ねえ、まだ遊ぼうよ

作者:ひなせ弓狩

 よく晴れた日の夕暮れ時。今は誰も使っていないその山小屋に行くと、遊び足りない子狐が、人間の子に化けて「ねえ、遊ぼう」と誘ってくる。美味しい木の実や、珍しい宝物、変化の術を見せたりして、遊んで欲しくて誘ってくる。
 そんな噂話に興味があった良太は、山小屋目指して、獣道を駆け上る。
「友達も帰っちゃって、ぼくももう帰る時間だけど、家で遊ぶっていっても……兄ちゃんとはケンカ中だし、まだこんなに明るいんだもん。あとちょっとだけ。暗くなってきたらちゃんと帰るから、ちょっとだけならいいよね」
 走って走って、辿り着いた山小屋の戸を良太がわくわくしながら叩いたら、中から出てきたのはけれど、人間の子に化けた子狐ではなかった。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 現れた第五の魔女・アウゲイアスが持っていた鍵に、左胸を一突きされた少年は驚きの声を上げる間もなくその場に倒れると、横にはドリームイーターが現れた。
「さあ、これから遊びに来てくれる人へのお土産を用意しなくちゃね」
 少年の興味を具現化した、人間の子に化けた子狐のドリームイーターは、お土産を探しにと近くの笹薮へ潜り込んだ。
 隠しきれなかった尻尾を揺らして。

「不思議な物事に強い『興味』を持って、それを探そうとしていた少年がドリームイーターに襲われ、『興味』を奪われる事件が起きてしまったようです」
 パッチワーク第五の魔女・アウゲイアスは既に姿を消しているようですが、奪われた『興味』を元にして現実化した怪物型のドリームイーターが事件を起こそうとしているので、被害が出る前に撃破して欲しい。とセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は集まったケルベロス達にそう願う。
「怪物型のドリームイーターは、人間の少年に化けた子狐……狐の尾を持った少年の姿をしています。このドリームイーターを倒す事ができれば、『興味』を奪われてしまった少年も、目を覚ましてくれるでしょう」 
 ドリームイーターは一体のみで配下はおらず、喋れるが交渉などは行えないこと。狐火や、木の葉舞う風を巻き起こしたり、変化の術を使って攻撃してくること。それらの情報が載った資料を渡しながら、セリカは言う。
「そのドリームイーターは、人に会うと自分が何者であるかを質問してきます。正しく答えると、つまらなそうに去っていきますが、答えられなかったり、間違えたりすると、構ってもらえると思って一緒に遊ぼうとしますが……。ドリームイーターの『遊び』は『攻撃』なので、結果、その人を殺してしまうことになります」
 ドリームイーターは、自分の事を信じていたり噂している人がいると、その人の方に引き寄せられる性質があるので、うまく誘い出せば有利に戦えるだろう。
「狐の尾を持つ、稚い少年の姿ですが、ドリームイータであることには変わりありません。被害者の少年の他にも、普段山に遊びに入る子供たちが襲われる前に、どうか撃破をお願いします」


参加者
十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)
ロベリア・エカルラート(花言葉は悪意・e01329)
月浪・光太郎(孤高の路地裏マスター・e02318)
パトリシア・バラン(ヴァンプ不撓・e03793)
西村・正夫(週刊中年凡夫・e05577)
幌々町・九助(御襤褸鴉の薬箱・e08515)
枝折・優雨(チェインロック・e26087)
ルシフェラーゼ・スカベンジャー(しがない掃除屋・e30950)

