プロ雀士の業を盗め!

作者:なちゅい

●麻雀の技を奪え……?
 そこは、とある建物の中。
 電気も敷かれていない場所なのか、それとも、電気系統が壊れてしまっているのか、光がほとんど入らず薄暗い。
 そんな場所で、道化師風の姿をした螺旋忍軍の女が、同じく道化師衣装を纏った女性配下を従えている。
「あなた達に使命を与えます」
 指示する女の名は、ミス・バタフライ。彼女は指令を出すのだが、これがなんとも珍妙なものだった。
「この町に、プロ雀士という競技麻雀を打つことをメインとして働く人間が居るようです。その人間と接触し、その仕事内容を確認。可能ならば習得した後、殺害しなさい」
 また、ミス・バタフライは、グラビティ・チェインは略奪してもしなくても構わないと配下に告げる。
 それを聞いた配下はステッキを手にし、すくっと立ち上がった。
「了解しました、ミス・バタフライ。一見、意味の無いこの事件も、巡り巡って、地球の支配権を大きく揺るがす事になるのでしょう」
 そうして、配下は取り巻きとなる女性を連れ、ステッキを振り回しながらその場から去っていくのだった。
 
 とあるビルの屋上へとやってきたケルベロス達。
「サーカスの曲芸師のような敵を視たんだ」
 そこには、ステッキを手にしたリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)がケルベロス達の来訪を待っていた。
 その事件の内容が気になるメンバー達が、すぐに依頼の話をするようリーゼリットに促すと、彼女は最初から説明を始める。
「ミス・バタフライという螺旋忍軍が動き出したようだよ」
 この敵が計画する事件は、直接的には大した事は無い。だが、巡り巡って大きな影響が出るかもしれないという厄介な事件だ。
 今回は、プロ雀士という比較的珍しい職業を営む一般人の所に、螺旋忍軍の配下を送り込む。そして、その配下にプロ雀士の仕事情報を得させた後、殺させるのだという。
「この事件を阻止しないと……、そうだね。『風が吹けば桶屋が儲かる』って言葉があるよね。ああいった具合に、ケルベロスに不利な状況が生まれる可能性が高いんだ」
 直接的な関係がない事柄であっても、何がどこで繋がって影響を及ぼすかは分からない。螺旋忍軍の動きは、可能な限り止めておきたい。
 何より、デウスエクスに狙われる一般人がいるのだ。これを見過ごすわけにはいかない。
「皆には、一般人の保護と、ミス・バタフライ配下の螺旋忍軍の撃破を頼みたいんだ」
 敵はとある雀荘へと現れる。
 そのプロ雀士だけでなく、他の一般人も出入りする場所だ。今回は予見が早かったこともあり、事件の3日前から事前準備ができる。
「ただ、事前にその人を避難させてしまうと、敵が別のプロ雀士を狙ってしまうから、被害自体を防ぐことができなくなってしまうよ」
 この為、対策として講じるのなら、狙われたプロ雀士と接触し、事情を話して麻雀を教えてもらうなどするとよい。そうすれば、螺旋忍軍の狙いを自分達に変えさせることができるかもしれない。
「自分達が囮となる為には、見習い程度の力量をプロに認めてもらう必要があるよ」
 麻雀を打った経験がない者であれば、この短期間で相当の場数をこなして訓練する必要があるだろう。
「あと、敵の能力だけど……」
 螺旋忍軍とその取り巻きと戦う状況となれば、道化師の姿をした配下は手にするステッキを行使して攻撃を行い、取り巻きの女性は動物のオーラをグラビティとして使いこなしてくる。
「場所は長野県の雀荘だね」
 街中、2階建ての建物の2階がまるごと雀荘となっている。
 基本的にはプロ雀士を護りながら戦うことになるだろうが、囮となれる状況であれば、螺旋忍軍に技術を教える修行と称して、有利な状態で戦闘を始める事が可能となる。
「上手くいけば、2体の螺旋忍軍を分断とか……、一方的に先制攻撃ができるかもしれないよ」
 囮となるのが難しければ、予めプロ雀士を護る作戦を行う方が無難かもしれないので、仲間内と上手く作戦を詰めておきたい。
 一通り説明を終えたリーゼリットはぼそりと呟く。
「バタフライ効果……今回士気をとるミス・バタフライはちょっとした変化によって、大きな効果を狙っているようだね」
 だが、ケルベロスとしては、やることは変わらない。
「どうか、螺旋忍軍の討伐を。よろしく頼んだよ」
 リーゼリットはステッキを大きく振り回し、メンバーにヘリオンへと乗るよう促すのだった。


