夏の終わりと緑の怪異

作者:雨乃香

 夏の日差しを反射してキラキラと光る水面を横目に、そのすぐそばの川原を上流に向けて歩く一人の少年がいた。
 片手には地図とメモ帳を、もう片手には筆記用具を手に、額から流れる汗を時折タオルで拭いながら彼はどんどんと歩いていく。
「たしかに、出そうな雰囲気だ……」
 手元の地図につけられた赤い丸印と、メモ帳に殴り書きした自由研究という文字、続くテーマには河童の伝承と書かれている。
 それらを眺め、少年は時計に目をやる、時刻は正午を少しまわったところだ。
「去年の猫又は手応えがなかったけど、こういう場所なら……」
 八月も下旬にさしかかろうというのに、未だ衰えを見せない日差しを恨めしそうに眺めながらも、少年の表情にはやる気が漲っている。
「実物の河童に会えるといいだけどな」
 ペットボトルに口をつけ、中身を飲み干す。少年が再び歩き出そうとしたところで、突如近くの藪が揺れる。
 既にここは山中であり、少年はここ一時間程人とすれ違った覚えはない。
「もしかして……本物か?」
 生い茂る雑草を掻き分けた先、少年の目に飛び込んできたのは、きらりと輝く鍵の先端。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの興味にとても興味があります」
 胸を貫く衝撃と共に、聞こえたその声を最後まで聞き届けることはなく、少年の意識は途切れる。
 暫くして藪からは奇妙な甲羅を背負った生物だけが現れ、川の方へと消えていった。

「夏も佳境にはいり、少しずつ涼しく過ごしやすい日も増えてきましたが、皆さんはいかがお過ごしですか? 油断はせず、水分補給は忘れずにしっかりとしてくださいね?」
 クーラーを盛大に効かせた室内でグラスに注いだ黄色いドリンクを片手に、ニア・シャッテン(サキュバスのヘリオライダー・en0089)はケルベロス達を出迎える。
「そんな夏の最後に、風物詩である怪談や物の怪の類に関するドリームイーターの退治などはいかかでしょうか? フフっ」
 笑い声を上げたニアは、事件についてかいつまんで説明を始める。事件の発端は、最近暴れている興味を奪うドリームイーターであること。
 被害者の少年は夏休みの自由研究のため山中の川沿いで襲撃を受け、今は興味を奪われ、意識がない状態だということを説明すると、詳しい地図を各自に送りつつ、ニアは敵の詳細について語る。
「それでまぁ、今回実体化したドリームイーターは一言で言えば河童、ですね。メジャーすぎて逆にピンと来ない感じありますよねぇ……。
 この河童のドリームイーターは人を見かけると相撲の勝負を仕掛けてきて、河童に負けると敗者は内臓を抜かれて殺されてしまうようですね……伝承通りといえばその通りですけど、中々グロテスクですね……」
 まともに相撲をとっても勝つのは難しいでしょうし、伝承を逆手に取るのがよいでしょうね、とニアはケルベロス達に軽くアドバイスしながら話を進める。
「戦い方はまんま相撲を取る様に戦うようで、見た目と裏腹にかなりの威力があるようですので、下手に組み合わない方がいいでしょう」
 かわいそうではありますけど、所詮ドリームイーターですしね、とニアは苦笑して、もう説明すべきことがないことを確かめると、頷いて顔を上げる。
「本物だろうと偽者だろうと人に危害を加える以上はまぁ、捨て置けませんよね。……本物は悪戯好きであっても悪いことはしないという説もありますし……河童の風評被害もついでに防いできてあげてください」


参加者
星黎殿・ユル(聖絶パラディオン・e00347)
紫藤・リューズベルト(メカフェチ娘・e03796)
据灸庵・赤煙(ドラゴニアンのウィッチドクター・e04357)
神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623)
カリーナ・ブラック(黒豚カリー・e07985)
グラム・バーリフェルト(撃滅の熾竜・e08426)
矢武崎・莱恵(オラトリオの鎧装騎兵・e09230)
尾神・秋津彦(走狗・e18742)