■リプレイ

●噂の山小屋前
「この子の他には、誰もいないみたいネ」
「運ぶの手伝うぜ」
「感謝ヨ、ルシフェラーゼ! でも大丈夫。ここはワタシに任せてネ」
「運び手は足りてるか。なら、ダストン」
「八重子も、頼むぜ」
 倒れていた少年を危なげなく軽々と抱えたパトリシア・バラン(ヴァンプ不撓・e03793)が山小屋の中へ少年を保護し、ルシフェラーゼ・スカベンジャー(しがない掃除屋・e30950)が連れているミミックのダストンと、ここへ登ってくる途中までは、半身が病であまり動かせない幌々町・九助(御襤褸鴉の薬箱・e08515)に手を貸すように付き従っていたビハインドの八重子が万一に備えてパトリシアを手伝った。
 月浪・光太郎(孤高の路地裏マスター・e02318)も少年退避の手がなければ名乗り出ようとしていたが、その必要はなさそうだと視線を物音のする笹薮へと向けた。
 まずは噂話をして狐少年を呼び出すとしよう。そんな光太郎の目に一同は頷く。
「こんな噂話を知っているか、まさに今この時のような『よく晴れた日の夕暮れ時』……」
「俺も近所のガキンチョから聞いた事あるな。一緒に遊べた奴は人気者だとか。やっぱ『遊び相手』が居るのかね?」
(「夕方に子狐化け遊ぶ山、か。秋の里山原風景としては良いと思うんだが、他人の命がヤバくなる様な『遊び相手』はマズイだろう」)
「俺の故郷にもあったぜ、山の動物が人間の子供と遊びたがって出てくる話」
「そうですね。私もそういった話を聞いた事はありますが、一度会ってみたいものですね」
(「もっと遊んでいたい想い。それを餌にするモノですか。好奇心が強い子どもたちにはちょっと刺激的すぎるかもしれませんね……」)
 光太郎、ルシフェラーゼ、九助、十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)が、各々心に思いながらも噂話を弾ませる。
「どうせなら狸の方が見たいな」
 敵として出てくると分かっていても、子供の姿を殴るのは気が引ける枝折・優雨(チェインロック・e26087)は狙われる事を予防してあまり信じていないような素振りをしたのに、男性の山猫型ウェアライダーのビハインド、カッツェが『狐じゃなくて、山猫と遊ぶかい?』と書かれたスケッチブックを見せてきたから、優雨はそれを叩き落とした。
 笹薮の揺れはどんどん大きくなっていく。
(「もう一押しですね」)
(「あと少しだね」)
 今は一緒には住んでいないが娘がおり、子供と接する事には経験がある西村・正夫(週刊中年凡夫・e05577)と、双子の姉のイリスがビハインドとして共にいるロベリア・エカルラート(花言葉は悪意・e01329)も駄目押しにと噂話に加ると笹薮の揺れがひと際大きくなった。そして、
「ねえ、遊ぼう」
 誘う声と共に、ついにドリームイーターが姿を現した。

