宇宙人解剖ホスピタル

作者:木乃

●少女の出来心
 日も落ちて、夜の闇が周囲を包むと、廃病院の不気味さがより際立って見える。
 明美は用意していたビデオカメラを起動させると、自身の顔の前に掲げた。
「今日は廃病院に肝試しに来ました~! なんでも宇宙人を捕縛して、生きたまま解剖してたとか……ちょーこわーい!」
 少女がおどける様子も、カメラは余すことなく記録していく。
 明美はさっそく乗り込もうと、錆びついた鉄格子を乗り越えて院内に侵入すると、破けて綿が漏れでたソファが視界に入った。
「とりあえず奥の院長室に行ってみようかな、なんか証拠があるかも♪」
 カメラに周囲の光景を映しながら、おそるおそる奥へと進んでいくと……目的の院長室が見えてくる。
 扉を押すと、耳障りな音を立てながら中へ招き入れてくれた。
「えーと、書類とかは――」
 重厚なデスクを明美が漁ろうと、身を屈めたそのとき。
 ぐさり、と――胸から鍵のようなものが突き出ていた。
「実態のない噂に『興味』を持つなんて、人間は面白いわね」
 アウゲイアスの言葉を明美は聞けなかった。
 代わりに聞いていたのは、明美の横に立つ、醜悪なタコのような怪物だった。
 
「で、興味本位で乗り込んだお嬢さんが巻き込まれた、って訳かい。でも、その噂はデマなんだよね?」
「はい。そもそもあそこは、手術用の設備がない、小規模の整形外科だったと確認しておりますわ」
 呆れる国津・寂燕(刹那の風過・e01589)にオリヴィア・シャゼル(貞淑なヘリオライダー・en0098)はクス、と笑みを返す。
「皆様もご存じかと思いますが、ドリームイーターに襲われ、感情を奪われる事件が多発しております。国津様が調べていた廃病院でも、肝試しに訪れた少女が『興味』を奪われたようですわ」
 『興味』を奪ったドリームイーターは既に消息を絶っているが、奪われた『興味』を元に、怪物型ドリームイーターが生まれてしまった。
「皆様がドリームイーターを倒せば、被害者も目を覚まします。残された怪物型ドリームイーターを、撃破してくださいませ」
 敵は1体のみ。
 廃病院は2階建てで、2階が大部屋の運動療法室。
 1階は受付ロビーから喫煙所、レントゲン室、診察室や院長室に繋がっている。
「被害者の明美様は、1階奥にある院長室で昏睡状態になっていますの。戦闘に巻き込まないようにしてくださいませ」
 問題のドリームイーターは、病院内を徘徊しており、人間を見つけると『自分が何者であるか』問いかけてくるらしい。
「正しく対応すれば見逃してもらえますわ。この場合ですと『宇宙人』が正解でしょうか? 答えられなかったり、誤った答えを言えば、怒って殺しにかかりますわよ」
 敵は少女の『興味』を抱いたデマから生まれた――だからこの場合、デマが答えになるのだ。
「敵は宇宙人のような見た目で、タコに似た醜悪な姿をしていますの」
 攻撃も口から粘液を撒いたり、ぬめりのある触手で絡みついたり、目からレーザー光線を乱射してくる。
 それと『少し変わった特性がある』とオリヴィアは指摘する。
「自分のことを信じていたり、噂している人が居ると、その人のほうに引き寄せられる性質があるようですの」
 上手く利用すれば、明美から引き離したり、誘導したりすることも可能だろう。
「デマとはいえ、映画に出るような宇宙人が相手ですわ。正気を失わないようにお願いしますわね……いえ、昔読んだ小説を思い出しましたので」
 彼女は一体、なにを言っているのだろうか……。


参加者
ユージン・イークル(煌めく流星・e00277)
東名阪・綿菓子(怨憎会苦・e00417)
国津・寂燕(刹那の風過・e01589)
モモ・ライジング(鎧竜騎兵・e01721)
板餅・えにか(萌え群れの頭目・e07179)
鷹野・慶(魔技の描き手・e08354)
ルチル・ガーフィールド(シャドウエルフの弓使い・e09177)
ハインツ・エクハルト(マジノ線・e12606)