■リプレイ


 いまだ衰えを見せない八月の強い日差し。
 すぐ隣を流れる小川のせせらぎと、時折吹く風が微かにそれを和らげる。
 そんな人気のない山中の小川沿いの土手を八人のケルベロス達が連れたって歩いている。
「河童なんてほんとにいるのかな?」
 半信半疑といった様子で呟いた神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623)はあたりに視線を投げる。自然の広がる辺りには、何かがいそうな雰囲気はあるものの、彼らは真面目に河童を探しにきたわけではない。
「どうなのですかね? ただ、古くから文献には残ってはいはいるはずなのです」
 首をかしげながらそう返す紫藤・リューズベルト(メカフェチ娘・e03796)は、ライドキャリバーのマークザインにまたがりつつ、その車体をいたわるように撫でゆっくりと山道を徐行する。
「河童と言えば日本を代表する妖怪の一種ですからな、資料は相当数あるでしょうし、信憑性は高いのでは?」
 尾神・秋津彦(走狗・e18742)も、リューズベルトと同じ様に現代まで伝わる河童の伝承を引き合いに出しつつ、話を広げる。
「でも、有名な河童のミイラも猿と魚介類を繋ぎ合わせた偽物だったって話ですし。そもそも伝えられている伝説がヘンテコで、こんな生物いるの? って特徴多くないです?」
 まるで河童に喧嘩を売るかのように、やや大きな声で鈴はそれらの伝承に対しても懐疑的な態度を示してみせる。とはいえ、彼女が喧嘩を売っているのは本物の河童ではない。河童への興味から生まれた一匹のドリームイーター、それが彼等の標的であった。
「たしかにそうだね、でもボク等はそういう不思議な生物を知らないわけじゃないし」
 そんな鈴に、星黎殿・ユル(聖絶パラディオン・e00347)は軽く同調しつつ、そこから持論を展開していく。
「伝承とかの類の中にはデウスエクスがまぎれてるんじゃないかと思うんだよね。河童なんかはなんとなく死神かドラゴンにまつわる種族な気がするけど」
「長野県南部には洞穴に引きこもった河童が龍になる伝説もあるといいますし、あながちないとはいえない推論でしょう」
 ユルの持論を補強するように、据灸庵・赤煙(ドラゴニアンのウィッチドクター・e04357)が自らの知る知識を語ってみせると、カリーナ・ブラック(黒豚カリー・e07985)が小さく手を上げ口を開く。
「河童、詳しいの?」
「専門で伝承を調べている方々程ではないですが、何か気になることでも?」
 赤煙がやや身を屈めカリーナに問いかけると彼女は河童に対し抱いていた疑問を口にしてみる。
「きゅうりって夏の野菜だけど……冬とかどうしてるんだろう? 水も凍って大変そうなの」
「河童は冬になると山童になると一部の地域では言われています。地域によって呼び名は様々ですが、いずれも山の神の使いとう共通点がありますが」
 赤煙の説明にカリーナは素直に感心し、頭を下げると、その頭部に居座っていたウィングキャットのかまぼこがころりと転がり落ちたのを、グラム・バーリフェルト(撃滅の熾竜・e08426)はひょいと受け止め、頭を上げたカリーナの頭部へと何事もなかったかのように戻す。
「はいはい、ボクからもいいかな?」
 カリーナが満足したのを見ると今度は矢武崎・莱恵(オラトリオの鎧装騎兵・e09230)が元気よく手をあげて、赤煙へと質問を投げかける。
「どうぞ、矢武崎さん」
「吸血鬼とか、人魚みたいに世界でも日本でも共通の伝承なんかあるけど、河童にはそういうのはないのかな?」
 莱恵の言葉に赤煙はふむと一つ頷き長いひげを触りつつ思い出すように言葉を搾り出す。
「この間の運動会で聞いた話ですが……インダス川流域には、河童と非常に良く似たヴィジャーヤという妖怪の伝承が――」
 赤煙の言葉をさえぎり突如、小川の水がせりあがり大きな水音が響いた。