●ねえ、遊ぼう?
「あのさ、ぼく、なぁんだ?」
「この辺の子だろ」
「迷子かしら」
 噂話通りの狐の尾を持つ少年姿のドリームイーター、子狐少年の早速の質問に、人間の子供と思っているふりをして答えたルシフェラーゼと優雨に、子狐少年は遊び相手を見つけたと機嫌良くはしゃいだ。
「ざんねん。ぼくは迷子じゃないよ。なぁんだ?」
「さあ……。何ですか?」
 問われた泉ははぐらかし、戯れに質問をし返すと、それは子狐少年にとって思いがけない返しだったのか、きょと、とした顔をしてから楽し気に笑い、今度は九助の前に踊り出た。
「何だろ? お兄ちゃんはぼく何だと思う?」
「そうだな、さっきまでいた男の子の友達か?」
 遊ぼうと誘う子狐少年の小さな手に自分の手を取られた九助は普通の子供として相手をしてやりながら苦笑した。
 九助も小さい頃、病が悪化する前は野山を遊び回っていた。友達は少ないし兄弟もあまり構ってくれなかったから、野山のけものの迷信を信じてみたりもしたものだった。
(「今になって、こんな形で『遊ぶ』事になるなんてなあ」)
 九助に構ってもらい、少し満足した様子の子狐少年は次は正夫の正面へ立って尋ねた。
「どこのお家の何くんでしょうか? おじさんわからないなあ。もう日暮れ時だし帰った方がいいと思うなぁ」
「えー、まだ遊びたいもん。遊ぼうよ」
「まだ遊びたい? 困りましたねえ、う~んしょうがないですね。ちょっとだけなら……困りましたねぇ」
 正夫がのらりくらりと上手く会話を続けてやると子狐少年は、一層はしゃいで何枚もの木の葉を空に巻き上げた。
「やったあ、それって遊ぶってことだよね!」
 本当の少年なら木の葉遊びだけれど、その正体はドリームイーターで遊びは攻撃。巻き上がった木の葉は激しい嵐となって正夫を襲う。
 が、正夫と木の葉の嵐の間に突如素早く一つの影が飛び込んだ。
「待ちきれないって感じネ。ヨオーシ、わかったワ! ワタシも一緒に遊んであげるワヨ」
 正夫への攻撃を絶妙のタイミングで飛び込み防いだのは、戻ってきたパトリシアだった。ダストンもルシフェラーゼの元へ、八重子も九助の元へ戻って全員が揃った。沢山の遊び相手を目の前に、子狐少年は喜び弾む。
「元気がいいですねぇ。じゃあちょっとだけおじさんと遊びましょうか」
「ま、俺らなら頑丈だから丁度良く『遊んで』やれるんじゃないのか?」
「遊んでやるとも、少年よ……君がそれを望むなら」
 正夫とルシフェラーゼ、光太郎がそう言い、優雨、泉、ロベリアも戦闘態勢に入る。
「さあ、帰るまでは、遊ぼうぜ。時間も無いからには、思い切りな!」
 九助の誘いに子狐少年が元気よく頷き、駆けてくる。遊びが、戦いが始まる。

