●狙われた『ラブ・スクープス』
ここは都内の某・地下劇場。
「ラム・レーズン、なめてるかーい?」
「ラムちゃーん!」
「チョコミント、なめてるだろうなー?」
「チョコミー愛してるゥウウ!」
「抹茶、みんな……嫌いじゃないよね?」
「心から好きだよチャコおぉーー!」
「そして私がバニラ・アイスだよー! ぺろぺろしてますかー?」
「ヴァぁニラあぁあーー!」
アイドルグループ『ラブ・スクープス』のライブは最高潮を迎えていた。
決して有名とは言えないグループではあるが、熱心なファンに支えられ彼女達も声援に応えようと必死で努力している。その甲斐あって月に2回のライブは常に50人ほどの客が詰めかけ、ファンと4人が一体となって例外なく盛り上がるのである。
「よーっしみんなぁ、トリプルいっくよー!」
リーダーのバニラのおなじみの呼びかけに、客席がひときわ大きく湧いた、その時。
突然音楽が止み、中途半端な静けさの中客がざわつく。
ステージ上に姿を現したのは『ギルビエフ・ジューシィ』とその配下オーク10体。
『アイスクリーム味のアイドル4人組、ですか……なるほど、わが主の『ドラゴンハーレム』の彩りにはちょうどいいですね。是非、ハーレムで繁殖に励んでいただきたい! ……もちろん、ギャラも拒否権もありませんがね!』
「突然何を……きゃあッ?!」
ライブを邪魔した無法者に、毅然とした態度で立ち向かおうとしたバニラを、1体のオークが担ぎ上げる。これに怒ったのがファンたちである。
「ブタぁ! それがしのヴァニラになにをさらすんじゃあ!」
「ラブスクプスファンを怒らせたことをあの世で後悔しろお!」
ライブの興奮あいまって威勢がいい、だが。
『黙れオス、死ね。寄るな』
当然、一般人がオークにかなうはずもない。ぺちぺちっと触手の先でなぎ倒され、会場は阿鼻叫喚である。触手に絡まれながらチョコミントが叫ぶ。
「やめろぉ! ファンのみんなに手を出すな!」
『ブフフフフ……好きで出してるんじゃありませんよ。それよりご自分の心配をしてはいかが?』
4人のアイドルたちの腕に、腰に、足に、オークの触手がどんどん絡みついていく。
ファンたちの怒号と悲鳴の中、会場は大パニックになっていった……。
●ハーレム計画
「ラブ・スクープス、略してラブスクプス……大して略せてないし、ものすごく言いづらいなあ……あ、彼女たちが今回の被害者。犯人はギルビエフ・ジューシィってオークだよ」
モニターに『ラブ・スクープス』の動画を映しながら、ヘリオライダーの安齋・光弦が事件概要を説明し始める。
「ギルビエフ・ジューシィは、地下アイドルのライブ会場に10体のオークと共に突如現れ、ステージ上のアイドルを襲う。抵抗しなければアイドルを攫うだけで去っていくけど、まあファンが指を咥えてみてるわけはないよね」
つまりオークはアイドルたちを攫うことはするが、傷つけはしない。だが、下手に抵抗すれば周囲のファンはあっさり殺されてしまう、ということだ。
「熱意は買うけど、デウスエクス相手に一般人に出来ることはないからね。大人しく避難してくれるように、君たちで彼らを説得して欲しい。僕らもラブス……ラブスクプスのファンだって言うとか、逆に何かこう彼女たちに対して幻滅させるようなことを言うとか? あとはいっそ、君たちのファンにしちゃうとかね。方法はお任せする。説得に成功すれば、集団行動が得意なファンたちのことだ、迅速に避難してくれるよ」
そう言って、光弦は画面を動画から見取り図に切り替えた。
会場は全体的に正方形に近い形をしており、入り口正面にステージがある。
「戦場になるのは、ライブをやってる地下の劇場だ。立ち見でぎゅうぎゅうにフロアに入れて50人ってところだから、かなり狭い空間だね。君たちにはオークどもを蹴散らしてもらいたい」
倒すべきオークは10体。どれも平均的な個体である。