参加者
秋草・零斗(螺旋執事・e00439)
不知火・梓(酔虎・e00528)
クリームヒルデ・ビスマルク(自宅警備ヒーラー天使系・e01397)
佐久間・凪(無痛・e05817)
狐村・楓(闊達自在な螺旋演舞・e07283)
寺乃宮・綾成(本に生きる・e17243)
天目・宗玄(一目連・e18326)
中島・花桜梨(永遠の乙娘の子・e23049)

■リプレイ

●一局打とうか!
 ジャラジャラジャラジャラ……。
 麻雀牌のぶつかる音があちらこちらから聞こえてくる。
 そこは、長野県のとある雀荘。この場に、ケルベロスのチームがやってきていた。
「久しぶりに螺旋忍軍相手の戦闘っすね。楓さん腕がなるっすよー!」
 その割に、欠伸などする狐村・楓(闊達自在な螺旋演舞・e07283)。
 それもそのはず。敵の出現は3日後。麻雀に興味のない楓にとっては、退屈な時間だろう。
「風が吹けば桶屋が儲かる……と言いますが、麻雀に学ぶと、何がどうなるのでしょうね?」
 秋草・零斗(螺旋執事・e00439)は興味深そうに雀卓を見つめる。雀荘にいる執事というのはなんともシュールである。
「何がしたいのか分からぬが……。狙いが何であれ、犠牲者が出るのは確実か」
 ならば、放っておくわけには行くまいと天目・宗玄(一目連・e18326)も考えるが、この手のゲームに縁がなかった宗玄はルールすらも把握してはいない。
「私も点数経験できる程度でして。状況分析はできると思うのですが、どうも勝負運というものがなくて」
 イカサマを仕掛けたり、見破ったりは得意なのですがと語る彼は、壁際で朗らかに笑って見せた。
 3日後に襲撃してくるという螺旋忍軍に備え、メンバー達はイケメンプロ雀士の増野 弘貴や店主に事情を説明し、協力を仰いでいた。
「プロの方と会う機会も少ないですから、ぜひとも打ってみたいのです!」
「麻雀ゲームで鍛えた腕を、更に磨くぜ!」
 佐久間・凪(無痛・e05817)、クリームヒルデ・ビスマルク(自宅警備ヒーラー天使系・e01397)は早速、一般客を交えて増野プロと一局打っていた。
 凪の打ち筋は面前で高い手を狙い、相手を飛ばすスタンス。満貫、跳満を狙う為の役の組み合わせ、良形の聴牌の作り方など、プロからアドバイスを教授してもらっていた。
「まあ、一筒、九筒抜き七対子とか狙ったりはしませんから」
 大車輪はローカルルールでの役なのだが、それはさておき。
 クリームヒルデもまた、本気で打っていた。こちらは逆に役牌、対々和など、鳴きの速攻プレイ。だが、他家が高い手を狙っていると、勝負を降りるタイミングを見定めるなど、臨機応変に対処する。
「一発で飛んだりしたら大変だし。脱がされたりしたら困るじゃないか」
 ここは脱衣麻雀ではないのでと、増野プロにツッコまれつつも。指一本で萬子、二本なら索子など、クリームヒルデは一局終えた後に仲間打ちでサインの練習をしていたようだ。
「麻雀ってやっぱり難しいですね……。でも、楽しいのです!」
 同じく、打ち終えた凪は凄く楽しそうにしながらも、戦いに備え、卓の位置調整なども行っていたようだ。
 次にプロと雀卓を囲んだのは、不知火・梓(酔虎・e00528)、寺乃宮・綾成(本に生きる・e17243)、中島・花桜梨(永遠の乙娘の子・e23049)の3人だ。
「イケメンで麻雀も強いとは、麻雀界も安泰だな」
 綾成は人生を賭けた経験がある程度に腕は立つらしい。当日まで徹マン上等とすら意気込み、より腕を磨こうと彼は考えている。
「殺させる訳にゃあいかねえし。さァ、勝負と行こうや」
「しっかりとプロに習い技を盗み3日間で腕上げて、デウスエクスを懲らしめてやるとしよぅや」
 長楊枝をくわえた梓は雀荘の一般客に紛れても、溶け込みそうな容姿である。麻雀が大好きな彼もまた、楽しんで打っていたようだ。
「雀士たるもの、プロの道を行く者と打つ機会ほど心躍るものはないわい」
 見た目は幼女に見える花桜梨も、麻雀歴は30年余りあるという。そのプロが螺旋忍軍に狙われているならばと、依頼には全力で当たっていた。
「しかし、麻雀の技量を必要とする理由が分らんのう……っと、それロンじゃ」
 副露……ポン、チー、カンを駆使して手堅い打ち筋を見せる花桜梨。苦手は符計算を零斗にフォローしてもらいつつ、早上がりを連発する。
 もちろん、増野プロも鋭い打ち筋で応戦する。ただ、自らの人生より長い経験を持つ花桜梨には手こずっていた。対して、なかなか点数を伸ばせない綾成は副露などで場をかき乱し、増野プロと花桜梨の調子を崩そうとしていたようだ。
 
