「あら、この場所で縁のあるケルベロスとデウスエクスが戦いで縁を確かめあっていたのね。殺し合う中で、彼らは何を思ったのかしら?」
人気の無い路地裏に、姿が四つ。
奇妙な事に足音は一つで、なお奇妙な事に三つは空に浮かんでいた。
「折角だから、あなたたち、彼を回収してくださらない? 何だか素敵なことになりそうですもの」
ただ独り足音を響かせてやってきたシスター姿の女は、共をしていた三つに声を掛ける。
掛けられた言葉に異存はないのか、スーっと三匹の空飛ぶ怪魚が道を翔けていった。
怪魚は青白い光を発し、空を泳ぎ回る三匹の描く奇蹟が、まるで魔法陣のように浮かび上がった。
『アルジェ……ント? 違ウ、アマル……ガガガガガ!!!』
シスターが彼と呼んだナニカが、魔法陣の中から蘇る。
だが、完全に蘇生する事は不可能なのか、それとも最初からその気は無いのか……。
人間と呼ぶには少々、歪な形をしていた。
体を結ぶ荒れ果て姿はまるで獣の如く、知性すら感じられぬ、まさに獣だ。
太刀持つその手は朽ちて取り零し、湧きあがる力が、まるで嵐の様に周辺を破壊し始めた。
●
「ケルベロスに倒されたデウスエクスを、蘇生させて回っている女の話は知って居ますか? その女の指示で、怪魚型の死神がとある……デウスエクスを蘇らせたようですね」
ユエ・シャンティエが地図とレポートを手に、解説を始めた。
地図には矢印状のマーカーが記載され、幾つかのポイントが丸でくくられている。
レポートは過去の依頼……それもあまり時間の経過してない物であり、本人かはともかく身内に関わった者もいるかもしれない。
「今回は死神のサルベージ作戦を防ぐための戦いになります」
ユエはそういうと、関心を持つ者たちに地図とレポートを手渡した。
その他の面々が自体を飲みこんだ処で、続きを話し始める。
「敵の数は四体で、うち三体は噛みついて来るのがメインの怪魚型の死神です。問題なのは残りの一体ですが……良くも悪くも荒らぶる権能に変異強化されていることが特徴でしょうか」
ユエはまず、ブラックコーヒーと、角砂糖を三つほど並べた。
角砂糖三つを怪魚型だと例えながら、残るブラックコーヒーに牛乳を注ぎ始める。
「良くも悪くもと言いましたが、長所として地力全体が強化されていますので、元の力を考えれば相当な物でしょう。短所ですが……元もとは的確に状況を見定めるタイプのクレバーな戦いをされる方だったようですね、これが知性無く暴れるだけの存在と化しています」
牛乳を注がれたブラックコーヒーは、既にカフェオレを通り越している。
分量的には相当に増えているが、元からあったブラックコーヒーの香りは完全に飛んでしまっていた。
そして、カフェオレと呼ぶには、投げ出された角砂糖が入れられていない。
元の良さを無くし、相互の連携を持っていないのだと、簡単に説明して見せた。
「最初に手にしていた業物の武器は失われている様ですが……螺旋忍群の術と扱い慣れた武装程度は再現しているかと思います。一見、無手に見えても、くれぐれも油断はなさらないようにお願いします」
最大の武器である知性も、メインウエポンも無くした存在。
だが、もともと強い個体らしいのに、地力そのものが向上しているのだ。
知性が無い事も悩みがなくなったという事でもあり、確かに油断はできないだろう。
「師匠が……ソレが師匠と呼んでいいのか別にして、時間さえ都合がつけばなんとかしたいね。武装に関しては、おそらく手裏剣当たりかと思う」
渡された資料を確認したアマルガム・ムーンハート(ダスクブレード・e00993)は、苦い顔をして立ちあがった。
彼は前回の戦いに置いて、手を下した……ようするに直接戦った男である。
ましてや、因縁のある宿敵と呼べる存在であるようで、真実の全てでないにしろ知っている事もあるのだろう。
「いずれにせよ、死したデウスエクスを復活させ、更なる悪事を働かせようとする死神の策略は許せません。どなた様も、よろしくお願いしますえ」
