定命化以前は、デウスエクスの主戦力として地球に放たれていた。
 当然、地球で眠っているウェアライダーの数も多い。
「死神の目的はおそらく市街地の襲撃だ。幸い、予知で侵攻経路は判明しているから、湿原の入り口あたりで迎撃する事が可能だと思う。周囲に一般人はいない。戦闘だけに集中出来るから、この場で確実に撃破して欲しい」
 裏を返せば、此処で撃破出来なければ数多くの犠牲者が出ると言うことだ。
「撃破対象は、蘇生された黒豹のウェアライダーと怪魚型死神3体。出現ポイントは、遮蔽の無い湿地帯だけど、足場の心配はおそらく無い。ウェアライダーの攻撃手段は、獣撃拳とハウリング、そして得物として鉄塊剣を装備している。怪魚型死神の攻撃は単純に噛み付いて来るだけだけど、ヒールグラビティも備えている。先に始末しておいた方がいいと思う」
 ウェアライダーの蘇生を企てた死神は既に姿を消しているらしいと付け加えられる。
「なんで、他の場所で死んだウェアライダーが釧路湿原で蘇る事になったのかは、分からない。だけど、このまま放置する訳にもいかない。人々の犠牲を出さない事、そして死したウェアライダーには眠りを……頼むぜ、みんな!」
 言うと、雄大はヘリオンへと足早に駆けて行った。


参加者
ヒルダガルデ・ヴィッダー(弑逆のブリュンヒルデ・e00020)
写譜麗春・在宅聖生救世主(誰が為に麗春の花は歌を唄う・e00309)
レオガルフ・ウィルフィッド(スカーレッドヴォルフ・e03144)
玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)
月神・鎌夜(悦楽と享楽に殉ずる者・e11464)
比嘉・アガサ(野薊・e16711)
ルチアナ・ヴェントホーテ(波止場の歌姫・e26658)
アスティア・ヴェルブレイズ(力を求める魔剣士・e29775)

■リプレイ

●遭遇の釧路湿原
「釧路……なんでわざわざ釧路にー?」
 風に金の髪が靡く中、写譜麗春・在宅聖生救世主(誰が為に麗春の花は歌を唄う・e00309)が疑問を口にする。
「うううう、それにしても寒いんだよー……」
 9月の初めとは言え、関東と違い、ここ北海道では夜にもなれば風も冷たくなって来る。
 在宅聖生救世主が肩を抱く様に身震いする。
「カムイってェのは確か、自然を意味する言葉だそうですが……」
 レオガルフ・ウィルフィッド(スカーレッドヴォルフ・e03144)が言う通り、カムイの語源はアイヌ民族の高位的存在の事……つまり、神を表し、アイヌ民族にとって神とは霊的高位存在である、自然を指す。
「自然に真っ向から、喧嘩売りやがる死神連中がその名を名乗るたァ、随分とふざけたジョークですねェ?」
 明らかな嫌悪を隠さず。レオガルフが言う。
 今回の事件の元凶と言われる死神『ティネコロカムイ』……デウスエクスが神と同義なら、その名に偽りはない。
 だが、人々にとって死神の存在は、神として容認できるものでは無かった。
「それにしても、月明かりの湿地で黄泉がえり退治なんて、なんだかホラー映画みたい」
 そう口にするのは、ルチアナ・ヴェントホーテ(波止場の歌姫・e26658)だ。
「……でも、死者は生き返らないものよ。ケルベロスは冥界の番犬。わたしたちが、あるべき場所へ還してあげなきゃ」
 ケルベロスとして、冥府の鎖に死者を繋ぎ直すのが役目だと言うことも分かった上で、ルチアナは切なげに言う。
「来たようだな……」
 月神・鎌夜(悦楽と享楽に殉ずる者・e11464)が小さく呟けば、月明かりの下に、1体のウェアライダーとそれを先導する様に、空中を浮遊する、怪魚達が現れる。
「相も変わらず、墓荒らしか? 死体が好きなのは、この際なにも言わねぇが、死臭を漂わせて生者の庭を歩いてんじゃねぇぞクソ共」
 鎌夜の挑発に怪魚達は、牙を剥き出しにするが、黒豹のウェアライダーは、その空虚な翠の瞳でケルベロス達を見つめるだけだ。
「形は違えど、同じウェアライダーが駒にさてれいるというのは、あまり良い気分ではないね。せっかく目覚めたところ申し訳ないが、もう一度眠ってもらうとしよう」
 羊のウェアライダーである、ヒルダガルデ・ヴィッダー(弑逆のブリュンヒルデ・e00020)が、ケルベロスの瞳でウェアライダーを見据えながら言う。
「サルベージ……そんな手で力を手に入れても、誰も喜んでくれない……命を失う前の、貴方自身だって、決して……! だから……」
『斬り伏せます、死神と共に……!』
 アスティア・ヴェルブレイズ(力を求める魔剣士・e29775) が想いと共に、刀を抜けば他の仲間達も、それぞれ得物を手にする。
 だが、一人だけ動けずに居る者が居た。
 ……玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)だ。
(「……あれは、俺か? 俺が、どこかで野垂れ死にをすればこの光景が繰り返されるのか……」)
 陣内の緑の瞳に映るウェアライダーは、白い鬣こそなかったが、同じ黒豹と言うことで……どうしても、陣内とだぶった。
 生の輝きの無い、緑の瞳も、スマートな黒い身体も……。
 今の所、死神にサルベージされたケルベロスの報告は無い。
 だが、死神が神として、ケルベロスをもサルベージする事が出来れば……目の前に居るのは、明日の自分かもしれない……。
 陣内が息をするのさえ忘れたのは、ほんの数秒だった。
 しかし、胸が苦しく……眩暈さえしてくる。
 その時、陣内の背中が蹴り飛ばされる。
「グッ!」
「何ぼさっとしてんの? 早く武器を構えな。相手はデウスエクスだよ」
 陣内に蹴りを放った、比嘉・アガサ(野薊・e16711)がぶっきらぼうに言う。
 その言葉で、陣内の瞳もケルベロスのものになる。
(「大丈夫みたいだね……陣。けど、相変わらず死神のやることはえげつない。なぜ、死んだ者をわざわざ起こす必要があるんだろう……しかも、故郷から遠く離れた場所で……」)
 アガサはそこで思考を止めると、かぶりを振り、バスターライフルを構える。
「あたし達がもう一度眠らせてあげる。今度こそ永遠にね」
 アガサが放った二本の光の奔流が、戦いの火蓋を切った。

