●巨大な猫は夜現れる
「にゃんこ、にゃんこ~♪」
うきうきと夜の広い公園を歩く絵美。手には夜でも撮れるデジタルカメラ。それに魚やハム等が入った大きな袋を持っている。
「この公園よね! 夜になると巨大なにゃんこが現れるのは!」
夜の公園を女性がふらふら歩いているのはどうかと思うけれど、彼女はとても楽しそうだ。
「真っ白だって話だし、瞳は金と銀のオッドアイ。白い毛並みと光る不思議な瞳……。早く会いたいわ! 写真も撮りたいけど……撫でたり餌をあげたりできるかしら?」
そんな時、絵美の前に第五の魔女・アウゲイアスが現れ、手に持った鍵で彼女の心臓を一突きした。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
崩れ落ちる絵美の隣に真っ白な姿のオッドアイのドリームイーターが現れたのだった。
●ヘリオライダーより
「……えっと、俺も猫のウェアライダーなんだけどね?」
デュアル・サーペント(陽だまり猫のヘリオライダー・en0190)は、そう言ってから事件の内容を話し始めた。
「不思議な物事に強い『興味』を持って実際に自分で調査を行おうとしている人が、ドリームイーターに襲われて、その『興味』を奪われてしまう事件が起こっているみたいなんだ。『興味』を奪ったドリームイーターは既に姿を消してしまったみたいなんだけど、奪われた『興味』を元にして現実化した怪物型のドリームイーターが事件を起こそうとしているみたいなんだ。だから、被害が出る前にドリームイーターを倒して欲しい。無事に倒せれば、被害に遭った人も目を覚ましてくれるから頑張って欲しいな」
デュアルは状況について説明する。
「場所は夜の広い公園。白い大きな姿の猫みたいなドリームイーターだよ。それで、このドリームイーターは『自分が何者か?』って聞いてくるんだ。正しく対応できないと殺してしまうみたい。でも、このドリームイーターは、自分の事を信じていたり噂をしている人がいると、その人の方に引き寄せられるみたいだよ。これを上手く使えば有利に戦えるんじゃないかな? 攻撃は猫らしいものをとってくるみたい。オッドアイの瞳を光らせたり、じゃれついてみたり、ぐっすり眠ってみたり……。……うん、猫、かな?」
最後にデュアルは必死に訴える。
「猫が悪い事するなんて、猫が好きな人にも、猫な人にも許せない事態だよね! 猫が悪者みたいに思われる前に、みんなに倒して欲しいんだ! 応援しているから、絶対、絶対、倒してきてね!」
参加者 | |
---|---|
篁・悠(黄昏の騎士・e00141) |
椏古鵺・笙月(黄昏ト蒼ノ銀晶麗龍・e00768) |
草火部・あぽろ(超太陽砲・e01028) |
ガド・モデスティア(隻角の金牛・e01142) |
月鎮・縒(迷える仔猫は爪を隠す・e05300) |
フリードリッヒ・ミュンヒハウゼン(ほら吹き男爵・e15511) |
ジャニル・クァーナー(白衣の狩人・e20280) |
神木月・紗依(癒す者・e30783) |
●巨大な猫は夜現れる
場所は夜の公園。ここに現れるらしい巨大な白い猫……のドリームイーターを待つ。
誘き寄せ役は篁・悠(黄昏の騎士・e00141)、ガド・モデスティア(隻角の金牛・e01142)。
草火部・あぽろ(超太陽砲・e01028)は、ハンズフリーの電灯を使ってキープアウトテープを張って行っていた。
椏古鵺・笙月(黄昏ト蒼ノ銀晶麗龍・e00768)は翼を使って上空で、月鎮・縒(迷える仔猫は爪を隠す・e05300)、フリードリッヒ・ミュンヒハウゼン(ほら吹き男爵・e15511)、ジャニル・クァーナー(白衣の狩人・e20280)、そして神木月・紗依(癒す者・e30783)は公園の遊具に身を潜めて、ドリームイーターの出現を待つ。
