射的ガール

作者:天木一

 町の片隅にある小さな神社。その隣にある公園では提灯が飾られ、夜の暗がりを灯し、幾つもの屋台が並んでいる。
 毎年ある町内の秋祭りには大勢の人々が詰め掛けている。多くは親子連れや近所の子供達だった。
「イカ焼きうめー」
「とうもろこしの方がうめーし」
「次なに食べよっか」
 子供達が手にした戦利品に齧りつきながら店を見物していく。
「あ、射的やろうぜ射的!」
「よーし、誰が一番大きいの落とせるか勝負しようぜ!」
「じゃあオレ最初なっ!」
 パコッとコルクの弾丸を飛ばす射的屋へと子供達が駆け出す。
『みんな~楽しそうだね~』
 間延びした声と共にそこへ現われたのは、頭部にマグロのお頭を被った浴衣姿の少女。
『わたしも~一緒に遊びたいな~。混ぜて混ぜて~』
 少女が玩具のような弓を構える。そして矢を射ると、放たれた矢は少年の胸に突き刺さった。
「うわーーー!?」
「人殺しだーー!!」
 人々の叫び声。楽しかったお祭りは一転して、阿鼻叫喚の渦に呑み込まれた。
『あ~たり~♪ 景品に~グラビティ・チェインをもらってくね~』
 満面の笑顔で少女は次の標的に向けて矢を放った。
 
「エインヘリアルに従う妖精8種族の一つ、シャイターンが動き出したようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が集まったケルベロス達に新たな事件について説明を始める。
「今回事件を起こすのは、マグロの被り物をしたシャイターンの部隊です。日本各地のお祭り会場を襲い、一般人を殺害してグラビティ・チェインを得ようとしているようです」
 何故祭り会場が襲われるかは不明だ。人が集まる場所として目をつけたのかもしれない。
「その見た目からこのシャイターンには『マグロガール』と名づけられました。祭りの会場に待ち伏せて、事件が起きないようにしてください」
 マグロの被り物をしているからマグロガール。まさに名は体を表す名前だ。
「場所は千葉県の小さな町にある公園で行われているお祭り会場です。夜のお祭りが賑わう時間に現われて人を襲います。敵よりも先に到着できますが、人々が居なくなるとマグロガールが違う場所へと移動してしまうため、先に避難させる事はできません」
 だがマグロガールはケルベロスが現われると、邪魔者を先に始末しようとする。上手くコントロールできれば被害を抑える事ができるだろう。
「敵はマグロガールだけです。弓を使った攻撃をしてくるようです」
 その狙いは正確で、遠距離攻撃が得意なようだ。
「マグロガールが暴れると多くの被害が出てしまいます。お祭りを楽しんでいる人達が犠牲にならないように、皆さんの力で守ってあげてください」
 無事に敵を倒せたなら、お祭りを楽しむのもいいかもしれないとセリカが付け足す。すると俄然やる気を出してケルベロス達はお祭りの予定、ではなく、戦いの作戦を練るのだった。


参加者
デジル・スカイフリート(欲望の解放者・e01203)
リーズレット・ヴィッセンシャフト(希望より熱く絶望より深いもの・e02234)
エフイー・ゼノ(希望と絶望を司る機人・e08092)
翡翠・風音(森と水を謳う者・e15525)
ランジ・シャト(舞い爆ぜる瞬炎・e15793)
ヤークィソ・バロール(魔銃のバロール・e24752)
ダリル・チェスロック(傍観者・e28788)
服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027)