ユエはそう言って、アマルガムに黙祷しつつ、話を聞く全員に軽く頭を下げた。
そして相談やスケジュールの確認等を背に、出発の準備を始めたのである。
参加者 | |
---|---|
花道・リリ(失せモノ探し・e00200) |
アギト・ディアブロッサ(終極因子・e00269) |
ハンナ・リヒテンベルク(聖寵のカタリナ・e00447) |
アマルガム・ムーンハート(ダスクブレード・e00993) |
カルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112) |
ルイ・コルディエ(菫青石・e08642) |
勢門・彩子(悪鬼の血脈・e13084) |
望月・護国(鱗は二度揚げで食べれる・e13182) |
●
「魚。ということは、その後ろに……あれですか」
怪しげな光が、夜の闇にチラリと見える。
カルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112)が行く先に目線を流す。
「驚くかは別にして奇襲すれば、手分けし易くできそうですね。暑い夏といえばホラー、ホラーといえばゾンビ。見事ヘッドショットを決めれる様に頑張りましょうか」
「再生怪人は速攻で倒されるのがお約束なんだけど、パワーアップタイプには苦戦させられるのもお約束よね」
カルナが敵の行方を確認しながら、気がつかれないように灯りを消しておくと、ルイ・コルディエ(菫青石・e08642)は付き合うことにした。
中二病くさい例えを挙げつつ彼女も一時的に消しておく。
「まあ……なんであれ、倒すのには変わりないけれど……とりあえず回りこもうか」
言いながらルイは路地裏を回り込んで奇襲できそうな場所を探った。
できれば今回の当事者たちが、本懐を果たせるようにと思いながら……。
やがて当事者たちも倒す、いや開放すべき宿敵の姿を見つけた。
「本当に……。訳も分からず アム自身の手で失くしてから、それなりに日も経って落ち着いてきていたのに また……?」
「俺が……あの時追いてっちゃやだよって言ったから、戻ってきちゃったんじゃっ……。思うんだ、俺の弱さが師匠をこの大地に引き止めたんじゃないかって」
ハンナ・リヒテンベルク(聖寵のカタリナ・e00447)とアマルガム・ムーンハート(ダスクブレード・e00993)はそっと寄り添った。
震える肩が触れ合い、握っても無いのに、手の温かささえ思い出せそうな気がする。
そして寄り添いあった二人が思い出すのは、ごしごしと頭を撫でる、『当時』は大きな手だ。
「でも……。いや、だったら……俺の、俺たちの手で決着、つけるよ。今回はハンナもいる、二人の成長した姿、師匠に見せてやるんだ!」
少年は撫でる乱暴な手つきと、ぽかぽかと叩いた自らの握り拳を順番に思い出す。
思い出の終着点は当然、胃や肩に咲く、花のような痛みだ。
「……今度は 心の準備 少しできてるみたい、ね」
幻の痛みをこらえる肩に、少女の柔らかな肩が再び触れる。少女が思い出したのは優しい手つきと、ちょっぴりエッチに将来を期待する言葉だ。
どうしてこんな事に……という言葉を飲みこんで、見守るだけでなく共に行こうと幼馴染にそっと誓う。
「あー、うん。甘い物で緊張を解しておくと良いのである」
「(場を和ませたつもりか……だとしたら、随分と不器用だな)」
無愛想な顔で望月・護国(鱗は二度揚げで食べれる・e13182)がクッキーを、その場に居る仲間達に渡していた。
アギト・ディアブロッサ(終極因子・e00269)はその様子を観察しつつ、どうしたものかと頭をポリポリ。
痛ましい雰囲気を押し流す優しさであると同時に、世間一般には末長く爆発しろと言ったも同義語である。
「もらっとく。……シンプルに縁が深い奴、無念を抱えたであろう敵、人形遊びのように原形すらとどめなく改変された骨共。強化具合についてもそうだが、どこまで、何が出来るのかも分からんのが怖いところだな」