■リプレイ

●宇宙的噂話
 上弦の月が東の空に浮かぶ中、酸性雨と砂埃で汚れきっている廃病院は『なにかが居る』と思わせる迫力を帯びていた。
 そんな所に被害者は忍び込んだ、というのだから若さとは末恐ろしいものである。
 しかしそれだけ強い『興味』を抱いたからこそ、第五の魔女は惹かれたのだろう。
「お、思った以上にお化け屋敷っぽいところだな」
 ハインツ・エクハルト(マジノ線・e12606)は頬を引き攣らせてロビー内を見渡す。
 病院の異様な威圧感に飲まれそうになっていたが、明るい調子で恐怖をごまかそうとしていた。
「深夜の病院って、それだけで怖さがあるよね……」
 ユージン・イークル(煌めく流星・e00277)も大きな耳を小刻みに震わせ、経年劣化で黒ずんだ壁に視線を向ける。
 多めに照明を持ってきたので輝いているというか、かなり眩しい。
 ネットで建物の構造を調べてみたものの、小さい病院とあって掲載されていなかったが、院内に案内板はあるかもしれないとユージンが提案し、探ってみればすぐ見つかった。
「階段は左で、エレベーターもすぐそこにありますね~」
 ルチル・ガーフィールド(シャドウエルフの弓使い・e09177)が案内に沿って覗きこむと、闇の中へ続いているのでは、と思わせるほど濃密な暗がりに包まれた昇り階段がある。
「電気も通ってなさそうですし、階段でいきましょか」
 板餅・えにか(萌え群れの頭目・e07179)が軽い足どりで進む後ろを、モモ・ライジング(鎧竜騎兵・e01721)は顎に手をあて思案に耽っていた。
(「正気を失わないでってどういう事なんだろう……?」)
 ヘリオライダーが過去に読んでいた小説から連想したらしいし、特に深い意味はないだろうとモモは気持ちを切り替える。
 埃まみれの階段を昇った先、運動療法室を片目だけ覗きこんでみるとドリームイーターの姿はなく、埃を被った板張りの床に置きっぱなしにされたデスクと滑り止めのマットが見えた。
 中へ入っていけば天井には蜘蛛の巣が張り、踏み込むと足跡が残るほどの塵埃が積もっていた。
「この中を宇宙人が徘徊してるなんて、ミスマッチで割かし面白いかもね」
 こんな場所へ夜に来るのも若さ故なのかね、肩を竦める国津・寂燕(刹那の風過・e01589)は部屋の広さを確かめるようにゆったりと首を回す。
 薄い月明りが窓から入り込み、対象物が見えないほどではなかったが鷹野・慶(魔技の描き手・e08354)は念を入れてカーテンレールにライトを引っ掛ける。
「冒涜的な知識の一つでもくれりゃいいけど、元が夢じゃそう期待もできねえな」
 それでも興味がない訳ではない、彼なりに気になるからこそ足を運んできたのだ。
「準備はいい? ちゃちゃっとドリームイーターを引きつけるわよ」
 腰に手を当てる東名阪・綿菓子(怨憎会苦・e00417)は小さい体を誇示するように胸を張り、各々が頷き返したのを見ると綿菓子は得意げに話し始めた。
「といっても、わたがし宇宙人は門外漢だからあんまり詳しくないのよ? 人づてに聞いたところによれば、手を合わせて見つめるだけで愛し合えたり話もできるっていうじゃないの。なんか凄いわよね」
「目と目が合うだけよりも濃厚な感じですねぇ」
 綿菓子の噂にえにかも合わせると、一口サイズのチョコを頬張っていたモモはイメージを見るように視線を上に向ける。
「宇宙人って靴とかサイコロなど簡単な物に化ける事ができるんじゃないの?」
「なんかサイレンの音で蕁麻疹でそうだな、そいつ」
 慶のツッコミはさておき、綿菓子は饒舌に宇宙人の噂を続ける。
「あとはそうね、わたがしの知ってるのはアメリカのとある夫妻が人体実験された話とか、アメリカ空軍大尉が空飛ぶ円盤を見た話とかロズウェルのあの事件とか、マジェスティックで12な組織とか……」
「詳しいね! 話してる綿菓子ちゃんの表情もすっごく輝いてるよ♪」
「べ、べつにこんなの常識よ!」
 鋭い指摘を含んだユージンの褒め言葉に鼻を鳴らしてそっぽを向く綿菓子だが、ニヤつきそうな口元を抑えるのに必死なのは見て分かる。見なかったことにしておくのが大人の優しさと言えよう。
 ――だが、下階の音や臭いを警戒していたルチルは、不穏な気配が近づいてくる様子がないことが気になった。
 階段の近くにいて時折ヘンな音は聞こえてくるのだが、近寄ってくる気はないように感じる。
(「もしかして、自分と関係ない噂だから……でしょうか~?」)
 被害者の明美はこの病院にまつわる噂に『興味』を抱いたのだ。
 そこから生まれたドリームイーターなら、自身とは別の存在について噂されて興味を示さない可能性も否定できないだろう。
 となれば、話を本来の噂に変えればいい。ルチルが話の輪に加わる。
「そういえば、ここで解剖された宇宙人さんって……うわさに聞くところによりますと、蛸さんみたいな姿なのでしょ? なぜ……全身銀色で、目の大きい宇宙人ではなくて……蛸さんなのでしょう~~~??」
 一般的なのはメタリックシルバーの全身タイツのような容姿で、スプーンのような大きな楕円の眼と細長い四肢をもつ方では、とルチルはゆったり首を傾げた。
「宇宙人も整形に興味あったんですかね? それともたこ焼きにして食べれそうな部位を取り除いた結果がアレとか」
「食用宇宙人ってことかい……あれって食べられるものかね」
 えにかの唱える斬新過ぎる解釈に、寂燕もほんのり青ざめつつ視線を逸らす。
「実はキャトルミューティレーションは解剖された宇宙人の家族による仕返しなんだって……」
 いつの間にかロウソクに火をつけていたユージンも雰囲気たっぷりに語り、影の差すユージンの顔を視界から外そうとハインツは背を向ける。
「宇宙人かー、本当にいるなら会ってみたいな!」
 わざと大きな声を出し、両手を頭の後ろで組んで鼻歌まで歌いそうな勢い――はピタリと止まる。
 ピチャ、ピチャと蛍光色の粘液を滴らせた、深緑の巨大なタコと目が合ったのだ。