■リプレイ

●秋祭り
 夜の公園を提灯の光が照らし、並ぶ屋台には多くの人が並び賑わっている。隣の神社からは太鼓の音が聞こえ、祭りを囃し立てていた。
 そんな場所に目立たぬよう一般人に混じってケルベロス達が足を踏み入れた。
「賑やかね、人を探すのも大変だわ」
 競泳水着の上にワンピースを着たデジル・スカイフリート(欲望の解放者・e01203)が見て回る。
「ひゅー、大した人混みね」
 歩くのも大変な人混みに、法被とサラシ姿のランジ・シャト(舞い爆ぜる瞬炎・e15793)は口笛を吹いて肩を竦める。
「楽しそうだね! 終わったら私達も遊びたいな!」
 色々な屋台に目移りするリーズレット・ヴィッセンシャフト(希望より熱く絶望より深いもの・e02234)が、楽しそうに振り向いて笑顔を向ける。
「ああ、その為にも無事に敵を倒さなくてはな」
 その言葉に頷き、エフイー・ゼノ(希望と絶望を司る機人・e08092)はいつでも戦えるように周囲を警戒する。
「人々が楽しむ祭りを狙うとは……人々の笑顔は奪わせません」
 この人々の笑顔を必ず守ってみせると、真剣な表情で翡翠・風音(森と水を謳う者・e15525)は胸に手を当てて強く想う。そこへボクスドラゴンのシャティレが、大丈夫だと元気付けるようにその強張った頬を突いた。
「何故マグロなんでしょうね」
 マグロの被り物をする意味が解らず、ダリル・チェスロック(傍観者・e28788)は首を傾げながらも公園内を観察する。
「謀の類とはいえあいかわらず妖精種は何を考えておるやらさっぱりなのじゃ……」
 服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027)もさっぱり解らないと返事をしながら、美味しそうな屋台に目を奪われる。
「やはり屋台のヤキソバは美味い……」
 屋台であれを買おうこれをしようと楽しそうな人々を眺めながら、ヤークィソ・バロール(魔銃のバロール・e24752)はヤキソバを頬張りお祭りを堪能していた。
「射的やろうぜ射的!」
 そんな人ごみの中を子供達が駆け出し、目当ての射的屋でコルク銃を手に遊び始めた。
『みんな~楽しそうだね~』
 そこへ現われたのは頭部にマグロのお頭を被った浴衣姿の少女、マグロガールだった。のんびりとした様子で子供達に視線を向ける。