「ギルビエフ・ジューシィはケルベロスが現れて戦闘になると、いつの間にか姿を消してしまうらしい。はしっこい奴だから、撃破するのは難しいと思う。それは改めて対策するとして、今回はオークを蹴散らして、アイドルたちを守ってあげて欲しい……出来れば彼女たちが大切にしているファンたちもね」
参加者 | |
---|---|
ペトラ・クライシュテルス(血染めのバーベナ・e00334) |
リナリア・リーヴィス(クラウンウィッチ・e01958) |
ヤクト・ヴィント(戦風闇顎・e02449) |
山之内・涼子(おにぎり拳士・e02918) |
コール・タール(多色夢幻のマホウ使い・e10649) |
高町・小百合(女子高生兼メイド兼ケルベロス・e17183) |
エージュ・ワードゥック(未完の大姫・e24307) |
キーア・フラム(黒炎竜・e27514) |
●ラブスクプスライブ
「いち、にっ、さん、フォー!」
暗闇の中で4人の声が響き渡ると、ファンの歓声が上がりフットライトがまばゆく光った。ステージ上でビシリとポーズを取っているのはアイドルユニット『ラブ・スクープス』ラム・レーズン、チョコミント、抹茶子、そしてリーダーのバニラ・アイスの4人である。
「みんなで盛り上がってね」
「ラムたーん! ラムたんの棒読みいけてるー」
ステージ近くでは、エージュ・ワードゥック(未完の大姫・e24307)が思い切りファンに馴染んで体を揺らしていた。護衛対象の事前調査、として動画などを観るうちに、ラム・レーズンたん推しになったようである。
「皆さんペロペロしてますかー?」
「ヴァニラー! もちろんアタシもなめてるわよぉ!」
ステージからのコールに腕を振り上げて応えるペトラ・クライシュテルス(血染めのバーベナ・e00334)も、すっかりライブを楽しむファンのひとりとして溶け込んでいる。心から楽しみつつも、夢と希望に溢れた女の子たちをこの手で必ず守ってみせる、と胸の内の闘志は熱い。
「この曲いいかも……ボクも一緒に踊りたくなってきた!」
アップリズムを膝で取りながらステージに視線を注ぐのは山之内・涼子(おにぎり拳士・e02918)彼女もアイドル修行中の身であるから、曲調や振付などにも注目している。
「アイドルって、こんなに近くで会えるものなのね……!」
距離感に驚きつつ、高町・小百合(女子高生兼メイド兼ケルベロス・e17183)も音に乗ってライブを楽しんでいた。子供の頃に憧れた『アイドル』という存在とはすこしイメージが違うが、この熱気と盛り上がりに素直に感心し、身を投じる。
というわけで、エージュ、ぺトラ、涼子、小百合の4人は『最前』つまり、アイドルたちに一番近い場所で潜伏して盛り上がっている。ラブ・スクープスのファンは案外女子率が高いので、浮いた存在にはなっていない。
「誰かにとっての憧れや偶像になるのも、なかなか素敵なことかも知れないね……」
隠密気流で会場に潜伏しているリナリア・リーヴィス(クラウンウィッチ・e01958)もステージを眺めつつ、この空気を楽しんでいる。ステージ上で全力を出す彼女たちと、それを全力で応援するファンとで作るライブ。この限られた時間の大切さを、ケルベロスたちはそれぞれに感じ取っていた。それだけに、オークなどに邪魔はさせられない。
「ハーレム……ハーレムねぇ。また、悪趣味な事を考えやがるな」
ファンの波にはあえて入らず、コール・タール(多色夢幻のマホウ使い・e10649)は入り口付近に待機していた。熱狂するファンたちが、自分を犠牲にしてでもアイドルたちを守りたいと思うのは当然のことだ。しかしその結果、ファンが死ぬなどという悲しい結果になっていいはずがない。
「ふむ、これが地下アイドルか……フットはそこ。スポットは……あれか」
