俺たちの花嫁

作者:市川あこ

●一妻多夫制アイドル
「今日もダーリンたちと結婚式が出来て嬉しかった♪」
 小さなステージの真ん中で挨拶をするのは、ウェディングドレス姿の南野・夜芽だった。
「それでは本日最後の曲です。聞いて下さい『みんなで結婚』」
 彼女はアップにまとめた頭を下げると、唄い始める。
 会場はキャパ50名ほどの小さなライブハウスで、観客はだいたい30名ほど。
 けれどもその盛り上がりはすさまじく、ファン達はみんな「よ〜めと結婚!」とかけ声を上げて盛り上がっていた。
 彼らのうちの半分ほどはタキシードを着ている。どうやらこれが、ライブでの正装らしい。
 夜芽は、花嫁アイドルとしてここ吉祥寺をホームに活動している。
 キャッチコピーは『みんなのお嫁さん』で、彼女は日本初の『一妻多夫制アイドル』を売りにしていた。
「ダーリンたち、大好きだよ〜!」
 夜芽は手にしていたブーケを客席に向けて放り投げる。
「およめちゃーん!」
 するとダーリンたち、もといファンたちは舞台の上から飛んできたブーケをキャッチしようとする。
 が、その時、舞台の上にオークが10体現れた。
 触手を蠢かせるオークの姿は、多幸感いっぱいの空間を一変させる禍々しい力を持っていた。
「よめちゃん!」
 ファン達がどよめいて、声を上げる。
『ギルビエフ・ジューシィ』
 スーツ姿のオークが夜芽に差し出した名刺には、こんな名前が書いてある。
「あなたの清楚さ、花嫁っぽさは、わが主の『ドラゴンハーレム』に相応しい。是非、ハーレムで繁殖に励んでいただきたい! ……もちろん、ギャラも拒否権もありませんがね!」
 ギルビエフと名乗ったオークがそう言うが否や、背後にいたオークたちが一斉に触手を蠢かせ、夜芽を縛り上げた。
「やめてぇぇっ!」
 触手に担ぎ上げられて、夜芽は悲鳴を上げる。
「おい! オレたちの嫁になんてことをするんだ!」
 最前列にいた男性ファンたちが舞台に上がるが、彼らを待ち受けるのはオークたちの非情な触手だった。

●ヘリオライダーのはなし
 ヘリポートから見える空は、どこか遠くてもうすっかり秋の空気に包まれている。
「みんな、お集まり頂いてありがとねっ」
 飴井・ゆゆ(あめ玉のヘリオライダー・en0200)はぺこりと頭を下げると、真面目そうな面持ちで話を切り出した。
「ギルビエフ・ジューシーっていうオークがね、各地の地下アイドルを無理矢理スカウトしてハーレムへ連れ帰る事件が起きているみたいなんだ。ギルビエフは、地下アイドルのライブ会場に、10体のオークと共に現れて、ステージ上のアイドルを襲っちゃうの。抵抗しなければ、アイドルを攫うだけで去って行くんだけど、抵抗した人は殺されちゃうみたい……」
「ライブを中止するのはどうなんだ?」
「そしたら別の会場が襲撃されるから、阻止が難しくなっちゃうよ。だからね、オークたちが現れてから戦闘に持ち込む必要があるんだ」
「なるほど、厄介だな……」
 ゆゆとケルベロスは顔を見合わせると、互いに深く頷く。
「オークたちはアイドルを攻撃することはないけれど、それ以外の人……例えばファンかは躊躇いなく殺すんだよ。ファンはさ、その場にケルベロスがいても命がけでアイドルを守ろうとするから、ちょっと厄介なの。だからね、ファンの人たちを避難させるために『同じように熱狂的なファンだと思ってもらう』とか『アイドルのかわいらしい幻想を打ち砕く』とか、ケルベロスがアイドルになって自分のファンにしてしまうとか。ちょっと特殊な説得が必要になると思うよ。もし説得に成功したら、集団行動が得意な彼らは素早く避難してくれるから」
 ゆゆの言葉にケルベロスは考え込む。
「ひとまず、現場の状況などを説明するねっ」
 そう言ってゆゆの話したのは、次のことだった。
 会場は地下1階、立ち見客が50名でいっぱいの狭いライブハウス。駅から10分ほど離れた場所。
 オークの数は10体で、攻撃は『触手叩き』『触手締め』『触手溶解液』の3つ。
 そしてギルビエフは戦闘が始まるといつの間にか姿を消してしまうということ。
 そこまで話すとゆゆはケルベロスたちに笑顔を見せる。
「ファンの人たちの避難が大変かもだけど、みんなならきっと大丈夫だって信じてるっ。オークを倒して、およめちゃんを助けてあげて欲しいんだっ」
 そう言うとゆゆはぺこりと頭を下げた。


