縁日に紛れるマグロ娘

作者:なちゅい

●楽しい祭りの中で……
 今日は縁日。
 小さな町内会でのささやかなお祭り。出店が並び、子供達がその中で楽しそうにはしゃいでいる。りんご飴、わたあめ、カキ氷、チョコバナナと食べ物の屋台から、金魚すくいにヨーヨーすくい、型抜き、お面販売といった店も並ぶ。
 参加者の多くは浴衣を着ている。縁日を運営する人々もそうだが、参加者たちも見た目から縁日を彩っている。
 規模はそれほど大きくなくとも、お祭りとあれば、やはり楽しいもの。子供達がはしゃぐ声が神社の境内に響き渡る。大人たちも子供達の笑顔を見て、顔をほころばせていた。
 ……そんな会場に現れた異様な影。
 一見、浴衣姿の少女なのだが、被っているマグロ、そして背中のタールの翼が異様なほどに目を引く。『マグロガール』と呼ばれる彼女は、シャイターンなのだ。
「お祭りやってるなら、見逃すわけにはいかないよねー」
 その両手には、りんご飴にわたあめ、金魚に風船ヨーヨーを持っており、すでに祭りを堪能したようにも見えるが、現れた彼女は片っ端から参加者に向けてマグロの頭でヘッドバットを仕掛けてくる。
「きゃああっ」
「デウスエクスだ!」
 突然現れたシャイターンに参加者達は驚き戸惑う。
「逃がさないよー」
 それでも、マグロガールは執拗に参加者を狙って風船ヨーヨーをぶつけ、わたあめで窒息させようとしてくる。それによって、参加者は境内の上に次々と倒れていくのだった……。
 
 ケルベロス達がヘリポートへ向かうと、そこで待っていたリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)は浴衣姿で出迎えてくれた。
「皆、ようこそ」
 にっこりと微笑む彼女の手には、りんご飴。ちょっと気になって買ってきたのだという。彼女はとても幸せそうにそれに口をつけた。
 ただ、彼女もヘリオライダーだ。依頼の話となれば、表情を引き締めて語り始める。
「エインヘリアルに従う妖精8種族の一つ、シャイターンが行動を開始したようだよ」
 動き出したのは、マグロの被り物をしたシャイターンの部隊で、日本各地の祭り会場を襲撃し、一般人を殺害してグラビティ・チェインを得ようとしているらしい。
 祭り会場を狙っている理由は不明だが、お祭りという場を利用して、効率よくグラビティ・チェインを収奪する作戦である可能性が高い。
「シャイターン……。その見た目もあって、『マグロガール』と呼ばれる敵が現れるお祭り会場に先回りして、事件を未然に防いでほしいんだ」
 現れるマグロガールは1体のみ。配下はいない。
「出店で買ったようなわたあめや、風船ヨーヨーを使って攻撃してくるようだね。後、マグロの頭で強烈なヘッドバットを繰り出してくるよ」
 現場となるのは、山形県某町の神社で行われる縁日だ。
 神社の境内には、出店が立ち並ぶ。町の人々が集まる中でマグロガールが紛れ込み、人々に対する襲撃を始めるようだ。
「先に祭り会場の人を避難させてしまうと、マグロガールは別の祭りを狙ってしまうよ。だから、事前の避難はできないと思ってほしい」
 ただ、マグロガールは邪魔者……ケルベロスを優先して排除しようと動く。これを利用し、挑発しつつ人の少ない場所に移動して戦うと、周囲への被害を抑えることができるだろう。
「現場には比較的余裕をもって到着できそうだから、下見しておくといいかもしれないね」
 敵の誘導方法や誘導先、人々の避難方法などを考えておくと、効率的に戦いを進めることができるだろう。
 一通り説明を終えたリーゼリットは、最後にこう付け加える。
「皆なら、マグロガールを倒すのは難しくはないと思うけれど……。立ち回りはくれぐれも注意してほしい」
 折角の祭りが惨劇の場となってしまっては目も当てられないので、油断しないよう対処してほしい。
「無事、撃破できれば、皆も縁日に参加してくると良いよ」
 たまには、息抜きもいいものだよと、リーゼリットはりんご飴をアピールしつつにこやかに笑ったのだった。