●死神と黒豹と……ケルベロス
「物語に登場する獣は、鎖が嫌いだよね。番犬の鎖に怖がって!」
 ルチアナは、前を固める仲間達に黒鎖の陣を敷いて守りの力を付与する。
「まずは魚から、やらせて貰いますねェ。魚なら魚らしく水場を泳ぐか、大人しく刺身にされるべきですよ……まァ、不味そうだから喰おうたァ思わねェけどなァ!!」
 穏やかな表情を獣のそれに変え、レオガルフが雷を纏わせた、刀を怪魚に突き刺す。
「……お前の相手もすぐしてやる。貫け!」
 陣内は一度黒豹を見ると、視線を怪魚に向け、ブラックスライムの槍を放つ。
 だが、黒豹は陣内の言葉を無視する様に鉄塊剣を大きく横薙ぎし、長大なカマイタチを起こす。
 その風の刃は、陣内を含む全列の者達を狙ったが、そのダメージを受けたのは、鎌夜と陣内の猫、そして……陣内を庇った、在宅聖生救世主だ。
「もう! あなたの相手は、後回しだって言ってるのに―。じゃあ、あなたも巻き込んであげる」
 そう言うと、在宅聖生救世主は、翼を大きく広げ宙に浮き、女神の様な微笑みを浮かべると、言葉を紡ぐ。
「天の意思よ、星の法則よ。今我等、其の御心に従わん。我が血肉は此処に眠る。我が御魂は此処で生まれる。この地この天を侵す邪に鉄槌を!」
 在宅聖生救世主の言葉と共に、降り注ぐ雷の十字架は、怪魚も黒豹も等しくダメージを与えていく。
 神の裁きの様に……。
「オウガメタル……癒しと、みんなの力を研ぎ澄ます力を光の粒子に変えて……!」
 アスティアの身を包むオウガメタルが、オウガ粒子を放てば傷を負った者達の傷が癒えていく。
「黒豹も黙っていてはくれねぇか。なら、さっさとこっちを片付けるまでよ」
 鉄塊剣『バイラヴァ』に炎を纏わせ、死神を切り裂く鎌夜。
 鎌夜から流れ出る鮮血とグラビティ・チェインは、猫の属性がインストールされることで塞がって行く。
「みんなの力、可能な限り増幅するからな。死神を全部倒したら黒豹殿と挨拶から再開しようじゃないか」
 にやにやと笑みを浮かべながら、ヒルダガルデが手元のスイッチを押せば、カラフルな爆発が仲間達の力を底上げする。
「死神って、絶望するの……? 知らないけど……あたしは、あなた達に絶望して欲しい」
 アガサの纏うオウガメタルの絶望の太陽の光が降り注げば、大きく傷の開いていた怪魚が、ずぶずぶと形を失っていく。
「お前達の相手を長くするつもりは無いんだ。だから早く消えてくれないか」
 変わらぬ笑みのヒルダガルデが掲げた両手には火球が渦を巻き少しずつ大きくなりながら、放たれる時を待っていた。
「ヒレの一つや二つは焦げるかね?」
 ヒルダガルデは死神への疑問を一つ呟くと、火球を撃ち出した。