「君しってるかいーにゃんこの噂ー」
「ネコが現れるんよね? ほんまにココで合っとるんか?」
悠とガドが噂話を始める。そして、ガドは公園を見回して場所が合っているのかと確認している様子を見せた。
「そうそう、巨大な猫が出るらしい。だがそこまでサイズアップすると既に猫でない感」
「うちは牛やから、ネコの勘っちゅーのはよく分からんのやけど……」
そんな事を話しながら、ガドは悠に銀のカラーコンタクトを渡す。
「ところで、ちょいと相談があるんやけどな……これで絵美ちゃんのケアして貰えないやろか」
「任せろ。ヒーローたる者の務めだ」
ガドの提案に悠は強く頷いた。悠はヒーローに憧れヒーローになった白猫。被害者の絵美の心を癒す力になれるのならば、それは彼女にとって大切な務めだ。
(「やれやれ、巨大な猫か。……そんなもの、猫型のウェアライダー辺りで満足していればいいものを。それ、丁度そこに手頃な猫型がいるな」)
そんな事を考えてジャニルは悠と縒を眺めている。ジャニル自身は『山猫』なので、『猫型』の中には入っていない。
(「――ふむ、巨大な猫。猫ねぇ。この噂っていったい誰が流してるんだろう? 自然発生しなそうな気もする。いや人為的にしろ夢盗人がこんなこともしないだろうが」)
そんな事を考えるのはフリードリッヒ。
(「今度の敵は、でっかいネコなんだとよ。……にへへ。だ、ダメだっつーの俺! 戦わなきゃ!」)
あぽろは、ドリームイーターとはいえ、ネコの登場が楽しみのようだ。
(「……巨大猫……ドリームイーターじゃなければ是非もふもふしてみたいんだけどなぁ……」)
紗依もそんな事を思っている。この二人が多分一番出会いたがっているようだ。
囮の悠とガドは続けて巨大な白猫の話で盛り上がっていると、大きな白い猫が現れる。白猫のドリームイーターは「にゃあん」と鳴いた。
ドリームイーターが現れた事で、隠れていたケルベロス達も飛び出して囲むように陣取る。
ドリームイーターは、「ふにゃあ」とのんびり鳴くと、ケルベロス達に問いを投げかける。
「私は誰だと思うかにゃあ?」
「どっちかというと山猫寄りだと思う」
きっぱりと答える悠。
「ましゅまろみたいもっふるな大きな猫さんざんしな。肉球ぷにぷにいいざんしよな。でも、それはあなた様が生んだ幻想。さア、もとに戻るとよいざんし」
「例え大きかろうと、毛並みがよかろうと……お前はヒトの敵やから」
「失せろ、出来損ない」
笙月、ガド、ジャニルは引導を渡す様に、そう答えた。
●巨大な白猫のドリームイーター
「手触りと毛並みだけで総てが決まるわけではないのだ、これが。君には決定的な物が欠けている……。具体的に言うと大きすぎ」
悠はドリームイーターにそう宣言するとマフラーつきのヒーローのような戦闘服へと変わる。
「ピスケスよ輝け! 勇者の戦いに勝利を!」
キラキラと星の光が輝き、あぽろ達に護りを与える。その間に笙月はオウガメタルを身に纏うとドリームイーターにつめ寄り拳で殴りつけた。
「自分がやられて嫌なことは、憎い敵にはガンガンやれ。それがウチの、家訓でね」
ガドは黄金の茨鞭という名の黄金の槍とオウガメタルの力を合わせた技により、ドリームイーターを縛り上げると、気持ち悪さを与えて自分へと注意を向かせる。
続いて攻撃するあぽろは弧を描くように斬りつけると同時にドリームイーターにモフっとその毛並みを味わった。
「……本当にもふもふだ……!」
ドリームイーターは巨大とはいえ白猫。ふさふさの毛を持っていて気持ちが良い。