参加者
ガド・モデスティア(隻角の金牛・e01142)
ピリカ・コルテット(くれいじーおれんじ・e08106)
御簾納・希(不撓不屈の拳・e16232)
愛沢・瑠璃(メロコア系地下アイドル・e19468)
神居・雪(はぐれ狼・e22011)
不知火・シノン(上等狙撃兵・e26449)
ロフィ・クレイドル(ペインフィリア・e29500)
近衛・如月(魔法使いのお姉ちゃん・e32308)

■リプレイ


 重たい扉を開けて中へ入ると、ステージ上には一人の花嫁の姿があった。
 幸いオークはまだ現れていなくて、ファンたちは「およめちゃ〜ん!」などと叫びながらマリッジリングを嵌めた手を振っている。
(「アイドルにも色んなのがいるのね……。パンクスでアイドルやってるあたしが言えたことじゃないけど」)
 最前列でステージを見ている愛沢・瑠璃(メロコア系地下アイドル・e19468)はそんな風に思う。
 彼女は自分も熱心なファンのように、曲に合わせて飛び跳ねたり手を振ったりしていた。
 そうしている間に曲は最高の盛り上がりを見せて、ステージ上の夜芽が客席へ向けて花束を投げる。
 その瞬間は訪れた。
 突如、舞台の上にスーツ姿のオーク、そして10体のオークが雪崩れこむ。
 客席のざわめきをよそに、スーツのオークが夜芽に名刺を差し出し、背後から触手が夜芽に伸びる。
「よめちゃん!」
「いやぁぁ!」
 触手が夜芽を締め上ると、まず最前列のファン達が助けに行こうと舞台に上がる。
 するとその時、ライヴハウスの後方で目映い光りが放たれた。
「ちょっと待ったぁー!!」
 元気いっぱい、大きな声で叫んだのはクーを頭に乗っけたピリカ・コルテット(くれいじーおれんじ・e08106)だった。
 ポジティブな明るい光は、近くにいたガド・モデスティア(隻角の金牛・e01142)とウェディングドレス姿の御簾納・希(不撓不屈の拳・e16232)の力になる。
「何だ、お前らは……もしかして……」
 オーク達がどよめき、振り返ったファン達もざわめく。
「みんなのおよめちゃんの独り占めはぁー、許しませんよっ!!」
 ピリカは最後列からオークに言い放つ。
 その間に、瑠璃とガドはファンたちを掻き分けて舞台に上がる。
「へぇ、寄ってたかって嫁入り前の娘に手を出すかね。なかなかゲスな真似をしくさるやないか」
 ひゅんっと黄金の茨鞭を打ち鳴らして、ガドは早速鮮やかに触手の一本を切断っ。
「俺たちも続くんだっ!」
 おおおおー! と数名の男たちががオークの元へ突撃しようとする。
 けれどそこへ両手を拡げて立ちふさがったのは瑠璃だった。
「待って! ここはあたし達ケルベロスに任せて皆は逃げなさい!」
「で、でもっ……」
「ここで身を挺して守っても、万が一のことがあったら意味がないわ! ファンがいなくなったアイドルに意味がないようにダーリンを失った花嫁に意味はなくなっちゃうのよ!」
 ファン達も自分が非力なことは解っているのだろう。けれど、それでも助けに行きたい。その思いの間で葛藤しているようだった。
「はっ! アイドルの歌より強烈なのくれてやるよっ……!」
 神居・雪(はぐれ狼・e22011)はステージの下からオークめがけてナイフを放つ、と同時に呼び出した雷でナイフを武装させ、電撃と衝撃、そして鮮烈な光がオークの感覚を狂わせた。
 そこへ来て、一つの銃弾が夜芽を縛るオークの後頭部を撃つ。
