アトリエ『指先絵筆』

作者:彩取

●暗躍
「あなた達に使命を与えます」
 赤い唇に笑みを引き、女は配下にこう告げた。
 この町に、絵筆を使わずに指先で絵を描く画家がいるようだと。
 一方、片膝をつき、頭を垂れた配下の二人は、女の言葉が終わるまで動かない。
「その人間と接触し、仕事内容を確認。可能ならば習得した後、殺害しなさい」
 そうして女が言葉を告げると、配下達は一層深く頭を下げて、
「了解しました、ミス・バタフライ」
「一見、意味の無いこの事件。ですがこれが――」
 巡り巡って、地球の支配権を大きく揺るがす事になるのでしょう。
 そう一言一句違わず共に紡ぎあげ、配下達は命じられた場所へと向かった。

●バタフライエフェクト
 ミス・バタフライという名の螺旋忍軍が動きを見せた。
 彼女が起こそうとしている事件の厄介な点は、個々の事件の結果が直接的ではなく、巡り巡って大きな影響を及ぼす可能性を秘めている事だという。
「風が吹けば桶屋が儲かる、この体現とでも言いましょうか」
 彼女はまず、珍しい仕事をしている人間の所に配下を送り込む。
 そして情報を得たり技術を習得した後に、その人間を殺すというのだ。これらの事件を阻止しないと、やがてはケルベロスに不利な状況が発生する可能性が高く、それ以上に、狙われた一般人が螺旋忍軍に殺されてしまう事になってしまう。
「いずれにしてもこの事件、見過ごせるものではありません」
 ジルダ・ゼニス(青彩のヘリオライダー・en0029)はそう言い、話を続けた。
 
●アトリエ『指先絵筆』
「今回狙われるのは、町外れのアトリエに住む画家の男性です」
 名前は御来屋・まつり。彼は指で絵を描く画家だという。
 絵筆は一切使わず、自分の指だけを使って様々な絵を描いていく。五指を重ねて描く線は力強く大胆に。指先一本だけを滑らせれば、繊細でなめらかなタッチに。そんな彼の作品を好む人も多く、この先の活動も楽しみな画家のひとりだ。
 肝心の作戦だが、基本はまつりを警護して、現れた敵と戦う形と、
「もう一つの方法として、事前に説明して避難させる方法もあります」
 ただ、避難させてしまうと敵が標的を変更する可能性が出てしまう。
 そこで、ケルベロス達には事件の三日前からまつりと接触して貰いたい。
「三日間、まつりさんに絵を教えて頂く為です。そうすれば」
 彼を避難させても、ケルベロス達自身が敵の標的になれるかもしれないからだ。勿論、囮になるには見習い程度の力量が必要になる為、しっかりと修行する必要があるのだが、
「既にまつりさんに連絡したのですが、指が汚れても良ければ喜んで、だそうです」
 彼自身、これまでは制作に没頭し続けていたが、希望者がいれば教室なども開いてみようかなと、ぼんやり考えていたところだというので、協力してくれるようだ。
 
 まつりを襲う敵は男女二人組、道化師風の螺旋忍軍。
 もし修行を経て見習いを名乗れる状態になっていれば、アトリエを訪れた螺旋忍軍に技術を教えると称して、有利な状況で戦闘を開始出来るだろう。まつりのアトリエは町外れで近くに民家はなく、庭がとても広いので戦闘するには都合が良い。
「お伝えする事は以上です。しかし、絵ですか。楽しそうですね」
 大事な任務であるが、是非絵を描く時間も楽しんで欲しい。一番大切なのは、絵を描く時間を楽しむこと。まつりはジルダにそう言づてて、皆が訪れるのを待っているそうだから。


参加者
藤咲・うるる(まやかしジェーンドゥ・e00086)
アウィス・ノクテ(月恋夜謳・e03311)
ティスキィ・イェル(ひとひら・e17392)
レイリア・スカーレット(鮮血の魔女・e24721)
サラ・ミナヅキ(さがしもの・e25249)
スゥ・エベネゼル(徙す色・e28533)
水琉・夏維(星想う水ノ竜・e30173)
峯樹・杏(もふもふぺちか・e31014)

