強襲グランネロス~黒の少女

作者:雨音瑛

●追跡
 森の中を、人影が駆け抜ける。赤いマントの少女のがひとりと、機械的な外見の者が数人。全て、ダモクレスだ。
 彼女たちは、辺りを見回しながら木々の間を走り抜けてゆく。
「グランネロスから中枢コアと、グラビティタンクを奪うなんて……やってくれたわね、阿修羅クワガタさん」
 そう呟く少女は、渋面を作る。妙に人間らしい表情だ。
 彼女たちが進んでいく中、不意に響くのは電子音。少女宛の通信のようだ。少女は足を止めず、通話を開始する。
「はい、こちらエクスガンナー・ニュー。……グランネロスに襲撃者? ドクターエータ、詳しい情報を」
 ニュー、と応答した少女は眉間にしわを寄せ、配下へと視線を向ける。
「あなたたちは阿修羅クワガタさんの追跡を続行して。私はグランネロスに戻るわ、数体ついてきて頂戴」
 ニューはいっそう厳しい表情をし、踵を返して駆けてゆく。その後ろを、スーツを着たようなアンドロイド数体が付き従うのだった。
 
●ヘリポートにて
 真夏の日差しが照りつける、ヘリポート。ケルベロスたちが到着したのを見て、ウィズ・ホライズン(レプリカントのヘリオライダー・en0158)は説明を始めた。
「ローカスト・ウォーで生き延びたローカストである阿修羅クワガタさんが、気のいい仲間達と共にダモクレスの移動拠点を襲撃したようだ」
 ダモクレスの移動拠点は「グランネロス」という名称で呼ばれる全長50mの巨大ダモクレス。その内部を拠点として「エクスガンナーシリーズ」と呼ばれるダモクレスが活動していたらしい。
「阿修羅クワガタさんは、グランネロスに蓄えられていたグラビティ・チェインを狙って襲撃したものだと思われる。人間を殺して奪うのではなく、敢えて強敵であるダモクレスを襲撃して強奪……そこがナイスガイと呼ばれる所以なのかもしれないな」
 ウィズは小さく頷き、話を続ける。
「グランネロスの中枢コアとグラビティタンクを奪われたダモクレス側も黙ってはいない。どうやらグランネロスに最低限の護衛を残し、エクスガンナーシリーズの全戦力を阿修羅クワガタさんの追跡のために出したようだ。私たちにとってはグランネロス攻略の好機、というわけだな」
 この機会を逃すわけにはいかない。誰もがそう思い、視線を交わす。
「グランネロスの攻略は簡単ではない。グランネロス襲撃の連絡がエクスガンナーたちの耳に入れば、彼らは帰還してしまうだろう」
 そうなれば、グランネロスの攻略は失敗となる。
「作戦を成功させるためにも、エクスガンナーを迎撃しての足止めを君たちに頼みたいのだ」
 グランネロス制圧までの時間を稼ぐことができれば、作戦は成功。敵は逃走するという。
 しかし、敵はエクスガンナーだけではない。量産型ダモクレスを配下として従えているため、勝利するのは戦力的に難しいだろう。
「エクスガンナー撃破は不可能ではない。しかし、無理に撃破を狙い敗北した場合、エクスガンナーはグランネロスを攻略しているケルベロスの元へ向かい、敵増援として合流してしまう。まずは敵の足止めをしっかりと行って欲しいところだ」
 足止めを頼みたいダモクレスの詳細は、とウィズは掌の上に少女の立体映像を出した。一見、黒髪の少女。だが、その体はどこからどう見ても機械、ダモクレスだ。
「彼女は『エクスガンナー・ニュー』。能力は高いが、それ以上に感情表現の豊かさと交渉能力に重点を置かれている機体だ。加えて、彼女の配下であるダモクレスが8体。こちらは『ガンドロイド』という機体で、銃器の扱いに長けている」
 ニューの使うグラビティは3つ。腕に装備された銃で接射するグラビティ、頭上にエネルギー球体を発生させてレーザーを発射するグラビティ、腰部から生えたスタビライザーに冷気を纏わせて回転しながら斬りつけるグラビティだという。
 ガンドロイドは4体がバスターライフル、もう4体がガトリングガンのグラビティを使用する。
「彼女たちと戦うことになるのは、グランネロス襲撃開始から10分ほど後になる。グランネロス攻略が順調であれば、7分以上の足止めで役割を果たせるだろう。理想は、グランネロスが撃破されるまでの足止めだな」
 しかし、7分以上時間を稼いだ上でなら撤退という選択もできる。状況に応じて判断して欲しい、とウィズは掌の立体映像を消した。
「移動拠点グランネロスは、戦闘形態に変形する可能性がある。万が一、戦闘形態への変形が確認された場合はグランネロス攻略チームの支援に向かう必要があるかもしれないな」
 では頼んだぞ、とうなずき、ウィズはケルベロスたちをヘリオンへと促した。