「喧嘩は結構ですが、後ろがお留守になっていませんか?」
 それは ステージの右端、音響機器の側面で位置を取っていた不知火・シノン(上等狙撃兵・e26449)から放たれたものだった。
「みなさん、お願いです! 逃げて下さい!」
 客席の中列付近で声を上げたのは、ロフィ・クレイドル(ペインフィリア・e29500)だ。
「私はケルベロスではありますが、同じファンです。女性のファンは男性ファンが多い中では浮いてしまうのです。だから、中々会場へ赴いて応援することが出来ません」
 ファンたちは彼女の声に耳を傾けている。
「貴方達は、普段私が出来ない事を代わりにしてくれています。そんな貴方達に何かあれば困ります」
 ロフィはお嬢様然とした丁寧な物腰で彼らに言った。
「そ、そうか……うう……」
 確かに言われた通り。ファンたちは彼らの言葉を受け止めて考え込むが、それでもやはり目の前の『俺たちの嫁』を置いて行くことは出来ないようだった。
「は、離して……っ」
 夜芽は苦しそうな声を上げる。オークたちは彼女を捉えたものの、ケルベロスがいる以上は動きが取れないと見たらしく、舞台の上で身構え続けていた。
「えーと……オークさん、うちも居てるよ?」
 舞台袖から、純白のウェディングドレスを着た御簾納・希(不撓不屈の拳・e16232)が恐る恐る現れる。
 普段から女の子のような格好をしている彼だけど、今回に限ってはオークの気を惹き付けるための戦略だ。
 とはいえ、足元のスピカに笑われるわで11歳の男子としては、気恥ずかしいものがある。
「あー、お前な。可愛いけど、男じゃぇねか」
「匂いでわかるんだよ!」
 オークたちは、ゲラゲラ笑う。
 やつらはどうやら、性別を見分けることに関しては鋭い勘を持っているらしい。
「……こほん」
 バレてしまっては仕方がない。けれど使命感には変わりはない。
 ——絶対に倒す。その決意を胸に、希は喰らった魂を己に憑依させると『魔人』へと姿を変える。
 ウエディングドレスから覗く肩周りや胸元に、禍々しい呪紋が浮かんだ。 
 そんな会場の出口近く、突如小さな宝石群れが舞い上がり始める。
 中心にいるのは、近衛・如月(魔法使いのお姉ちゃん・e32308)。宝石群は、彼女の服、そして装具となって如月は瞬く間にアルティメットモードへと姿を変える。
「輝石の力を魔法に変えて、マジカリーゼジュエル、ここに参上よ♪」
 華やかな彼女の姿に、会場中の視線が集まる。
「お兄さんたち、こっちですっ! オークは私たちがやっつけちゃうからっ!」
「だけど……」
「めっ」
 如月は決断出来ないファンを一喝する。
「確かに守られるのは嬉しいわ。でも、女の子としては……お嫁さんとしては、大事な旦那様が傷つけられるのは、もっと嫌よ? ここは私たちに任せて。旦那様方は最後の砦なんだから。……お願い」
「そうです。だからこそ、今は……戦いについては、私に任せて頂けませんか?」
 ロフィも言葉を重ねる。内心、これが有名な『ここは私に任せて、貴方達は先に……!』というものでしょうか……? と名台詞らしきものを言ってしまった感慨に浸りながら。
「……わかった。きみたちがそういうのなら」
「信じよう」
「俺たちの花嫁を必ず守ってくれ」
 ファンたちは8名の姿を確かめると、こくりと深く頷いてライブハウスを後にした。


