壁に仏を描く男

作者:baron

「あなた達に使命を与えます。この町に大工の中でも、コテ絵師という左官仕事の合間に絵を描く事を生業としている人間が居るようです。その人間と接触し、その仕事内容を確認・可能ならば習得した後、殺害しなさい。グラビティ・チェインは略奪してもしなくても構わないわ」
 奇術師の恰好をした女性が、小柄なピエロ姿に何やら命令していた。
 そいつは赤と緑で色分けされている以外はシンプルな姿で、仮面で表情を隠しているところまでピエロ風であった。
 だが、話しはかなり物騒。そして仮面は渦を巻いている。
「了解しました、ミス・バタフライ。一見、意味の無いこの事件も、巡り巡って、地球の支配権を大きく揺るがす事になるのでしょう」
 風が吹けば桶屋が儲かると言うが……。
 一見、なんのことか判らない技術の習得であるが、ピエロはもっともらしく頷いて、行くよと近くにいる色だけ左右対称の子を呼ぶと、何処かに行ってしまう。
 

「ミス・バタフライゆう螺旋忍軍が動き出したようですえ。起こそうとしている事件は、直接的には大した事は無いのだが、巡り巡って大きな影響が出るかもしれないという厄介な事件となるんです」
 ユエ・シャンティエが地方のガイドブックを持って説明を開始。
 傍らにはもう一冊、数々の職業を示した適性検査表がおいてある。
「今回の事件ですが、大工の専門職の一つ左官の中でもコテ絵師さんゆう珍しい副業をもった人が狙われるんですわ。どうやらこの技術を盗んで、その仕事に就いたり、習得後に殺したりするそうなん。問題なんが……」
 ユエは軽く説明に困った様子をすると、余計な考察は交えずシンプルに話し始める。
「この事件を阻止しないと、まるで、風が吹けば桶屋が儲かるかのように、ケルベロスに不利な状況が発生してしまう可能性が高いのです。勿論、それがなくても、デウスエクスに殺される一般人を見逃すことはできしませんけど」
 だから皆には、一般人の保護と、ミス・バタフライ配下の螺旋忍軍の撃破をお願いするとユエは説明を続けた。
 なんでもコテ絵師というのは、漆喰やセメントを塗るときに、コテで絵を描いて壁絵を作る人なのだそうだ。
 近年では廃れていたらしいが、左官仕事そのものが大手の建築業者に抑えつけられてきたので、大手では不可能なそういう作業に目新しさを覚えて注文する人も増えて来たそうな。
  
「残念ですけど、いま忠告して避難すると他の対象が狙われることになりますん。そこで、みなさんには事件の3日程前くらいの、相手の狙いが固まって来た当たりで干渉していただきます。事情を話して仕事を教えてもらえば、後輩に指導する見習い仲間の先輩として接触を促せるかもしれません」
 自分達の方が囮になるには、かなり頑張って修行する必要があるかもしれない。だが、左官仕事などやった事も無いという者が多いのだが……。
 何人かがそう思った時、察したらしいユエが軽く微笑んだのが見える。
「ここで皆さんの適正が1つ2つあります。基本は大工仕事の合間に行うのですが、大工仕事は力仕事や高所での軽技がメイン、そして後方から食事に物資の手配と、連携こそが命、段取り八分ゆうのはケルベロスの作戦と同じですえ」
 そう言われて、首を傾げた者たちも得心がいったようだ。
 一般人のフリをするにしても、ケルベロスの体力やバランス力ならば、いかにも仕事慣れした様子で作業をこなせるだろう。特に今回は、一芸に秀でた職人であるので、それほど差が無い。その合間にコテ絵を習っておけば、言うほどの無理は起きないだろうし、デウスエクスが真似する対象としても選ばれ易いだろう。
「囮に成ることが成功した場合は、螺旋忍軍に技術を教える修行と称して、有利な状態で戦闘を始める事が可能となるでしょう。流石に分断されていつまでも気がつかないことはないでしょうが、途中まで合流させないだけでも違うかと思います」
 説得力次第で分断したり、そこまで思いつかなくとも、一方的に先制攻撃は可能だろう。
 いずれにせよ、一般人の被害を出さず、安全に戦える位置までおびき寄せれるのは大きい。
「敵の戦力ですが、二体、ともに螺旋忍軍になります。ピエロの恰好をした頭脳労働と、肉体労働担当であり護衛を兼ねているらしき左右対称のピエロです。共に螺旋忍者に近い技と、片方が手裏剣、もう片方がエアシューズの力を使います」
 どうやらピエロの恰好だけは同じ様だが、頭脳労働のほうがジャグリングで手裏剣を、肉体労働の方がエアシューズで軽技を使うらしい。
「バタフライエフェクトゆうのは、聞いたことがありますが、それを使いこなす敵は厄介ですね。ですが、最初の蝶の羽ばたきさえ止めれば、問題はありません、よろしくお願いしますえ」
 ユエはそう言うと、軽く頭を下げた。
 確かに、やることは肉体労働後に、戦うだけである。いつもと同じだと、スケジュールの合う者たちが検討を始めた。