■リプレイ

●指先絵筆
 絵描き先生のアトリエで過ごす三日間。
 御来屋まつりは実に陽気で、声のよく通る人物だった。
「三日間だけとはいえ、この度は宜しく頼む」
「おやご丁寧にありがとう! では折角だ、お茶会で親睦を深めよう!」
「そうね、自己紹介も兼ねて皆でティータイムを楽しみましょ!」
「俺も手伝います、御来屋さん。キッチンと一緒に、間取りも教えて頂けますか」
 レイリア・スカーレット(鮮血の魔女・e24721)が手渡した焼き菓子の詰め合わせを両手にお茶会を提案したまつりの声に頷き、藤咲・うるる(まやかしジェーンドゥ・e00086)やサラ・ミナヅキ(さがしもの・e25249)もお手伝い。
 そうして皆でお菓子を囲んだ後に、まつりによる絵画教室が始まった。

「絵筆の代わりに、指を使うのよね?」
「その通りだようるる君。基本はね、絵筆と同じなんだ」
 五本の指は、それぞれ違う種類や太さの筆のようなもの。
 けれど束ねて一つにもなるし、爪先もあるから太さも自由自在。そう言いながら白いキャンバスを彩るまつりの様子を、真剣に見つめる一同。やがて絵を描き始めると、ティスキィ・イェル(ひとひら・e17392)は先の言葉を実感した。
「慣れると、細かい所は筆よりも塗りやすい……」
「おお! ティスキィ君もそう思うかい? 嬉しいなあ!」
「まつりさんのお手本を真似てみたんです。こう、ですよね?」
「そうそう! いい感じだねぇ。っと、こちらは――」
 一方、こちらはアウィス・ノクテ(月恋夜謳・e03311)。
 ちゃんと絵を描くのが初めてという事で、まつりはこう訊ねたのだが、
「アウィス君はどうかな? 随分指が進んでいるみたいだね」
「構図や色の使い方とかわからないけど、楽しい」
 夢中になった少女の頬には、指先と同じ青がぺたり。それを拭いていいかとまつりが笑顔で訊ねた瞬間、横から響いたのは峯樹・杏(もふもふぺちか・e31014)の慌て声だ。
「――あっペチカ動いちゃだめ! 大人しくしといてー!」
「おはようペチカ君! って挨拶してる場合ではないね?」
「完成したら見せてあげるから、もう少しじっとしててね、ペチカ♪」
 どうやら杏が皆の絵を参考に考えている間に、ウイングキャットのペチカがお昼寝から目覚めた模様。そんな杏達の様子に笑むまつりの目に留まったのは、スゥ・エベネゼル(徙す色・e28533)と水琉・夏維(星想う水ノ竜・e30173)のキャンバスだ。
 絵心はないけど好きと零していたスゥと、最初はキャンバスを前に固まっていた夏維。
 しかし、好きこそものの上手なれという言葉があるように、絵を好く気持ちはスゥが想い浮かべた沢山の空を彼女の指先に伝えていき、夏維も指貫グローブから伸びる指先でリズムを取るように、思う色に触れて夜の海を描いていく。
「ふふ、何だか指先の魔法みたいですね」
「まだまたたくさん、いろいろな空を描いてみたいの」
 互いの絵を覗き合う彼女達に、うんうんと頷くまつり。
 すると男は黙々と絵を描くレイリアの元で足を止め、漠然と具合を尋ねた。
「……芸術というのはよく分からない。分からないが、こうしているのは嫌いではない」
 対しそう告げ、指先に新たな色を迎えるレイリアの言葉に笑むまつり。その時、男はサラが席を離れて、自分の描きかけの絵を見ている事に気が付いた。
「サーラくん。何か気になる事でもあった?」
「……御来屋さん。いえ、この曲線の描き方が気になって」
「ああこれかぁ。よし! じゃあ見てて。ここはね、指の動きが――」
 楽しそうに躍るまつりの指先。それを見て、サラはふと思いを馳せた。
 彼はやはり、自分を拾い――消えた主人に雰囲気が似ている。故にまつりの傍は心地良く、それは彼の作品から感じる人間らしさに通ずるものでもあるのだろうと。