ステージからはすこし引いた位置で照明スタッフに紛れてこまごまと確認をしているのはヤクト・ヴィント(戦風闇顎・e02449)だった。地下アイドルはヤクトにとってあまり馴染みのある存在ではないが、ここから飛び立ち活躍してもらうためにもオークの目論見はぶち壊さなくてはならない。
ライブもいよいよ大詰め、ステージ上のラブスクープスも観客も、汗で溶けてきた頃。
「よーっしみんなぁ、トリプルいっくよー!」
ケルベロスたちが一瞬にして意識を尖らせた。予知の通りなら、バニラのこの呼びかけの直後に……。
フッ、と、ガンガンに鳴り響いていた音楽が消えた。
ざわつく会場、うろたえる客たちを宥めるより先に、ステージ上にギルビエフ・ジューシィとその配下オークの群れが姿を現した。
『アイスクリーム味のアイドル4人組、ですか……なるほど、わが主の……ブヒィッ?!』
得意満面、という風情でしゃべっていたギルビエフの足元に、キーア・フラム(黒炎竜・e27514)の放り投げたゲシュタルトグレイブが、深々と突き刺さった。
『あ、危ない……当たるとこでしたよ!』
「黙りなさい、豚。私たちケルベロスが来たからには、好きにさせない」
キーアがギルビエフを遮ってそう言い放つのとほぼ同時に、ステージ前に潜伏していた4人がファンたちとオークの間に挟まる形で立ちはだかった。
●ぺろリスト説得
「はいはい、おねーさんたちケルベロスにここはお任せ」
ざわつくファンたちに軽い調子で告げるリナリアだが、既に盾となる位置に立っている。
『ケ、ケルベロスがこんなところで一体何を?!』
焦るギルビエフに近づきながら、コールがびしりと言い返す。
「お前らこそ。ライブ会場に土足で踏み込みやがって」
『ブフフフ、私はね、ご招待にあがったんですよ。そこの可愛らしいお嬢さんたちを、我らの主のハーレムに……まぶしっ!』
「さて、ライトの調子はどうかな?」
要らんことをベラベラしゃべりだしたギルビエフの顔面に、ヤクトがスポットライトを思い切り当てた。
しかしファンたちは聞き逃さなかった。
「は、ハーレムだと、この豚何を言いさらす!」
誰かがそう叫んだ途端、怒りは一気に広がった。
「神聖なるステージに豚が上がるんじゃねえ!」
「その薄汚ねえ触手をひっこめろ! バニラの半径300メートル以内に寄るな!」
一斉に騒ぎ出したファンたちの怒声に、手下のオークたちが煙たげに反応する。
『あぁ? うるせえオスどもだな……』
「彼女たちへの愛が真実なら、パニックになっちゃいけないッ!」
そう叫ぶエージュの姿を、うまく調節したライトでヤクトが照らし出す。いつものほわほわ口調よりすこし強めに、ファンたちに刺さるように。
この隙にステージに上がり、ラブ・スクープスの4人に近づいたキーアが囁く。
「協力して。ファンには貴方達の誘導が一番効果があるはずよ」
「ほら、危ないからはなれなさいよ!」
小百合が言ってもファンたちは首を横に振る。
「ラブスクプスが危ない目に遭ってるのに、それがしたちが逃げるなど!」
「このままだと彼女らを悲しませる事になるぞ。それでもいいのか?」
コールが強い調子で言えば、涼子も必死の説得をする。
「そうだよ! アイドルもファンもどっちも傷ついちゃダメだし!」
そこへ、キーアから事情の説明を受けたバニラがせーの、と合図した。
「みんな! 私たちと一緒に逃げて!」
ラブ・スクープスが声を揃えてそう言った。
「私たちも逃げるから、みんなも逃げて! 逃げるのは、卑怯なんかじゃない」
バニラの真直ぐな声に落ち着きを取り戻したファンたちに、ぺトラがウインクしてみせる。
「一緒に盛り上がった仲間だもの、アナタたちのぺろリスト魂はよぉくわかるわよぉ。ここはアタシたちに任せて、アナタたちは戦いが終わったあと……ライブの続きに力を蓄えておきなさぁい!」
オー! と鬨の声を上げ、ファンたちは避難を開始する。
「言うこと聞いてくれたらペロペロでもなんでもしていいから、さっさと逃げなさい!」
「えっ? 本当?」