参加者
エステル・ティエスト(紅い太陽のガーネット・e01557)
月隠・三日月(月灯は道を照らす・e03347)
漣・紗耶(心優しき眠り姫・e09737)
シーレン・ネー(玄刃之風・e13079)
グラディウス・レイリー(黒死鳥・e16584)
カロリナ・スター(ドーントレス・e16815)
チェシャ・シュレディンガー(神出鬼没の灰色猫・e27314)
ウルトレス・クレイドルキーパー(虚無の慟哭・e29591)

■リプレイ


『どおりで活きの良いのが多い訳だ。好きにしな』
「助かるぜ。だが、そんなに違うものか?」
 その日の作業も終わりごろ、左官頭とも言うべき飛鳥五郎が頷いた。
 グラディウス・レイリー(黒死鳥・e16584)は快諾してくれた事に安堵を覚えつつも、首を傾げる。
 大工仕事で汗を流す者の中には、ケルベロスでは無いが様々な種族の者が居た。
「流石は匠の眼力ってやつですか!? できるだけ接触は避けたつもりなんですけど」
『おだてても何もでねーぞ。……判り易い話で、あすこを見て見ろい』
 エステル・ティエスト(紅い太陽のガーネット・e01557)が尊敬の眼差しで五郎を見つめると、照れた表情で飛鳥という左官は顎をしゃくった。
 そこでは最初にコテ絵の練習を許された内の一人が、大工仲間のレプリカントと一緒に片目を閉じネットに接続している。
「やはり形が納得いかん、かと言って水を増やすのは邪道……? 何かあったのか?」
 ウルトレス・クレイドルキーパー(虚無の慟哭・e29591)は焼いたコテで、木板に漆喰では無く練習用にセメントを盛って居た。
 周囲から見ると練習したてにしては上手いが、納得がいっていない様子。
 その内、視線に気が付いたのか顔を向けて来た。

 隣のレプリカントはぎこちなく手を動かしたり、ネットの参照を繰り返してしているのに、だ。
「回線速度か。確かにあの能力は基礎体力で差が出ると聞いたことが在るぜ。差が出ない能力でも余裕に差が在る様な……」
「そう言われてみるとみなさん達も熟練者に見えます……」
 グラディウスは鋭い眼光で一般のレプリカントと仲間を合後に眺める。
 彼に寄り添いながら漣・紗耶(心優しき眠り姫・e09737)も、ウェアライダーやドワーフ達を比べた。

 力自慢や身軽な者が大工を務める事も多いと聞くし、種族能力自体は誰でも使える物だ。
 だが体力やバランス力に優れ、更に物理ダメージなど問題ないため余裕が違う。
 迷い少なく恐ろしげなところでも躊躇わない。
「そういう事か。何事かと思ったぞ。まあ俺たちに関して言えば……」
「こっち来た時点でこっそり練習始めてたからねぇ? フライングってわけでもないけど、絶対量の差は大きいと思うよ」
 ウルトレスが苦笑して納得すると、同じ様に絵を描いていた月隠・三日月(月灯は道を照らす・e03347)も頷いて手を休める。
 彼らはホームセンターで手軽に入手できる材料と知って、仕事後に自前で練習していたのだ。
 この気構えの差もあり、最初に習い始めたメンバー入りしていたのかもしれない。
「これが師匠の模範? こういう絵描ける人って尊敬します! 私もこんな風にネコちゃんの絵、描いてみたいなぁ……」
『コテ絵なんぞ今の世の中じゃ余分で余計ってのを忘れんじゃねーぞ! 他に作業あるやつ以外はさっそく掛りやがれ!』
 上目遣いエステルが見つめると、左官はテレを隠して怒鳴った。
「私は今日の分の差し入れを用意するわね。……『例の日』も同じ分だけ」
「なら今日はもう使わない工具や、『その他の道具』は俺が片しておこう」
 恋人の紗耶が『その日の』食事の準備に取りかかると、グラディウスは幾つかの武装を工具に紛れさせた。
「仲睦まじい夫婦の会話だねえ。まあ幸せの内に終われるように頑張るとしますか」
 三日月は二人の微笑ましい光景を見ながら、既に失われた故郷を思い出した。
 自身も武装を布で隠し工具の様に装いながら、ホンの一瞬だけ、忍び里の光景が浮かぶ。
 しかし失った過去よりもこれからの幸せだと陽気に振舞うのであった。