 そうして、3日間。メンバー達はできる限り、プロの打ち筋を盗もうと鍛錬を重ねる。
 綾成、花桜梨は経験の浅いメンバーに指導手伝いも行う。梓を加えた3人は、プロも唸る打ち筋を見せていた。
「明日は晴れるかなあ」
 クリームヒルデは麻雀を打ちながら、ぼんやりと外を眺めるのだった。

●これぞ練習の成果……?
 襲撃が予見された当日。そいつは正面から堂々と乗り込んできた。
 道化師衣装の女、マリッカと、そいつが従えるサーカスの一般団員を思わせる姿の取り巻き。2人の顔は螺旋の仮面で覆われている。
「早速ですが、麻雀を教授願います」
「かしこまりました。では、こちらへ」
 入ってきた女性を、従業員を装う零斗が誘導する。
「2卓に分かれてやろうぜ。そっちの方が手っ取り早く学べるしなァ」
 綾成が自然に、仲間にも卓へ就くよう促す。卓を分けることで、敵2人の分断を図っていたのだ。
 作戦の都合上、頭数の為という事情も合わせ、已む無く増野プロも同席する。
 囮役メンバーが麻雀を打っている間、できる限りメンバーは従業員に避難を促す。
 プロとマリッカの卓は綾成、花桜梨が同席する。
 花桜梨が全力で相手をする一方で、綾成はツバメ返しなど披露してみせた。……それは、最初からアガる形にする為のイカサマだ。
「とことん麻雀を学ぶんだろ? そんなら、骨の髄まで教えてやるよ」
 彼はにやりとマリッカに笑って見せた。
 ヴィエと呼ばれる取り巻きは、梓がメインとなって指導に当たる。
 クリームヒルデは他卓のプロを気にかけつつ、仲間へとサインを送る。四本立てた指は風牌らしい。それを察した凪が東を捨てて、クリームヒルデがポンしていた。
 打ちながらも、仲間内で密かにタイミングを計るケルベロス達。そして……。
「参った、こりゃ敵わねえわ」
 綾成が突然、両手を挙げる。ならばとマリッカが立ち上がってステッキを振り上げたところで、花桜梨が小さく告げる。
「御無礼」
 その時、従業員に扮していた零斗が毒手裏剣をマリッカへと投げ飛ばす。
「今です。皆様、避難を」
 零斗の言葉で、花桜梨などが率先して避難を促す。
 逃げ出す増野プロや従業員。それを追おうとするマリッカの前に、隠密気流で身を潜めていた楓が死角から飛び掛り、流星の蹴りを食らわせる。
「麻雀よりも楓さんと戦った方が楽しいっすよ! だから、全力でかかってくると良いっす!」
 待ちくたびれた様子もなく、戦い好きな楓は嬉々としながらも敵を煽る。
 同じく、取り巻きヴィエも動物のオーラでプロを狙おうとするが、宗玄が相手の出鼻をくじくように雷を纏わせた刃で貫き、痺れを走らせる。
「麻雀では劣るが……、こちらでならば引けを取る気はない」
 威圧と共に、宗玄は螺旋忍軍の2人に言い放つ。
 その2人を、ケルベロス達が囲むように布陣する。
「麻雀は好きだからよぉ。そぃつを悪事に利用しようっつーのはいただけねぇ」
 梓はくわえていた長楊枝を吐き捨て、斬霊刀を構えた。
「いいでしょう。邪魔をするならば……」
 ステッキを突き出すマリッカは、軽くそれを振るって風を巻き起こし、ケルベロス達へと襲い掛かってきたのだった。