(「……もふもふ猫さんなんだ……!」)
縒は本当におっきなもふもふ猫さんがいるなら一緒に遊びたい方だ。あぽろにそう言われると、ドリームイーターと知っていても、もふもふ猫という事が意識されてしまう。
(「駄目駄目、あれは偽物さんなんだからっ!」)
気を取り直すとドリームイーターへ向かって砲撃形態に変形させた竜砲弾を撃ち放った。
「にゃ~ん!」
可愛い声でドリームイーターが鳴く。そして、華麗なステップを踏むと、笙月に向かってじゃれついた。
「そんなもふもふでじゃれられたら、ふかもか撫でしたいざんしな」
巨大猫を何とか受け止めたが、もふもふふかふかで全力でじゃれついてくるドリームイーターは、潰されかねないほどの勢いである。
「ずいぶんと可愛らしい夢だけれど――夢は夢。夜明けには消えてしまわなくてはね」
フリードリッヒはドリームイーターへとそう言うと、紗依へと視線を向けた。
「厄介な技が多そうだ、防がせてもらおう」
見事なじゃれつきようから見え隠れするドリームイーターの技から護る為に紗依へ向かって分身の幻影を与える。
「ジャニルを煩わせるな」
ジャニルは蒼い地獄を矢の全体に纏わせ、ドリームイーターへ向かって放つ。纏わりつく地獄の炎により貫かれたその傷は癒えにくいものに変わっていった。
「傷つく彼らに魂の抱擁を……」
紗依は翼を広げて祈りを捧げるように癒しの力を笙月達に与える。
「まやかしを貫き砕け! 迅雷たる……薔薇騎士の剣――ッ!!」
悠は幻影の薔薇吹雪を纏い、雷速で突きを放つ。
「にゃん!」
キラリっとドリームイーターの金と銀の瞳が妖しく輝く。
「ほら、こっちこっち。うちを見る、見る!」
ガドがドリームイーターの視線を自分に向かわせた。大きく光り輝く二つの色の瞳は妖しくも美しく……まるで、夢の中に誘われる心地。
「綺麗な色ざんし。しかし、猫さんには消えて貰わないといけないざんしよな」
笙月は稲妻を纏わせた突きを放った。
(「くっ、我慢だ、俺!」)
触りたい欲求を抑えながら、あぽろは御業を放ちドリームイーターを縛り上げる。
(「草火部さんが葛藤してる……! うちも頑張らなきゃ……! あれは偽物猫さん……!」)
縒も、葛藤しているあぽろを見ながら、自分の気持ちを引き締め電光石火の蹴りを叩き込んだ。
「さあサーカスの始まりだ!」
フリードリッヒは周囲に細い鋼糸を張りめぐらせてグラビティチェインを悠に向かって伝達する。それは彼女に見えない足場も提供した。
(「……やはり猫がこうもデカいと気味が悪い」)
先程のドリームイーターの攻撃を見て、ジャニルは改めて思う。やはり、巨大な猫の目玉の大きさは大したものだ。それも夜の闇の中で輝くのはなお一層。
「……いや、まぁ、的に丁度いいか」
ジャニルはその輝く瞳に向かって蒼い地獄の炎を纏わせた矢で射抜く。続いて紗依はガドに向かって施術を行い回復させていった。
「……くぁ」
眠たそうにドリームイーターはあくびをすると、身体を丸めてごく自然に眠りにつく。
「寝るなんてもったいない! もっとあそぼうざんしな♪」
笙月が気を引こうとしてみるが、大きな尻尾でパタパタと嫌そうに振っている。
「よし、俺が起こしてやるぜ」
あぽろがわくわくしながら立候補すると、ふさふさ猫のドリームイーターに向かって思いっきり抱きつきもふもふを楽しんでから刀を突き刺す。
「ふぎゃーっ!!」
「うるせー役得だ! 文句あっか!」
ドリームイーターは悲鳴を上げて目を覚ました。
「それじゃあ、笙月くん達に力を送るよ!」
ガドはカラフルな爆発を起こして笙月達に力を与える。