●暗くなる前に
 陽が落ちる前に短期決戦を。作戦を、思いを一つにまとめたケルベロス達は強かった。
 正夫がドラゴニックハンマーを砲撃形態に変形させて竜砲弾を浴びせ、パトリシアはディフェンダーとして肉壁になるべく魔人降臨で力を底上げして子狐少年を誘う。
「おいでAmigo。生涯最後の遊び、全力でやらないと損するワヨ」
 パトリシアに注意が向いた隙を泉は逃さず切り裂いた。跳ねた返り血も無駄なく吸収する。
「禍上流殺法、十四代伝承者、月浪光太郎……推して参る」
 光太郎の月光撃に、ダメージの段階が上がったのかドリームイーターはその身をぐらりと傾がせたが踏み留まって楽しい顔。
 九助は御襤褸霊薬、六根清浄で、五感六感を最大限に鋭くして、自身の技術を上昇させ、とにかく相手の攻撃による厄介なものを味方に蓄積させないようにと備え、八重子はドリームイーターを金縛りにする。
(「ドリームイーターは嫌いなんだけど、流石に子供の姿をした相手と戦うのはちょっと気が引けるな」)
 そう思うロベリアの横に、双子の姉のイリスが凛として並ぶ。
 気持ちを察しても、慰めたりなどせず共に戦うと示してみせたのは、ロベリアが同情や憐みを何より嫌い、負けず嫌いで、自分が他人の足を引っ張ることなど死んでも嫌だと思っている事を知っているから。
 イリスの想いをロベリアも違いなく受け取って頷く。今回の戦いは気乗りしないが、だからと言って仲間の足手まといにはならないと決めていた。
(「とはいえ、被害が出るのを見過ごすわけにもいかないし、全力でいくよ」)
「長々と戦いたい相手じゃないしね」
 ロベリアの舞い散る花のように見える地獄の刃がドリームイーターを切り裂いて傷口を蝕み、続いてイリスも金縛りをかけた。
「他愛のない噂も、実体化されたら聞き流せないのよね。変な尾びれが付く前に、ただの風の噂に戻ってもらわないと」
 優雨が右手に巻き付けたケルベロスチェインでドリームイーターを締め上げたところへ間髪置かずかけた金縛りが決まり、上手くいった連携にアクティブにハイタッチを求めるカッツェを、優雨は初めて彼が現れた時と同じく見て見ぬふりで次の攻撃に備える。そんな優雨にカッツェはニヤニヤ笑い。
 攻撃を受け続けたドリームイーターは、子狐少年姿の頬を膨らませて不貞腐れると反撃に出た。
 狐火をまともに食らって身を焦がされたルシフェラーゼはラーグズ・スプラッシュを掛けてヒールをした筈だったが、冷水をかぶったのは自分ではなく子狐少年だった。
 耐性恩恵のなかったルシフェラーゼを攻撃して催眠をかけ、回復を試みた子狐少年だったが、先程のロベリアの悪意の嵐と、怒ったダストンが容赦なく尻尾に噛みついたおかげで、さほどのヒールにはならなかった。
「やるじゃないか、ガキンチョ。もちろんダストンもな」
 ダストンはずっと狐の尻尾が気になっていて噛みつきたかったのか、主に対しての反撃というよりもう尻尾の感触を楽しんでいる風で、それに子供らしい声をあげて逃げる子狐少年と相まって、ルシフェラーゼは結構なダメージを受けたにも関わらず苦笑してしまう。
(「俺意外と子どもと遊ぶの好きかもしれない」)
 と、思い始めもしたが、ただし手は抜かない。
「おじさんになると子供のペースに合わせるのも大変でね。もうちょっとペース落としましょうか?」
 口では子狐少年に合わせて茶化すように言いながらも、攻撃のペースを落とす事をしっかり狙って正夫はジグザグスラッシュで切り刻む。パトリシアは降魔真拳で体力を吸い上げ回復し、来る攻撃から皆を守ろうと備えた。
「遊びが終わると子どもは家へ帰るものですが、あなたはどこへ帰るのですか?」
 言葉での戯れも仕掛けた泉に、子狐少年は小首を傾げて一瞬の隙を見せた。それを泉は逃さずドレインスラッシュで斬りつける。
「お前は何処から来たか覚えているか、森の中ではなく、一人の少年の夢よ」
 答えない子狐少年の代わりに光太郎が答え、教える。
 ドリームイーターに交渉は効かない。だから動きが緩んだのはただの偶然で今はもう楽しい顔に戻っている。けれど目の前の姿に九助は思う。
(「……子供を殺すってのは、いくら夢喰いでも気がのらねえもんだな」)
 九助の心を解してか八重子がそっと肩に手を置く。前にいる光太郎がブレイズクラッシュを叩きつけながらの揺るぎない声が九助の耳に届いた。
「無邪気に他者を害し続ける、そう定められた化粧なら、この現に住まう場所なし」
 九助はまだ自由の効く左の表情筋を動かし、何かをふっきったように不敵に笑った。様々な戦場に身を出して救いたいのは紛い物ではない。今はまだどうにか動く体が役立たずになるその日まで、守りたいものは他に、ここにある。
「八重子」
 九助から手を放した八重子はポルターガイストを起こし、九助は上昇させていた技術力を生かして緊急手術を施し、ルシフェラーゼを大幅に完治近く回復させた。
 回復は考えずにロベリアは全力のハウリングフィストで敵を吹き飛ばす。一分一秒でも早く敵を倒す事が仲間を守ることにも繋がると思うから。
「悪いね、遊びは終わりだよ」
 ロベリアの言葉に呼応するように、敵の背をイリスが斬りつけた。
 優雨がサイコフォースを仕掛け、カッツェがポルターガイストを起こすと、子狐少年は俊敏な忍者の姿に変化してそれをかわし、そのまま光太郎へと突っ込んだが、パトリシアが盾となり攻撃を防いだ。
 変化が解けた子狐少年へ、ダストンは偽物の財宝をばらまいて惑わせ、九助の治癒を受けた時に催眠が解けたルシフェラーゼは、オーラを溜めてパトリシアを回復した。
 秋の空の移り変わりは早い。茜色の明度は緩やかに落ちている。
「良太君を暗くならないうちにお家へ帰してあげないといけませんからね」
 これ以上暗くなっても帰らなければ親はどれほど心配するか。娘が心配で守るため職を手放してまでケルベロスになった正夫には、子供を案ずる親の気持ちがよく解る。その思いが時々上手く伝わらないのはちょっと寂しいのだけれど。
「子供の時間ももうおしまいですよ」
 正夫は眼鏡をしまって腕をまくり、真直ぐ正拳突きで磨崖撃を打ち込んだ。
 今にも崩れ落ちそうな体をしているけれど、それでも楽しそうに遊ぶ……戦闘に挑む相手を見てパトリシアは思う。
(「デウスエクスの中でドリームイーターが一番生きにくいのかもネェ。生まれた時の衝動にずっと従って生きるだなんて、生存を最優先する虫連中よりも更に難しいことダワ。人間にだって一つの気持ちを全うして生き抜ける個体なんかいるかどうか……」)
「それでも、遊びでヒトを殺しチャウ奴を、ワタシたちは許してなんておけないけどネ!」
 パトリシアは撃破を目指し電光石火の蹴りで急所を貫いた。
 もはや攻撃を避けることもままならないだろう相手に大きな動きはいらなかった。
「ミッツメ、そろそろ避けきれないと思いますよ?」
 最小限、無駄を省いた動きで狙った場所への確実な泉の攻撃。
 それを機に、夕日に溶かされるように輪郭が不確かになっていく子狐少年の小さな手を泉は取った。
「消えゆく前に興味は満喫できましたか?」
 優しく問いかけた泉に、にっこり笑ったのを最期に子狐少年は夕暮れの中に溶けて消えた。