●黒豹の慟哭
「逃がさない……!」
 アスティアの放った空をも断ずる斬撃は、最後の死神を真っ二つにする。
「時間は、かかりましたが、これで……やっと、てめェの相手が出来るぜ」
 刀を真っ直ぐに、黒豹に向けてレオガルフが言う。
「寝てた所を無理矢理叩き起こされるってェのは、どンな気分です? ……ああ、答えねェでいいですよ……【喰われた】奴は、喋らねェンだからなァ……!」
 飢えた獣の様な俊敏さで、一気に駆けるとレオガルフが刃の鋭さを持った蹴りを黒豹に放つ。
「御機嫌よう、獣殿。良い月夜だな……。私の相棒もこの月夜で羽ばたくのを楽しみにしている様だよ」
 ヒルダガルデの杖が、猛禽の眼差しを持った白き鳥へと姿を変える。
「そら、啄んで来い」
 ヒルダガルデの放ったファミリアは、黒豹をターゲットとして啄んで行く。
「雷よ障壁となって、みんなに力を」
 ルチアナがライトニングロッドを掲げれば、雷は仲間達を守る壁となる。
「死神を倒すのにちょっと時間かかっちゃったかな? でも、ウェアライダーの動きも十分鈍くなってるみたいだから、大丈夫だよね」
 ルチアナが言う通り、想像以上に死神を殲滅するのに時間がかかっていた。
 ケルベロス達は、ジャマーを3人置く事で、仲間の力の底上げ、そして死神達には弱体のグラビティを重ねていた。
 アタッカーの数を減らした分、当然、序盤は死神達の動きをすぐに止めることは出来なかった。
 そして、陣内の猫を除くと、唯一のディフェンダーである、在宅聖生救世主の負担が大きかったのも事実だ。
 だが、それをルチアナが術式治療で持ちこたえさせてしまえば、時間と共に戦況は、ケルベロスの有利を揺るぎないものにしていた。
 事実、陣内の攻撃と怪魚が攻撃を受けた際に巻き込まれただけの、黒豹にも多数の行動阻害のエンチャントが付き、彼のグラビティ・チェインの流れを乱していた。
「死神に利用されているだけの君に『罪』は無いのかもしれないけど、君を眠らせてあげる為だから、我慢してほしいんだよう」
 在宅聖生救世主の翼から放たれる光は、浴びた者の『罪』を償わせる光。
 黒豹は苦しみの声を上げながらも、鎌夜に剣を振るう。
 肩口に剣を受けても鎌夜は、口の端をニヤリと上げる。
「お前の命……貰うぜ。俺に尽くせ、俺を生かせ! その魂でなァ!」
 鎌夜の拳に魔が降りると、その拳は黒豹の命を食い荒らさんと、黒豹の胸に打ち込まれる。
「おい、お前もグラビティ・チェインには、まだ余裕あるな? 出来る限り、皆のダメージをカバーしろ」
 猫が頷くのを確認すると、陣内は、あるオラトリオの記憶を呼び起こす……姉である彼女を。
『決して……忘れない』
 金色の長い髪、唯一似ていたと言ってもいい緑の瞳……木香薔薇の黄色い花吹雪で黒豹を包んだ彼女は、一度微笑みを見せると姿を消す。
 その天使に気付いた者は多くは無かったが……。
「生前のあんたは、なんて名前で呼ばれていたのかな……」
 拳を猫科のそれに変え、黒豹を切り裂きながらアガサが問う。
(「なんだかんだで黒豹には縁があるね。……あたしの母親は黒豹のウェアライダーだったし、陣は親戚……。陣には……自分の様に見えてるのかもしれない。月に狂って血に飢えた獣の様な自分に。けれど……」)
「恨むならあんたを利用した死神を恨むんだね」
 アガサは十分なダメージを与えると、大地を飛び跳ね、後ろに下がる。
「凍てつきなさい」
 星剣を掲げ守護星座を呼び出すと、光の奔流に冷気を込めて、黒豹を凍結していく、アスティア。
(「……私が力を欲しいのは、大切な人に笑顔でいてほしいから……、ならあなたは、今、何を想って戦っているの? 死神に操られているだけのあなたは、何も守れないのよ……!」)
 グラビティを放出しながらも、アスティアは胸の締め付けられる思いで、黒豹を見つめる。