力を貰った悠はフリードリッヒに貰っているワイヤーの足場を使って放電しながら駆け抜けドリームイーターへと高速の蹴りを放った。
『昏く螺威来(らいらい)深淵に君臨せし暴食の王よ……地獄の門番たる我が呼び声に応え給え……』』
笙月は術式を組み上げ、虚構の『門(ゲート)』を一時的に創りあげ、新鮮な『血液』を供物とし、暴食の王を召喚してドリームイーターへと喰らいつかせる。
「さあ、次はキミだよ」
フリードリッヒの張りめぐらせる見えない足場を縒へと与える。
「わ、すっごい!」
張りめぐらされた足場に縒は喜ぶと、ドリームイーターへと走って向かう。
「かわいい見た目だからって容赦しないよー!」
縒は張りめぐらされた足場、ワイヤーを使ってドリームイーターの回りを駆けまわり、小さな動きを捕らえやすい猫に対して、更に素早い速度で動きまわり自らの狙いを定めていく。
「うちのナカに眠る、ケモノの、チカラ……!」
跳び上がるとドリームイーターが一番傷を負っている場所を狙って右手と左手で十字型に二撃の引掻き攻撃を繰り出した。
「まだ攻撃は続くぞ。ジャニルの番だ」
ジャニルは左腕の蒼い地獄を纏った魔弓クァーナーにもう一つ弓を重ねて構え、蒼い地獄の炎の燃える左目で見据えて、巨大矢を放ち貫く。
「援護は任せて!」
紗依は癒しの翼を使って笙月達へと癒しの力を与えて、護りを更に固めた。
「にゃあん!」
大きな白猫はガドに向かってじゃれついていく。もう弱っている筈だが、楽しそうにじゃれている。それはやはり、獲物を狙う猫の目だ。
「彼女を放すざんし」
ガドにのしかかっているドリームイーターに向かって、笙月が大鎌を使って激しく斬りつけて離れさせ、そこに放電し光を放つ悠がフリードリッヒの張りめぐらせたワイヤーの上を高速で駆け抜ける。
「はあぁぁッ!!」
彼女の攻撃がドリームイーターの魂を喰らう一撃を放った。
「太陽の巫女は、夜を覆すぜッ! さあて日向ぼっこの時間だ!『超太陽砲』!!」
草火部神社の太陽神『陽々(ひひ)』を自身に降霊させたあぽろは、右手に太陽エネルギーを吸収かつ増幅させて、更に魔力を練り込み、掌から極太の焼却光線を放った。
その光に包まれて大きな白い猫は消滅していった。
●その後に
ケルベロス達は周囲の遊具や歩道等のヒールを行う。
「絵美さん、大丈夫?」
絵美を見つけた紗依はヒールをかけて意識を取り戻させる。ぼんやりしている絵美に縒が近くで声を上げた。
「あっ、白い毛並みにオッドアイの猫さんだ!」
「……ねこ? ……猫!」
縒の言葉に、絵美は本来の目的を思い出したのか、上半身を起こした。視線の先には白い猫がいる。
ガドに用意して貰ったカラーコンタクトをつけて白猫の姿になった悠がフリードリッヒの張ったワイヤーの上を歩いてやって来る。それは、まるで空中を歩くように。
「噂みたいにおっきくはないけど、かわいいね!」
「それに……可愛い上に不思議だね」
「……ええ!」
縒と紗依の言葉に絵美は頷く。確かに大きくは無いけれど……空中を歩くその姿はとても幻想的だ。
確かに、ここには絵美が探していたものは居なかったけれど、彼女にとってはそれに負けないものを見つけた様に見える。
その様子にケルベロス達は笑顔で頷き合ったのだった。
作者:白鳥美鳥 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年9月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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