参加者
星黎殿・ユル(聖絶パラディオン・e00347)
燈家・陽葉(光響凍て・e02459)
水沢・アンク(クリスティ流神拳術求道者・e02683)
葛葉・影二(暗闇之忍銀狐・e02830)
東雲・苺(ドワーフの自宅警備員・e03771)
アゼル・グリゴール(レプリカントの鎧装騎兵・e06528)
久遠・征夫(静寂好きな喧嘩囃子・e07214)
マルコ・ネイス(赤猫・e23667)

■リプレイ

●なんでマグロ?
 山形県某町にある神社。そこでは、縁日の準備が進む。
 早めに到着したケルベロス達達は会場となる境内を歩いていく。星黎殿・ユル(聖絶パラディオン・e00347)などは積極的に戦場の候補地、そして、避難誘導に適した経路を確認していたようだ。
「こんな世の中でも、お祭りで元気を出してくれる人はいる。そこを邪魔する無粋は本気で許せません」
「人の賑わいを隠蓑に凶行を起こそうとは、悪趣味極まる」
 同じく、下見を行う久遠・征夫(静寂好きな喧嘩囃子・e07214)、そして葛葉・影二(暗闇之忍銀狐・e02830)もまた、事件を引き起こすシャイターンに怒りを覚えていた。
「マグロのシャイターンか……美味そうな感じだが、さすがに食えないよな……」
 事前情報を聞いた猫のウェアライダー、マルコ・ネイス(赤猫・e23667)は口元を拭う。今回の相手は、マグロの着ぐるみを着た浴衣の少女である。
「なんともまた、個性的なのが現れたものです」
 髪型をオールバックにし、目元をヘッドフォンで隠したアゼル・グリゴール(レプリカントの鎧装騎兵・e06528)は語る。ケルベロスコート着用の彼は、外見と危険性が必ずとも一致するとは限らないと語る。
「……なんで、マグロなんでしょうね」
「そもそもマグロガールってどんな人、なのかなー? 暴れちゃうみたいだからなんとかおとなしくなってもらうけど、面白い人だったりしないかなー」
 逆にコートを羽織らず、普段着で依頼に臨む水沢・アンク(クリスティ流神拳術求道者・e02683)、そして、東雲・苺(ドワーフの自宅警備員・e03771)が敵の素性を推し量る。
 そんな仲間の視線が燈家・陽葉(光響凍て・e02459)へと集まる。なんでも、彼女の宿敵との事だが。
「マグロガール、ここで会ったが百年目! ……ってほどの因縁はないんだけどね」
 思った以上に淡白な反応だったりする。本人曰く、『つい最近、見かけて知っただけ』らしい。
「まぁ、僕の因縁なんてどうでもいいんだよ。楽しいお祭りを邪魔して壊そうなんて、許せないんだから」
「まずは、今すぐにでも遊びに行きたい縁日で遊ぶ為にも、平和は守らないとだねっ」
 陽葉がさらりと話を本筋に戻すと、苺が飛び跳ねつつ意気込む。
 ともあれ、メンバー達は念入りに意見を交わし、マグロガールの出現に備えるのである。

