あなたに似合うぱんつ、選びます

作者:紫堂空

●ぱんつコーディネーターの憂鬱
「なにが、いけなかったんだろう……」
 裏通りに入ったところにある小さな店の中で、三十路くらいの眼鏡をかけたさえない男が頭を抱えていた。
 店内の様子からすると、女性向けのランジェリーショップのようだが……。
 休日の日中だというのに店内には明かりも点いておらず、他の人間も一人もいない。 
「ボクはただ、皆がボクが選んだ下着で笑顔になって欲しかっただけなのに……」
 店内隅に無造作に転がされている小さなたて看板には、『アナタに似合う下着を見つけます』の文言。
 どうやらここは、訪れた女性客に店主が下着をコーディネートする店――だったらしい。
「男性客がいると気になるだろうと、女性用に絞ったのが間違いだったのか……?」
 そんな風に、自分なりの問題点を挙げてみるが、今からもう一度やり直そうという気力は残っていないらしく、ただただ打ちひしがれているばかりだ。
「なっ、あっ? がっ……」
 ――と、そんな男の前に、一人の女がいつの間にか立っており。
 手にした巨大な鍵で、店主の心臓を一突きする。
 呻き声を垂れ流しながら、倒れる男。
 だが、その体には傷一つなく、ただ意識を失っただけのようだ。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『後悔』を奪わせてもらいましょう」
 鍵を持った女、第十の魔女・ゲリュオンは静かに呟くと、被害者である男の『後悔』を形にしたようなドリームイータを生み出し、どこへともなく去っていく。
「ぱんつ、パンツ、ぱンつ……。 アナ、タの下着、お、お、お選びシマ……ス」
 女性用おぱんつをかぶり、顔の上半分を隠した、異様な格好のドリームイーターは。
 ぎこちない客寄せの言葉を吐きながら、客となる人間が来るのを待ち構えるのだった。

●夢はぱんつで出来ていた
「自分の店を持つという夢を叶えたものの、店を潰してしまい後悔している人間が、ドリームイーターに襲われる事件が起きたようです」
 ドリームイーターは被害者から『後悔』を奪い、新たなドリームイーターを作り出した。
 この『後悔』より生まれたドリームイーターが、事件を起こそうとしているのだという。
 強引に店長の座を奪い取ったドリームイーター(以下、『偽ぱんつ店長』と呼称する)は、勝手に営業を再開すると、付近を通る人間を強引に店に連れ込みぱんつを見繕う。
 そして、そのサービスに心からの満足を見せない場合、容赦なく殺してしまうのだ。
「皆さんには、実際に被害が出る前に、偽ぱんつ店長を撃破していただきたいのです」
 無事倒すことが出来れば、『後悔』を奪われたことで意識が無い被害者も目を覚ますだろうと、セリカは言う。
「標的はドリームイーター、偽ぱんつ店長一体です」
 中肉中背、被害者である店主と同じ体型であり、彼の仕事着とそっくり同じものを身につけている。
「唯一違うのは、頭に……女性ものの下穿きを身につけていることですね。
 意味は分かりませんが……これが、被害者の『後悔』を現したものなのでしょう」
 きっと、おそらく。
 セリカは力無い声で言う。
 また、顔の上半分がぱんつに覆われているものの、『視る』ことに支障はなさそうだと、セリカは補足する。
「偽ぱんつ店長の攻撃方法は、以下の三つです」
『心を抉るぱんつ』は、ぱんつで飾り立てられた『心を抉る鍵』で標的を斬り裂き、下着や身体に関するトラウマを具現化させる。
『強制ぱんつチェック』は、魔法のモザイクでダメージを与えて怯んでいる隙に、素早くぱんつをチェック。『やれやれ』というジェスチャーでダメ出しをして標的を怒らせるという、恐るべき技だ。
『ぱんつ拘束術』は、ぱんつ型のモザイクを飛ばして標的に絡みつかせ、魔法ダメージに加えて武器の扱いを阻害する。
「心を抉る攻撃は理力を、チェックと拘束は素早さを生かした攻撃です。また、チェックは離れた相手にも届きますのでご注意ください。
 馬鹿げた攻撃の数々ですが、威力や効果は通常のドリームイーターのものと遜色ないため、油断は禁物です」
 現場となるのは、神戸市内某所の潰れたランジェリーショップ(偽ぱんつ店長により営業再開中)。
 付近を通る者もめったにいない上、他の客も存在しないので、寄り道せずに店に乗り込めば、そのまま件のドリームイーターと相対できるだろう。 
「備考としてお伝えしますが、すぐさま戦闘に入るのではなく、客としてサービスを受け、心から喜んであげれば、ドリームイーターは満足して攻撃能力が大きく低下します。
 さらにその場合、撃破後に目覚める被害者も『後悔の念が薄れ、前向きに頑張ろうという気持ちになれる』ようです」
 こういうサービスを考え、実行に移す者が前向きになるのはどうなのか、ということは置いておいて、とセリカは苦笑してみせる。
「なんという恐ろしい敵!