アギトはこの件へ関して傍観に徹する事を決めると、無表情でクッキーを受け取った。
そしてさりげなく、話題をネクロムに移す。
人の心理状態から、そうする方が良いかと配慮した結果だが……。
「もらうよ」
「もらうね」
当事者たちは、ほぼ同時に笑いあっていた。
今宵の戦いは、倒す為の戦いでも、心に決着を付ける為の戦いでも無い。
悲しみと苦しみから解放する、剣の物語である。
たとえ銀の涙が、血に濡れて居ても……。
●
「死神はやる事が下衆だな。まったく許せん話だ」
パムと鈍い音を立て、掌が叩きつける拳の音を吸い取った。
怒りと不快感をこらえ、勢門・彩子(悪鬼の血脈・e13084)は常と違う音にすら眉を跳ねあげる。
奇襲を悟られては、万全の態勢を整えられてしまうかもしれない。
もちろん全力で戦うだけなら構わないが、できれば当事者たちだけで……というのは、他の仲間たちとも共通していた。
「死神は。毎度毎度再利用ご苦労なこと。死んだ奴は、寝かしておきなさいとでも言いたいわ」
言いながら花道・リリ(失せモノ探し・e00200)は、またやってしまったと反省する。
せっかくもらったクッキーを、味わいもせずにガリガリと咀嚼したのだ。
お礼もまだ言って無いのに……と思いつつ、不快さごと呑みこむ。
荒く噛み砕いた事もあり、喉を通る濁った感覚が、より一層に不快さを引き立てるのは自業自得。だが大切な者を奪われたという話は彼女にとって許容できるものではない。
「仕掛けてOKだって。お願いしますとか言ってた。みんな先に行ってて、負傷を確認してから、まぁ、私は真っ向から正々堂々ぶっ倒すわ!」
「なら行きましょうか。まったく……ちょろちょろと鬱陶しいのよ」
ルイが灯りを付ける準備をしながら仲間の言葉を伝えると、リリは頷いて石化の魔力を発動させた。
まずは怪魚を調理しましょうと。不味そうな顔を浮かべて、通りを進む敵に魔力の波動を浴びせかける。
「こっちは大丈夫だと思うけど、大将の動きには注意して」
「判ってる。愉しむのは後で……な。縁のある相手がこのような状況とは少し同情するところだ。欲しがる人材と言えるのかもしれないが……」
リリの忠告に頷きながら、彩子は同じ様に怪魚へ踊りかかった。
全身を独楽のように回して、鉄塊のような剣を叩きつける。
その間も目線は敵後方から決して反らさず、溢れる殺気と力の奔流を睨んだ。
奇襲可能にも関わらず、通りを正面から推しかかる。
そう、彼女達は囮なのだ。
敵の配地を正面に引き付け、横合いから別グループが動き出した。
「ここは通行止めであるよ、星は全てを見て居るのである」
護国は手にした星を輝かせた。
準備中の流体金属が盛り上がり、まるで小さなプラネタリウムのようではないか。
「ここは任せて行け。てめらの縁なら、てめえらで片くらい付けろ」
刃を担いだまま、アギトは親指で後方を示した。
護国と共に放つ、星の輝きが少年と少女を包み始める。
同時に怪魚が動き出すが、アギトと護国は頷きあってそれぞれ左右に散った。
守るべき者を守り、進むべき運命を守るために。
「アム、まもりたいお師匠さま、解放したい。でも、先に数を減らすの……。だから、どいて!」
とつとつとハンナは呟きながら、邪魔する怪魚を横合いからブン殴った。
掌底に集めたグラビティが、鱗を波の様に震動させる。
「お師匠さま……やめて、おもいだして……!」
引き剥がした魚を前に、ハンナは嵐の様な姿に声を掛けた。
その隙を縫って、運命が交錯する。……まるでローブを着て居るかのように、像がボヤけた姿。
『アマテラ……、アマルガがが!!』
「昔を思い出すな……。しゃべっ……!? 師匠! 戻って来てよ!」
1オクターブの音が、幾つもの音程で聞こえたような気がした。
アマルガムは思わず寒いとすら思いつつ、臓腑が揺れる振動を精神力で抑えつけた。
強烈な痛みを、増幅された精神力で押し返す。
言葉が届くと信じた言葉が、ほんの少しだけ敵の武器である震動を抑えたような気がしたのは、虫が良いだろうか?