 そこからの、ケルベロス達の攻撃はまさに怒涛の攻めと言ってよかった。
 レオガルフの桜吹雪が舞う中放たれる斬撃が奔れば、ヒルダガルデの火球が黒豹の体表を焼いた。
 在宅聖生救世主がケルベロスチェインを黒豹の全方位に射出すれば、その隙を縫ってアガサが一陣の風を呼ぶ。
「……すべてを薙ぎ払え」
 罪も穢れも、何もかもを薙ぎ払う風が戦場を駆け抜けた後に、鎌夜が跳躍して炎弾を放つ。
 鎌夜が着地した時だった……黒豹が、魔力を籠めた咆哮をあげた。
「もういいんだ……眠りに付け!」
 陣内が黒豹に言い聞かせる様に、同じく咆哮をあげる。
 生きた時間の違う二人の黒豹の咆哮が響く中、アスティアが凄まじいスピードで駆けると、黒豹に居合の斬撃を与える。
「私からの餞別は……これだけよ」
 だが黒豹は、なおも咆哮をあげる。
 それは、攻撃と言うよりも……叫びの様で……嘆きの様で……。
「ティネコロカムイ……」
 黒豹のその言葉が耳に入ったのは、陣内だけだっただろう。
 陣内の胸に、どうしようもない悲しみが押し寄せて来る。
「玉榮どけーーーーーー! 俺達が止めを刺してやる!」
 陣内の耳に鎌夜の声が聞こえると、既にレオガルフとヒルダガルデ、二人のウェアライダーが動いていた。
 そして、戦場に響くのは、ルチアナの水の星の生命の繋がりを、深い絆に例えた歌。
「だいじょうぶだよ ひとりじゃないよ」
(「歌はいつだって冥府の旅の慰めになるもの……大丈夫だよ……だから、ゆっくり眠って」)
 ルチアナの瞳から零れる一筋の涙……。
 ルチアナの紡ぐ旋律を聞きながら、レオガルフが吠える。
『――――【喰 わ れ ろ】 ォ ォ ォ ォ ォ オ !!』
『原初の恐怖』を呼び起こす、レオガルフの咆哮は、黒豹にダメージを与えると共に隙を作る。
「その魂、私の地獄に焼べてやろう」
 青い地獄の炎が揺らめき、ヒルダガルデの得物を覆うと、ヒルダガルデは、黒豹の魂そのものを焼き尽くさんと武器を振り下ろす。
「ジャガーノートって奴を教えてやるよ……!」
 青い炎の中、燃ゆる黒豹に、ただただ圧倒的な『暴力』と言う力で、鎌夜は襲いかかかる。
 その破壊の乱舞は、黒豹の肉体を心を……破壊し尽くしていく。
 ほんの数秒の鎌夜の攻撃の後、黒豹はゆっくりと前のめりに倒れた。
「……死者は語らねぇし死者は動かねぇ。こんな風にな?」
 鎌夜の言葉通り、黒豹は二度と動くことは無かった。

●大切な……
 月明かりの中、在宅聖生救世主が舞う様に荒れた湿原を優しく癒していく。
 その傍らで横たわる、二度目の死を迎えた黒豹に、ルチアナは静かに鎮魂歌を贈っていた。
(「かつての貴方に、大切な人がいたら……その人が笑顔でいられるよう、見守ってあげて……」)
 アスティアは少女の顔に戻ると、死した黒豹にそう願っていた。
 そんな中……陣内は一人、仲間と離れ、煙草の煙を吸っていた……。
(「死した黒豹か……」)
「陣、祈りはすんだよ。帰るよ」
「……ああ」
 アガサに声をかけられ、陣内は軽く返事をする。
「……心配いらないよ。あんたは、ああはならない」
 それだけ言うと、アガサは先に行ってしまう。
(「……アギーにはお見通しってことか」)
 陣内が、携帯灰皿に煙草を押し付けると、鎌夜の声が聞こえて来る。
「玉榮! 帰ったら、飲みに行くぜ―!」
 その言葉に、陣内は苦笑いを浮かべる。
 こんな仲間達が居るのだ…………きっと大丈夫だろう。
 ケルベロスは、誰も一人では無いのだから……。

作者:陸野蛍 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 4
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