 こんなヤツは、イッコクも早く倒しちゃわないといけないねっ!」
 共に説明を受けていた夏川・舞は、無理やりぱんつをチェックするという攻撃手段に戦慄しつつも、使命感に燃えてみせるのだった。


参加者
赤堀・いちご(ないしょのお嬢様・e00103)
リアトリス・エルス(冥途忍者さん・e01368)
アニエス・エクセレス(エルフの女騎士・e01874)
神無月・玲那(執行者・e02624)
小森・カナン(みどりかみのえれあ・e04847)
羽衣乃・椿(衣改の魔女・e20239)
屍・桜花(デウスエクス斬り・e29087)
天河・麗那(蒼の踊り子・e29903)

■リプレイ

●偽ぱんつ店長 選ぶ
 相談の末、ケルベロス達は、『偽店長』のぱんつ選びのサービスを受ける事を決めた。
 満足してみせることで敵の戦闘力低下が図られ、被害者も前向きになれるというのなら、やって悪いことではない。
「似合うのを選んでくれるのはいいと思うんですけれど……女性店員であれば」
 そう言いつつ最初に店の扉をくぐるのは、メイドを持ち、芸能生活を送る『お嬢様』、赤堀・いちご(ないしょのお嬢様・e00103)。
(「さすがに幼い私だとおすすめもないでしょうけれど」)
 そう考えつつ、まずはサービスを受けてみるいちご。
 だが、この店の主が薦めるのは、あくまでも『自分が良いと思ったもの』である。
 さすがに客の要望を聞くくらいはするが、その範囲の中で最大限自分の趣味を優先する――男であるということと共に、『オススメが参考にならない』というのも、この店が潰れた大きな原因なのだった。
「アナナ、タににに……相応、しい、ぱぱぱんつは、決まままった!」
 ともかく、そんな店長の『後悔』から生まれた偽店長も、ぎこちないながらも本物と同じキメ台詞を発し、選んだぱんつを高々と掲げる。
 それは、名前に相応しい苺色の――スケスケTバック。
 どうやら、『清楚なお嬢様』な見た目のいちごに過激なセクシー下着というギャップを『大いにアリ』だと判断したらしい。
 材質がシルクなのは、高級感=お金持ち=お嬢様ということだろうか。
「下着をコーディネートしてくれるお店なんてあるんですねぇ」
 続いては、いちごに仕えるメイドの友人であり、いちご自身とも親しい、アニエス・エクセレス(エルフの女騎士・e01874)。
 色々と大きいせいで、可愛い下着を諦めることの多い娘さんである。
「とりあえず私もお願いします」
 いつも同じような下着をつけている女子力の低いアニエスは、偽ぱんつ店長を怖がりつつも、おしゃれな下着を見繕ってもらえるのを期待しているのだった。
「アナナ、タににに……相応、しい、ぱぱぱんつは、(以下略)」
 アニエスに手渡されたのは、彼女の好きなピンクの――ドロワーズ。
 可愛らしい、かもしれないし、サイズの問題もないだろうが、これでいいのだろうか。
「私にはまだこういう下着は早いですけれど……アニエスさんなら似合うと思いますよ?