いずれにせよ、戦いは始まったばかりである。
●
「トドメお願い。『ぶち抜くわ。』……同じ事を繰り返されると凄く面倒な事になりそう。……さっさと元を絶ちたいわ」
「一つ目。魚は……一匹でいいんでしたっけ? まあこのレベルなら、匹で十分ですよね」
ルイが白炎を通り越して透明化した炎剣を放つと、カルナは追い打ちで重砲を放った。
それは仲間達が繰り返す攻撃と共に吸いこまれ、一体目の死神を破壊する。
点灯し直した光が、魚河岸に揚がった魚の様に、怪魚のシルエットを不気味に映し出していた。
「ふふん、ユユウジョウパパワー! の真髄を叩き込んだってところよね。メディックだって舐めちゃだめって……とと、本来の役目に戻らないと」
得意げに見降ろすルイであるが、ディフェンス陣やサーバントでは癒しきれないと、本来の役目に戻ることにした。
もともと今回は、時間をかけない為に、呼吸の判るカルナであることおまって攻勢に回っただけなのだ。
「……生前がどうとか僕には興味ありませんね。醜態を晒す前に綺麗に塵と消える事をお勧めしますよ」
味方は色々考えて譲っているようだが、カルナはあまり頓着していなかった。
だいたいからして、敵の方は遠慮などしない。
現に今も、心情を無くした敵はこちらの前衛が固まっている処に、範囲攻撃を叩き込もうとしているではないか。
ならば遠慮は無用、手出し無用とまでは言われないので、躊躇せず横槍を入れることにした。
その頃、一同の努力と思いが、圧倒し始めたかに見えた。
だが世界を守る猟犬たちよ、思い知るがいい。
ここに居るのは元より強力な相手を、更に、変異強化した正真正銘のバケモノである。
『敵陣ヲ……ブラスト。ブレイク、ダウン』
「ぐ、うおおお!」
活躍する気など無かったが、アギトは思わず咆える。
戦い挑む仲間では無く、巻き込まれた仲間を庇ったつもりだが、ろくでも無い力を四方から感じたのだ。
震動波など見えないが、ケルベロスの近く力もあり音の方向で、咄嗟に割って入った。
だが脚を留めた瞬間に、本体も突入して撹乱させる為に交差させる、三プラス一の震動、クアトロ・オクターバー。
「大丈夫か? ちっ。人間と戦ってる気がしねえ」
庇われなければ本来直撃するはずだった彩子は、その効力に戦慄した。
絶対的な意思を持って立ちあがったはずのアギトの足が、叩き込まれた震動で震えているのだ。
たった一人を殺す為の技ではなく巻き込むだけの技なのに……はっきり言って、まともな相手では無い。
「弱点はねえのか? さっさと叩き潰さねえと全滅しちまうぞ? 魚どもも倒しきれてねぇのに」
「嬉しそうな顔しないの……。残念な事に隙だらけよ。範囲は広くて威力もそこそこ、だけど組み立ても何もかもバラバラ。本来は単独で使うもんじゃない技を、単に効率が良かったから使っただけ」
我知らず、彩子は絶対的な脅威に向かって、獰猛な笑顔を向けて居た。
早く戦いたいと笑う彼女に、リリは溜息もついて解説する。
戦闘狂めいた仲間はそれで良いのだろうが……、これが知性を持って脅威を為した相手のやることとは思えなかった。
「……知恵ある者が無残な姿ですこと。アンタも不本意でしょうに」
不機嫌を顔に刻みつつ、リリは頭を振って腰を落としたまま怪魚に鎌を投げつける。
そしてバールを準備しながら、ソレを杖にして立ちあがるのだ。
「うっし、とっとと魚どもを片付けるぞ!」
「残念ですがゾンビは無双される運命にある事を教えてあげましょう。……ただの足止めですよ」
彩子が横っ跳びの裏拳から斬撃を繰り出して死神を殴りつけるが、カルナは動きを留める為にフランツへ飛び蹴りを浴びせて居た。
一足飛びに間合いを詰めて、体重さえ感じさせない蹴りは見事に決まった。
同時に打ちこんだグラビティが、フランツをその場に縛る。
縁ある者同士で済めば良いが、敵にはそのつもりが無い。向かってくる敵を放置できないのもまた、真実であった。
