虹色珊瑚を背に乗せて

作者:彩取

●虹色珊瑚を背に乗せて
 この砂浜には、星の形をしたエイがやって来る。
 時刻は草木も寝静まり、よく晴れた夜空に星が瞬き輝く頃。
 星のエイは海中からふらりと現れ、気儘に空中を浮遊するのだという。海を泳ぐように白い砂浜の上を揺蕩い、一夜のひとときを謳歌する不思議な生き物。
 そんな噂話を知った少女が一人、砂浜に向かっていた。
「星のエイ……噂通りなら、この絵みたいに綺麗なのよね……」
 彼女が見ているのは、スマホの画像フォルダにある一枚の写真。
 そこには少女の友達が噂を聞いて描きあげた、星のエイのイラストが表示されていた。
 呼び名の通りの星の形に、オーロラを纏ったかのような美しい白の身体。その背中に淡い虹色の珊瑚を乗せて、砂浜を浮遊するエイの姿。まるで珊瑚の島が空を泳いでいるかのような絵を見て、少女は笑みを浮かべながら、楽しそうに呟いた。
「もしかしたら、この絵より綺麗かもしれないものね」
 言葉から滲むのは、美しい噂への期待感。
 しかし、そんな彼女の後ろから、唐突に誰かの声が聞こえた。
「――私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」

●奪われた興味
 不思議な物事に対する強い興味が奪われ、ドリームイーターになる事件。
 興味を奪われた人を目覚めさせる為、またこれ以上の被害を出さない為にも、この個体を撃破して欲しい。ジルダ・ゼニス(青彩のヘリオライダー・en0029)はそう言って、この事件を危惧していたティユ・キューブ(虹星・e21021)を見た後、
「今回の興味を奪われたのは、高校生の少女なのですが」
「もしや興味というのは、宙泳ぐエイの噂話に纏わるものかな」
 察しの良いティユの言葉に、その通りだと頷いて詳細を話し始めた。
 今回の敵は、星の形をしたエイ。少女の興味から生まれた存在だ。
 背中には虹色の珊瑚を纏っているらしく、とても美しい姿をしているらしい。この星のエイは、自分の事を信じていたり、自分の噂話をしている人に引き寄せられる性質がある。よって、砂浜で話をすれば、誘い出しは容易だろう。すると、ジルダはこう続けた。

「噂話によると、エイの背中の珊瑚には生き物が棲んでいるとか」
 故に、それがどんな生き物かを想像するのが良いだろう。
 可愛い形になっている珊瑚や、その周りに棲む魚たち。
 そこには少女が想い描いた美しい世界が広がっているに違いない。
「仕事の一環ではありますが、噂話も楽しみたいものですね」
 噂話は皆で楽しく。別段噂話に興味はないとか、特に期待することもないと言うような水を差しかねない言動さえ控えて貰えれば、想いの馳せ方は個々の自由。しかしそう言わずとも、皆であれば良き時間と成果に恵まれるだろうと言って、ジルダは深く一礼した。
「私からは以上です。それでは、星の泳ぐ海までご案内します」


参加者
アリス・ヒエラクス(未だ小さな羽ばたき・e00143)
白羽・佐楡葉(紅棘シャーデンフロイデ・e00912)
チェザ・ラムローグ(もこもこ羊・e04190)
マリアローザ・ストラボニウス(サキュバスのミュージックファイター・e11193)
虹・藍(蒼穹の刃・e14133)
ジルカ・ゼルカ(ショコラブルース・e14673)
ティユ・キューブ(虹星・e21021)