●雀荘内でのバトル
 風を巻き起こし、ケルベロスの攻撃の手を鈍らせようとするマリッカ。
 そして、取り巻きのヴィエもまた、大きなゾウを象ったオーラを飛ばし、ケルベロスを踏みつけてくる。
 それらからできるだけ仲間を庇おうと、零斗がライドキャリバーのカタナと共に身を張る。彼は攻撃以上に防御に力を入れて戦いに臨んでいた。
 だが、全てカバーできるわけではない。強風に煽られ、ゾウのオーラに踏みつけられた梓。痛みを覚えて血を流しながらも彼はにやりと笑い、テンションを高める。
「ジャマーはほっとくと厄介だねぇ」
 取り巻きヴィエは、こちらの立ち回りを阻害する立ち位置で動く。だからこそ、梓はさきにこちらを潰そうと、雷を纏わせた刃をそいつへ突き入れる。
 傷つく前衛の仲間達をフォローする為、クリームヒルデが地面にケルベロスチェインを展開していく。それによって描かれた魔方陣は淡く輝き、仲間を護ると同時にその傷を幾分か癒していた。
 その間に、宗玄が不可思議な斬撃でヴィエに襲い掛かる。
「容易く防げると思うな」
 それは、関節をあり得ない角度に捻じ曲げてからの一太刀。宗玄の攻撃を予測できず、ヴィエは甘んじてそれらを浴びてしまう。
 楓も仲間達に攻撃対象を合わせ、ヴィエを狙う。
「少しは骨のある敵だと、楓さんは嬉しいっすよ!」
 楓は飛び出し、肩身のナイフに空の霊力を帯びさせ、仲間の付けた傷を皿に斬り広げていく。その表情は飛びっきりの笑顔。根っからの戦闘狂である彼女は生き生きとした表情で戦場を走り回る。
「明日を掴む為に……駆け抜ける!」
 さらに、一気に距離を詰めてきた花桜梨。ヴィエとすれ違いざまに彼女は敵へと短い一閃を叩き込む。
「麻雀も戦いも同じ、年季を侮るでないぞ?」
 血を飛び散らせ、呻く敵へと花桜梨は余裕の表情で告げた。
 配下マリッカに対しては、凪が向かう。
「敵はちゃんとやっつけますよ!」
 仲間が先制攻撃を成功してくれたこともあり、凪は自らの右手に宿りし力を解放する。
「あなたの傷を深めましょう! 右手の悪魔、悪魔の右手!」
 凪の右手で触れられた者は、魂と記憶に刻まれた今までの傷を呼び起こされ、一時的なショック状態に陥らせてしまう。
「どうですか? 麻雀と同じで、動けないのは辛いでしょう?」
「辛いというより、面倒ですね……」
 苛立つマリッカは、ステッキを構えてくる。その先から跳弾を飛ばすつもりなのだろう。
 だが、それより早く、綾成が重力を宿した飛び蹴りを喰らわせる。
 死角から弾丸を受けたマリッカだが、構えたステッキからそのまま跳弾を飛ばす。
 仲間を庇うように弾丸をその身に浴びた綾成は、ぼそりと敵へと囁く。
「あんたらと麻雀で勝負つけらんねえのが残念だわ」
 任務の為にとこの場にいる両者。ただ、麻雀好きな綾成の言葉に、麻雀にさほど興味を抱かぬマリッカは忌々しげにケルベロスを睨んでいたのだった。