「さらっと嘘つこうとすんなよそこの竜人!」
 飛沫をあげ水中から突如表れたのは、緑がかった体色に、背中には甲羅、頭には水をためた皿を持つ、いかにもといった河童だった。
「嘘なの?」
「もしかしたら河童が釣れるかもと思い、申し訳ない」
 それならそれで気にしないとばかりに莱恵の興味はすぐに河童へと移る。
 他のケルベロス達もドリームイーターとはいえ、実物の河童興味深そうにしげしげと観察を始める。
「見せもんじゃねぇぞおい。やるか? やんのか? 相撲とるか? おっ、お?」
 そんなケルベロス達の様子に河童はガンを飛ばししきりに挑発を繰り返し、四股を踏み、今にも相撲をとりたそうにしている。
「……私でよければ相手になるが」
 一歩前に進み出たグラムを、河童は値踏みするようにじっくりと眺め、満足げに頷く。
「おう、相手にとって不足はなさそうだ。さっそくやろうじゃないか」
 小川から跳躍一つで川原へと降り立った河童が軽く水を払い、開けた場所はないかと視線をめぐらせる。
 それを止めるように、赤煙が咳払いを一つ。
「そう急ぐこともないでしょう。ここに縄があります、簡素ではありますが土俵の一つこしらえてみせましょう」
「くだらねぇ嘘をついた割には気が効くじゃねぇか」
 提案に河童は上機嫌で座り込み、赤煙が土手の一角で作業をする風景を機嫌よく眺め始めた。
 その間に鈴は巫術服へと着替え、事前に用意していたご飯に祝詞をあげ、グラムへと食べるように促し、その横では莱恵が観戦の為に土俵周りに腰掛ける仲間達へとドリンクを配り歩いている。
 配られたドリンクに口をつけながら、かカリーナは興味があるのか横目でチラチラと河童の方を伺う。
 河童はそれに気づくと視線をカリーナへと向け聞こえるように舌打ちを一つ、カリーナがびくりと身を震わせると、満足気にいやらしい笑みを浮かべた。
「やな感じだね」
「お盆とか正月のお酒のみの感じ悪いおじさんみたいなのです」
 ユルとリューズベルトの会話は聞こえなかったのか、河童が機嫌を損ねた様子は見られない。このまま河童を調子に乗せたままでいいものかと、秋津彦は一つ芝居をうつことにした。
「まぁ、大量の仲間が回転寿司屋に拉致されて地下で強制労働されている最中、こんな風にふらふらしている河童ではたかがしれるでしょうなー」
 煽るように秋津彦がワザと聞こえるような声でいうと、河童は慌てて立ち上がり、動揺を隠し切れない様子で秋津彦の方へと駆け寄る。
「それは真か?」
 秋津彦が神妙に頷きを返すと、河童は自らの顔を水かきのついた手のひらで覆い、表情を暗くする。
「どうりで仲間を見ねぇと思ったら……」
 河童が呆然と呟いていると、準備が終わった赤煙が土俵へと河童とグラムを呼びそれぞれを正面へと立たせる。
 向き合い、互いに視線を合わせたところで、グラムが深く一礼をする。あわせて河童も深く頭を下げると、その頭の皿から勢いよく水がこぼれ、足元を濡らす。
 河童はそれを気にした様子もなく顔を上げグラムと視線を合わせる。
 両者の間に油断は一分もなく、ゆっくりと腰を落とし、互いに拳を地につける。
 周囲の空気が張り詰め、周囲で見守るケルベロス達も息を飲んで二人の動きに集中する。