 『ダーリン』たちはあっという間に待避して、ライブハウスは戦場へと変わる。
 舞台上には10体のオークと縛られたままの夜芽。そしてケルベロスたち。
「アイドルってのは歌だったり踊りだったり、る、ルックスもあるけど兎に角、人を熱狂させてソウルを最高にハイにする力があるのよ! それはライブハウスでファンが一体化することで初めてなせるのに独り占めなんて許さないわ!」
 瑠璃はオークたちを前に、そう言い放つ。
 彼女自身も地下アイドル……もとい、ライブアイドルをつとめている事もあって、思いは人一倍だ。
「ニッチなアイドルに、それを狙う変わったオークか」
 雪はそう呟くと純白を縛る触手へ、主砲の狙いを定める。
「オークらしいっちゃらしいけどよ!」
 言葉と共に放たれたのは、アームドフォートからの衝撃。夜芽を縛っていた触手はばらばらと切れる。
「うちは、夜芽ちゃんもファンの人たちも素晴らしいと思う」
 後列のオークが解放された夜芽に触手を伸ばす中、立ちはだかるのはガド。
「いつか夜芽ちゃんが本当の相手を見つけるためにも、うちはあんたを必ず守りたい!」
 彼女は螺旋を籠めた掌で、不気味な触手を迎え討つ。
 触手が生気をなくしてへたる中、ライドキャリバーのイペタムが、烈しいスピンでオークの脚をめちゃくちゃに挽き潰した。
「こっちです!」
 するとその隙に、如月が夜芽の手を引いて出口へと駆け出す。
「待てっ!!」
「ダメです! アイドルさんはもう返しません! オークの好きには絶対にさせない!」
 宝石の瞬く後ろ姿をオークたちが追いかけようとする。
 けれど瑠璃がルーンの呪力と共に振り下ろした斧と、プロデューサーさんの尻尾から放たれたリングがそれを阻んだ。
 見事攻撃が決まって、1体のオークが倒れる。
 そこへ更に畳みかけるのは、プリムとピリカ。
「ふぁいといっぱーつ!」
 投げられたバールと、ピリカのブレスがオークを襲って、また1体のオークが倒れた。
 そうしている間にライブハウスの扉が開いて、夜芽は外へ逃げていく。
(「南野さんを守り、ファンを守り、そして南野さんが『アイドルである』事も守る……。全て成功ですね。けれど、ここからが本番です……!」)
 ロフィは夜芽が逃げたことを見届けると、指先を天井へ向ける。
「赤、緋、紅い空。生命を喰らいし紅い空。堕ちよ汚れし紅い空」
 彼女の指先から血が一滴流れて、空へと落ちる。見る間に天が血色に染まって、そして球体へと姿を変える。
 血色の球はオークたちに向かって落下し、爆散する。
「うわぁぁっ!」
 舞台上に生命を拒む血飛沫が撒き散らかされた。
 一体のオークが倒れ、その他のオークたちもパラライズが掛かってしまい思うように動けない。
 そこへロフィを追うように現れたクーが、顔面から閃光を放ってオークを煽って怒らせる。
「お前達、許さねぇッ!」
 一方的にやられっぱなしだったオークたちが、ケルベロスたちに向かって行く。
 夜芽が居なくなってしまった今、彼らの目的は憎しみをぶつけること、ただ一点のみだ。
 7体分の不気味な触手がうねうねと蠢いて、雪と瑠璃、それからシノンを叩き、ロフィとピリカに触手溶解液を掛けて、ガドと希を締め付けた。
 オーク達の攻撃もチームワークがよく、『ダーリン』の姿を思わせた。
「ん……ちょっと離してくれへん……?」
 切なげな表情で、希は触手の中で身をよじると、脚を大きく振り上げた。
 白いドレスの裾が舞い上がったその瞬間、電光石火の蹴りがオークの股間に炸裂する。
「おっ!? ぐおおおっ!」
 オークは涙目で股間を押さえ、触手が見る間に元気を無くす。
 そこへ畳みかけるように、スピカのキャットリングがオークを痛めつけた。
「宝石の子達、悪意を跳ね除けて……コード・アメジストっ!」
 如月の指のリングの宝石が紫水晶に変化し、前衛を守る薄紫色の結界を展開する。
 触手から受けたダメージが徐々に癒やされて行く。
「女性を狙って攫うなんて、恥ずべき行為です!」
 シノンは希の近くにいるオークに狙いを定めると、マガジン一本分の銃撃を開始した。
 凄まじい音と衝撃がオークを襲う。それはシノンによる『幻影一点掃射』だ。
 銃弾をすべて受け止めるより早く、オークはその場に倒れるけれど、卑劣なオークに対する憤りは収まらない。
 シノンの手は憤りに震え、その視線は敵意に満ちていて鋭かった。