『あれは何やってんすか? 基本工程にはないっすけど』
「ああ、コテ絵とか言う奴だよ。ボクはやらないけど、何人かが教えてもらってるって話。おおかた余った材料でやってるんじゃないのかな?」
 新人として入って来た、『あかがね』という赤い髪の男が、仲間達を見つめていた。
 共に休憩に入ったカロリナ・スター(ドーントレス・e16815)は、煙草の為に風下へ向かう足を留める。
 そして火の付いてない煙草で、何箇所か、休憩なのに休もうとしない連中を指差していった。
『確かに良く見れば……あっちなんて、あの高さで良く絵なんか塗れるっすよ』
「もともと高所作業が得意って話だし、練習熱心なんだってさ。まあ高所が得意でない奴の中にも負けじと立体に挑戦してるって言うから、ガチ勢は凄いもんだよ」
 カロリナはあかがねがそこで質問を止めたので、んじゃっと片手を挙げて風下への旅路に戻った。
 貴重な休憩時間の間、熱心に見詰める男に、他の仲間が声をかける。
「あかがねもコテ絵を練習したいのか? なら絵もだけど、まずは仕事場での動きを見ないとね」
「そしたら、おっしょうさんに教えてって言うのもいいし、まずは、あっちOK出してもらってる人はコテ絵上手だし技術を学ぶにはいいかもね。ボクらも入った時期は大して離れて無いはずなんだけどなぁ……」
 話を聞きつけたフリのチェシャ・シュレディンガー(神出鬼没の灰色猫・e27314)は、覚える間に必要だと言う態度をフォローする事にした。
 シーレン・ネー(玄刃之風・e13079)もさりげない聴き方に手慣れた物を感じながら、ダミー情報と真実を混ぜて伝える。
 左官頭とも言える飛鳥をちらつかせつつも、比較材料兼、最初にコツを盗む相手として、自分達や直接習っている仲間の方に誘導。
『先輩たちもコテ絵を覚えようって狙っているんですか?』
 チェシャ達が練習の手を留め声をかけると、もう一人の赤毛の新人が尋ねて来た。
 こちらは双子の兄弟で、『あおがね』と名乗っているが、螺旋忍群だと知っているケルベロス達には、どこまで本当やらと言った風情である。
「同じ事できるなら覚えた方が呼ばれ易いし、ここにはその筋で一流の人も居るならせっかく。って、やつだよね」
 結局、熟練してしまえば大工としての技術や心構えは同レベル。
 同じなら特殊技術が重要だから覚えるのだ。……と説明しつつ、チェシャは将来。彼らが『何故、技を盗もうとした』のか思い至る理由に気が付いた。