 睨み合う両者の息がピタリと合った瞬間、勢いよく二人が立ち上がる。
 低い構えからの狙いは互いにぶちかまし。
 額がぶつかりあい、両者の視界に火花が散る。しかしそれで怯む様なことはなく、互いに前に前にという意思を強くもち、胸元へむけ、下から抉りこむように突っ張りを繰り出す。
 伝承を元に事前に準備をしてきたにも関わらず河童の力はグラムと張り合うには十分すぎるほどだ。
 しかし河童の方は既に息切れを見せている。
 強い日差しが微かに残る河童の皿の水分を飛ばしているのだろう。
 グラムは一時攻撃の手を休め、河童の消耗を早め、その勢いが落ちたところで温存した力を使い一気に畳み掛ける。
 突っ張り一突きで河童を土俵際へと追い詰め、さらにもう一突き、息の上がった河童の体をあっさりと突き出した。
「決まり手は突き出し、というのはどうだ」
 尻餅をつくような形で倒れこんだ河童を覗き込みながら、グラムが声をかけると、河童は突如大きな声で笑い出し、立ち上がる。
「まさか今の負けに不服があるわけじゃないよね?」
 河童のただならぬ様子にユルが釘を刺すように言うと、河童はもちろんだと首を縦に振って、笑いを止める。
「文句なしに俺の負けだ。けどよ、血が滾りやがるんだよ。お互いルールに縛られるよりも、もっと本気を出せる方法があるだろ?」
 ケルベロス達全員に順に視線を向け河童は自信を込めて言う。
「そっちで白黒つけようぜ。全員纏めて相手になってやるからよ」
 河童の言葉に周りのケルベロス達も腰を上げ、武器を構える。
 ケルベロス達の準備が出来たのを確認すると河童は地を蹴り、グラムへと襲い掛かる。


 先程までとはまるで比べ物にならない河童の鋭い突き出しがグラムの胸元を穿つ。
 倒れることだけは免れ踏みとどまったグラムへとさらに追撃をかけるべく、河童が踏み込む。
「空間に咲く氷の花盾……皆を守ってっ」
 鈴の詠唱が終わると同時、河童の突き出した掌の目前に氷の花が咲く。
 それは河童の突きを防ぎ、次々に繰り出されるそれらをことごとく防ぎきる。
 舌打ちを残し河童は退く。
 それにあわせるようにユルの声が響き、白衣が揺れる。空を切り飛ぶのは掌ほどの硬質な一枚のカード。
「我が魔力、汝、救国の聖女たる御身に捧げ、其の戦旗を以て、我等が軍へ、勝利の栄光を齎さん!」
 浮かび上がるのは戦旗を手に声無き叫びを上げる、女性の姿。
 無音の勝ち鬨に突き動かされるようにケルベロス達は河童へと一斉に攻勢をかける。
「やるのです」
 主人の命を受け、先陣を切るマークザインは河童へとむけ悪路を猛然と突き進む。その車体を河童がかわした先、そこにリューズベルトは狙いを定めている。放たれた幾本もの黒鎖が河童へと襲い掛かり、その手足を一瞬で締め上げ。すかさず秋津彦の放った飛び蹴りを、河童はなんとか防ぐものの、その体勢は大きく崩れている。
「居竦め、この一撃の元に!」
 強い踏み込みとともにグラムの振り上げた拳が炎を纏い唸りを上げる。力を込め握りこむ拳は、先程までの張り手とは比べ物にならないほどの威力を持って河童へと襲い掛かる。吹き飛ばされた河童は小川へと勢いよく叩き込まれ、水面に沈みそのまま浮かび上がってこない。
 ケルベロス達が警戒を解かないまま包囲を狭めていく途中、飛沫を上げ水中から飛びかかった河童が再びグラムへと強襲をかける。
 それに反応した赤煙は反射的に黒鎖を操り防御の陣を展開、さらに向かい来る敵を迎撃すべく菜恵が割り込むように河童に対し踏み込む。
「嬢ちゃん、急に飛び足すと危ねぇぞ、河童とて流れには逆らえんのぜ?」
 河童の手が菜恵に触れた瞬間、まるで冗談のようにその軽い体はあっさりと投げられ頭から地へと落とされている。
 受身すら許さない高速の投げに対し、菜恵は鎧であるオウガメタルを瞬時に解放し体を支えるように展開、衝撃を殺すと同時体勢を立て直す。
「オウガメタルって便利だよね! 重厚な鎧だけど重さがないなんて!!」
 地に足を付いた瞬間、そのまま翼を羽ばたかせ菜恵は前へと自らの体を押し出す。
「行くよ、タマ! 融合だぁ~!!」
 その声に応え、彼女の頭上に位置するボクスドラゴンのタマが鳴き声をあげ彼女の頭上に座し、ともに敵へと突撃を試みる。
 大槌を斜めに振り下ろし、避けられたと見るや体を回し横殴りの一撃へ、防御された瞬間、今度はそこを支点に羽ばたき、縦に体を回し上段からの振り下ろしと、体に似合わぬ巨大な武器を振り回す菜恵の攻撃は河童を釘付けにする。
 激しく鳴り響く戦いの音色に、添えるように流れるのはカリーナの奏でるフルートの音色。軽やかな音は聴く者の心を研ぎ澄まし、その狙いを確かなものへと変える。
「枉事罪穢、祓い捨てる――金輪奈落に沈んでいけ!」
 菜恵の相手に集中していた河童が秋津彦の動きに気づいた時にはもう遅い。
 眩い白光が河童の目を焼き、秋津彦の振るう刃が河童の体を縦横無尽に撫でていく。研ぎ澄まされた感覚により振るわれる太刀は荒々しい連撃ながらも手元を狂わすことはなく、精確に敵の急所を切り払い、落とし、そして鞘へと帰る。
 切り刻まれた河童の体はモザイクの断面を晒しつつ、地に落ちるよりも早く虚空へと溶けて消えていった。