■リプレイ

●背中の世界
 よく晴れた星空の下。
 最初に話を始めたのは、虹・藍(蒼穹の刃・e14133)だった。
 星の形をしたエイの背中に広がる珊瑚の世界。藍は、そこに小さな魚達と共に棲むヒトデの正体が、小さな星かもしれないと想像した。
「星の海を乗せてるなんて、素敵な生き物ね」
「その背中に、銀河を背負っているのかもしれないですね」
 すると、この流れを継いだマリアローザ・ストラボニウス(サキュバスのミュージックファイター・e11193)も続けて語った。銀河を背負った星のエイ。彼が泳いだ場所には天の川が流れ、天の星々と重なるさまは、さぞ幻想的な光景であろうと。
「ひょっとしたら、輝く銀河から泳いできたのかもしれないですね」
 そう思い馳せるマリアローザの言葉に続いたのは、こんな想像。
「エイは背中に世界を乗せて、旅をしているのかもしれないわ」
 声はアリス・ヒエラクス(未だ小さな羽ばたき・e00143)のもの。アリスは星のエイ自体を世界――ひとつの惑星だと前置いた上で、彼自身が旅人なのだと口にした。
 故に、車窓を流れるように、そこから見える景色も日々変化する。
「そんな星なら、毎日退屈することもないでしょう」
「成程。ラッムとティユさんは、どんな住人が居ると想いますか?」
 そうして言葉の余韻に浸った後、白羽・佐楡葉(紅棘シャーデンフロイデ・e00912)は友人、チェザ・ラムローグ(もこもこ羊・e04190)とティユ・キューブ(虹星・e21021)に先んじて語った。例えば、海に羽ばたく蝶々が翅を休めるのは、虹色珊瑚の細い枝先。ひとたび舞えば翅からは虹色の鱗粉が楚々と散り、水を彩り飾っていく。
「海を往くのに翼は要らないかもしれませんが――」
 それは恍惚として魅入る程、美しい事だろう。
 すると、チェザはミルク色の髪を揺らして言った。
「背の住人さんかー……ボクは妖精さんが見てみたいのなぁん」
 淡い虹を纏うエイの背中、砂糖菓子みたいな虹色珊瑚の上で楽しく遊ぶ妖精達。
 その言葉にティユも語った。彼女は珊瑚の花を思い浮かべていたのだが、
「チェザの言う砂糖菓子や蜜が花にあって、蝶や妖精を潤しているかもしれないね」
 友の言葉を重ねたからこそ、新たな思いが浮かび、語らいに喜びが感じられる。
「でもラッム、妖精さんってマジで言ってるの?」
「妖精さんなんだよー、どきどき。てゆのお花もさっゆの蝶々もきっといるなぁん」
 真顔で問う佐楡葉にぽわぽわの笑みで答えるチェザ。そんな気心知れた友人ならではのやり取りに続き、ジルカ・ゼルカ(ショコラブルース・e14673)も想いを紡いだ。
 星の光を浴びて淡い虹色を帯びた星のエイ。その身体は、まるで美しい真珠のよう。
 泳いだ後に残る星屑の煌めきは道となり、それを辿れば宝石の魚達が棲む街がある。天然の水道橋は鯨の骨、その先のオーロラの門を潜り、虹色珊瑚のお城を越えれば、
「甘い香りの星が咲く丘で、お魚たちの姫君が笑ってて――……!?」
 と、そこでジルカは唐突に膝を抱えて屈みこんだ。
(「ああ! 俺ってば、つい妄想の世界に!」)
 小さな子供のようだと笑われないか。
 そんな不安が胸から溢れ、瞳からは涙が滲む。しかし、
「ジルカの想う世界もとても素敵ね。写真に撮りたいなぁ」
 少年の耳に届いたのはアウレリア・ドレヴァンツ(白夜・e26848)の楽しげな声だった。虹を纏ったエイの煌めきは、宵の藍色も相俟ってさぞ美しい筈。
 そう微笑み、アウレリアがピンク色のスマホを砂浜に向けると、
「――あら、あれって……もしかして」
 砂浜に響いたのは、小さなシャッター音。
 だが画面を確認せずに、彼女は仲間達に同じく得物を握った。
 漸く現れた星のエイ、今宵の標的たるドリームイーターを迎える為に。