 私もこういうのに合う大人になれればいいです」
「いちごちゃんにも似合うと思いますよ? この下着。
 すぐに私よりも魅力的な女性になれますよ」
 ぱんつについて語らう、いちごとアニエス。
 そんな二人に、偽ぱんつ店長もどことなく嬉しそうだ(頭のぱんつのせいで表情はよく分からないが)。
(「偽店長。頭にぱんつ被るの何とかならないでしょうか」)
 見た目のインパクトの大きさにげんなりしているのは、アニエスの下着に興味津々な、神無月・玲那(執行者・e02624)。
 本人に言ってやりたいのは山々だが、サービスを受けて喜んでみせる必要があるため、ぐっと我慢。
 前向きに考えることで、喜びやすい精神状態に持っていくのだ。
 玲那は偽ぱんつ店長に対し、『白いレース物の清楚なショーツ』という縛りで品物を選んでもらう。
 ここで妥協すると満足できないだろうと、しっかり良し悪しを見定めていくのだ。
「アナナ、タににに……相応、しい、(以下略)」
「――うん、ありがとうございます」
(「白いショーツですから、清楚な感じを与えるレースものはいいですよね」)
 その甲斐あってか、玲那も偽ぱんつ店長が出してきたぱんつで、満足することが出来たのだった。
 四番手をつとめるのは、白いふわもこボクスドラゴン『ステラ』の主にしてメイド忍者、リアトリス・エルス(冥途忍者さん・e01368)。
 戦闘の際に敵にぱんつを見られてもいいように、あらかじめ準備をしてくるほどの周到ぷりである。
「ん……、でも、ぱんつチェックされても恥ずかしくないように、誰かに選んでもらうのが良いかも?」
「が、がぅ?」
 ということで、夏川・舞にぱんつ選びを任せるリアトリス。
「えーと、えーっと……」
 レモン色の可愛いぱんつを渡された舞は、普段無造作に下着を買っていることに少々後悔しつつ、なんとか柑橘仲間の、ライム色のパンツを選び出す。
 柄などは分からないため、自分で買うような、スポーティでシンプルな、飾り気のないものを。
 そうして、舞ぱんつを穿いたリアトリスは、店内へ。
「ん、下着選んでもらいにきました」
 けど、恥ずかしいから、ボクが下着をつけてるところを想像とかしないで選んでくださいね?」
 プロならできるよね、というリアトリスの発言に、気分を害した様子もなく、偽ぱんつ店長はぱんつを選ぶ。
「アナナ、タににに……(以下略)」
 出て来たのは、リアトリスの忍者ちからを感じ取ったのか、白い木綿のフンドシ。
 忍者といえば、『長い布が地面に着かないように走る訓練をした』という有名な話があるためか、種類は六尺。
『選んで貰った下着? 別に買わないし、別のお店で買う時に参考にするかも、ってくらいかな?』
 という考えでいたリアトリスだが、たとえ購入予定だったとしても、ちょっと躊躇ってしまうシロモノである。
「お、おお客様……なな、なにかご不満ででで――」
「すばらしいです!」
 リアトリスの喜び具合を、処分対象だと判断しようとした偽店長。
 玲那はとっさに、選ばれた下着を褒めることで、店長の気を逸らす。
「私のも……選んでちょうだい」
 さらに、ぱんつ選びを優先させるために、順番待ちをしていた屍・桜花(デウスエクス斬り・e29087)が声をかけるのだ。
(「パンツ……個人的にはそこまでどうでもいい話なのだけれど……」)
 デウスエクスを斬るのが楽しみだという桜花は、今回のドリームイーターの斬れ味も大変気になりつつ、まずは大人しくサービスを受ける。
「アナナ、タに(以下略)」
 フンドシ派だという桜花の為に、フンドシ棚から渾身の一枚を選び出す、偽ぱんつ店長。
「よくわかったわ……詳しいのね……。
 私にここまで似合うパンツをくれるなんてすごいわね……」
 静かに、だがしっかりと褒められ、ぱんつ店長もなんだか嬉しそうだ。
(「うーん、下着って大事なんでしょうか?