●さあ、帰ろう
 飛ばした木の枝など戦闘で荒れた山小屋の前は、パトリシアが楽々運んですっかり片付けてくれていた。
「子供を斬るのはやっぱり気分悪いな……さっさと大元を絶たないと」
 山小屋の外で少年が目覚めるのをイリスと共に待っていたロベリアは、今しがた戦っていた場所で呟く。そこへしゃがみ込んだルシフェラーゼの手元からほのかに漂う良い香りに、なんとなく懸命に口を閉じている風に見えるダストンも傍にいる。 
「こっそり持ってきた焼き芋供えとくか……。弔いがてら」
 子狐少年の最期に手を触れた泉は何を思うのか。静かにその場を見つめていたけれど、やがて、少年が目を覚ましたと光太郎が知らせると、三人も様子を伺いに中へ入った。
「ワタシたちはケルベロス。わかりマス?」
「狐に連れてかれない内に、帰ったほうがいいわ」
 パトリシアが事情を説明してくれている間、優雨が持つスケッチブックを少年は何か期待したのか、ちらちらと時折見ていたけれど、それは少年と遊ぶためではなく、カッツェがまた余計なことを書いてしまわないためにだった。
「遊びたいのはやまやまだろうが、ちゃんとおうちに帰るのも、子供の役目だぜ」
 そんな腕白坊主の良太に苦笑して、頭を左手でくしゃりと撫でて諭してやる九助の姿に八重子は幼い昔を思い出したのか、口元を優しく笑ませた。
「親御さんも心配されるでしょうし早く帰りましょう」
 差し伸ばされ、繋いだ正夫の大きくて温かい手に、少年は帰る家の温もりを思い出したのか、ほっとしたような良い笑顔になって頷く。
 一同も少年の笑顔に表情を和らげ、安堵した。
 その笑顔を守れた事。それは、この子の帰りを待つ親の笑顔を。そして、ここで遊ぶ子供たちとその親と、沢山の笑顔をも守れたという事だから。
 少年と一同揃って帰る空には、綺麗な夕焼け。明日もきっと良い山遊び日和になるだろう。

作者:ひなせ弓狩 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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