●射的
『わたしも~一緒に遊びたいな~。混ぜて混ぜて~』
「たわけたわけたわけーーーっ!!」
 マグロガールが弓を構える前に無明丸が割ってはいる。
「何が『楽しそう』じゃと! 貴様ァそこに直れ! 祭りの楽しみ方というものを一から教えてくれるのじゃ!!」
 説教モードで無明丸が捲くし立てる。
『ふぇ、どうして怒ってるの~』
 目を丸くして不思議そうにガールが首を捻る。
「現れたなマグロガール。私達、ケルベロスが相手をしよう」
 スポットライトの光を浴びながらスタイリッシュに変身したダリルが、人の少ない方向へとその姿を晒す。
「さぁ! お祭りには持って来いのヒーローショーの始まりだぞ! 折角の縁日だ。楽しもうじゃないか!」
 リーズレットがヒーローショーの乗りで勢い良く宣言し、堂々と敵を指差した。ボクスドラゴンの響もその肩に留まって翼を広げる。
「人の命を景品のように扱うとは……シャイターン。ここで撃破するぞ」
 鎧を纏い重武装となったエフイーが、敵の注意を引くように自分の周りにフォトンエネルギーでバリアを展開する。
『わぁ~おっきな的だね~、わたしも射的を楽しんじゃうよ~』
 のほほんとしながらも、その手は淀みなく弓を引き、エフイーに向けて矢を放った。矢はバリアに当たり勢いを弱めたが貫通して中に届く。エフイーはそれを腕で受け止めた。
「へぇ、面白そうじゃない。アタシらも混ぜてよ」
 ランジは親しげに話しかけ、次の的は自分だというように前に出て、少しでも人が逃げる時間を稼ごうとする。
「お楽しみのところごめんなさい」
 一礼して緊張気味の風音が、突然の出来事に動きを止めて呆然としている人々に大きな声で話しかける。
「私達はケルベロス、皆さんを守る為、デウスエクスと戦います。今しばし、ここから離れて祭りを楽しんで下さいな。ケルベロスの戦いを見たい方は……どうか安全な所まで離れてお願いしますね」
「デウスエクスが!?」
「に、逃げよう!」
 風音の言葉を聞いた人々が慌てて公園の外へと動き出す。風音は念の為公園内を殺気で覆う。
「この公園は戦場になるから、早くここから離れて!」
 敵から人々を守るように立ち塞がるデジルは、フェロモンを放ちながら周囲に呼びかけた。
「此方はケルベロスじゃ! 悪党退治をご覧に入れようぞ! ええい下がれ下がれ! 怪我をしたいのか!」
 無明丸も急かすように声を荒げて人を追い払う。
「仲間達が鮪ガールの気を引いてる間、周囲の人を守るのが自分の責務」
 過去の因縁から沸き上がる怒りを抑えるように自らに言い聞かせ、ヤークィソは逃げる人々を守るようにその身を盾にして射線を塞ぐ。
『あ~、みんな逃げちゃうよ~』
 ガールが矢を射ようとすると、置かれたラジカセから軽快な音楽が流れ始める。ワンピースを脱いで水着を晒しその上から法被を着たデジルは、踊るように蹴りをガールに見舞った。
「どう? 私達という的を落してからの方が楽しいと思わない?」
 そして見せつけるようにダンスのステップを踏む。
『楽しそうだね~』
「シャティレも一緒に、皆を守る為に戦いましょう」
 風音は手にしたスイッチを押す、するとカラフルな爆発が起こり仲間の士気を増幅させる。シャティレも属性を付与して活性化させた。
「ふふっ……この常闇の狩人、堕天使リーズレット再び降臨!」
 名乗りと共にビシッとポーズを決めたリーズレットは、勢い良く飛び込みながら鋼を纏った拳を胸に叩き込んだ。同時に響も飛んでタックルをかます。
「なら私はフルメタルナイトとでも名乗っておこうか」
 それに倣ってエフイーも即興では異名を名乗り、巨大なハンマーを脇腹に叩き込む。
『楽しいのは好きだけど、いたいのはダメだよ~』
 宙に浮きながらもガールは矢を放ち、エフイーの顔目掛けて飛翔する。
 その矢をヤークィソは左腕で受け止める。血が流れるが怯む様子もなく敵を睨みつけた。
「どうした? 100点はココだ」
 親指で自分の胸を示し、ヤークィソは相手を挑発する。
「なら~、次は百点満点です~」
 ガールはもう一度と弓を引き矢を放つ。それを予測していたヤークィソは、手にしたマスケット銃で払い除けた。
「アンタの悪巧みもここまでよ!」
 ランジはヒーロー物のように輝きながら赤い装甲の竜騎士となり大剣を突きつける。そして頭上高くに掲げると、大きく踏み込んで振り下ろす。敵は咄嗟に後ろに下がるが、切っ先はその浴衣を裂き胸を斬りつけた。
「マグロをマグロにして差し上げよう」
 音楽に合わせてステップを踏みように間合いに入ったダリルは、刃物のように鋭い蹴りでマグロの被り物を斬り裂いた。
『ああ~!? マグロが傷ついちゃう~っ』
 ガールは被り物を押えて距離を取る。
「まったく、どいつもこいつも迂遠な真似ばかりしおってー!!」
 グラビティ・チェインの為に人を襲わせようという敵の企みに、無明丸が腹を立てる。
「こうなれば決戦をしたくなるまでとことん邪魔をしてやるまでじゃ!」
 全力で駆け出した無明丸は、思いっきりふりかぶり、全ての力を籠めて顔面を殴りつけた。顔を凹ませながら敵の体が地面に叩きつけられてバウンドする。
『ぎゃふん! もう、砂だらけになっちゃう、ひどいよ~』
 ダメージを受けながらもガールの矢が無明丸に向けられる。
「よそ見してると危ないわよ」
 横からデジルが接近して頭を振るう。すると長い髪が蛇のように動き、逃げようとする敵の体を貫いた。だが反撃にガールも矢を放ちデジルの肩を射抜いた。
「まずは、この堕天使リーズレットが相手だ!」
 リーズレットが竜の幻影を生み出し炎を吐かせ敵の体を包み込む。
『あなたのハートをキュンとしちゃうぞ!』
 その炎を貫き一本の矢がリーズレットの胸目掛けて飛び出した。
「友を傷つけさせはしない」
 間に入ったエフイーがバリアを強化して矢を防ごうとする。じりじりと鏃がバリアを貫き、エフイーの腕に突き刺さった。
「私の歌を……届けます」
 風音はギターを爪弾き、心が奮い立つ歌を紡ぐ。その歌声は仲間達に不屈の魂を宿す。
『うわ~カッコいい歌だね~』
「それ以上させるかっての!」
 次に風音に向かって放たれた矢を、ランジが大剣を盾にして弾く。
「そのマグロの被り物ごと撃ち抜いてやる!」
 その隙に接近したヤークィソは敵の胸倉を掴み、マスケット銃を顔に突きつけて引き金を引く。敵は咄嗟に首を捻り、放たれた弾丸は敵の頬と被り物を抉った。
『うわ~、マグロちゃんが~!?』
「だから大体何なのじゃその頭のは!!」
 苛立ったように無明丸が敵のマグロ頭を指差した。
「シャイターンと関係無いじゃろ!?」
 そしてその苛立ちをぶつけるように跳躍して敵の体を蹴り飛ばした。
「疑問に思ったのですが、何故マグロなんですか」
 そんな当然の疑問を投げかけながら、ダリルは幻の竜を生み出してブレスを撒き散らす。