 なんていうか、なくてもいい気がします」)
 そんなことを考えつつ偽ぱんつ店長の前に出るのは、踊りが得意な白狐のウェアライダー、天河・麗那(蒼の踊り子・e29903)。
「! ――アナナ、タ(以下略)」
 身のこなしから、相手が下着をつけてないのに気付いたのか、一瞬動きが止まるドリームイーター。
 それでも、ぱんつセレクトショップの店長(偽)として、しっかりとぱんつを選んでみせる。
 偽店長が出してきたのは、銀のラメでぎらぎらド派手、下品な逸品。
 相手が踊りが得意ということでの選択なのかもしれないが……なにか激しく間違っている気がする。
 ともあれ、下着など今までつけたことがなく、窮屈そうでしかないという麗那も、『誰かに選んでもらえること』自体を喜び、嬉しがってみせるのだった。
(「男性に下着チェックされるのは恥ずかしいですけど、頑張って喜ばないと、ですね……」)
 七番目は、衣服を武装に変える術を使う、女子高生、羽衣乃・椿(衣改の魔女・e20239)。
「下着はピンクが好みでしょうか……。
 オシャレな感じはあった方がいいかもしれません」
 照れを見せながら、下着の好みについて話す椿。
「ア(以下略)」
 そんな要望から選び出されたのは――。
 淡いピンクの、スケスケ下着。
 オシャレ感は、前のところに蝶の刺繍がしてあること、らしい。
「あ……新しい自分を発見できた気がします!」
 明らかに、希望していたものとは違っただろう。
「素敵なぱ……ぱんつ、ありがとうございますっ!」 
 それでも椿は、選んでもらった下着を穿いて見せ(!)、健気に喜んでみせるのだった。
「いよいよカナンの番っすね」
 最後を飾るのは、自分の事を『ぴゅあぴゅあ幼女』と言ってのける、つるぺた幼児体型の、小森・カナン(みどりかみのえれあ・e04847)。
 なにを考えてこんな店を開いたのかと疑問を持ちつつ、ぱんつをかぶったドリームイーターによるぱんつ選びを受けるカナン。
「カナンに似合うおぱんつがどんなものか気になってねーっすよ」
 そう言いながら、セクシーな黒のスケスケブラジャーとぱんつ姿になるカナン。
「カナンのにーちゃんのお部屋にあったモノっす!」
 その場にいたケルベロス達は、(「それでどうしてそんなのを着ちゃうの!?」)と思わずにはいられなかったが――まぁ、それぞれの家庭の事情というものがあるのだろう。
「ついでにこのゲームに登場する、金髪でビキニアーマー着用した女騎士のおぱんつも選んでほしいっす」
 さらには、スマホの画面を提示し、そんな要求までしてしまうカナン。
「(以下略)」
 普通の人間なら色々思うところあっただろうが、これはあくまでも、下着を選ぶ機能を持ったドリームイーター。
 相手が人間だろうと二次元だろうと構うことなく、ぱんつを選んでみせる。
 カナンには、子供らしく、森のクマさんがバックプリントされた子供ぱんつ。
 幼児体型にこそエロ――もとい、セクシー下着がギャップになるのだが、既にやられているために、再度のギャップ狙い。
 そして、ビキニヨロイの金髪娘には、白の紐ぱんを。
 アーマーの横部分からバッチリ紐が見えているというエロスに、なのに白というギャップを。
 さらに、紐ぱんなので、エロモンスターや悪漢と争っているうちに、解けたり、解かれたり、切られたりといったエロハプニングを容易に引き起こすことが出来るのだ!
 ……ほんとうに、ただのドリームイーターなのか。
 中に変態おっさんでも入ってるんじゃないのか?