避難の足を速めようと小百合が言った一言に、なぜかファンではなく抹茶子の目がキラリと光った。バニラが慌ててその手を引っ張る。
「チャコ! 早く」
「誰も死なせない。後は任せろ」
そう言うと、念には念を入れて激しい殺気を放出するコール。
ちなみにこの時、ギルビエフの姿は既に消えていた。抜け目のない奴である。配下オークたちは特別ファンたちを追いかける様子もなかった。
『ブッヒャヒャ……オレ達ぁなあ! 入れてもらえねえハーレムよりも、今ここで楽しめりゃそれで充分なのよ!』
●豚退治
狭いステージ上で、オークたちの醜い前衛取り争いが始まった。なるべく近くで女体に触りたい! という信念の元、俺が前だ! いや俺だ! とポジションを奪い合う。
「基本は焼き豚でいい気がしてきたな……」
「そうだね」
不格好なオークの隊列めがけて、ヤクトが詠唱とともにブレイドダンサーで疾走すると、その軌跡から炎の剣が伸びる。
「我喚ぶは、炎の巨人が振るいし厄災の剣、我が敵に厄災をあたえたまえ……」
「行くよ!」
ヤクトとリナリアの魔力が混じり合い、前に飛び出してきた5体のオークを包み込んだ。リナリアのミミック・椅子も、黄金の輝きで敵を惑わせる。
『ブヒャッ!』
「じゃ次は、冷たいのいっときましょ」
すかさずぺトラが氷河期の精霊を躍らせ、そこへコールのマジックウェポンが次々と形態を変えて降り注ぐ。矛、戟、最後に弓矢と化し、必中の狙いをオークの腹に向かって番える。
「―――轅門射戟。篤とご覧有れ」
ズドォッ! と重たい一撃は、手前の肉厚な壁役をすり抜け中衛の1体を貫いた。
『くそっ、この位置は損だぜ……!』
『ダメだ!前は5体までって決めただろ!』
何だかよくわからない取り決めがオーク内にあるらしい。
「いっくぞー! オークども!」
「んーと、とりあえずナパーム撃っとこうかなあ~」
全然統率のとれていない敵に、涼子の高速拳が綺麗に決まり、エージュがミサイルで追い討ちをかける。
『ええい! 集中しろ、女体は目の前だ!』
最後部から溶解液がビチャリと、小百合の白シャツの胸元にかかった。
「きゃっ!」
ヤるとなると妙に息を合わせだすオークども。中衛が、4体一斉に涼子に向かって触手を伸ばす!両手両足をに絡みつき、四方へヌルヌル引っ張られる。
「えっ……、え? やぁあぁっ!」
『ほーれ俺らのアイスクリームにしてやるぁ!』
「や、やだっ、そこだめ! だめだったら!」
「この、汚らわしい豚どもっ!」
『ブキャァ! こっからがいいとこだったのに!』
今度こそ本気の投擲を見せたキーアの一撃で、涼子に絡まっていた触手が解けていく。
「お前らなんかに、負けるもんかっ」
『俺らも負けねーぇ!』
「サイっテーだね!」
ワラワラとひとりに群がろうとするオークの触手を体を張って防ぎ、ビシバシ叩き落していくリナリアと、機敏な動きで割り込んでいく椅子。
『固ッ! ミミック触っても嬉しかねぇ!』
『ギャア! おっオスに触手伸ばしちまった!』
「……言っとくが、俺だってこんな汚いもん迷惑でしかないからな?!」
コールが心底嫌そうに触手を振り払う。
「まとめて消えてってもらいますか」
ヤクトの散弾が、守りの薄い中衛へと降り注いでいく。
「凍れ、凍れ、白い闇に包まれ、凍えて眠れ」
「黄泉がえりしは迷える霊魂。行き場をなくした者達よ、無くした命を再び燃やし、仇為す者を焼き払いたまえ――っ!」
リナリアとぺトラの魔法が雪を呼び、炎を舞わせる。相容れないはずのふたつの力は合わさって、徐々にオークの体を千切っていった。
「大丈夫かな涼子ちゃん? みょんみょんみょん……自由になれぇ~」
「うっ、ぁ……気持ち悪い、けど、平気っ」
ベトベトする拳を果敢に振りぬいて一撃を決める涼子。
『くそっ、こうなったら破け! 服を破いて破いて破きまくるんだ!』
狂ったように伸ばされる触手は、小百合の制服のスカートを狙う!