 相手は、2体の螺旋忍軍。
 ケルベロスに包囲される両者は、この場を突破を目指していた。
 取り巻き、ヴィエはライオン、サルと動物のオーラを呼び出し、ケルベロスを苛む攻撃を仕掛けてくる。
 ライオンの爪、サルの抱きつきを受けた梓。幾分かは盾となる零斗や綾成が受けてくれはしたが、前線に立つ以上、攻撃は飛んでくる。
 その度に梓は興奮し、攻撃に重点を置いて立ち回る。大鎌を手にした彼は斬りつけたその傷から、体力を吸い取っていく。
「螺旋忍軍ならこれくらいの術、簡単に避けられるっすよね!」
 こちらも楽しそうに敵に踊りかかる楓。彼女はなおも敵へと蹴りかかる。
 ヴィエはこちらの足止めをとゾウのオーラを飛ばし、その大きな足でケルベロスを蹂躙しようと踏みつけさせてくる。
 その回復を仲間に任せ、冷静に敵を狙う宗玄が地獄の炎弾を飛ばす。
「何をするかは知らんが……させるわけにはいかん」
 その炎弾に食われる取り巻き、ヴィエはついに力尽き、この場から姿を消してしまう。螺旋の仮面だけが床に落下し、砕け散ってしまった。
 宗玄はそのまま、武器を道化師の衣装をしたマリッカへと向ける。
 取り巻きを失ったマリッカはというと、焦りを募らせていた。
「ミス・バタフライの使命を遂行せねば……!」
 その為には、この場を突破せねばならない。マリッカは握るステッキから旋風を巻き起こし、あるいは直接叩きつけてくる。
 見た目は軽い攻撃にも思えるが、強力なグラビティによる攻撃。対策なしでは、ケルベロスすらもあっさり床を這っていたかもしれない。
 唯一、仲間を回復役となっていたクリームヒルデは、グラビティ『テキーラ☆ハウス』を行使する。
 傷つく仲間の為にと、彼女はスマートフォンを操作してとあるスレッドをネットから探し出す。それは、言葉で言い表せぬような「ときめき」をもたらすタイトル。それによって、この世の中を生き抜く為の耐性と癒しを仲間へと与えていく。
 綾成は手前へとドローンを展開して仲間の盾となし、さらにその治療へと当たっていた。
 マリッカはケルベロスの壁が厚いことを実感し、こちらを倒すことは諦めかけていたようだ。
 それでも、使命の達成は絶対。マリッカは強引にこの場を突破しようと自身が入ってきた入り口と、逆サイドの窓を確認する。その上で、再び水平に構えたステッキから弾丸を発射し、跳弾で零斗を射抜く。
 弾丸を腹と頭に受けた零斗。同じく前に立つ仲間に彼が視線をやれば、倒れたヴィエの放った動物のオーラによる異常に未だ苛まれている。……ならば。
「逆巻く時の渦よ、顕現せよ。この地を覆いつくし、あるべきものをあるべき所へ返したまえ!」
 それは、螺旋忍軍のとある流派の秘儀。螺旋の力で擬似的に仲間達の肉体の時を撒き戻し、傷や異常を修復させていく。
 その後から、凪が電光石火の蹴りを、クリームヒルデが鎖を伸ばし、この場からの離脱を企てる敵の身体を縛り付けた。
 身体に痺れさせ、鎖に縛られたマリッカ。さらに花桜梨が斬霊刀で敵の傷口を斬り広げ、痺れと捕縛を強めて逃さないようにする。
「く……」
 抵抗するマリッカへ、楓が笑顔で飛び込んできた。
「雷より疾く駆け抜ける!」
 一度窓の外へと飛び出て空高く飛びあがった彼女は雷雲を呼び、雷気を纏って稲妻のごとくマリッカを強襲する。
「ミス・バタフライ、申し、訳……」
 言葉を言い終えることすらなく、マリッカはその場から消え去ってしまう。
 その場から影も形もなくなった2体の螺旋忍軍。その消滅を確認した梓は、再び長楊枝をくわえたのだった。

●一戦を終えて……
 戦いを終えたケルベロス達は、雀荘内の清掃を行う。
 零斗は分身を纏わせつつグラビティを与え、クリームヒルデがスマートフォンの投稿によって高まるグラビティの力で壊れた雀卓を修復していく。
 その間に、従業員や増野プロも戻ってくる。どうやら、怪我もなかったようだ。
「さて、麻雀打とうぜ」
 卓につく綾成が仲間を誘う。メンバー達はその後、心行くまで麻雀を打ち続けるのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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