 そんなふうに思わせる、こだわりのチョイスなのだった。

●偽ぱんつ店長 吼える
「オオオオオオオオオオ――!!」
 一通りの接客が終わった後、突如偽ぱんつ店長が叫び声をあげる。
 店が潰れるまでよりも多くの客にぱんつを選ぶことができたどころか、喜んでもらったことで、感極まったらしい。
 本物の店長の『後悔』から生まれた偽ぱんつ店長は、核となる『後悔』の念が消えたことで、一目で分かるほどに威圧感を減じる。
「頭に下穿きつけてる時点で後悔と言うより……変質な気が……」
 思わずツッコミを入れてしまう麗那だが、下着に関する後悔なのだから、仕方ないのだ。多分。
「…………ぱん、けつ……死刑!」
 ともあれ、後悔より解き放たれた偽ぱんつ店長――だが、しっかりと喜んでみせなかった者を殺しにかかるという習性は、変わらなかったらしい。
 反応の悪かったリアトリスへ向かい、戦闘用ぱんつを構える。
 もっとも、ケルベロスの側としても、ドリームイーターをこのままにしておくわけにはいかないので、何の問題も無い。
 戦いで起きる騒音で寄ってくる者がないようにと、カナンが殺界形成を展開し。
 演技が出来ないからと、店の外で待機していた舞が参戦する。
 被害者の心を救い、ドリームイーターを弱体化することには成功した。
 あとはしっかりと、このぱんつかぶった変態デウスエクスをぶっ飛ばすだけだ!

●さよなら 偽ぱんつ店長
 こうして戦闘になったのだが、『後悔』を失い、攻撃力の半減した偽ぱんつ店長は、もはや強敵たりえなかった。
 生命力や回避命中については変化無いが、簡単に回復できる威力ではしょうがない。
 状態異常も常と同じくケルベロスを苛むが――危険なのは、高い攻撃力を持っているデウスエクスだからなのだ。
 そんなわけで、倒される心配のまず無い、けれども相手のしぶとさは通常通りという、緊張感に欠けた泥仕合が繰り広げられることとなったのだった。
「この一閃を受けてみよ。神無斬!」
 仲間の盾として攻撃を受ける事を重視する玲那は、いつでも助けに入れるポジションを維持しつつ、『神無斬』を繰り出す。
 十分な気合でもって振るわれた斬霊刀『烈風』は追尾性をもった衝撃波を生み出し、近付かずして離れた敵を打ち倒すのだ。
「いいい、生活つつつ……は、い、いいいいいぱんつか、らっっ!!」
 相当に痛めつけられているはずの偽ぱんつ店長だが、まだ倒れない。
 玲那の一撃で崩れた体勢のまま駆け出し、一歩引いたところにいる椿を標的とする。
「っ、間に合わ――」
 盾役のカットを潜り抜けた偽ぱんつ店長の手が、椿の下半身へと伸びる。
「んんっ……」
 いやらしい事をされている訳ではないのだが、思わず変な声が出てしまう。
「……受けたくないなあ」
 その様子に、麗那はうんざりとした声を思わず漏らし。
「ん、女の子の下着を見てそんな風だから、モテないし、お店だって潰れるんじゃないかな」
「がぅ!」
 ぱんつを剥き出しにする攻撃に、ちょっとイラッと来たリアトリスは、偽ぱんつ店長(および、その元となったぱんつ店長)に怒りを向ける。
 ステラに椿の回復を指示すると、自身は素早く間合いを詰め、ドリームイーターに影の如き斬撃をお見舞いする。
「わが身を纏いし衣よ、この一時は敵を刻む鋭糸の刃となれ!」
 傷が癒え、恥ずかしさが怒りに変化した椿も、反撃開始。
 戦衣再縫術『斬解糸刃』(クロスリソーイングスペル・ディゾルブストリングス)により、自身の衣服を『鋭い糸の刃』に変えて、ぱんつかぶりのドリームイーターを切り刻む。
「緑の風の鎖がお前らを縛ってやるっすよ!!」
 さらに続けて、後方より、カナンが狙い済ました一撃を放つ。
 vent・chaine(ヴァン・シェーヌ)。
 風の流れを操り、鎖状にすることで標的に巻きつけて動きを止める技だ。
 鎖は同時に刃物のような鋭さを持ち、しっかりとダメージも与えていく。
「あなた……どんな斬れ味……?」
 視認困難な風の鎖に囚われたドリームイーターに、桜花が我慢できないという感じで尋ねる。
「ふふふふふふふふふふ……あはははははははははは!」
 戦闘前と違い、満面の、魅力的な笑みを浮かべた桜花が刃を振るう。
 血桜――ひたすら切り刻む際に飛び散る血しぶきが桜のように見えるという、色々な意味でトラウマ必至の技である。
「いきますよ!」
 下着がわりの『踊り子衣装』を身に纏い、踊るように戦う麗那。
 そのクライマックスは、魔人状態からの、怒涛の連打。
 右手に『凶星戟』、左手には無銘のゲシュタルトグレイブと二槍を駆使して軽やかに、そして鋭く突き穿つのだ!