●マグロガール
『可愛いでしょ? マグロちゃん』
 炎から逃れるように、ガールは砂嵐を起こしてケルベロス達を惑わす。
「チッ、思ったよりやるじゃない」
 大剣を振り回したランジは、周囲に熱波を放ち仲間の生命力を活性化させて意識を覚醒させる。
「この距離なら弓も使いにくいでしょ」
 トンッと軽やかに地を蹴ったデジルが砂嵐を突っ切り、敵の顔を蹴り飛ばした。
「こっちが100点を取らせてもらう!」
 敵に接近したヤークィソは銃口を胸に突きつけ撃とうとして、怒りのあまり装弾するのを忘れていた事に気づく。
「チッ!」
 ならばとそのまま槍のようにマスケット銃を胸に突き入れ、内部の気脈を破壊する。
『も~こんなに近づくのはルール違反だよ~』
 ガールは飛び退きながら正確に心臓に向け矢を放つ。それをエフイーが手を伸ばし掌に突き刺さる。
「この肉球で癒してあげる! 久々の肉球だぞ! 肉球パラダイスだー!」
 リーズレットが両腕に肉球グローブをはめ、それで顔や手をぷにぷにとした感触で揉み、心も体も癒していく。
「助かる、では次はこちらから行くぞ」
 エフイーが頭を狙ってハンマーを鋭く振り抜く。すると敵は屈んで避ける。だがハンマーが被り物を掠めて形を変形させた。
「どうしたのじゃ、この程度ではあるまい。もっと力を見せるのじゃ!」
 そこへ弾丸のように飛び込んだ無明丸が全力で殴りつける。
『パンチは反則だよ~、ちゃんと飛び道具を持ってきて~』
 吹き飛ばされながらも狙いが定まらぬ矢を放つ。
「避ける訳にもいきませんか」
 その前に立つダリルは流れ矢の危険性を考え、あえて肩に当てる。そして大袈裟に膝をついた。
「みんな、ケルベロスを応援してくれ……!」
 苦しそうな声を作ってそう大きな声を張る。すると公園の外から様子を見ていた人々が声援を送った。
「ケルベロスがんばれ!」
「そんなやつこてんぱんにやっちゃえー!」
 そんな声援を聞いてダリルは立ち上がり、ロッドを黒い鳥に変えて撃ち出した。
「数多なる生命よ、どうか我等に力を……」
 風音が語りかけるように唄う。その歌声は周囲の草木から力を借り受け、聴く者の体を癒し力を湧き起こさせる。シャティレも属性を与えて治療を手伝った。
「ほら、的はこっちよ」
 デジルが挑発しながら鬼気を籠めた髪を振るい、敵の腕を貫いた。
『もう~怒ったんだよ!』
 ガールが傷つきながらも震える手で矢を射る。
「何度も攻撃を喰らえば、攻撃の予測は可能だ」
 飛んでくる矢を手で掴み止めながら、エフイーが反対の腕に炎を集めて撃ち出す。
「常闇の狩人の名は、伊達じゃない!」
 炎に巻かれるところへ、暗闇からリーズレットがライフルを構える。放たれた弾丸は敵の体を時間止めたように凍結させた。
「人々の笑顔を奪う者は許しません」
 続けて風音が黒太陽の光を放ち、その威圧で敵の動きを完全に止める。
『いたいよ~、もうおうち帰る~』
「逃がしません。あの声援がある限り、私達ケルベロスは負けません!」
 一回転して勢いをつけたダリルは回し蹴りを腹に叩き込み、敵の体を吹き飛ばす。
 地面を転がるところへヤークィソは馬乗りになり、マスケット銃の銃床で何度も殴りつける。
「どうした?『やめろ』と命令してみろ? 従わせてみろ!!」
 鬼気迫る様子でヤークィソはその手を赤く染める。
『いたいいたいっもう退いてっ』
 砂で目潰ししたガールが何とか這出る。
「これで終わりにしてやるのじゃ!」
 待ち構えた無明丸がボールのように蹴りあげた。
「祭の最中に騒ぎを起こそうなんて無粋過ぎんのよ!」
 跳躍したランジが渾身の力で大剣を振り下ろし、被り物と一緒に体を両断した。ガールの体は崩れ地に伏せる。
「わははははっ! この戦い、わしらケルベロスの勝ちじゃ! 鬨を上げい!」
 拳を突き上げ無明丸が朗々と勝利宣言をした。