参加者
エルネスタ・クロイツァー(下着屋の小さな夢魔・e02216)
ラリー・グリッター(古霊アルビオンの騎士・e05288)
四方・千里(妖刀憑きの少女・e11129)
志場・空(シュリケンオオカミ・e13991)
ガンバルノ・ソイヤソイヤ(リペイント・e18566)
エリオット・アガートラム(若枝の騎士・e22850)
レピーダ・アタラクニフタ(窮鼠舌を噛む・e24744)
ロージー・フラッグ(ブリリアントミラージュ・e25051)

■リプレイ

●相対
 ドクターエータから連絡を受け、エクスガンナー・ニューとガンドロイドはひたすらに急いでいた。ニューの表情には、焦りが浮かんでいる。
「グランネロス襲撃から13分……間に合うかしら」
「なにをいそいでいるのかな?」
 ニューの前に立ち塞がるのは、エルネスタ・クロイツァー(下着屋の小さな夢魔・e02216)をはじめとしたケルベロスたち。
「ッ、ケルベロス——!」
 ニューは渋面をつくり、視線でガンドロイドたちに合図を送る。すると、彼女を護るようにガンドロイドたちが展開した。そこからニューが踏み出す。腰部から生えたスタビライザーに冷気を纏わせ、エルネスタへと肉薄する——が、ラリー・グリッター(古霊アルビオンの騎士・e05288)が身を挺して庇う。
「簡単に倒せると思わないでくださいね!」
 強い意志を秘めたラリーの視線は、真っ直ぐにニューへと注がれている。
 ガンドロイドたちも攻撃を開始した。前衛のガンドロイドが見舞う弾丸の嵐、中衛のバスターライフルから撃ち出される魔法光線や凍結光線が、容赦なくケルベロスたちを襲う。
 弾丸を受けながらも、ガンドロイドに神速の突きを繰り出すのは四方・千里(妖刀憑きの少女・e11129)だ。
「遅い……それじゃ防げない………」
 千里が日本刀「妖刀”千鬼”」をガンドロイドから抜くと、ラリーは片手を掲げてヒールドローンを飛ばした。なるべく足止めだと思わせないために、と——。
「回復も、全力でいきます!」
「では私も……お聞きください。名曲ですよ?」
 ガンバルノ・ソイヤソイヤ(リペイント・e18566)の口から零れる歌は「Leck mich im Arsch」。偉大な作家への敬意と共に病や悪魔、悪意をはね除けんと紡がれる。
 ケルベロスたちの狙いは、グランネロス担当班を成功させるための「時間稼ぎ」。そうなれば、何としても耐えることが肝要。
 盾役の負担を少しでも減らそうと、レピーダ・アタラクニフタ(窮鼠舌を噛む・e24744)とエリオット・アガートラム(若枝の騎士・e22850)は、大量の紙兵を散布する。
 志場・空(シュリケンオオカミ・e13991)は仲間を一瞥し、ケルベロスチェインで魔法陣を描いた。
「……初の撃破が目的ではない持久戦、何が何でも耐えぬいてやる」
「ええ。任務、きっちりこなしていきましょう!」
 独り言じみた空の呟きに同意を示し、ロージー・フラッグ(ブリリアントミラージュ・e25051)はお返しまがいの弾丸の嵐をガンドロイドに撃ち込む。重ねて、エルネスタの縛霊手「エルのミシンハンド2.85」から巨大な光弾が放たれた。
「ずいぶんな気迫だけど、いつまで持つかしら?」
 目を細め、余裕の笑みを見せるニュー。
「そっちこそ、わたしたちあいてにいつまでもつのかしら?」
 エルネスタはエルのミシンハンド2.85を構え直し、不敵な笑みを浮かべた。