●コズミックホラーショー
『ワタシハ、ナン、ダ?』
「ぎゃー!? バケモノ!!」
 絶叫するハインツにぐにゃりと軟体をくねらせて迫るドリームイーターをモモが一笑に付す。
「来たわね、ドリームイーター? その『興味』返して貰うわよ!」
 返答代わりに無数の触手を床に叩きつけるドリームイーターは、飛び出る眼球から怪しげなビームを乱れ撃ち、至る所に穴を開ける。
 衝撃でパラパラと砂埃を降り部屋全体を揺るがす。
「あら、宇宙人も怒ったりするんですね」
 ルチルがオウガ粒子が放てば、冒涜的な光線に身を焼かれるハインツ達の五感が研ぎ澄まされていく。
「ユキ、援護しろ!」
 ウイングキャットのユキがドリームイーターの注意を引きつけると、慶が死角から黒鶫と冠するブラックスライムで喰らいつき、引き剥がそうと触腕を振りかざすドリームイーターと慶の間に、竦みあがりそうな自身を奮い立たせてハインツが果敢に飛び込む。
「こんちくしょうがっ」
 身を呈して攻撃を防いだハインツと入れ替わるように、オウガメタルを纏うモモが拳を振りあげる。
「オウガちゃんッ!」
 呼応した金属生命体はモモの細腕を頑強に固め、力強い正拳突きがドリームイーターの胴体に決まり、表皮を覆う透明なぬめりをこそぎ落とす。
 グラグラとふらついている隙に、湧き上がる悪感情をかぶりを振って払ったハインツが爆破スイッチに指をかける。
「ば、バケモノはとっととご退場願うぜ!」
 生じた色とりどりの爆風が吹き抜けると、後衛に立つ慶達を勢いづかせ士気を高める。
「ぜ、ぜ、全然かわいくないっ!!」
 『醜悪な宇宙人』がピンと来ず、ゆるっとしたマスコットなイメージをしていた綿菓子にとって、テカる苔のような皮膚と、蛍光紫の粘液を口から垂らす姿にショックを隠せず、アームドフォートの狙いも定まらない。
 砲撃の隙間をユージンと寂燕は前のめりに駆ける。
「気色悪いしさっさと片付けようかい、ユージン」
「が、頑張るよっ☆」
 ユージンが粘液を縛霊手で防ぎながら進む道を作ると、寂燕は二振りの得物を引き抜き、まっすぐ伸びて迫る触肢を身を翻してやり過ごす。
 振り向きざま、針の穴を通すがごとく寂燕精確な一撃で傷をつける。
 切れかけの触手をうねらせ、ドリームイーターは風船のように膨れ上がっていく。
「おら! 宇宙の旦那!」
 えにかがドラゴニックハンマーを床すれすれで振り抜けば、先ほど降ってきたコンクリートの破片をドリームイーターの横っ面に叩きつけ攻撃をを封殺。
 狙いの逸れた粘液は壁に勢いよく噴射されると大きな穴を開け、地上に破片がばら撒かれる。
「空即是色!」
 綿菓子が宙に手をかざすと蒼い短刀が現れ、逆手に持ち一足飛びで懐に潜りこむと滅茶苦茶に斬り刻んでいく。
 無軌道な刃が深く傷つけ、取れかけていた触手を切り離す。
 離れた触肢は埃の中をびちびちと跳ね、陸に上がられた魚のようにのたうち回る。
 ウィングキャットのヤードもでっぷりとした胴体めがけリングを放ち、爆風で気合の入ったオルトロスのチビ助も神剣で触肢を斬りおとしにかかる。
『クォォァアアァァァッ』
 塗料に似た体液を撒き散らしながら、ドリームイーターの細長い触肢はユージンめがけて鋭く伸びていく。
 慌てて避けようとしたユージンの左腕を斬りつけ、触腕は放置されていたデスクに突き刺さる。
「焼き尽くして、焼きダコにしてあげるよッ!」
 引き戻そうとした触手を足場にしてモモが急接近し、焼き切れる直前で跳躍したモモの豪炎を纏う飛び蹴りがクリーンヒット!
 丸焼けになって転がるドリームイーターを慶が目で追い、二冊の魔導書を開く。
「……見せてやろうか、本当の化け物を」
 滔々と詠唱を紡ぎ、魔導書から飛び出してきたのは黒き触手。
 光すら飲み込むほど濃密な黒はドリームイーターを包囲し、大きくしなると一斉に滅多打つ。
「タコが! タコが!?」
「大丈夫ですよ、蛸さんは居ないですから」
 幻覚に苛まれるユージンを正気に戻そうとルチルが螺旋忍術の印を組む。長槍に持ち替えたえにかが稲妻の走る一撃で刺し貫き、内部に高圧電流を炸裂させる。
「変な動きすんじゃねぇ!」
 ビクビクと大きく痙攣するドリームイーターに悪態を吐くハインツが鋭く顔面を蹴り上げると宙に浮き、空気の抜けたボールのように重たく地べたに叩きつけられた。