 下見を済ませたメンバーは、マグロガールの登場を待つ。
「こういう街の小さな縁日も、何事も無かったら良い風情なんですけどね……」
 非常にのどかな光景。すでに縁日は始まり、人々も集まりだしていたのだが……、そんな中、空気を全く読むことなくそいつは現れた。
「お祭りー、見逃さないよー」
 どう見ても、マグロの着ぐるみを着た少女に見える敵。しかも、その両手には、わたあめや風船ヨーヨー。一見すれば、縁日を堪能する少女にも見える。
 しかしながら、そいつがグラビティを行使し始めれば、人々はデウスエクスの登場に怯え、逃げ惑い始める。
「怪我とかさせないで、いい思い出だけ作って帰ってもらえるようにしないとねっ」
 それを見て、苺は張り切って敵へと対する。
「ボクたちはケルベロスだよ、それ以上はさせない」
 現れたユルはすぐさま攻撃態勢を取る……と見せかけて、愛用の白衣を翻す。このまま縁日のど真ん中で戦うことはせず、予め戦闘場所に定めた場所へ誘導しようとしていたのだ。
「俺は魚が大好物でね……特にマグロが大好物だ。てめえも地獄の炎で良い具合に焼いて食ってやる!!」
「むー、食えるもんなら食ってみろー」
 マルコは敵を挑発し、苺、ユルと一緒に移動していく。マグロガールはまったり口調で言い返し、3人を追いかけてきた。
 その間に、アンクが周囲へと呼びかける。
「我々はケルベロスです! これよりデウスエクスとの交戦に入りますので、皆さんは直ちに、落ち着いて避難してください!」
 他のメンバーは縁日に来ていた一般客や、屋台を出す人々へと避難を促していた。
 影二も凛とした風を巻き起こし、境内にいる人々の体勢を正す。
「拙者等はケルベロスだ。敵が現れた故、急ぎ避難を」
「大丈夫、落ち着いて」
 慌てふためいていた人々に影二は呼びかける。陽葉も隣人力を併用して、冷静さを取り戻させていた。
「必ず勝利致しますので、どうか皆さんご協力ください!」
「あのデウスエクスは、僕達ケルベロスが必ずやっつけるから。安心して、今は避難しよう?」
 アンク、陽葉は参加者達を元気付け、予め決めていた場所へと誘導していく。
 さて、マグロガールを引き付けるメンバー。
 やや離れた場所から合流したアゼルが、敵に向けてケルベロスチェインを伸ばす。その先をマグロ頭へと小突けたものの、引っ掛けることはできず。
「一本釣りを気取ってみようと思いましたが、上手くいきませんか」
 くすりと口元を吊り上げるアゼル。敢えてマグロ頭を狙っての挑発だったのだ。
「むー、激おこなんだよー」
 ぷんぷんと怒りながら、追いかけてくるマグロガール。
 目的の場所までたどり着き、人払いを考えていたユルだったが、どうやらテープの準備を失念してしまったらしい。
 この近辺に逃げ遅れた人がいないかマルコが手早く確認し、ユルへと伝える。
「祭りと言えば当然アレだよ、キミには解らないかな?」
 止むを得ず人払いを断念したユルは一呼吸置いてから敵に向き直り、シャーマンズカードを手にする。
「そう、喧嘩を忘れちゃいけないよ。思う存分やり合おうか?」
 ユルが敵に告げるのと同タイミングで、避難に当たっていたメンバーも駆けつけてくる。
 いつの間にか戦化粧の隈取りをした征夫は、装飾の太鼓を打ち鳴らして現れた。
「来いよ、被り物の悪ふざけ……掛かって来いっ!」
「私も行きますよ……クリスティ流神拳術、参ります!」
 敵を誘導してきたアンクも、右腕の袖と手袋を地獄の炎で燃え上がらせる。
「臨むところだよー」
「ニャア!」
 特攻してくるマグロガールに対し、感情を高ぶらせたマルコも鳴き声をあげて応戦を開始したのだった。