●足止め
 攻めより守りに重点を置いたケルベロスたちは、少しずつではあるがガンドロイドにダメージを蓄積させてゆく。
 凍結光線をかいくぐった千里、その手にある妖刀”千鬼”が加速する。
「死出に咲くるは死人花…その身体に刻んであげる―――千鬼流……奥義」
 引力と斥力をリニアのように切り替える高度な重力操作により、瞬時に斬りつけるその回数は42。いっそ一度しか斬りつけていないように見えるその技は、残身ののち、ガンドロイドの身体にはオイル——人間でいえば血液だっただろう——の彼岸花を咲かせた。直後に倒れ、砕けるガンドロイド。
 まずは1体、撃破だ。とはいえ、ニューの余裕の表情はまだ揺らがない。そんなニューの余裕を崩そうと、Leck mich im Arschを歌い終えたガンバルノは問いかけた。
「阿修羅クワガタさんの居場所、知りたくないですか?」
 ニューは交渉や感情表現に長けたタイプとヘリオライダーが言っていた。
(「であれば、交渉をするふりをして時間を稼げないでしょうか」)
 一瞬だけ眉をぴくりと動かしたニューを見て、ガンバルノは言葉を続ける。一分でも多く時間を稼ぐため、緊張、恐怖、そういったものをおくびにも出さないように。何より、仲間のために。
「グランネロスの襲撃なんか知らないふりして、グラビティコアを回収したいのでは?」
「交渉のつもり? そういうのは、優勢に立ってから言うものじゃない?」
 ニューがガンドロイドとケルベロスを見て言う。いまのところ、ケルベロスたちは守りを重視している。ガンドロイドたちこそいくらか消耗しているものの、ニューは無傷だ。
 ガンバルノが口にした名前「阿修羅クワガタさん」に、エリオットも思うところがあった。
 弱い一般人から搾取するのではなく、強敵と戦うことを望む阿修羅クワガタさんの行動原理は、これまで戦ってきた他のデウスエクスとは大きく異なっている。
(「出来ればザイフリート王子のように、いつか僕たちの味方になってくれると心強いのですが……」)
 しかし今は、目の前の危機に注力を。紙兵を中衛に向けて散布し、少しでも戦線を維持できるように。
「ほら、僕らの生きる世界はこんなにも輝いている!」
 ロージーが歌うのは、弾むようなアップテンポのポップサウンドに乗せた曲。様々な色彩と明るい夢と希望に彩られた世界の美しさを、敵の目を引かんとばかりに派手な振る舞いで空へと歌い上げる。
 ラリーが再三にわたってヒールドローンを飛ばせば、エルネスタも薬液の雨を降らせる。
 唯一の癒やし手である空は、前衛で盾役をしている仲間の様子を観察する。そして、最も傷ついているラリーへと、満月に似たエネルギー光球を放った。
「ありがとうございます!」
「回復は任せて」
 礼を言うラリーに短く返答し、空は再び仲間の様子を観察する。次に攻撃がきたら誰が危なそうか。傷の具合、疲弊具合などを、常に確認し、的確に癒やせるように。
 敵の攻撃は熾烈だ。回復がしっかりしていれば、攻撃も遠慮無くできるというもの。
「それじゃ、レピちゃんは攻撃いっきまっすよー! 歌って踊ってジャマーもできる、それがアイドルです」
 レピーダの掲げたファミリアロッドから放たれる火の玉が、敵方の中衛で炸裂した。
 レピーダはちらりと無傷のニューを見る。レピーダとしては、手堅く足止めのみで行くつもりだ。とはいえ、戦況や仲間の意見によって判断していきたいところ。
 最低限の目標である7分の半分も、まだ経過していない。どのような行動を取るにせよ、すべてはグランネロス攻略班のため。ケルベロスたちは、ニューとガンドロイドの足止めを継続するのだった。