 慶の設置したライトが室内の一部を照らしているが、気づけば蛍光色の体液がそこら中に飛び散り、水玉の模様を描いている。
 ペンキがはねたようにも見えるが、においもなく、室内を汚すだけでかえって気味悪く思えた。
 火傷と凍傷の増えるドリームイーターは粘液を口いっぱいに溜め込み、ハインツに噴きつけて鮮やかな紫に染める。
「ぎゃあああキモイ! ぬるぬるするー!?」
 不快さに気を取られたハインツをルチルがなだめ、光の粒子を放って落ち着けさせる。
「く、国津さん危ない!」
「恩に着るよ、ユージン」
 寂燕の死角から迫る触腕をユージンが押し退ける間に、刃を返して寂円は下段から斬り上げた。
 胴体の一部が削がると、だらだらと体液がこぼれ落ち水たまりを作る。
「腹に力いれろ!」
 えにかが肉片を踏みつけながら、雷光を帯びた一槍を構えて高速突きを仕掛けるが、見切ったドリームイーターは股下を通して避けると、頭上から体液まみれの触腕を振り下ろし弾きとばす。
「今行きます!」
 強かに体を打ちつけるえにかの治療にルチルが向かうと、ドリームイーターはえにかに追撃を試みる。
「磔にしてやるよ」
 ブラックスライムを腕に絡ませて慶が鋭利な切っ先を形成し、えにかに迫る触手を狙い打ち、壁に縫いつけてみせた。
 傷口から汚染された触肢は色を濁らせ、ぼとりと足元に落ちた。
「と、とっとと倒れちまえっての!?」
 ハインツが流体金属の拳で何度も殴りつけ裂傷を抉り、その背後からチェーンソーを振りあげた綿菓子が飛びかかり脳天から叩きつける。
 病院中に響く駆動音と共に紫の血が周囲を汚し、天井まで跳ね上がる勢いだ。
「神様から神様への授かり物よ、ありがたく受け取りなさい!」
 大きく裂けたドリームイーターにこれでお終いだと、モモのグラビティを込めた全力の掌打が捕らえる。
「天和!」「純正!」「九蓮!」
 掛け声と同時に打ち込まれる掌底は、だらしなくたるんだ胴体に手形をつけ――
「宝燈!」
 65発目、両手に込めた超重力がドリームイーターを風船のように膨れ上げ、破裂させる。
 部屋中を染めた体液がぶすぶすと煙をあげ、蒸発して暗がりの中へ消えていく。
 跡形もなくなったそこには、水を打ったような静けさだけが残った。