●戯れ星
 空に浮かぶ島のようでもあり、流れる星のようでもある。
 ケルベロス達の前に現れた星のエイは、ありていに言って美しかった。これこそが魔女に襲われた少女の信じた噂の形。その幻想的な姿を前に、佐楡葉は呟いた。
「斯くも信じる人がいるのですね――いじらしいというか何というか」
 とは言っても、姿を見せてくれたのは僥倖である。
 あれは無害な夢ではなく、踏破すべき紛いの星。
「ところでラッム、本当にいましたね。妖精」
「妖精さんなんだよー。きれいだなぁん!」
 そんな星のエイが放ったのは、星を象る泡に乗った、透き通る水色の妖精達。それを見てはしゃぎながら、チェザはふわもこの、ふわっふわもっこもこの羊達を召喚した。
「羊さんと一緒にめっちゃ応援するゾ! がんばれ♪ がんばれ♪」
 笑顔で前方にエールを送り、ウェーブヘアをふわりと揺らすチェザ。直後、佐楡葉は流星の煌めきを宿した蹴りを繰り出し、続けてチェザのエールで精度が高められたジルカは流れを絶やさずに前進し、稲妻を帯びた槍を構えて敵を鋭く突いた。
「ごめんね。きみの背に乗って、泳いでみたかったケド」
 彼の瞳に映るのは、星を模した輝きと、微かな憂い。
 星を指す名を持つ者同士だが、似ても似つかぬ己と相手。
 ただ尻尾が少し似ている事に気が付き手を伸ばすと、エイの尾は宙へと逃げた。
 捕まえられない所もまた、星のよう。そんなジルカが身を屈めて間合いを取ると、入れ替わる形で砲弾が星のエイに直撃した。それはハンマーを砲撃形態にした藍の一撃。
 すると、藍は自らの得物の形状が戻りゆく中、告げた。
「――随分綺麗な生き物が具現化してしまったものね」
 瞳に映るのは、星のエイの周りを漂う海の生き物達。
 虹色珊瑚からアーチを描くように泳ぐ魚に、エイの泡と戯れるヒトデ星。
 剣戟に混じって聞こえる波音も星のエイから響いていて、幾重にも反響したそれは残響さえも美しく、皆の耳をそっと擽る風のように流れていく。
 それがここで失われるのは、少々勿体無い気もしたが、
「ま、そんなことも言ってられない。この調子で行きますか!」
 藍は高らかに一声を響かせ、アリスはオウガメタルを纏った拳を打ち付けた。
 ときに。森で生まれ、森で育ったアリスにとって、海の生き物は滅多にお目にかかれない生き物であると同時に、稀なごちそうであった時期があるという。
(「……もしかして、私だけ思考のベクトルが、違う……?」)
 故に塩焼きや蒲焼、白焼きも捨て難い――等と思うはご愛嬌。
 それを胸に秘めながら、無音に重きを置いて立ち回るアリス。
 すると彼女が位置する前衛に、聖なる光がもたらされた。術者は中衛、マリアローザ。黄金の果実から溢れる光は、エイが零す明かりごと包み込むように輝き、仲間の守りを固めていく。その最中、金糸の髪を靡かせながらマリアローザは思いを告げた。
「身体を翻す瞬間さえ、息を飲みそうな姿ですが……」
 星々に抱かれるかのように、輝きを纏って揺蕩うエイ。
 その背に広がる風景でバカンスを過ごせば、最高の一時になるだろう。
 だが、如何に美しく心惹かれる姿であろうと、あれは在ってはならぬもの。
「それに、本物はもっと綺麗なはずです。偽物の美しさには負けません」
 そう語るマリアローザの前方で構えていたのは、初撃を受けたティユだった。盾として、率先して攻撃を受ける彼女の気構え。しかし、今宵は一匙程の好奇心も混じっている。
「その方が、エイと間近で触れ合えるしね。だろう? ペルル」
 ふざけている心算は微塵もなく、これもまたまことの思い。
 それはボクスドラゴンのペルルも同じらしく、シャボンのブレスは星の泡に霞まぬ程美しい。そこにティユが投影したのは、星のエイへと向かうように伸びる星図だった。その力は仲間の精度を更に高め、星の輝きは自ずとエイを照らし、虹の彩りを浮き上がらせる。
「こうして見ると本当に幻想的なんだが――」
「ええ。けれど、手は止めないわ」
 すると、アウレリアが言葉を重ねた。
 瞬く瞳に映る虹色珊瑚は、虹から創られた宝石のよう。
 それをアウレリアが物憂げな夜明け色の瞳で見つめると、
「ええ、本当に、綺麗だけれど。さあ――舞い散れ」
 瞬間、呼び声に呼応するかの如く、砂の中から無数の命が現れた。
 種より芽吹き、うねるように天に向かい伸びる蔓。空に祈り、請うようにも見えるその蠢きは、大輪の花を咲かせながら戦場を翔け、星のエイを絡めとる茨へと転じて、雪のように白い花を舞わせた。その光景に気を緩めた訳ではない。それでも、
「――残せたらいいのに、なんて」
 どんな形でも良いからと、ふと思ってしまうのだ。