●転機
 ロージーに接近しようと距離をつめるニューの前に、エリオットが割り込む。向けられた銃口がエリオットの胴体に触れ、そのまま引き金が絞られた。衝撃とともに、いくつかの加護が解除される。
 ロージーが礼を言う暇もなく、ガンドロイドたちが矢継ぎ早に攻撃をしかけてゆく。休む暇なく動き回るディフェンダーたちに護られながら、千里はドラゴニックハンマーを振りかぶる。
「残念……これは躱せない……」
 ごく静かな千里の言葉とともに、加速されたドラゴニックハンマーが見事ガンドロイドを叩きつぶした。これで2体目。
「これは好機」
 空がオウガメタルの装甲からオウガ粒子を放出し、前衛の超感覚を覚醒させてゆく。勢いづいたラリーが、空中に光り輝く短剣を作り出す。
「輝く刃をもって……正義に祝福を、邪悪に裁きを!」
 射出された短剣は真っ直ぐにガンドロイド目がけて射出され——見事、ガンドロイドを撃ち貫いた。これで3体目。
 攻撃を中衛に向けるのは、ガンバルノだ。自身のグラビティで倒せそう、と踏んだガンドロイドに急接近し、背後から心臓部と思しき場所を抉った。4体目。停止するガンドロイドが倒れるのを待たず、レピーダが再び火の玉を敵中衛に放つ。うち、1体が爆風に紛れて四散した。これで5体目。
 攻勢に転じる機会が訪れた。ロージーはアームドフォートを操り、前衛のガンドロイドをロックオンする。そのまま無数のレーザーがガンドロイドを灼くのを見て、ロージーはエルネスタへと攻撃を促した。
「あと少しです! さあ、続けてください!」
「しきよくまじんのなにおいてー、」
 と、エルネスタの動きが一瞬止まる。
(「『あら、ずいぶん可愛い子のお願いね』ってきこえたきがしたけど……きのせいかな?」)
 わずかに首をかしげ、詔を続けた。
「かれらのみにまとうものをすべてぬがしされー!」
 途端、ガンドロイドに強い風のようなものが吹き付ける。ガンドロイドの服が破れ、装甲が落ちる。
「追い風が吹いてきましたね。僕も攻撃に移るとしましょう」
 エリオットが聖剣を掲げる。
「天空に輝く明け星よ。赫々と燃える西方の焔よ。邪心と絶望に穢れし牙を打ち砕き、我らを導く光となれ!!」
 込めるのは、平和への祈りと人々を守護する意思。切っ先から放たれた闇を切り裂く光芒は、1体のガンドロイドを消失させた。5体目。
 これで半数以上のガンドロイドを撃破したことになる。
「これでも交渉の余地はないんでしょうね。無傷ですし」
 煽るようなガンバルノの言葉に、ニューは不快そうな表情を示した。返答の代わりに腕の銃を千里へと密着させ、攻撃を加える。やはり、交渉の余地はないらしい。

 戦闘が始まってから、7分目に突入した。目的は十分に達せられたといえる。が、ケルベロスたちは一向に退く気配を見せなかった。
 ロージーが弾丸を放ったところで、盾役のガンドロイドは全て撃破された。残るガンドロイドは1体。無傷のニューに比べ、ケルベロスたちは全員が傷を負っていた。戦闘不能となっている者こそいないものの、盾役の摩耗は激しい。
 ——それでも。武器を収めず、果敢に攻撃を続ける。