●マグロ頭をくらえー!
 最初に仕掛けたのは、陽葉だ。
「マグロ部分はただの被り物らしいから、多分食べれないと思う」
 相手は凄く強いというわけではないが、デウスエクスには違いない。そう仲間に告げながらも、彼女は構えた阿具仁弓から矢を速射し、マグロの頭を射抜く。
「油断しないように……特に、ヘッドバットには」
「くらえー」
 陽葉が言うそばから、マグロガールはその頭を叩きつけてくる。
 その強力な頭突きを征夫が受け、頭から血を流す。彼はあからさまに苛立った素振りでマグロガールを睨み付ける。その顔には、戦化粧が施されていた。
 テンションを高めた彼は、緩やかな弧を描いてマグロガールの体に斬りかかる。
「なんでマグロなんだ!?」
「さあねー」
 問いかけに返答しない敵。それがまた、征夫を苛立たせる。
 そのタイミングで、ユルは手にするカードへと魔力を注ぐ。
「我が魔力、汝、合戦の申し子たる御身に捧げ、其の騎馬を以て、我等が軍と、戦場の定石を覆さん!」
 長い青髪をふわりと浮かせたユルが召喚したのは、非業の死を遂げた武将のエネルギー体。数々の戦場で戦功をあげたその武将は、勝利を目指して馬を走らせることで仲間達に力を与えていく。
 傷つく征夫には、ボクスドラゴンのマカロンが自身の属性を注入して傷を塞いでいた。
「マグロガールさんってマグロよりの生き物、なのかな? それとも、人に近いのかな?」
 その生態に疑問を抱く苺。縁日の会場からやや離れていることもあり、思いっきり体を回転させて敵へと突撃し、敵の浴衣を破いてしまう。
「其の極悪非道の所業、拙者等が阻止致す」
 続いて、影二が赤い刃の大鎌……猟鬼守を投げ飛ばす。回転する刃はマグロガールの浴衣の破れを大きくしていく。
「私としては、普通にお祭りを満喫して帰るだけなら、デウスエクスだろうと気にしないのですがね……」
 アンクは、右腕の白い炎を燃え上がらせて。
「壱拾四式……炎魔轟拳(デモンフレイム)!!」
 そして、地獄の炎と共に、右の拳で殴りかかる。その炎はマグロの頭に引火していく。
「……ところで、これ被り物ですか? まさか一体化してないですよね?」
 その返答を待つ間もなく、アゼルがダブルジャンプを応用し、空中からマグロガールへと突撃する。
 それによって、足を鈍らせた敵へマルコが迫る。彼は鉄塊剣を操り、纏わせた雷の霊気と共に鋭い突きを繰り出す。
「おらおら! よそ見してんじゃねえぞ、マグロっ娘!!」
 マルコは指でクイクイと挑発すると、マグロガールはむーと唸ってから、またも攻撃してくるのである。

 マグロガールは手にするわたあめを飛ばし、風船ヨーヨーをケルベロスへとぶつけてくる。
 率先してそれを受け止めたマカロンはわたあめに包まれてもがき、苺は破裂した風船ヨーヨーでびしょ濡れになりつつ、仲間を庇う。
 ただやられているだけでなく、苺は縛霊手をつけた手で殴りつけ、マカロンにはブレスを放射させる。
 同じく、仲間を庇う征夫。
「切れずとも潰すっ! 壱の太刀熨斗紙ッ!」
 両手に刃を握る彼だが、一振りを上に放り投げた後、もう一方の刀を両手で握り締め、全身全霊を持って叩き切った。そして、すぐさま落ちてきた刃をキャッチし、彼は次なる攻撃の為に態勢を整える。
 斬られたマグロガールもまだ戦意を失ってはいない。やはり得意はヘッドバットと、またも征夫へと叩きつけてくる。
 その一撃をうまくやり過ごす彼を見て、回復メインに動いていたユルがここぞと攻撃を仕掛ける。
「心配要らないよ、他のマグロ達も同じ所に送るから」
 淡々と語る彼女は大きな胸を弾ませて戦場を立ち回り、シャーマンズカードを掲げる。現れた氷の騎士が特攻していき、マグロガールの体を凍らせんとする。
 そんな冷凍マグロになりかける敵を狙い、アゼルは全身から出したミサイルポッドをやや高めに放ち、敵の頭上から降下する弾道を描いて命中させていく。
「忍の妙技、篤と御覧頂こう……!」
 ケルベロスの攻撃はなおも続く。迫る影二が掌底を叩き込むのと同時に、その掌から火焔の螺旋を敵の体へと送り込む。
「五体滅却!」
 影二の合図でそれが一気に爆ぜ飛ぶと、直接それを浴びたマグロガールにもさすがに焦りの色が見え始める。
「咬み砕け! ビリー!」
 だが、マルコは間髪入れずに地獄の炎で作り出した巨大猫、ビリーをけしかけ、マグロガールの体を咬み砕かせる。
「かなり、やばいのー」
 それでも、マグロガールは直接マグロ頭をマルコへと叩きつけてから、逃走を図ろうとする。
(「全く……ふざけた格好なんだから……!」)
 改めて、陽葉はその滑稽な姿に呆れすら覚えつつ、再び弓を手にする。
「踊って、風雨の中で、永久に!」
 歌曲「欺瞞のワルツ」の「逡巡を肯定する心」を、赤い光の矢として具現化した彼女は、狙い違わずマグロガールの体を貫く。
「……ところで、君達のご主人様は元気かな?」
「し、知らないのー」
 動きを止めた敵に、陽葉が問いかける。しかし、それでももがいて逃げ出そうとする敵へ、両手の拳を打ち合わせたアンクが迫る。
「これが今の私に出来る全力……! クリスティ流神拳術壱拾六式……極焔乱撃(ギガントフレイム)!!!」
 両手の白い炎と共に、アンクはマグロガールへと乱打を浴びせかける。
「きゅー」
 威力に特化したその攻撃に、マグロガールはついに目を回して倒れてしまう。
 敵の討伐を確認し、アゼルは瞳を閉じてその行く末を祈るのだった。