 誰を雇うかという話題になった時、特殊な技を覚えておけば雇われる可能性は上がるだろう。
 加えてこんなニッチな技をさせようという好事家は、どうしても金持ちに多い。暗殺するなり妨害するなりにしても、表から潜入工作が可能かもしれない。
「重要なのは作業動線を見ることだよ。周囲に迷惑をかけ無くなって、初めてああいうのを覚えても良いの」
 チェシャが先輩として、習いたいと言う男に許可され易くなるフォローを入れると、男は軽く頭を下げて何度か感慨深そうに頷いた。
 ケルベロスの仲間達も注意されたことなので、実感が籠っておりフォローし合う仲間同士と言う感じでいけただろうか?
『なるほど。力があっても怪我させたり建物壊したんじゃ、どうしようもないですからね』
 力自慢なだけの対象に振りまわされた事が在るのだろうが、そういう苦労が窺える辺りも螺旋忍群ならではなのかもしれない。
 苦笑しながらその場をやり過ごし、残り時間が少ないからと、練習作業に戻る。
『そういうもんなんっすかね? やっぱ練習量かぁ』
「まーねえ。ボクらもこうして貴重な休憩時間を使って、可能な限りやってるって言うのに……仏さんにならないよー」
 シーレンも可能な限り習ったはずなのだが、流石に自宅で練習してるガチ勢にはかなわない。
 いつ頃入ったんですかと聞かれて、ちょっとだけ先輩だねと笑いながら応える。
 その表情とトーンには、いつか追いついてみせると言う気構えが感じられた。

 そういう訳でとシーレンも練習に戻る中、手持無沙汰になったあおがねは、通りかかった別の仲間に声をかける。
『レイリーさんすいません。オレ達も覚えさせてもらえませんか?』
「はいはーい、私も私も」
 ここでキラリと目を輝かせて、エステルが駄目押しに入った。
 一人の要請では講習会を開くのは不自然だが、これならば状況が確定するだろう。
「お前らもか? まあ第一人者が居るならそうなっても仕方無いよな。判った、後で飛鳥の親父に聞いておく。断られても恨むなよ」
 物資やスケジュールの管理をしているグラディウスは、内心で頷きながらも一応は時間を取るとだけ返した。
 かくして、暗殺劇の舞台は整ったのである。
 ただし、ケルベロス側の配役に沿って……。


「師匠が基礎までは『復習を兼ねてお前らが教えやがれっ!』とか無精しやがったんで、まずは私らで講習会やるな」
 三日月が左官頭のモノマネしながら方をすくめると、笑い声が帰った。
「実質、その方が効率的だからな。少なくとも知識段階は、その気のある者が全員で、目と耳で覚えた方が早い」
 それをフォローするように、ウルトレスが厳めしい顔で説明し、硬軟使い分ける。
「あ、すみません。数を揃えたつもりでしたけど、今日から人数が増えているのを忘れてました」
 ここで紗耶が頭を下げ、3日前との人数差を口にして予定調和ならぬ予定不和を作り上げた。
 オムスビやお菓子も用意されており、流石に飲物なしは辛い。
「あー。悪いけど、これで飲み物買って来てくれない? 先輩のお願いを聞くのも修行の内だと思ってさ、ね?」
「なら一服したいから付き合うよ。流石に一人じゃ重いだろ?」
 チェシャがあかがねの掌に札を載せた所で、カロリナがオムスビを摘まみながら同行を申し出る。
 予め作られたストーリーであり、同行者が居ることで不自然さをかき消した。
『仕方無いっすね。他に必要なもんはないっすか? 後からケータイ掛けられてもしらねーです』
「ここで言わない奴の分までは要らん。ひとっ走り足りない分の飲み物を買ってきてくれ」
 ウルトレスが有無を言わせず二人を出立させ、残りのメンバーは差し入れ材料を持って工事現場へ。

 そして近くにあるコンビニに赴く傍ら、甲高い金属音に紛れて『やらせはしません!』と決意に満ちた声が聞こえた気がした。
 無論、ただの物音。そう判断出来るのも、カロリナが状況を知っているからに過ぎない。
 だがそれでも、あかがねは顔を挙げた。
『何か音が聞こえないっすか? 戦闘音みたいな』
「んや? 気になるならセブンじゃなくて自販機で済ませとく? ほら冷たくて気持ちいいよ」
 カロリナは通り越した自販機に戻って、ゴトンと落ちた緑茶を取り出すフリをしながら、指輪をアクティブに切り替える。
 音がまた一つ、二つ。
 今度こそ赤い髪の男は、焦燥感に満ちた声で怒鳴った。
『そこをどけ!』
「甘いよねぇ坊や」
 カロリナが生み出した刃は、敵の攻撃を相殺しきれず缶ごと蹴り砕かれ、掌を血と茶で手を濡らす。
 だが、それで十分!
「あの音が気になる? ならお姉さんと競争といこうか。でも少しくらいなら味見してもいいよね?」
『ぬかせ!』
 カロリナはペロリと血に濡れた拳を舐めると、敵と互いに先を争うように牽制し合い工事現場へと急いだ。
 実力ゆえに追い込まれるのはカロリナの側だが、時間の経過はケルベロス全体の優位である!