「ぱ、ぱぱぱぱぱんつっっ!!」
 回避もままならず、無様に吹き飛ばされていくドリームイーターだが、その命中には、麗那の相棒であるジョン・ライバックの支援があった。
 ガスマスクで顔を覆い、声も出さず、徹底して目立たぬように隠れながら、ケルベロスチェインを放って動きを鈍らせたのだ。
「うーっ、しぶといっ!」
 倒れた偽ぱんつ店長に、おまけで舞も螺旋の力を載せた掌打を叩き込むが、やはり倒れない。
 だが、さすがにこれ以上時間はかけられない。次で決める。
「アニエスさん、お願いします!」
 回復役として、唄や桃色ミストで怪我と状態異常の治療にあたっていたいちごだが、ここが勝負の決め時と判断し、攻撃に移る。
 捕食形態にしたブラックスライムでぱんつをかぶったドリームイーターを捕らえると、撃破役のアニエスにトドメを任せる。
「いちごちゃん、ありがと……とっ、」
 お互いを結ぶ絆の力が薄く、うまく連携をとって華麗に攻撃――とはいかなかったが、それでも相手がブラックスライムから抜け出す前に仕掛けることが出来た。
「エクセレス流槍術・番外! ヒュージ……スピアァァァ!!」
 HUGE SPEAR(ヒュージスピアー) 。
 巨大な破城槍と化したアームドフォートを、右腕に固定して突貫。
「ぱんっつっ……!?」
 深々と突き刺した矛先から――全火力を一気に解き放つ!
 轟音と共に、店内がビリビリと揺れる。
 ぱんつ一枚残さぬほどの圧倒的な破壊を受け、偽ぱんつ店長はこの世界から消え去ったのだった。

●ぱんつよければ全てよし
「インパクトありすぎてネットに載せたくなるくらいの相手だったっす」
 戦いが終わり、ドリームイーターが滅ぼされたことで、店の奥で倒れていた本物のぱんつ店長も目を覚ました。
 そんなめでたい空気の中、カナンは今は亡き偽ぱんつ店長を思い出して、ひとり呟くのだった。
「ドリームイーターを褒めたのはほとんど演技だけど、わかりやすかったのは本当……まあ、がんばって……」
「あ……ありがとうございます!」
 目覚めた被害者を励ますのは、フンドシ派だという桜花。
 なぜか気分が晴れやかな上に、優しい言葉までかけられたのだ。
 ますますやる気になる店長だったが――。
「男性が女性の下着扱うのって、女性からしたら抵抗あると思うんですよね。
 だから別の方向を選んだほうがいいと思います。
 あ、下着要りませんので」
 下着つけない派の麗那が、そのものズバリな正論で突き刺していく。
 実際、その後のぱんつ店長が、この茨の道を歩き続けたのか、あるいは真っ当な道へと立ち戻ったのかは定かではないが――。
 ともあれ、『無理矢理ぱんつを選ばれ、それに不満を持ったら殺される』という事件が起きることがなかったのだけは、確かである。

作者:紫堂空 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年8月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。