●縁日での一時を
 無事、マグロガールを討伐したケルベロス達。
 とはいえ、全く被害がなかったわけでもない。誘導の際に敵が暴れた場所や、戦場跡は荒れてしまっている。
「すみませんが、ヒールを願います」
 アンクがそれらの場所の修復を仲間に依頼すると、ユルは精神の盾を張ることで壊れた屋台を直し、昂ぶった精神を落ち着かせた征夫は展開したドローンに修復作業へと当たらせる。ヒールグラビティを活性化していないメンバーはそのサポートを行っていた。
 大地からの恵みを、そのまま荒れた大地の修復へと転化していた苺。程なく、作業も終了したようだ。
「わたしもお店見ていきたいなー。遊んでいってもいいよねっ」
「いいですね。……この格好では、少し浮いてしまいそうですが」
 苺に同意するアゼルはコートを脱がずに、ご容赦をと断りつつ縁日に参加することにしたようだ。

 メンバー達はそれぞれ、縁日の出店を巡る。
 祭りの再開に安堵する陽葉は、型抜きにチャレンジしていた。
「なかなか難しいよね……。でもしっかり集中して、焦らずやれば……!」
 ナノナノを象ったそれを、彼女は集中して爪楊枝で切り抜き……、無事、綺麗に切り抜くことができたようだ。
「色々食べ回るぜ!」
「たこ焼き、焼きそば、ベビーカステラ……。折角だから、色々堪能しないとだよね」
「ニャアアア!!」
 ユルが食べ物を挙げていくと、マルコは片っ端から食べ物の屋台を巡り始めた。
「折角だから、お菓子とかを買って帰ろうかな」
「ふむ、旅団の皆への土産に甘味などよいかもしれんな」
 こちらもユルの言葉に応じるように、影二も何を買おうかと屋台を回る。
 戦化粧を取った征夫も境内を歩き、土産の食べ物を物色するのだが。
「しかし、これ、大阪焼きやアメ横焼きって言われるけど、元はどっちなんですかね?」
 地方で呼び名が異なるこの食べ物。ここでは、『大阪焼き』だが、残念ながら、誰もわからないようである。
「こういう場所には、普段食べない物もあるものですが……」
 アンクも予備の服に着替えてから出店を回っていたが、とある食べ物に興味を引かれる。
「酢だまり氷? かき氷に酢醤油をかけるんですか?」
 それは、山形ならではの屋台。いちごシロップに酢醤油をかける風変わりな一品だ。
「なるほど……勉強になります。あ、勿論頂きます。味が気になりますしね」
 それは、思った以上にさっぱりとした味。かき氷と思うと微妙な感じだが、これはこれでいけるとアンクは食していく。
 徐々に人も増え、賑やかになる縁日。ケルベロス達はその中で、楽しい一夜を過ごすのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月3日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 2
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