 工場現場……いや、戦場が近付くにつれ金属音は次第にハッキリとして来る。
「これは紗耶の力か。うむ、力が漲ってきますな。痛みも取れた」
 カバーが間にあわずに斬りつけられたグラディウスは、恋人の援護を受けたことで、自己治療を中断した。
 そして迸る闘気を、道化に向けて浴びせたのである。
「わっちゃーもう戻って来ちゃった? でもあとちょっと! それまでジっとしててよね」
 シーレンはナイフに敵を映し出しつつ、幻覚の効果を確かめる前に屋根へと飛び移った。
 そして指先に凍気を集めつつ、風前の灯と化した敵に向ける。
「なんだ揃いやがったか。信号機みたいな恰好しやがって! 黄色はどうした!」
 そこへエステルが飛び込んで、首と腰をホールド。
 飛行機投げ(アルゼンチンバックブリーカー)のような体勢で、空中へ飛び上がった。
 そして自分ごと円錐状に地面に落下したのである!


『あか、が……』
『あお……。おのれー! 黄色が見たいと言ったな、見せてやろう!』
 赤と緑で色分けされた道化師は、姿を三つに分身させる。
 その力で癒そうとしたのだが、既にコト切れ為、やむなく自身の治療と防護に切り換えたようだ。
「おやま、薄情なデウスエクスにしては珍しっ。双子じゃなくて恋人だったのかしらん」
「だとしても同情する気にはならんな。……騙し討ちってのはあんたらのお家芸なんだろうが、今回は食らう側になってもらおう」
 チェシャが槌を再び大砲に変形させると、ウルトレスはギターをかき鳴らしながら流体金属を拳に変えた。
 ミュージシャンは指で殴らないと言うが、それを追い掛けて轟音が空を奔る。
『コロスコロス!』
「商売に私情を持ち込むのはナシだよ? 共に逝きたいならあの世へ送ってやる」
 三日月は槍を回転させながら弧を描くと、二回戦目に置いて何度か目の攻撃をいなした。
 流石に全てを防ぎ切れはしないが、これで十分だろう。
 トン、と地面に打ちつけた後、反動で稲妻のような突きを放つ!
「苦しみはこれで終わりです『力の神よ…みんなに力の加護を!』タヂカラオー!」
「言っておくが、紗耶の援護を受けた俺たちは強いぞ! ここが終わりの時としれ!」
 紗耶の祈りを受けて気力百倍、グラディウスは再びグラビティで網を作り上げた。

 元よ強敵で、徐々に力を高めているが、既にフルスロットルのケルベロスとは比較にもならない。
「ウザいからさっさと死ね!」
「いっけー!」
 エステルの飛び蹴りに続いて、シーレンの一撃が徐々に体を凍らせ始める。
 ここに進退は極まったと言えるだろう。
「終わり……かな? 煙草呑む暇なかったから、早速一服点けたいね」 
「そのようんだな。慣れない仕事ってのは疲れるもんだ」
 カロリナは精神力で作りだした刃を消すと、早速充填に掛った。
 氷弾を撃ち込んでトドメを刺したウルトレスも、煙草を取り出して紫煙を吹かす。
「いやあ労働の後の一服は最高ねぇ♪ あんたらはどうする?」
 チェシャも一服する為に風下に向かいながら声をかけると、少女達は顔を見合わせていた。
「結構出来るようになったけど、あとちょっと何とかしたいなー。せめて立体まで」
「ならついでだから暫くここでバイトしてましょう。女子高生はお金がかかるのですよ!」
 芸術と言うのは、出来るようになってから納得できるまでが大変である。
 シーレンが首を傾げていると、エステルは手を取って飛鳥五郎の元に直談判に向かった。
「明日の糧になったんだ……そんな顔しなさんな」
 敵ではあったが命は命。
 少女達の歓声を聞きながら、三日月は目を閉じさせて、弔ってやることにした。
 今宵のヤマもこれにて解決である。

作者:baron 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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