●神秘の魅力?
「もう二度と会いたくないもんだな……」
 数分でやつれたように見えるハインツも、綿菓子の提案で修復をおこなう内に、なんとか落ち着きを取り戻しつつある。
「わたがしの手にかかれば大した量じゃないわ」
「まだ被害者が気絶してるかもしれないわ、院長室に行きましょう」
 モモに誘われて院長室に行ってみると、腰を抜かした様子の明美が悲鳴を上げてデスクの陰に隠れようとしていた。
「ぎゃー宇宙人だぁ!?」
「おじさん宇宙人に間違われたのは初めてだよ」
 寂燕達がケルベロスだと名乗ると、じたばたしていた少女はようやく話を聞く姿勢をみせる。
「興味があったのはわかるけど、あんまり女の子が一人でこういうところ来るものじゃないぜ?」
「宇宙人がこんなとこにいるわけないじゃないですか。あいつらはカンタンにゃ捕まりませんぜ嬢ちゃん」
 ハインツとえにかが忠告すると、少女は拳を作り力説する。
「宇宙人が私達の身近に潜りこんでる可能性を否定して、どこを探せば会えるのです!?」
 呆れて物も言えないハインツだったが、それでデウスエクスに襲われた事実を忘れないようにたしなめると、明美は小さく頷き返した。
「これに懲りたら変な噂には食いつかないようにね、お嬢ちゃん」
 傍らに落ちていたカメラを渡すついでに寂燕が落ち込んだ明美の手を引いて立たせてもうな垂れたまま……
「他には面白そうな噂とかねえの?」
 だったが、慶の問いかけに一転して表情を輝かせ始めた。
「長いお話になりそうですね~」
 静観していたルチルはにっこりと微笑み、対照的に慶は失笑を浮かべる。
「じゃあ続きは帰り道でね☆ 暗くなるし早く帰ろう、親御さんも心配しちゃうからさ!」
 ユージンにまくしたてられ、外に出てみると月は真上から見下ろしていた。
 誰が聞いてもデマと分かる明美の噂話に辟易してきた慶を連れて、ルチル達は廃病院を後にする。
 静寂を取り戻したそこは、来たときと変わらぬ不気味な存在感を放っていた。

作者:木乃 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 7
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