 触手による攻防と、それを討つケルベロス側の戦いは続く。
 オークの数が多いために手間取る部分はあったものの、ケルベロスたちは着実に彼らを倒して舞台の上に屍を築いていった。
 残るオークの数は2体。
「まっすぐに襲うしか能のねぇ奴に負けるかよ」
 雪が炎を纏った烈しい蹴りを、オークのでっぷりした腹めがけて放つと、そこに続いてイペタムが炎をまとって突撃する。
「うっ、うぅっ……」
 呻き声を上げるオークに、ガドは牛化した手足に重力を集中させて、重たい一撃を放った。
 オークたちは確かに気持ち悪いけど、三度目ともなれば少しは慣れる。とはいえガドの表情には嫌悪感が僅かに浮かぶ。
「皆さん、元気ですかーっ!?」
 ピリカが爆破スイッチを押すと、前衛の背後に極彩色の爆発が起きて爆風に煽られた仲間たちのエネルギーが満ちていく。
 そうしている間に、プリムはオークへタックルを決め、プロデューサーさんは鋭い爪でオークの尻を引っ掻いた。
 極めつけに瑠璃のバスターライフルから放たれたフロストレーザーを浴びると、オークはその場へ倒れた。
「あっ、ち、畜生!」
 たったひとりになったオークは辺りをきょろきょろ見回すが、ケルベロスたちに囲まれていて逃げ場はなかった。
 苦境に立たされたオークは触手を伸ばして、ロフィを撲つ。
 けれどそれはロフィにとっては快感でもあった。
 彼女は口元に笑みを浮かべると、ひらりと裾を翻してオークを殴りつける。
 網状の霊力が放射され、オークは瞬く間に緊縛された。
 クーがロフィへ向けて応援動画を流す中、捕縛を受けたオークへ魔法少女・如月からの一撃が見舞われる。氷を纏ったその攻撃は、達人と呼ぶに相応しい衝撃をオークに与える。
 希の妖精弓がオークの心を貫く矢を放ち、傍らのスピカは尻尾のリングを飛ばして応戦する。
 満身創痍のオークは目の奥に憎しみの炎を灯して、彼らを見ている。
 けれどもどこか自分の運命を諦めているようにも見えた。
「そろそろお終いにしましょう!」
 バスターライフルの銃口から、シノンはゼログラビトンの光弾をぶっ放す。
 雪のアームドフォートがオークへ狙いを定める、と同時にライドキャリバーのイペタムが炎を纏って突撃の準備。
「これで最後だっ……!」
 主砲が一斉に発射され、イペタムが背後からオークに突っ込む。
 オークはその場に崩れ落ち、その後は動くことがなかった。


 希とスピカ、ガド、そしてピリカとスピカたちはヒールでライブハウスを修復した。
 破損は主にステージ上だったため、割とすぐに終わる。
 今まで飾り気のないステージだったのが、ヒール効果で白とブルーを基調としたどこかブライダルな雰囲気へと変わった。

 戦闘が終わったことを知ると、夜芽とファン達は会場へ戻りケルベロスたちに深々と頭を下げた。
 そうして「お礼の意味も込めて」という夜芽の希望により、ライブが続行されることになる。
 
 ステージにウェディングドレス姿の夜芽が現れると、ファン達と一緒になってピリカも「きゃーっ!」と歓声を上げる。
 ファンの人たちと一緒になって応援をするのは、何だか楽しい。
 ガドもまた、フロアの中で夜芽を、そしてファンを見守っている。
 すべてを守り切ることが出来た安堵の中で。
 だけど。
(「うちも、そろそろ考えんとなぁ……」)
 夜芽のウェディングドレスを目に、25歳のガドは自分の将来を考えずにはいられない。
 最高潮の盛り上がりを見せるライブハウスの中で、彼女は小さく溜息を吐いた。

作者:市川あこ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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