●
『――咆哮『縫い付ける咎』。』
竜声、あるいはブレス。
犬の遠吠えに退魔の霊力が、竜の咆哮には更なる力が在ると言うが、護国の放った言魂が怪魚を縫いつけた。
「やれやれだ。これでようやく二体目とはな」
アギトは外見を先に、次いで内側を外面に一致させるように治療すると、できた余裕で凍気を叩き付ける。
先ほど強烈な攻撃を食らわねば既に倒していた事を考えると、苦笑せざるを得ない。
もし理性があってケルベロスと同レベルの連携もしてたら、とっくに全滅していただろう。
「強化とは、そこまで都合良くないのではないのであるか? 知性があって話に聞いている御仁であれば……おっと、攻撃は届かせぬであるよ……!」
「だな。連中を足止めにつかって、とっくに目的果たしてトンズラこいてるか。……悩む前に三体目を処分する」
護国にカバーを任せながら、アギトは知り合いの顔を思い出した。
どう扱って良いか判らぬ曖昧な思いを、さっさと戦いを終わらせることで片付けることにする。
さて、肝心要の少年たちは……。
『黄龍、黄帝? 勅令ニヨリテ春の蒼帝よ秋の白帝へ……力をヨコセエエエ!』
「そんな、あれは俺の……。本当に盗んだのか? 違う違う違う」
愛刀の代わりに烈風の剣を握り、周囲に稲妻の剣を配置する様は、アマルガムが銀の車輪の力を借りる技に酷似している。
……息ができない。
螺旋忍群は技盗っ人、師ではないとしたらと言う仮定を、この期に及んでアマルガムは信じて居なかった。
だが、その惨めな思いを、掛けられた歌が粉砕する!
そっと抱き締める腕が震えている。
「違うわ。見たことあるもの、原型が同じなら覚えた技が似てても変じゃないでしょ? 借りる力が違うから細かい所は違うし……ちょっとだけ任せてね」
楽しかった思い出を詠いながら、震えを殺してハンナは手を離した。
知らない敵ならば恐ろしい、知っている味方なら殺したくない。
「いけよ。救うのも悩むのは任せた、こっちはきっちり仕事しとく」
「思うのは彼らの役目だしね、終わったら修復してさっさと帰りましょ」
「知性的に逃走とか無いとはいえ油断は禁物だよ。左右から押し込もうか」
彩子が炎と共に親指あげて送り出すと、再びルイとカルナが魚に向かった。
見れば護国やアギトも動き出している。
「ケアは任せたわよ。『この世の何より優しい夢を。』さっきのカルロじゃないけど、ほんのちょっとだけ」
リリは甘露の如き夢で、苦痛を書き換える。
唄うのは挽歌、ならば次なるリクエスト曲も決まっている。
「右も左もまっ暗闇だけど『善も 悪も 今はただ 総てを還し… 時よ凍れ わたしは…護る』今守るのは師匠、そして……アム!」
ハンナは足元に氷で白き花を咲かせ、刻と共に苦しみを凍らせる鎮魂歌を詠いあげる。
それは殺人芸などではない、気がつかれないように涙を隠し、サヨナラを込めて安寧を祈る歌だ。
「我が憂鬱はこの日を境に極まれり。フランツ、汝がゆく道を……悟れ。俺は俺の道を行く!」
アマルガムは氷に対為す炎を剣にまとって、既に飛び出していた。
同じ様な技を同時に創り出していた……。追いかけて居た自分は、とうに並んでいたのだ。
剣劇が奏でる歌を聴きながら、剣で作り上げる物語りに幕を降ろす事にした。
彼が太刀を放り出して啼き笑う意味は、もはや語るまでも無いだろう。
作者:baron |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年9月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 6/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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