●泡のように
 星空の下、鮮やかに舞う星のエイ。
 その攻撃の一番の特徴は、ジャマーならではの呪縛にあった。しかし、チェザの治癒を軸に、マリアも息を吹きかける仕草から霧での援護を惜しまない。また、郵便マークのバッグを斜めがけにしたボクスドラゴンのシシィも、仲良し竜のペルルと共に癒しをお届け。
「もふもふともちもちでさいきょうなぁーん」
 そんな竜達の活躍によって、攻めの機会を得たチェザ。
 彼女は前へと前進し、星座の重力を宿した剣を元気一杯に振り上げ、星のエイ目がけて振り下ろした。力強い剣圧によって、波を描くように宙を舞う白い砂。その時、ジルカは不思議と滲む涙を隠すように拭い、こう呟いた。
「ああ……悔しい、なあ」
 あのエイは、ドリームイーターの魔法だ。
 それなのにジルカはこんなにも、あれを羨ましいと感じていた。
 それは瞳に映るものが美しく、少年が常より想う理想の姿さえ叶うような心地にさせる程、眩い光景だったからなのかもしれない。けれど、ジルカは躊躇わない。差し伸べた手に構えたのは、ベニトアイトの煌めきを宿した大鎌。それを振りかぶれば、
「ねえ、星のエイ――きみに、あげる」
 夢のような青の刃が、白い星を斬り裂いた。
 対し、血の代わりに泡を零して、虹の白波で傷を癒す星のエイ。
「決着は延ばさせない……逃がさないわ」
 そこに迫ったのは、アリスだった。
 青いオーラを纏うナイフで、守りの隙間を縫うように描かれ連なる無数の斬撃。
 それは相手の命を刈り取る鷹のように鋭く、彼女の血脈の思想を体現する。
 すると、アリスはエイの傍らでこう囁いた。
「貴方に思いを馳せた彼女の気持ちも、少し分かる」
 優雅に泳ぐ幻想に、ひととき焦がれた少女の心。
 故に今宵、このような形で出会った事が、少しだけ惜しい。
 そう思っていたのは、ティユも、竜のペルルも同じなのだろう。あれほど対抗心を見せていた竜も、今は弱りゆく相手の姿を前にして、心なしか寂しそうに見える。
「でも、だからこそ最後まで共に、存分に踊るとしよう」
 瞬間、ティユは口元に笑みを引き、オーラの弾丸を撃ち放った。
 彗星の如くエイの元まで翔けて、弾けるような光と共に着弾する弾丸。
 そこに歌のように詠唱を響かせたのは、マリアローザである。
 古き言葉が紡がれる中、彼女の元で膨らむ魔法の光。それが極限まで高められた瞬間、マリアローザは指を鳴らした。軽やかな音と共に、光線となって放出された魔力。それが星のエイの背中を捉えると、マリアローザは青い瞳を僅かに細め、
「――本当に、害さえなければ綺麗なんですが」
「全力で討つには少々躊躇われますが、容赦はしません」
 佐楡葉は触媒である一輪の薔薇を――とある薔薇園で愛された最後の赤薔薇に魔力を通して、緋色の長剣を形成した。物質と定義される質量を持たぬ透徹の刃。
 それを手に駆ける直前、佐楡葉はこう囁き、
「一華五葉開――あなたに咲くのは何色の花でしょう」
 一颯の度に、戦場に美しい幻影の薔薇を舞い踊らせた。
 この原型は嘗て、佐楡葉の義兄が見せた月影の剣。
 そして今宵、佐楡葉によって描かれた剣戟は虚実を織り交ぜ、玄妙を物語るかの如く魔女の僕を斬り裂いた。薔薇を零し、無限に躍り続ける切っ先は、宛ら花が成す檻のよう。
「あなたを生み出した少女の世界にお還りなさい。背の住人と一緒に」
 やがて十分な手応えを得て、薔薇の幻影が砂地に触れる前に消えていく。
 対し、星の輝きを零していたエイは、明らかに弱り果てている。
 それを好機と捉えたアウレリアは、再び祈るように詠唱した。
 舞い散れと紡ぎあげれば、宙泳ぐ星に手を伸ばすように茨が絡み、六花を思わせる花が舞う。夏の夜には降らない雪の白と、空を泳ぐ星のエイ。その季節を越えた巡り合わせに終止符を打つべく前進したのは、アウレリアの後方にいた藍だった。
 前進する最中、互いに視線を重ねたアウレリアと藍。
 小さく頷くと、藍は鋭い刃のように心を研ぎ澄ませ、
「……ドリームイーター。全く無粋なことをする」
 綺麗な生き物を、怖い記憶と一緒に刻もうとするなんて。
 そう苦言を呈し、銃口を定めるかの如く人差し指を敵に向けた。
 彼女の指先に集約したのは、虹色の光彩。
「――貴方の心臓に、楔を」
 直後言葉と同時に、星銀の弾丸が放たれた。
 ひとつ、またひとつと先の弾を追い、敵へと向かう星虹の弾丸。
 やがて重力の楔を打ち込まれた瞬間、星のエイは空を仰ぎ、大きな波音を響かせながら消え始めた。次第に薄く、透き通るように消えゆく光景。そうして宙泳ぐ星は砂地に伏すより先に、幻であったかのように還っていったのだった。