 周辺の修復を終え、すっかりと元の静けさを取り戻した川原では秋津彦がきゅうりを供え、リューズベルトと莱恵の二人はその後ろに並び手を合わせている。
「目が覚めましたか?」
 そのすぐ近くで、少年を介抱していた鈴が彼が目を覚ますのに気づくと、リューズベルト達も心配するようにそちらへと駆け寄り、少年の安否を確認に向かう。
 少年の方は目を覚ますと、見知らぬ沢山の顔に慌てふためくものの、鈴から渡された冷たいお茶で息つくと、歳相応のやんちゃな少年らしく、落ち着きなく事情の説明を聞き、自身に起きた体験に些かの興奮を覚えているようだった。
「今回は何事も無くて済んだが、山に一人で行くのは感心しないな」
 釘を刺すグラムの言葉にも少年は唇を尖らせるだけで、反省の色は見られない。
「お兄ちゃん、ちゃんとお話はきかないとダメだよ!」
 そんな少年も、自分よりよほどしっかりとした年下の莱恵の言葉に対してはそういった態度を取るわけにもいかず、しぶしぶとケルベロス達に迷惑をかけた事に対し頭を下げる。
「こういうことに興味を持つこと自体は悪くないですの」
 少し落ち込んだ様子の少年にリューズベルトフォローをいれ、少年の体調に問題がないことを確認すた一行はゆっくりと下山を始めた。
「河童を見つけられなかったのは残念でしょうが、未だ明らかにならない神秘は数多くあるのです」
 歩きながら赤煙がかける言葉に少年は、頷きを返し既に冬の予定を考えているのかメモにさらさらと何かを書き足している。
 それを微笑ましく見つめながらも、ユルは心配するように誰にとも無く呟く。
「今回みたいに他のUMAに興味を持った人達も狙われるのかな?」
「ありえると思うの。カリーナも本物なら河童とか、猫又とか見てみたいと思うの。そういう人沢山いると思う」
 カリーナの言うとおり、そういった話に興味を持つ人は後を絶たない、それを制限する手立てなどはなく、二人は難しい顔をする。
「そうしたらまた、退治しにくればいいんだよ!」
 そんな二人の悩みに単純明快な答えを出した莱恵に、ケルベロス達は思わず笑みを零さずにはいられない。
 いずれたどりつくべき首謀者の姿は見えずとも、彼等の顔に陰りはなく、今はただ無事に事件が片付いたことに胸を撫で下ろすばかりだ。

作者:雨乃香 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年8月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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