「や、やめなさ……! スカートはダメだって言ってるでしょ!」
「ふぉーめーしょん乙! ドローンちゃんお願い~」
エージュのドローンがオークどもの視界を遮り、一斉に舌打ちの音がする。
『くそっ、今一度ぶっかかれ、俺の……溶・解・液☆』
後衛からの狙いすました溶解液アタックが、エージュを捕える。
「うひゃっ?! うぇぇ……やだぁ、べとべと~」
『ぶ、ぶ、ぶっかかったぁあ!ヤッタァ!』
歓喜に沸くオーク、だが。
「……選択肢をあげようと思ったけど、気が変わったわ……ポークソテーでもベーコンでもなく、貴方にお似合いなのは、消し炭よ。消えなさい……!」
キーアの掌から放たれた黒い炎が敵を焼き尽くした。
「さて、あとはお前らだけになったな」
『ブキィ……』
あんなに粘って取った前衛ポジションだったが、ヤクトとリナリアの斬撃に、立て続けに2体が倒され、残りは3体。しかもあちこち焼け焦げてチャーシュー直前である。
「まさか、逃げられるなんて思わないわよねぇ?」
ぺトラの魔法光線の直撃で、ビシリと固まった1体が崩れ去る。そして。
「冥土の土産には少し重いが、まあ持っていけ」
至近距離からのコールの矢の一撃は、防御を固めていたオークを腕ごと貫き通し壁に叩きつけた。
残り1体には、涼子の渾身の一撃!
「さっきはよくもやったな!」
『お、俺じゃねえよ後ろの奴らが……ブギャアアぁ!』
問答無用の拳。オークの群れはケルベロスたちの前にきれいさっぱり片付いたのだった。
●ラブアイスペロリーノ
「本当に、ありがとうございました。すごい怖かったです」
「こららこそ~、ラムたんのサイン嬉しいにゃあ~」
棒読みでお礼を言いながらサイン色紙を描くラム・レーズンは、なぜかエージュの巨乳に思い切り顔を埋めている。
ウットリした目で、舌なめずりをしながら小百合に近づいていくのは抹茶子。
「なんでもしていい、んですよね……?」
「ちょ、ちょっとアンタ何考えてんのよ! アタシが言ったのは……だめ、やめなさいったら!」
予定外の方向で『なんでもしていい』の代償を払わされる小百合を、ファンは温かく見守っている。
「あの子、チャコの好みどストライクだもんなぁ……」
「ツンデレポニーテールだからなぁ仕方ないよなぁ」
危なかった、本当に危なかったと内心で冷や汗をかきつつ、クールに装ってステージをヒールするキーア。
「で、チョコミーは……あ、やっぱりな」
「ぺトラさまぁ、リナリアさまぁん! ボク、怖かったぁ」
「あらあら、チョコミーは甘えんぼさんねぇ?」
「もう大丈夫だからね」
ふたりのお姉さまに抱きつき、でれっと表情を緩ませるチョコミント。
ステージ上に戻ったラブ・スクープスのメンバー3人は、なんか大暴走し始めていたが、ファンはあくまで温かく見守っている。
「えっと、これは……いいのかな?」
涼子がうろたえるも、バニラがしれっと笑顔で言った。
「あ、いいんです。うちのライブはラスト1曲はいつも私しか歌いません!」
「……え?」
「トリプルタイムは、私だけ歌って踊って、3人は自分の嗜好爆発させて思うがままに振る舞うっていう時間なんです! 良かったら最後まで楽しんで行ってね! ラブアイスペロリーノ!」
言ってバニラが舌を半分出してポーズを取り、再びステージに上がる。
「ラストぉー! ケルベロスの皆さんのためにうったいまーす! セイ、ありがとおーケルベロス!」
「ありがとーお!」
色んなアイドルがいるもんだ、と感心しつつヤクトが引き続きスポットライトでステージを照らした。
こんな平和な空気で終われるのも、犠牲者なく事件を片づけられたからこそである。
とりあえず帰りにチョコミントアイスを買って帰ろう、と思うコールだった。
作者:林雪 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年9月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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