●星の旅路
 戦いを終え、暫し砂浜を散策する一同。
「てゆさん、らむも行きますよ」
「さっゆ待って。ボクも行くなぁん」
 佐楡葉とチェザの足跡を攫う波。彼女達の後方、靴を脱いで歩くアリスは、森に籠っていたら出会えなかった潮の香りや波の心地良さに浸りながら、星空へと囁いた。
「貴方の旅路が、良きものでありますように」
 するとジルカも、星を映していた瞳をそっと閉じた。
 あんな風に、夢が本物になれば良いのに。そう思いながら目蓋の奥に浮かぶのは、闇の中を悠然と泳ぐ星のエイ。そうしてまた逢える日を願う少年の少し後、マリアローザも光の余韻に浸るように、星が輝く空を見ながら歩いている。
「こんな夜は、まっすぐ帰っちゃうのも味気ないしね――あれ?」
 その時、藍が振り返ると、アウレリアとティユが足を止めていた。
 二人の手には、画像を共有したばかりのスマホ画面。
 表示されていたのは、アウレリアが撮った一枚の写真だった。
 それは星空の下、美しい星のエイが現れた瞬間を収めたもの。きっと、多くの人はこれを本物とは思わないだろう。それ程この写真は美しく、現実離れしているからだ。
 それでも、ティユは――今宵集ったケルベロス達は知っている。
 絵画のような一枚の写真。これは確かに夏の夜に出会った、夢の欠片なのだと。

作者:彩取 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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