 そうして三日間の修行を終え、皆で絵のお披露目会。
 最初の作品は、スゥの描いた沢山の空。
 空気の澄んだ暁の空に、対照的な青空と曇り空。
 夕焼け空や夜空もあって、並べると時の流れが成される作品群だ。
「素敵な青空ね! とっても綺麗」
「スゥ君の描く空は表情豊かで楽しいなあ」
 それを見て、笑みを浮かべたうるるとまつり。
 するとスゥはこう伝えた。絵は、自分が知らない色や物事を教えてくれる。だから自分も、皆に色々な空を知って貰いたくて、沢山の空を描き出してみたのだと。
「素敵なものは、皆で楽しめたら……きっと、もっと素敵だとおもうの」
 想いを紡ぎ、ふわりと柔く微笑むスゥ。続いての絵は、夏維作の夜の海だ。満天の星空と、淡く輝く月明かり。その下に広がる深くも青い海原には、儚げな波が浮かんでいる。
 その時、まつりは夏維が言っていた言葉に準えて、こんな讃辞を口にした。
「見事な指先の魔法使いっぷりだね、夏維君! 君は星空が好きなんだねぇ」
「ふふ。思い切ってやってみると、指が止まりませんでした」
 筆を通すよりも愉しくて、時間を忘れて描き続けていた夏維。
 一方、次なるキャンバスの主役はサラの描いた飛行機だ。
 しかし、まつりの視線はサラとキャンバスを行ったり来たり。
「御来屋さん、この絵がどうされました?」
「ん? いや――サラ君みたいで、なんか好きだなあって」
 やがて男はとても優しい表情で、乗ってみたいなあと呟いた。その言葉に驚きつつも、穏やかに微笑むサラ。そんな二人に柔らかく目を細めて、ティスキィも作品を披露した。
 彼女の作品は、いつか見た夕焼け時の花畑である。教わった基本に自分らしさを混ぜて、丁寧に描かれた花の想い出。そういえば、初日来た時にティスキィが嵌めていたレースの手袋にも、花模様が描かれていたと思い出しながら、まつりはティスキィにこう告げた。
「しかしティスキィ君は、夕焼けの色使いが上手だねえ」
「――そうですか? そう言って貰えるとうれしいです」
「うん。花もだけど、赤が好きなのかなあって」
 まるで黄金色の夕陽を浴びた、夕焼け色の花の絨毯。
 そう紡ぐまつりの言葉に頬が色付いた理由は、彼女だけの秘密事。
 その隣に並べられていたのは、杏の描いた作品だ。
「私の力作、ご覧あれ! お昼寝してるペチカだよ♪」
「おおお杏君すごい! ペチカ君のもっふもふ加減がいいね!」
 絵は得意ではないけれど。そう言いつつも三日間一生懸命に仕上げた杏の作品に、まつりは嬉しそうに目を輝かせた。指の腹でぼかしつつ再現されたもふもふ毛並みもさる事ながら、リボンと同じピンクの肉球もとってもキュート。ただ、
「どうペチカ、気に入ってくれた?」
「……ぶみゃ~」
「……何か言いたそうだけど気にしないっ!」
 当のペチカの評価は中々の辛口。そうして笑みが零れる中、続くはアウィスの描いた絵だ。外側に海を、内側には円を書くように空が描かれたキャンバスの中心に輝くのは、太陽と月。昼の空には雲を浮かべて、夜には瞬く星を添えて。それを描く為に、アウィスが沢山の色を重ねたり合わせていた姿を、まつりはよく知っている。
「アウィス君凄いなあ、熱心に描いていたものね」
「まつりの言った通り、慣れてくると服や顔も汚れなくなった。でも」
 絵を描くのには慣れても、夢中になる気持ちはどんどん膨らんでいく。そうしてアウィスが仕上げた絵を、夢中になって眺めるまつり。そして、最後を飾ったのはレイリアの絵だ。
 幾つもの絵を描いていたレイリアが、最後に仕上げた夕焼け色の世界。
 そこには西洋風の墓が一つと、地面に突き立てられた一本の剣が描かれていた。
 一線を画す風景に、静かに魅入るまつり達。すると、レイリアはこう告げた。
「……正直、芸術は無駄なものかと思っていたが」
 自身と向き合うという意味では、これもまた鍛錬。
 描く事でそう感じたという彼女の言葉に、まつりは笑んだ。
「ありがとうレイリア君、皆。大事の前なのに、すごく嬉しいなぁ」
 一人で絵を描く時とも違う、くすぐったいような達成感を感じながら。