●攻防の果てに
 最後のガンドロイドを撃破したのは、千里だった。
「これで……護衛は全滅……どうするの……?」
 体勢を立て直し、千里は問う。ニューは応えず、ごく僅かに下がる。その隙を見逃さず、ラリーが達人の一撃を叩き込んだ。ガンバルノとエリオットの縛霊手から放たれた光の弾、その着弾のすぐ後にロージーがヒールドローンを展開する。ここまで来て、倒れるわけにはいかない。エルネスタが千里を、空がロージーを癒やし、ニューの攻撃に備える。
「……意地がありますからね。まだです、まだ退けません」
 冥府深層の冷気を帯びたレピーダの手刀で、ニューの腕が凍る。
「退けない? じゃあ、ここで倒れるといいわ」
 ニューの頭上に、エネルギー球体が発生する。そこから放たれるレーザーは正確にエルネスタを狙う。しかし、ガンバルノの方が一歩早かった。肩口を焼かれる痛みをこらえながら、息を吐く。体のどこが痛いのか、痛くないのか。揺れる意識で持ちこたえながら、ガンバルノはニューを見遣った。
 貫こうとする千里の動きを紙一重で交わしたニューは、笑みを浮かべてケルベロスたちを見渡す。
「まだ戦うの? 無駄だと思うけど。私があと何回か攻撃したら、あなたたち全滅よ?」
「エクスガンナーって……結構うるさいね……」
 むっとしたニューへ、さらに千里が言葉を重ねる。
「人間らしいといっても……所詮心はない……紛い物のプログラム……」
 何か言おうとしたニューを、ラリーのエアシューズ・銀靴「Shooting star」が炎の軌跡を描いた。
「まだ戦いは終わってませんよ!」
「ここまで来たら全滅を目指したいところです——!」
 ロージーのレーザーが、ニューのスタビライザーを焦がしてゆく。ガンバルノも武器を構え直し、ニューの弱点を狙って一閃する。
「まだまだ、なんだから!」
 エルのミシンハンド2.85でニューを殴りつけ、エルネスタは距離を取る。回りこんだエリオットによる「いと高き希望の星」で、ニューがうめき声を上げた。
 ケルベロスたちの攻撃は止まない。
「キュッキュリーン。共に行きましょう――レピちゃん達の、最高の舞台へ!!」
 レピーダの「満天の星」がニューを仰け反らせると、回復に徹していた空も攻撃へとシフトした。衝撃の螺旋を固めた手裏剣を放つ。
「爆ぜろッ!」
 と、ニューの横っ腹で手裏剣が爆発する。発生する衝撃波で、ニューが吹き飛んだ。素早く体勢を立て直し、ケルベロスに反撃しようと跳躍するニュー。だが、誰かの眼前ではなく、ケルベロスたちの後方へと着地する。
「……わかったわ」
 それだけ呟いて、ニューは走り去った。
「何でしょう、グランネロス側から通信でも入ったのでしょうか? ニューさん、いずれ、またステージで!」
 レピーダの声に反応はなく、既にニューの背中も見えない。追撃するまでもないだろう。
「みなさん、あれを!」
 ロージーが指差すのは、ニューが駆けていったのとはは異なる方向。そこに佇むのは、巨大ロボット。グランネロスが変形したものだ。
「行きましょう! 次のステージが待ってます」
 レピーダの言葉に、全員がうなずく。
 グランネロスへと向けて駆けだしたケルベロスたちは、時折見上げて状況を確認した。
 現地にいるケルベロスの攻撃を受けて、まずグランネロスの足が止まった。次いで、背のビーム砲が落とされる。そして、胸部への猛攻が始まる。
 不意に爆音が聞こえ、攻撃の音が止んだ。誰ともなしに、足を止める。
「グランネロスの制圧……完了みたいね……」
 千里は抜いていた刀を鞘に戻す。緊張が解けたせいか、腕の銃創が少しばかり強く痛む気がした。
「まずは役目を果たせた、というところでしょうか」
「しょうり、だね!」
 エリオットとエルネスタの顔に笑みが広がる。
 ニューの撃破こそできなかったものの、全員が無事に戦闘を終えることができた。同じ盾役として戦場を駆け回ったガンバルノと視線を交わし、ラリーはうなずく。
「任務完了ですね、ソイヤちゃん!」
「何とか耐えきりましたね。ラリーさんもおつかれさまです」
 ニューとは、いずれ再戦の機会が訪れるだろう。
 足止めの成功に、そしてグランネロスの撃破に。ケルベロスたちは、ひとまず喜びを分かち合ったのだった。

作者:雨音瑛 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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