●屋台巡り
 ヒールを掛けた公園には人が戻り、賑やかな祭りの音が鳴り響く。
「せっかくだし、お祭りを楽しむのもいいわね」
 デジルがそういうと仲間達も賛成し、屋台を見て回る。
「お祭り一緒にまわろう?」
「ああ、私もそう思っていた。行こうか」
 リーズレットが誘うと、エフイーも頷き手を差し出す。その手をリーズレットが笑顔で握り2人は歩き出した。
「何か食べたいものは無いか? 色々とあるみたいだが、君が好きなものを選ぶと良いぞ。私も、一緒に食べたいから、な」
「射的はさっき散々したから、甘いもの食べたいなぁ! 綿飴とか苺飴とか……かき氷も良いな! ゼノさんは何食べたい?」
 リーズレットが元気にエフイーの手を引き、大はしゃぎで屋台へと向かった。
「……こんな祭りは久しぶりです、シャティレの興味に合わせて祭りを回ってみましょうか」
 過去を思い出して風音が寂しそうな微笑みを向けると、シャティレはあっちもこっちも興味があると忙しなく視線を彷徨わせた。その様子を見て風音の笑みは楽しげなものに変わり、近くの店から覘きに向かった。
「大人げないケルベロスの力を見せたげる!」
「やっぱり祭りは楽しくだね」
 ランジとダリルは子供達と一緒に射的勝負を始めた。そんな時、公園の片隅で子供達が花火をして、小さな打ち上げ花火が空に咲いた。
「タマヤーっ! ……花火を見る時のサホウだと聞きました♪」
 そう声を出したヤークィソに釣られるように他からもカギヤーという声が上がった。
「夏の盛りもとうに過ぎ、残暑も和らぎつつある。夏ももう終わりじゃのお」
 リンゴ飴をバリバリと齧りながら、無明丸がのんびりと屋台で遊ぶ子供達を眺める。
 涼しげな風が吹き抜け、秋の到来を肌で感じさせた。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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