●罠
 そして、四日目の昼過ぎ。
 絵を仕上げた面々が見習い認定を受け、まつりが避難した後の事。
 アトリエの入口に、一般人を装った螺旋忍軍の二人組がやって来た。
「御免下さい。御来屋さんはご在宅でしょうか?」
「……先生に、アポイントメントは取っているのか」
 気難しい見習いとして振る舞うべく、厳しい眼差しを向けるレイリア。
 対し、アウィスは普段と変わらぬ調子で、訪問の理由を述べた二人組に返した。
「まつり先生はでかけてる。帰ってくるまで、見習いでも良かったら絵を教える」
 一度には教えられないので、一人ずつでも良ければだが。そう言うと、二人組はすんなりと頷き、そこに偶然を装う形でティスキィと夏維が合流し、話を聞いた。
「成程。では、女性の方はこちらへ。男性の方はお願いしますね」
「……双方人手は足りるようだな。では私は作業に戻る」
 夏維の言葉に踵を返すレイリアと、男性を室内に案内するアウィス。
 ここまでは全て予定通り。やがて夏維達に遅れて庭へ向かう途中、レイリアが指導中のアウィスに対し、窓越しに視線を送り過ぎ去って程なく、
「――!? 今の音は……なっ!!」
「そう簡単に合流は、させない」
 突然の爆音に動揺する男に対し、アウィスは竜の幻影を見舞った。

「さあ、行きましょうアルビレオ」
「っ! おのれケルベロス共!」
 一方、庭では無事に奇襲が成功していた。
 眼前には案内役であった筈のティスキィに、ボクスドラゴンのアルビレオと合流して、目許に口付けを落とす夏維。庭近くの室内外に隠れていたサラや杏、スゥに加えてレイリアまで合流した事で、女は怒りを露わにしていた。本来後方で射撃に徹する筈の自分が、射程の長い技ならいざ知らず、うるるの繰り出す近接撃さえ浴びる羽目になったのだ。
「許さんぞケルベロス! この屈辱はこの場で――」
「――忘れていいわ、私が覚えていてあげる」
 対し、二手目に入った一同の攻撃。
 そこにうるるは苛烈な降魔の一撃を撃ち放った。
 罪も病も、魂さえも余さず押し流す刹那の激流。それが直撃してよろめく女の元に漸く男が合流すると、その後ろからアウィスが銀の髪を揺らしながら現れた。庭の状況が分からないまま、個々で戦うのは危うい。その判断の元合流した敵側だが、
「converting now……変換完了。――ほら、遊んでおいで」
 態勢を整える前にサラの声が聞こえ、そこに男が視線を向けると、
「……見えるようですね。では、戯れには十分にお気をつけて」
 光を放つもの――竜の姿を偽る化物が飛び、男へと纏わり付いた。サラの傍らの竜、スイのデータをコンバートして実体化した悪魔の如し小さな竜。その横で本物のスイがブレスで畳み掛ける中、サラとアウィス、うるる以外の面々は変わらずに女を第一の標的とした。
 無論、螺旋忍軍も防戦には回らず、傷付いていくケルベロス達。
 その傷を癒す為に尽力したのは、スゥと杏の二人である。
「わたしが皆を護るの。皆と、まつりを」
 数多の彩りを宿す髪を風に揺らして、幸運の弓を引いたスゥ。
 瞬間、矢に宿りし妖精の祝福が、敵の呪術を砕く力を伴い仲間の傷を癒していく。
 そんなスゥや仲間達の姿を見て、杏は元気に声を張った。
「――ペチカ、一緒に頑張ろ!」
 初めての任務、緊張もするし不安もある。
 けれど頼もしい先輩達がいて、前にはペチカの姿も見える。
「私も、皆が安心して戦えるように頑張るから!」
 想いを込め、鎧を象った御業を前方に届ける杏。そこに続いたのは、彼女達と同様に破剣の力を付与するべく、後方に意識を向けたアウィスである。
「Trans carmina mei, cor mei…… Solve」
 雪を思わす薄い青の瞳を僅かに細めて、紡がれる声。
 彼女の声は高らかに遠くまで響き渡る、澄んだ破幻のアリアとなった。
 舞い踊るように柔らかなステップを踏みながら、美しく歌を紡ぎ続けるアウィス。
 この攻防の中、満身創痍の女に照準を定めたのはティスキィだ。
「修行の成果見せてあげる。ね、あなたは――何色に染める?」
 囁くように訊ねる少女の元より現れたのは、戦場を自在に奔る、キャンバスのように真白き蕾花。激しく狂い咲きながらも、静謐さを損なう事なく敵を斬り裂く白い花は、やがて螺旋の女の視界を白に染め上げたまま、怒りの色ごと命を攫っていった。
「……っ! よもやこのような形で」
 連れを踏破され、思わず零れた男の言葉。
 すると、夏維は人差し指をそっと唇に添え、
「ふふ……なるようになったまでの事、ですよ」
 言葉終える間際に雷の杖を掲げて、ほとばしる雷を差し向けた。
 昼間であっても眩い雷光が翔ける中、アルビレオもブレスを放ち、治癒の手段を失った男に追い打ちをかけていく。それでも、螺旋忍軍の男は引かずに、螺旋の力で精製した浸食毒ごと手裏剣を投げ放った。標的は怒りを付与したサラの元。それを見た一同が攻守に技を繰り出していく内に、レイリアは戦いの中で形成していった包囲陣から一歩踏み出した。
「バタフライエフェクトか。だが、如何なる策を講じようとも」
 空の霊力を帯びた得物を構え、敵へと迫りゆくレイリア。
 その斬撃が、刻まれた傷跡を的確に斬り広げる。
 直後、絶叫をあげる猶予さえも与えられぬまま、膝から崩れ落ちるように倒れて消滅していく螺旋忍軍の男。その最期を一瞥すると、レイリアはこう告げた。
「――それがデウスエクスの思惑ならば、全てを砕くまでの事だ」

●未来を描く指先
 破損個所のヒールが終わった頃、家に戻って来たまつり。
 皆の無事にほっとする彼に対し、ティスキィとアウィスはこう言った。
「教えてくれてありがとう、まつり先生」
「まつり。すてきな作品、これからも楽しみにしてる」
 思わぬ言葉に、それまでの不安が解けたように笑う男。
 そこに一つ提案をしたのは、ペチカをぎゅっと抱きしめた杏である。
「ねえ、まつりさんの絵、改めてじっくり見せてもらいたいな♪」
「! いいよ、もちろん! そうだ、帰る前にお茶を淹れよう!」
 ならばと、早速うるると夏維はキッチンへと準備に向かい、レイリアとスゥも続いて部屋の中へ入っていく。その時、まつりはサラへと声を掛けた。
「実はね、また描きたい絵が浮かんできたんだ」
「新しい作品の構想ですか? 次はどのような絵を――」
 しかし、男は勿体ぶるように、お茶を飲みながら話すと言葉を区切った。
 まるで悪戯を閃いたかのように、陽気な鼻歌を響かせるまつり。
 そんな男がティーカップを傾けながら、ケルベロス達に伝えた事。
 それは君達をモチーフにした絵を、描かせて欲しいというお願い。そう語るまつりの顔が、子供のように楽しそうなものだったのは、言うまでもない事だろうか。

作者:彩取 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 0
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